いまさら聞けない不動産投資ローンの仕組みと大手銀行の相場
By Oh!Ya編集部
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不動産投資は、どれくらいの自己資金があれば始められるのでしょうか?もし、自己資金が少ない場合でも、金融機関のローンを利用して賃貸物件の経営を始めることができます。
他の金融投資とは違い、不動産という「資産」に対する投資なので、銀行の融資も受けやすいのがメリットです。 そもそも不動産投資ローンとは何か、ローンの金利相場や借入期間、ローン契約の流れなどについてご紹介していきましょう。
不動産投資ローンとは
不動産は「高い買い物、一生の買い物」というイメージが強いですよね。きちんと自己資金を多めに蓄えておかないと不動産投資なんてできない、なんて考える方も多いでしょう。 しかし、不動産投資はレバレッジを効かすことで、少ない自己資金でもより利益率の高い投資を行うことができます。
レバレッジという言葉は、株式投資やFXなどでもよく目にしたり、聞いたりしたことがあるかもしれません。レバレッジとは、他人の資本を使うことで、自分の少ない資金でもより大きな金額の取引ができることを言います。
不動産投資の場合は、銀行など金融機関のローンを利用することで、より収益性の高い物件を手に入れられる可能性が高まるでしょう。
そもそも不動産投資ローンは、通常の住宅ローンとは内容が異なるので注意が必要です。家賃収入を得るために収益物件を購入するとき、住宅ローンを組んで買ってしまうと、あとからとんでもない結果になってしまいます。
住宅ローンとの違い
住宅ローンの目的は、戸建や区分所有マンションなどの住宅を購入する本人、もしくはその家族が住むための資金として貸し出されるものです。 一般の銀行が個人向けの住宅ローンを展開しており、変動金利型や固定金利型の商品を低金利で融資しています。安定した給与や事業所得があるなどの条件を満たせば、優遇された金利で借りることができます。
しかし、住宅ローンは原則として「自己の居住用」として利用しなければなりません。家賃収入を得るために収益物件を購入する、という目的としては利用できないのです。
たとえば、不動産投資が目的なのに、それをあえて銀行に言わずに住宅ローンを利用した場合。もし銀行側に知られてしまったときは、貸金の一括返済を求められることもあるので注意が必要です。
ローンを使うメリット
前述の通り、ローンをうまく利用することで、不動産投資を早く始めることが可能です。仮に「自己資金をたっぷりと貯めてから、それだけで投資を始める」という場合は、目標の資金が貯まるまでいったい何年掛かるでしょうか。
たとえば、資金が貯まるまで10年掛かったとします。もしその10年の間に、利益率の高い物件を見つけたとしても、すぐに投資へ踏み込むことができませんよね。 もし、いまから安定した家賃収入が得られる物件を10年間運用したら、10年後には、いったいどれだけの貯蓄ができているでしょうか。
これを機会損失と言います。不動産投資をしていなければ、確かになんの損失もありません。 しかし、不動産は「動かない資産」です。いまから将来のための資産形成をしていける機会があるとしたら、それをみすみす逃してしまうことが損失になるのではないでしょうか。
自己資金が少なくても始められる
区分マンションや一棟アパートを現金で買えるほどの自己資金が無かったとしても、不動産投資を始めることは可能です。ローンを使ってレバレッジを効かせることができれば、少ない自己資金でも、大きな金額の収益物件を選ぶことができるようになります。
不動産投資の際には、「物件選び」がとても重要です。ローンを利用することでこの選択肢が広がれば、より収益性の高い物件を手に入れることもできるでしょう。
まだ不動産投資をしたことがない人からすると、「自己資金が少ないのに、何千万円もする不動産なんて買えるわけがない」と考えるかもしれません。 しかし、銀行はローンを組む対象物件の収益性や、融資を受ける人を見て判断します。物件の収支バランスがしっかりとしていて、きちんと返済能力がある、と判断されればローンを組んで不動産を買うことができるのです。
投資スピードを早められる
不動産投資を始めたら、家賃として定期的な収入が発生します。毎月、入居者からあなたの銀行口座へ、家賃が振り込まれるようになります。 「もっとこの収入を増やしたい」という場合は、ローンをうまく活用することで、次々と収益物件を増やしていくことが可能になってきます。
ローンを増やしていくのは怖いと感じるかもしれません。確かに、ローンが増えれば返済額も大きくなっていきますね。しかし、購入した収益物件からの家賃収入でローンを返済していくことができれば、残ったお金はそのまま利益になります。
不動産投資で成功している人は、家賃収入からローン返済額や経費を引いて残った「利益」を増やすことに重点を置いています。
不動産投資で収入を増やしていくためには、安定した利益が得られる物件を増やして、それを拡大していくやり方が一般的です。そのためにも、投資スピードを早めることが一番の近道と言えるでしょう。
ローンを使うデメリット
もちろん、デメリットもあります。賃貸物件が黒字経営なら問題ないのですが、必ずしもそうなるとは限りません。もし、空室が増えて家賃収入をローンの返済にあてることができなくなってしまったときは、赤字分を自己資金で補填しなければならなくなります。
また、不動産投資ローンは住宅ローンとは違い、金利が高めに設定されています。 なぜなら、不動産投資は「賃貸業」とみなされるため、事業としての収益性や将来性を重視されるからです。住宅ローンのように、個人の年収などを見て返済能力を判断するわけではありません。
そのため、融資の条件も厳しくなっており、収益物件の構造や担保価値、賃貸経営を行うにあたっての収支バランスなどが審査対象となります。
ローンを利用することで、より収益性の高い物件を選べるなど選択肢の幅は広がります。しかし、入居状況によっては賃貸経営が赤字になることもあるでしょう。そうならないために、しっかりと投資計画を立てておくことが大切ですね。
売却時に残債が残る可能性がある
ローンを利用して物件を購入していた場合、ローン返済額には金利が上乗せされています。もし物件を売却するときは、ローンの残債以上で売れるかどうかを、事前に調べておかなければなりません。 売却金がローンの残債よりも少なければ、そのまま借金だけが残ってしまいます。
空室が続くとローン返済が難しい
収益物件がある地域の環境は、常に変動していきます。年齢別で見たときの人口や、近隣の施設の変化や不動産価値など。賃貸物件の需要が下がれば、家賃相場が下がることもあるでしょう。そのため、入居率も常に変動していくのは必然的と言えます。
もし、環境の変化によって空室が増えてしまうと、ローンの返済そのものが困難になってくる可能性も。あまりにも長い期間それが続いてしまうと、自己資金だけでは赤字を補うことができずに、売却を余儀なくされることがあるかもしれません。
ローンの内容は?
不動産投資用のローンは、都市銀行や地方銀行、信託銀行などが扱っています。住宅ローンよりも金利が高いですが、住宅ローンと同じように団体信用生命保険に加入することができます。
団体信用生命保険は、ローンを組んだ本人に万が一のことがあったときのための生命保険。本人がローン返済中に死亡してしまったり、3大疾病などで高度障害になった場合に、ローンの残債が保険会社から弁済されてゼロになります。
不動産投資ローンは、大きく2つの種類に分かれています。
- 提携ローン
- 金融機関ローン
提携ローンと金融機関ローンでは何が違うのでしょうか。
提携ローンと金融機関ローン
提携ローンとは、不動産業者が金融機関と提携して用意しているローンのことを言います。不動産業者は提携先の銀行に顧客を斡旋して融資を行います。
物件購入からローンの申込みなどを一貫して任せられるので手続きが楽、というメリットがありますね。また、常に提携して融資を行っているため、審査が少し緩くなったり、金利が低くなる優遇措置を受けられる場合もあるでしょう。 ただし、不動産業者が提携している金融機関しか選べない、といったデメリットもあります。
金融機関ローンは、ご自身で銀行を探してローンを申込む、一般的な流れです。提携ローンとは異なり、いつもご自身が使っているメインバンクや、自分でローンの内容を調べてみて良いと思った銀行を選ぶことができます。
具体的なローンの内容は?
銀行によって、借りられる期間や金利が異なります。また、借入金額の上限も銀行によって違うので、それぞれのローンの内容を比較してみると良いでしょう。
不動産投資ローンを扱う、主だった銀行をまとめてみました。実際にご自身が不動産投資を行っていく中で、一番どこを重要視するでしょうか?金利重視なのか、期間重視なのか、または借入金額の上限なのか、など賃貸経営の方針によって重要な部分が異なります。
東京スター銀行
東京スター銀行 |
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借入限度額 100万円以上~1億円以内 |
借入期間 1年以上~20年以内 |
金利タイプ 変動金利型・固定金利型(3年・5年・10年) |
担保 本人以外の名義でも可。配偶者、実父母、実兄弟姉妹の所有する不動産であれば担保設定が可能。※ 一部、取り扱いできない地域あり |
連帯保証人 原則として必要なし。共有物件を担保にする場合は、物件共有者が連帯保証人になる必要がある |
URL https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/mortgage_collateral/index.html |
みずほ銀行
みずほ銀行 |
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借入限度額 50万円以上~5億円以内(1万円単位) |
借入期間 1年以上~35年以内(ただし、建物の耐用年数以内)変動金利は2年以上35年以内。固定金利は11年以上20年以内 |
金利タイプ 変動金利型・固定金利選択方式・全期間固定金利方式 |
担保 融資対象となる土地および建物に、原則として借入金額の110%の金額にて第一順位の根抵当権を設定登記する |
連帯保証人 事業継承見込みの法定相続人(未成年者を除く)1名以上が連帯保証人として必要 |
URL https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/apart_yushi/index.html |
オリックス銀行
オリックス銀行 |
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借入限度額 1000万円以上~2億円以下(10万円単位) |
借入期間 1年以上~35年以下 |
金利タイプ 変動金利型・固定金利期間特約付変動金利型(3年固定金利特約型/5年固定金利特約型) |
担保 借入対象不動産に原則として、同社を権利者とする第1順位の抵当権を設定。(建物を建築する場合については、土地も担保として差し入れ)※担保設定費用は別途負担が必要。原則として、建物の火災保険への加入必須。 |
連帯保証人 原則として、借入対象不動産の共有者の方が連帯保証人になる。その他、同社が必要と判断した場合、連帯保証人が必要となる場合がある |
URL https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html |
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行 |
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借入限度額 300万円以上~1億円以下(10万円単位) |
借入期間 1年以上~25年以内(1ヵ月単位) |
金利タイプ 変動金利型 |
担保 担保不動産に保証会社を抵当権者とする抵当権を設定 |
連帯保証人 原則として不要。保証会社の保証をご利用する必要あり。保証料は同社が負担。別途保証料を支払う必要なし |
URL https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/fcloan_jyouken |
三井住友銀行
三井住友銀行 |
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借入限度額 200万円以上で当該賃貸物件の建築・購入価格等の範囲内(10万円単位) |
借入期間 1年以上~35年以内(1ヵ月単位) |
金利タイプ 変動金利型・固定金利特約型 |
担保 融資により取得する物件(ただし、建物を取得する場合は土地・建物の双方)に、同行を抵当権者とする抵当権を設定。長期火災保険への加入あり。保険金請求権に同行を質権者とする質権を設定する場合あり。この場合、火災保険料とは別に、質権設定手数料として1,080円(消費税込)が必要 |
連帯保証人 法定相続人の内、事業承継見込みの方等、原則1名以上の連帯保証が必要 |
URL http://www.smbc.co.jp/kojin/apartment/ |
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫 |
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借入限度額 7200万円 |
借入期間 最長20年以内 |
金利タイプ 固定金利型 |
担保 お客の希望を聞きながらの相談 |
連帯保証人 お客の希望を聞きながらの相談 |
URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jiyusij_m.html |
SMBC信託銀行
SMBC信託銀行 |
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借入限度額 500万円以上~2000万円以内(10万円単位) |
借入期間 1年以上~20年以内 |
金利タイプ 固定金利型(3年・5年・7年・10年) |
担保 対象不動産に、同行を第一順位とする抵当権を設定 |
連帯保証人 原則として不要。ただし収入合算者(担保提供者(共有者を含む)は必要に応じて)は、連帯保証人としての契約が必要 |
URL https://www.smbctb.co.jp/product/loan/use_loan_index.html |
スルガ銀行
スルガ銀行 |
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借入限度額 アセットプラン最高2000万円 |
アセットプラン・プラス最高1億円 |
借入期間 アセットプラン最長20年以内アセットプラン・プラス最長30年以内 |
金利タイプ 変動金利型 |
担保 土地、建物など、担保となる不動産に根抵当権を設定 |
連帯保証人 原則として不要 |
URL https://www.surugabank.co.jp/surugabank/kojin/service/asset_plan/ |
銀行によって借入期間の上限が異なりますが、だいたい20年以内のところが多いようです。三井住友銀行などは最長35年になっていますね。 当然ながら、この借入期間によって、毎月のローン返済額が大きく違ってきます。想定家賃収入と比較しながら、ローン返済のシミュレーションを行ってみると良いでしょう。
金利について
そもそも金利とは、銀行から借りた資金を使用するために支払う「利子・利息」のこと。他人から借りたお金の使用料のようなものです。 銀行がお金を貸し出すときに、「お金が自分の手元から離れてあなたのところにある間は、その期間お金を自由にできないかわりに、利息をもらいますよ」というもの。
ローンを組む際の金利は、変動金利型と固定金利型があります。いまの金利が低い時代は、この変動金利型を選ぶ人が多いようです。ただし、金利が低いかわりに、常に金利が変動するというリスクをはらんでいます。
たとえいまは金利が低くても、経済状況の変化によって金利が上昇していくこともあるかもしれません。そうなるとローンの返済額も大きくなっていくでしょう。 常に金利上昇を見越したうえでの賃貸経営戦略が必要です。
固定金利は、「3年固定・5年固定」といった段階的に金利が固定されたものや、ローン全期間の長期固定といったプランなどがあります。決められた期間だけ金利が優遇されたり、諸費用などが異なります。
シミュレーション上は安い変動金利
経済状況によって常に変化していくのが変動金利です。ローンを組んだときは金利が低くても、3年、5年など経てば大きく金利が上昇する可能性もあるでしょう。
現在の低金利時代だと、シミュレーション上は変動金利のほうが安く見えます。しかし、ローンの返済額が上がってしまうリスクはきちんと想定しておかないと、金利の変動でたちまち返済が困難になってしまいかねません。
変動金利の相場
2018年8月時点での変動金利の相場を一覧にまとめてみました。
銀行名 | 金利タイプ | 年率 |
---|---|---|
東京スター銀行 | 変動金利型 | 0.90%~8.40% |
みずほ銀行 | 変動金利型 | 2.475% |
オリックス銀行 | 変動金利型 | 3.675% |
住信SBIネット銀行 | 変動金利型 | 2.95%~8.9% |
三井住友銀行 | 変動金利型 | 2.475% |
スルガ銀行 | 変動金利型 | 4.60%~14.9% |
金利上昇リスクがない固定金利
変動金利型とは違い、固定金利は、3年固定から5年・10年固定など、長期に渡って金利が固定されています。経済状況の変化による金利上昇リスクが軽減でき、物価上昇などの影響があっても安心です。 賃貸経営の計画によってどの金利プランにするかを自由に選べるのが良いところですね。
固定金利の相場
固定金利の場合の銀行一覧もまとめました。
銀行名 | 金利タイプ | 年率 |
---|---|---|
東京スター銀行 | 固定金利型 | 1.30%~9.00% |
みずほ銀行 | 固定金利選択方式 | 2.55%~3.20% |
上記同行 | 全期間固定金利方式 | 1.65%~1.77% |
オリックス銀行 | 固定金利型 | 3.30%~3.50% |
住信SBIネット銀行 | 固定金利型 | 2.95%~8.9% |
日本政策金融公庫 | 固定金利型 | 1.16%~2.25% |
三井住友銀行 | 固定金利型 | 2.70%~3.35% |
SMBC信託銀行 | 固定金利型 | 2.65% |
融資を受けやすくするためには?
不動産投資が目的のローンを組む場合、お金を貸す銀行側は、まず物件の収益性を判断します。賃貸物件に掛かる毎月の管理費や修繕積立金、その他の経費とローンの返済を全て支出しても、なお利益が出ているのか。家賃の設定は適正か。賃貸事業の計画は妥当か。などを見ます。
さらに、銀行が見る融資ポイントは5つ。
- 物件がある場所は、融資対象のエリアか
- そもそも物件自体が融資対象になるのか
- 担保にする不動産はそれだけの価値があるか
- ローン申込者の属性は良いか(職業は何か)
- 信用力はあるか(不動産運用の実績があるか)
物件の収益性はもちろんですが、エリアによっても判断されます。 また、銀行は貸したお金を長期的にちゃんと返済してもらいたいので、申込者の職業を見て「安定した所得があるか」なども判断します。いわゆる返済能力ですね。
万が一、ローンの返済ができなくなってしまったときは、銀行は担保にしている物件を売却して、貸し倒れ(貸したお金が返ってこず損失となること)を防ごうとします。
そのため、初めの融資をする段階で、その担保だけでローンが全て返ってくるのかを計算します。もし担保の価値が足りない場合は、親類などのお身内が所有している不動産を担保に入れようとしてくる場合もあるでしょう。
融資が通る確率を上げるためには、この5つのポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。
事前審査には気を付けよう
当然ながら「物件ありき」ですので、ローンの相談へ行く際は、まずちゃんと収益物件を見つけてからのほうが良いでしょう。物件資料がないと、銀行も判断のしようがないからです。 もし、良い物件をなかなか見つけられないときは、ひとまず、ご自分の希望に近い物件資料を持って相談に行ってみるのも良いかもしれません。
ただし、ローンの事前審査を申込む場合は注意が必要です。事前審査をすれば、確かにローンの借入可能額などがわかりますが、「事前審査をした」という履歴が残ってしまいます。 もし、事前審査に提出する書類が現実とかけ離れた物件資料だったり、「仮審査だからこれでいいや」などと、いい加減な資金計画だったりすると、審査に落ちてしまう可能性があります。
銀行の審査のしかたにもよりますが、事前審査は仮審査と呼ばれることがあり、安易な考えになってしまいがちです。 しかし、「事前審査に落ちた」という事実は残ってしまうため、他の銀行で審査依頼をする際に悪影響を及ぼしかねません。 事前審査を申込む場合は、本気で買いたい物件の資料と資金計画を持って、本審査のつもりで挑みましょう。
自己資金を多くする
銀行のローン審査では、「頭金(自己資金)が必要」とよく言われています。頭金とは、物件の購入代金の一部を現金で売主に支払うことを言います。一般的には、物件価格の1割が頭金の相場と言われています。
借入金に対する自己資金の割合が多ければ、金利の優遇を受けられることがあり、借入条件が良くなることも。また、自己資金が多いほど借入総額も少なくすむので、毎月のローン返済額を減らすことがきますね。 さらに、借入総額が少なければ、支払うべき利息も減らせるというメリットがあります。
銀行としても貸し倒れリスクを軽減できるので、やはり自己資金が多い人ほど優遇されるでしょう。
地銀を活用する
不動産投資用のアパートローンなどを利用するときは、都市銀行よりも地方銀行のほうがメリットが多い場合があります。近年では、合併などで規模が拡大していっている地方銀行もあり、より一層積極性が増しています。 また、地方銀行は地域の発展を重要視している傾向にあり、対象地域にある物件の融資に前向きな姿勢を見せることも。なにより、地域に根付いた経営をしている銀行が多く、信用力があります。
レントロールが良い物件を選ぶ
賃貸経営するための物件選びは、まずレントロールからチェックすると良いでしょう。レントロールとは、アパート・区分マンションなどの入居状況や、入居者ごとの賃料が記載されている賃借条件の一覧表です。
物件資料を請求したときに、間取り図などの物件情報と一緒に送付される場合が多いでしょう。各戸ごとの賃借状況が確認できるので、これにざっと目を通すだけで、物件の賃貸借状況が見えてきます。
高利回り物件を選択する
不動産投資で成功する確率が高くなるのは、「いかに高利回りの物件を手に入れるか」です。「利回り」については、別の記事で詳しく解説しています。
利回りが良ければ、それだけ収益率が高いということなので、リスクが軽減され大きなリターンが見込めるでしょう。
良さそうな物件を見つけたら、実質利回りを計算してみて、実際に賃貸経営を始めたときをイメージしてみてください。安定した高い収益が確保できれば、それだけ資金を回収できる時期が早まります。
融資を受けるまでの流れ
不動産投資で実際にローンを組んで融資が実行されるまでは、いったいどれくらいの期間が必要なのでしょうか?
実際にローンの審査申込みをして融資が実行されるまでは、1ヵ月くらい掛かります。ローンの申込みをしたからといって、すぐに入金されるわけではありません。 一般的な流れは下の通りです。
- ローンの事前審査(審査期間、5営業日程度)
- 事前審査が通れば、実際に物件の売買契約を締結
- 売買契約締結後、ローンの本審査申込み(審査期間、7~10営業日程度)
- 本審査が通れば、金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結
- 決済日に融資が実行され、口座へ入金
このような流れになります。 そもそも、審査自体にある程度の日数が掛かってしまうため、余裕をもって進めたほうが安心ですね。
事前審査
購入した物件が決まったら、まずは実際にローンが組めるかどうかの事前審査を行います。 仮審査のようなイメージですが、たいていは本審査と同じような審査を行う場合がほとんどです。銀行によって異なりますが、事前審査が問題なく通れば、本審査もよほどのことが無い限り通るでしょう。
ローンの申し込み
アパートローンなどの申込みをする際は、銀行が指定した書類が必要です。予め準備をしてから申込みを行いましょう。 事前に必要書類一覧表などをもらっておくと良いですね。不動産業者か、銀行の担当の方が配布してくれます。
申し込み時に必要な書類
一般的なローンの申込みに必要な書類をまとめました。
ローン事前審査申込みに必要な種類一覧 |
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買付証明書(不動産の購入申込み書) |
物件資料(物件概要書) |
本人確認書類(運転免許証やパスポートなど) |
源泉徴収票(前年分) |
印鑑(認印でも可) |
ローン本審査申込みに必要な書類一覧 |
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物件資料(物件概要書) |
売買契約書 |
重要事項説明書 |
登記事項証明書(登記簿謄本) |
レントロール(賃借条件一覧表) |
建物図面 |
公図 |
建築確認済証 |
本人確認書類(運転免許証やパスポートなど) |
印鑑登録証明書 |
住民票 |
健康保険証 |
源泉徴収票(前年分) |
確定申告書(3年分) |
所得証明書 |
勤務先の会社概要 |
職務経歴書 |
納税証明書 |
資格等証明書(国家認定資格) |
賃貸借契約書・支払い通帳 |
既存のローンがあれば、その返済予定表 |
団体信用生命保険申込兼告知書 |
たくさんありますが、「物件資料」から「建築確認済証」までは、不動産業者が用意してくれます。 基本的に、法務局や役場の建築指導課などで取得する物件資料は、不動産業者が準備してくれる場合がほとんどです。もし不安な場合は、業者に訊いてみてください。
本審査
事前審査が通過すれば、次はローン本審査の申込みへと進みます。事前審査とは違い、用紙しなければならない必要書類がかなり増えます。 たいていは銀行がチェックリストのようなものを配布してくれます。
本審査の結果が出るまでは、約10営業日ほど掛かるでしょう。
融資の内定・契約手続き
融資の承認がおりれば、実際にローン契約を締結します。 正式には、金銭消費貸借契約と言い、略して「金消契約(きんしょうけいやく)」と呼ばれています。
契約時に必要な費用
ローン契約時には、手数料をはじめとした各費用が掛かります。
- 印紙代(金銭消費貸借契約書に貼る収入印紙代)
- 融資手数料(事務手数料)
- ローン保証料(保証会社へ支払う費用)
- 火災・地震保険料
- 登録免許税(抵当権設定登記に掛かる税)
などです。団体信用生命保険の費用については、金利に含まれているので掛かりません。しかし、フラット35の場合は費用が実費で発生します。
融資の実行
ローン契約が無事に終われば、実際に売買代金の決済と物件の引き渡しをする日程を決めます。 その決済日までに融資の実行が行われ、借入額が口座へ入金されます。そこから売主へ支払いを行い、それと同時に物件の鍵などを受け取ります。 同日に、売主は、司法書士と共に不動産の所有権移転登記を行わなければなりません。その後、権利的にもあなたの所有物になります。
借り入れのポイント
不動産投資ローンを利用する場合は、一般の住宅ローンと違い、銀行は物件の収益性を重要視します。きちんと実質利回りを算出して、収益物件としてどれくらいの利益が見込めるのかを計画しなければなりません。
賃貸物件の運用は「賃貸事業」を行っているのと同じですので、綿密な事業計画書があればローンの審査にもかなり有効です。 家賃収入に対して経費がどれだけ掛かり、いくらの利益が出るのか、内容が具体的であるほど審査では評価されるでしょう。実際のキャッシュフロー(お金の流れ)を重視した損益計算書などがあると、より効果的ですね。
断られても諦めない
場合によっては、事前審査が通らないことがあります。銀行によって審査基準は異なりますので、1回だめでも、銀行を変えてみると事前審査が承認されることがあります。
1回審査に落ちた程度では諦めないことが大切ですね。
金利は交渉してみる
ローン申込みをする際には、金利について交渉してみると、効果が出ることがあります。 ただ、「金利を下げてほしい」と言うだけではなく、「〇〇%まで金利を下げてくれたら、実質の利益が〇〇円になるので、安定してローンを返済していける」などといった理由をつけて交渉してみるのが効果的です。
また、「他行にもローンの相談をしていて、そこは〇〇%の金利になっている」というふうに、他行同士を競わせるような交渉も良いでしょう。
少しでも金利が下がれば、そのぶん利益が大きくなるので、収益性が良くなり審査にも好影響となるはずです。
自分の有利な点を主張する
たとえば、不動産関連の国家資格を持っている、賃貸物件の経営をしたことがある、などといったご自身の長所など有利な部分を主張してみましょう。 とくに銀行は、きちんと安定した収入を得られるのか、ローンの返済は滞りなく行えるのか、といったことに注目します。 しっかりとご自身の特徴や有利な部分を主張することで、審査の承認をうまく引き出せるようになるでしょう。
まとめ
不動産投資で利用するローンは、住宅ローンとは異なるので、金利の優遇などにも差があります。賃貸物件の経営は、不動産事業とみなされる場合がほとんどですのでローンの審査基準も違ってきます。
物件を選ぶときは、「ローンの審査が通りやすい物件なのか」なども意識しておかなければなりません。 銀行が融資の審査をするときは、物件の収益性や、物件のエリア、収支バランスなどを重視します。賃貸事業の計画がしっかりしていれば、審査の承認もおりやすくなるでしょう。
金利については、変動と固定、どちらを選択するかで利益率も変わってきます。長期で賃貸運用することを考えると、固定金利のほうが安心感はありますね。しかし、変動金利に比べると、初回からの金利が少し高めですので、物件の実質利回りと比較検討してみるのが良いでしょう。
不動産投資ローンは、団体信用生命保険が利用できます。もし万が一のことがあっても、保険金によってローンの残債を弁済できるので、遺されたご家族が困ることはありません。
このように、堅実に賃貸経営の戦略を組み立てていくと、不動産投資は意外とハードルが低いことがわかってきます。むしろ、ローンを利用する銀行や金利タイプの選択によって高い収益性が見込めるようになるでしょう。 不動産投資は、情報をどれだけ得ているかによって成功率が大きく変わってきます。物件探しのコツや金融機関の選び方などを専門家に相談することで、有利な投資を行うことができるのです。 成功の知識を得るためにも、どんどん専門家に質問を投げかけてみましょう。