変動金利と固定金利のメリット・デメリットを4項目で徹底比較
By Oh!Ya編集部
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不動産投資を検討している人の中には、不動産投資ローンの重要性に気づく人は多いでしょう。そして、そのような人は変動金利と固定金利のどちらが良いのか?と疑問を持つ人もいると思います。
そこでこの記事では、変動金利・一定期間固定金利・全期間固定金利の3種類に分けて、それぞれの特徴を解説していきます。
この記事を読めば、それぞれのメリット・デメリットが分かり、自分に適した金利種類が分かるでしょう。
目次
それぞれの金利種類の概要
まず、変動金利と固定金利のメリット・デメリットを比較する前に、以下の金利種類による概要から解説していきます。
- 変動金利とは
- 一定期間固定金利とは
- 全期間固定金利とは
- 変動金利と固定金利のシェア
まずは、金利種類によってそもそも何が異なるのか?という点を把握しておきましょう。
変動金利とは
変動金利とは金利が変動するタイプのローンです。そもそも、ローン支払い額は「元本+利息(≒金利)」なので、金利が変わるということは返済額が変わるということになります。
一定期間固定金利とは
一定期間固定金利とは、3年固定・5年固定・10年固定などの商品のことです。
一定期間固定金利は、決められた期間は固定金利で、その後は変動金利に切り替えても良いですし、再度固定金利を組んでも良いです。
たとえば、「5年固定」を選択すれば5年間は金利が変わらず、5年を経過したときに変動金利に切り替えるか、再度5年固定や10年固定を組むかを選べるということです。
全期間固定金利とは
全期間固定金利とは、借入期間中ずっと金利が変わらないタイプです。全期間固定金利の代表格に、住宅支援機構が提供するフラット35があります。
しかし、フラット35は自宅やセカンドハウスにしか利用できないので、投資用物件の取得時には民間銀行が提供する全期間固定プランを利用することになります。
たとえば、借入期間を20年に設定して、「20年固定」のプランを選ぶということです。
変動金利と固定金利のシェア
さいごに、変動金利と固定金利のどちらを選択している人が多いか?という点について解説します。
住宅支援機構が出典する「2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果の資料によると、プランの選択率は以下の通りです。
- 変動金利:63.9%
- 10年固定:19.7%
- 全期間固定:5.6%
- 10年超の固定:3.9%
- 3年固定:3.6%
- 2年固定:1.9%
- 5年固定:1.1%
- その他:0.2%
このように、現在は低金利による影響で、変動金利の選択率が60%を超えているという結果です。また、固定金利を選ぶ人は、10年以上や全期間固定金利など長期間のプランを選ぶ人が多いです。
これらのデータは、金利種類を選ぶときの参考にしてみましょう。
金利種類によるメリット・デメリット一覧
さて、これより金利種類のメリット・デメリットを比較していきます。まずは、メリット・デメリットの一覧表を確認ください。
項目 | 変動金利 | 一定期間固定金利 | 全期間固定金利 |
---|---|---|---|
金利 | 低い | 中間 | 高い |
金利変動リスク | あり | 多少あり | なし |
返済額のルール | 1.25倍ルールある | プランによる | なし |
金利の根拠 | 短プラ | 長期国債 | 長期国債 |
上記項目について、以下より詳しく解説していきます。
比較1:金利
項目 | 変動金利 | 一定期間固定金利 | 全期間固定金利 |
---|---|---|---|
金利 | 低い | 中間 | 高い |
変動金利固定金利のメリット・デメリットに関する1つ目の比較は、以下金利についてです。
- 変動金利が最も低い
- 一定期間固定金利は次点
- 全期間固定金利が最も高い
- 金利による返済額の違い
変動金利が最も低い
基本的には変動金利が最も低い金利になります。というのも、変動金利は金利(返済額)が将来的に変わる可能性があるので、そのリスクが高い分、金利が低くなっているのです。
一定期間固定金利は次点
一定期間固定の金利は、変動金利と全期間固定金利の中間に位置します。また固定期間も3年・5年・10年など色々とありますが、基本的に期間が短いほど金利は低いです。
これは、前項で解説した「リスク」が関係してきます。つまり、固定期間が短い方が固定期間終了後の金利変動リスクが高いので、金利は低く設定されているというわけです。
全期間固定金利が最も高い
一方、全期間固定金利は最も金利が高いです。全期間固定金利は、借入中にいくら金利が上昇しても返済額は変わりません。
そのため、将来的に金利変動リスクが高いと思えば、少し金利高くても全期間固定型を選択するのもありでしょう。
金利による返済額の違い
前項までで、「変動金利<一定期間固定金利<全期間固定金利」になっていることが分かったと思います。次に、金利による返済額の違いをみていきましょう。
金利 | 総返済額 | 月々返済額 |
---|---|---|
1.5% | 35,994,148円 | 119,980円 |
2.0% | 38,146,723円 | 127,156円 |
2.5% | 40,375,309円 | 134,585円 |
3.0% | 42,678,858円 | 142,263円 |
上記は、借入金額3,000万円、借入期間25年でローンを組んだ場合の、金利による総返済額と月々返済額の違いです。
上記のように、金利が1%違うだけで、総返済額で約450万円、月々返済で約1.5万円の差になります。この金額差も加味して、金利プランは選ばなければいけません。
比較2:金利変動リスクの違い
項目 | 変動金利 | 一定期間固定金利 | 全期間固定金利 |
---|---|---|---|
金利変動リスク | あり | 多少あり | なし |
変動金利と固定金利のメリット・デメリットに関する2つ目の比較は、以下金利変動リスクについてです。
- 変動金利は半年ごとに金利を見直す
- 一定期間固定金利はプラン変更後に注意
全期間固定金利は金利変動リスクがないので、変動金利と一定期間固定金利の詳細をみていきましょう。
変動金利は半年ごとに金利を見直す
上述したように、変動金利は借入期間中も金利が変わります。金利を見直す頻度は半年ごとであり、それを5年ごとに反映させるという仕組みです。
つまり、借入者からすると「5年に1回のペースで借入額が変動するリスクがある」ということです。
一定期間固定金利はプラン変更後に注意
一定期間固定金利の場合は、プラン変更後に注意が必要です。たとえば、3年固定を組んでいた場合に、期間満了後に「3年固定→変動金利」「3年固定→10年固定」に変更したとします。
その場合には以下の点を知っておきましょう。
- その時点の金利が適用される
- 優遇金利は変わる可能性がある
その時点の金利が適用される
注意点は、3年経過した後の金利が適用されるということです。金利は1か月ごとに見直すので、3年経過後はいくらの金利になっているか分かりません。
たとえば、現在は2%で変動金利が組めたとしても、3年経過後は2.2%に上昇しているかもしれません。そのリスクがある点は認識しておきましょう。
優遇金利は変わる可能性がある
また、金融機関ごとに優遇金利を設定しています。優遇金利とは、金融機関ごとに「マイナスしてくれる金利」のことです。
前項と同様に、この優遇金利も見直されることがあるので、優遇幅が大きかった金融機関が縮小することもあるので注意しましょう。
比較3:返済額のルールの違い
項目 | 変動金利 | 一定期間固定金利 | 全期間固定金利 |
---|---|---|---|
返済額のルール | 1.25倍ルールある | プランによる | なし |
変動金利と固定金利のメリット・デメリットに関する3つ目の比較は、以下返済額のルールについてです。
- 変動金利は1.25倍ルールがある
- 一定期間固定金利の場合は適用外のケースもある
変動金利は1.25倍ルールがある
変動金利の1.25倍ルールに関しては、以下の点を知っておきましょう。
- 1.25倍ルールの概要
- 返済免除になるわけではない
1.25倍ルールの概要
1.25倍ルールとは、金利変動によって返済額が上昇しても、当初の1.25倍超にはならないということです。
たとえば、当初の返済額が1万円であり、金利変動によって5年後に返済額が1.35万円に上昇しても、1.25倍ルールが適用され1.25万円の支払いになるということです。
返済免除になるわけではない
ただし、この1.25倍ルールの目的は、急激な支払い額上昇により、借入者の負担が大きくなるのを防ぐことです。そのため、増額して支払わなかった分を免除するわけではありません。
つまり、前項の例でいうと、支払わなかった1万円(1.35万円-1.25万円)が免除になるわけではないということです。その1万円は、次の返済額見直し時に加味されるという仕組みになります。
仮に、借入期間中に金利が上昇しつづけ、毎回1.25倍の支払い額になったとしましょう。そうなると、借入期間中にその増額分が返済できないので、借入期間が延長する場合もあります。
一定期間固定金利の場合は適用外
一定期間固定金利の場合には、固定金利の期間満了後にほかのプランに切り替えますが、その際には1.25倍ルールは適用されません。
たとえば、5年固定金利が終了し、次に10年固定金利に切り替えたとします。その場合、仮に金利が大きく上昇してしまい、返済額が1.25倍超えになってもその返済額を支払う必要があるのです。
というのも、一定期間固定金利の期間満了は「借り換え」のような扱いになるので、別の金利商品を組むときと同じようなイメージになります。
つまり、そもそも「当初の支払い額」という考え方自体がないので、1.25倍ルールは適用されないということです。
比較4:金利の根拠が異なる
項目 | 変動金利 | 一定期間固定金利 | 全期間固定金利 |
---|---|---|---|
金利の根拠 | 短プラ | 長期国債 | 長期国債 |
変動金利と固定金利のメリット・デメリットに関する4つ目の比較は、以下金利の根拠についてです。
- 変動金利は短期プライムレート
- 固定金利は長期国債
金利の根拠が異なるということは、金利の変動要因が異なるということです。
変動金利は短期プライムレート
変動金利は短期プライムレートに連動します。短期プライムレートとは、銀行が優良企業に対して、1年未満の返済期間で貸し出すときの金利です。
たとえば、大手銀行同士でお金を短期で貸し借りすることがありますが、その際は「優良企業」と認定されるので短期プライムレートの金利が適用になります。
反対に長期プライムレートとは、1年以上の貸し出しの際に適用される金利です。
固定金利は長期国債
一方、固定金利は長期国債の金利に連動します。長期国債の金利は前項の長期プライムレートと概ね連動しますが、厳密には別物です。
長期国債は金融商品なので、需給バランスによって価額が変わります。
たとえば、長期国債のニーズが高まれば価額が上がり金利が下がる…その逆なら価額が下がり金利が上がるという逆相関の仕組みです。
細かい仕組みまでは覚える必要はありませんが、変動金利と固定金利でそもそも連動する基準が異なる点は認識しておきましょう。
金利が逆転することもある
前項のように、金利の算出根拠が異なるので、「変動金利<一定期間固定金利<全期間固定金利」という構図が逆転する場合もあります。
みずほ銀行の金利例
不動産投資ローンではなく住宅ローンですが、みずほ銀行の金利は以下の通りです。
金利種類 | 金利 |
---|---|
変動金利 | 0.625%~0.875% |
固定2年 | 0.65%~0.90% |
固定3年 | 0.65%~0.90% |
固定10年 | 0.75%~1.00% |
このように、変動金利0.875%、固定3年0.65%という状況もあり得ます。
金利が逆転する理由
現在はマイナス金利政策を実行しているので、金融機関が日本銀行の当座預金にお金を預けていると、どんどんお金が減ります。
そのため、「当座預金からお金を引き上げる→そのお金で国債を購入する→国債の価額は上がり金利が下がる」という流れになっているのです。
もちろん、変動金利の短期プライムレートもマイナス金利政策の影響で金利は下がっていますが、それよりも国債価額の上昇(金利の低下)が上回れば、固定金利の方が低くなることもあるのです。
金利の根拠を詳しく理解しなくても良いですが、根拠の算定基準が異なるので金利が逆転する可能性がある点などは知っておきましょう。
どの金利種類が良いか?
では、さいごにどの金利種類が良いか?という点を解説していきます。金利種類を決める上では、以下の点が判断基準となるでしょう。
- 金利動向について
- 借入期間について
- 繰り上げ返済
金利動向について
金利動向に関しての判断基準は以下の通りです。
- 変動しないだろう:変動金利
- 非常に不安である:固定金利
今後も大きく変動しないと思うのでれば、変動金利を選択すると良いでしょう。変動するかは分からないものの金利変動が不安であれば固定金利を重視すべきです。
仮に、全期間固定金利は高いな…と思えば、10年固定金利などを選択すると良いでしょう。もちろん、期間満了後に金利変動があるかもしれませんが、少なくとも10年間は安心です。
借入期間について
また、金利と合わせて考えなければいけないのが、借入期間になります。というのも、借入期間が長いほど金利変動リスクが高いからです。
たとえば、借入期間35年で変動金利を組めば、35年という長い期間ずっと金利変動リスクがあるということです。
一方、借入期間が15年であれば、35年に比べると借入期間が短いので、変動金利を組んでも金利変動リスクは小さいといえます。
つまり、借入期間が短くても月々返済額的に問題ないのでれば、変動金利を選択しても金利変動リスクは小さいということです。このように、金利と借入期間はセットで考えましょう。
繰り上げ返済
また、繰り上げ返済で金利種類を選ぶときは以下のようなイメージです。
- 積極的に行うつもり:変動金利か一定期間固定金利
- 行うつもりはない:全期間固定金利
たとえば、ボーナスが安定していてボーナスの半分は繰り上げ返済する…などであれば、変動金利や一定期間固定金利でもリスクは小さいでしょう。
というのも、金利が上昇局面になれば繰り上げ返済をして借入期間を短縮できるからです。
一方、繰り上げ返済を行う予定がなければ、返済期間は借入当初に組んだまま変わりません。その場合は、金利変動リスクのない全期間固定金利の方が向いているといえます。
まとめ
このように、変動金利と一定期間固定金利は、金利・金利変動リスク・返済額ルール・金利の根拠において違いがあります。もちろん、どの金利種類が良いか一概にはいえません。
重要なのは、上述したそれぞれの特徴を理解し、自分に合った金利種類を選択することです。特徴を踏まえた上で、今後の金利上昇リスクなどを加味して金利種類を選びましょう。