不動産投資に失敗して破産したらどうなる?5つの原因と回避法を解説
By Oh!Ya編集部
3,113view
不動産投資は借金(ローン)するから怖い…こんな声を聞くことがあります。確かに、不動産は一千万円単位の商品なので、ローンを組んで取得するのを怖いと思う人もいるでしょう。
しかし、その「怖さ」は万が一破産したときにどうなるのか?破産しないためにはどうすれば良いか?を知らないからこそ感じるものです。そこで今回は、不動産投資で失敗して破産するとはどのようなことか?そして、破産しないために何を知っておくべきか?を解説します。
今回のテーマは、「破産」というネガティブな内容にはなりますが、不動産投資をするリスクになるので知っておくべきことです。
不動産投資で破産する原因を知る
不動産投資に失敗して破産するリスクに関して1つ目に知っておくべきことは、不動産投資で破産する原因を知ることです。不動産投資での破産原因は色々とありますが、多い原因としては以下です。
- 物件を高額で購入した
- 資金がショートした
- 税金が割高になった
- キャッシュフローがまわらない
- 不可抗力によるもの
物件を高額で購入した
最も多い理由が物件を高額で購入した…いわゆる「高値づかみ」してしまったケースです。物件を高値づかみしてしまうと、次項以降で解説する「資金ショート」や「キャッシュフローがまわらない」などの原因になりやすいです。
不動産投資の収益を計算する指標である表面利回りは、「年間家賃収入÷物件価格」で計算されます。仮に、利回り10%であれば、物件価格を10年間(100%÷10%)で回収できるという計算です。物件価格が高いほどこの利回りが落ちてしまい、赤字に転落してしまうリスクが大きくなります。
物件の高値づかみしないための対策は、とにかく不動産投資に関する知見を養い、信頼のおけるパートナーを探すことです。そのためには、書籍やネットの情報に加え、不動産会社が開催するセミナーや個別相談会へ参加することをおすすめします。
資金がショートした
「資金がショートした」とは、ローン返済などを含む不動産運営に関わるお金を支払えない状態になることです。ローン返済や家の補修費用など、不動産運営にまつわる支出が想定より多い場合、もしくは想定した収入を下回った場合に資金はショートします。
資金計画を精査する
対策としては、単純に資金計画を精査することです。後述しますが、中長期でキャッシュフローをきちんと計算した上で、今後自分の収入がどうなっていくかも考えなくてはいけません。また、結婚・出産・転職などライフイベントごとにかかるお金も計算し、収入面もきちんと想定する必要があります。
これらの資金計画は、将来的な収支計算も加わるので自力では難しいです。そのため、FPに相談し、将来的な支出を加味した上で計画を練った方が良いでしょう。ネットで検索すれば、無料相談を実施しているFPもいるので、物件を購入する前に一度精査することをおすすめします。
「ローン承認=返済可能額」ではない
資金ショートする原因の1つとして、ローンに承認されたことで返済可能だと思ってしまうことが挙げられます。金融機関はローン審査の際に以下の要素を審査します。
- 借入者の年収や年齢
- 勤務先の規模や雇用形態・勤続年数
- ほかの借入があるかどうか
- 過去の延滞歴
- 物件の担保価値や収益性
確かに、金融機関の審査に通るということは、「返済能力が認められた」ということです。ただ、上記のように物件の収益性なども加味されていますし、今後のライフイベントによる収支は当然ながら加味していません。
そのため、ローン審査に通ったからといって「返済可能」と勘違いせず、客観的に将来に渡って返済できるか?を考える必要があります。
税金が割高になった
次に、税金が割高になったという原因もあります。その点は以下を理解しておきましょう。
- 不動産所得税は総合課税
- 減価償却費用は終わる
不動産所得税は総合課税
不動産投資の家賃収入の計算式は以下になります。
- 不動産所得=年間家賃収入-経費-減価償却費用
経費とは、管理費や修繕積立金、固定資産税などのことです。減価償却費用は後述しますが、上記で計算された税金はほかの税金と合算されます。たとえば、給与収入が700万円で、不動産所得が300万円あれば、1,000万円の所得として税金がかかってきます。
また、所得が1,000万円になることで、所得税以外の住民税や社会保険料も上がるので、年収が上がることで税金関係の支出は一気に上がります
減価償却費用は終わる
減価償却費用とは、物件取得額を何年かに渡って経費計上できる費用です。減価償却費用は、物件の構造や取得金額によって異なりますが、物件によっては年間で数十万円以上も経費計上できる場合もあります。
しかし、減価償却費用の計上期間は永遠ではなく、築年数と耐用年数によって計上できる期間が決まっています。そのため、計上できる期間が終われば減価償却費用を経費計上できず、前項の不動産所得額が跳ね上がるリスクがあるのです。
その影響で税金や社会保険料が高くなり資金ショートになることもあります。対策としては、減価償却費用を前もって計算しておき、それを加味した資金計画を練ることです。
この点は不動産会社の担当者と相談しながら理解すれば良いですが、とにかく減価償却費用という経費が重要な点は頭に入れておきましょう。
キャッシュフローがまわらない
次に、キャッシュフローがまわらない…つまり黒字倒産の状態になるときです。黒字倒産は不動産投資以外に「企業」でも起こり得る話であり、「収支は黒字になっているが、収入と支出のタイミング的に破産してしまう」という状態です。
キャッシュフロー表を作る
キャッシュフローが回らないという状態は、以下のキャッシュフロー表を見てもらえれば分かりやすいです。これは年間400万円、家賃が年間1.5%下落、空室が年間0.5か月出るという想定でアパート経営した場合のキャッシュフロー表になります。
年数 | CF | 家賃収入 | 臨時収入 | ローン支払い | 経費 | 特別経費 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1年目 | 94 | 384 | - | 150 | 100 | 40 | 不動産取得税 |
2年目 | 128 | 378 | - | 150 | 100 | - | - |
3年目 | 72 | 372 | 30 | 150 | 100 | 50 | 退去時の補修費 |
4年目 | 117 | 367 | - | 150 | 100 | - | - |
5年目 | 111 | 361 | - | 150 | 100 | 80 | 共用部の補修費 |
6年目 | 55 | 355 | 30 | 150 | 100 | 50 | 退去時の補修費 |
7年目 | 99 | 349 | - | 150 | 100 | - | - |
8年目 | 94 | 344 | - | 150 | 100 | - | - |
9年目 | 38 | 338 | 30 | 150 | 100 | 50 | 退去時の補修費 |
10年目 | -128 | 332 | - | 150 | 100 | 210 | リフォーム&共用部の補修 |
11年目 | 76 | 326 | - | 150 | 100 | - | - |
12年目 | 21 | 321 | 30 | 150 | 100 | 50 | 退去時の補修費 |
13年目 | 65 | 315 | - | 150 | 100 | - | - |
14年目 | 59 | 309 | - | 150 | 100 | - | - |
15年目 | -107 | 303 | 30 | 150 | 100 | 160 | 退去時の補修費&共用部の補修 |
CF(キャッシュフロー)とは「手元に残るお金」のことです。臨時収入とは更新料などのことであり、特別経費とは備考欄のことです。要は、年次ごとに収支をきちんと計算し、中長期スパンでお金の流れをシミュレーションするのがキャッシュフロー表です。
黒字倒産するとは?
たとえば、前項のキャッシュフローの10年目を見てみましょう。この年は、リフォームや共用部の補修があり、310万円もの経費がかかっています。そして、収支は128万円のマイナスです。
しかし、このとき退去立ち合いの補修費用が予想以上にかかり、空室率も予想よりも高く収支が300万円のマイナスになってしまったとします。つまり、想定よりも172万円足りないです。仮に、この状態で預貯金が172万円なければ、キャッシュフローはまわならくなり破産に追い込まれる可能性もあります。
もっというと、上述した税金が増額したり、社会保険が増額したりすることで予期せぬ支出リスクはたくさんあります。この物件は、キャッシュフロー表通りにいけば9年間で809万円のキャッシュフローを生み出している、黒字の優良物件です。
しかし、このように収支バランスやお金を支払うタイミングによっては黒字倒産になるリスクはあります。
不可抗力によるもの
ほかには、リスクとしては小さいですが、以下のように不可抗力によって物件が毀損するときです。
- 震災
- 大雨による浸水など
- 火災
不動産は現物資産になるので、天災を含む上記のような災害で毀損することがあります。毀損の程度によっては住める状態でなくなることもあり、その場合はローンだけが残ってしまうかもしれません。
対策としては、自治体のハザードマップで物件を購入しようとするエリアの災害リスクを調べることです。そして、火災保険や地震保険のプランを検討し、費用対効果を考えながら適切な保険に加入することが重要になります。
ローンを滞納した場合にどうなるかを知る
不動産投資に失敗して破産するリスクに関して2つ目に知っておくべきことは、前項のように収支やキャッシュフローが悪化してしまい、ローンを滞納した場合にどうなるのか?という点です。
結論からいうと、ローンを滞納し続けると競売になってしまいますので、競売になる前に任意売却をしないと非常に大きなデメリットがあります。
ローン返済滞納から競売までの流れ
ローン返済を滞納してから競売になるまでの流れは以下の通りです。
- 滞納から1~3か月:督促状などが届く
- 滞納から3~6か月:代位弁済がはじまる
- 滞納から6~8か月:競売が開始される
上記の流れを解説した後に、任意売却の解説や競売のデメリットについて解説していきます。
滞納から1~3か月:督促状などが届く
ローンの支払いを滞納すると、すぐに金融機関から催促の電話や書面での通知がきます。滞納から1か月ほどであれば取り立てもそこまで厳しくありませんが、2~3か月経過すると督促状が届きます。
滞納から3~6か月:代位弁済がはじまる
その状態でもまだ返済しないと、金融機関から保証会社に債権者が変わり(代位弁済)、「期限の利益の喪失通知」という重要な書面が届きます。この書面は、「今まではローンとして月々返済だったが一括返済してください」という内容です。
当然ながら、ローンを返済できない状態なので一括返済はできないでしょう。そのため、このタイミングで「任意売却」の手続きを取らないと競売へと移行してしまうので、ローン滞納から3~6か月が競売を避けるタイムリミットと思ってください。
滞納から6~8か月:競売が開始される
それでも、ローンの返済もせず、かつ任意売却などの対応もしないと、裁判所から競売開始決定通知書が届きます。この通知書によって、自分の所有している物件は強制的に競売にかけられることになります。
競売になるリスクは非常に大きい
上述したように、競売になるのだけは避けなくてはいけなくて、その理由は以下のリスクがあるからです。
- 信用情報に記録される
- 売却価格は相場価格以下になる
信用情報に記録される
まず、競売にかかるということは、金融機関から借り入れしているローンを返済できなくなったということです。つまり、金融機関と結んだ金銭消費貸借契約を反故しているということになり、この記録は信用情報に残ります。
この信用情報は、クレジットカードをつくるときやローンを組むとき、ほかにも賃貸物件を借りるときに保証会社が照会する情報です。そのため、競売になってからはクレジットカードをつくったり、ローンを組んだり、賃貸物件を契約したりするのは難しくなります。
売却価格は相場価格以下になる
そして、競売になる最大のデメリットは、競売だと相場価格以下でしか売れません。というのも、買い手側も購入時に内覧ができず、競売物件という問題物件を購入するのでリスクがあるからです。そのため、物件によっては相場価格の半値以下になってしまうこともあります。
しかし、競売の売却益はローン返済に充てなければいけません。相場価格以下での売却になるということは、ローンを完済できるケースは少なく、競売で物件を失った後も多額の借金が残ってしまうリスクがあります。
この2点の理由によって、自分が所有している物件が競売にかけられるのだけは阻止しなければいけません。
任意売却の仕組みを知る
競売を阻止するためには、任意売却手続きを早めに取ることが重要です。あまり聞きなれない売却方法だと思いますが、任意売却について以下を理解しておきましょう。
- 任意売却の仕組み
- 任意売却のメリット・デメリット
任意売却の仕組み
本来、不動産を売却するときはローンを完済していることが条件です。なぜなら、金融機関は融資する代わりに抵当権(担保)を設定しているので、その抵当権を抹消するために完済する必要があるからです。
しかし、任意売却は「ローンは完済できないけど、特別に抵当権を抹消してください」と金融機関に依頼し、ローンが残っている状態でも不動産を売却することを可能にします。とはいえ、完済し切れなかった分は借金として残りますし、金融機関も簡単にOKはしません。
そのため、実際には任意売却の経験が豊富な不動産コンサルティング会社などに相談し、一緒に任意売却手続きをするという流れになります。
任意売却のメリット・デメリット
任意売却のメリットは、何といっても相場通りに売却できる可能性が高まるという点です。任意売却自体は通常の売却と変わりはないので、相場価格通りに売れる可能性は高いです。そうなれば、競売よりも残る借金は遥かに低くなるため、任意売却の方がメリットは大きくなります。
一方、任意売却も金融機関に了承済みとはいえ、金銭消費貸借契約を反故していることには変わりありません。そのため、信用情報には記載されることは認識しておきましょう。
不動産投資で自己破産を回避する方法を知る
不動産投資に失敗して破産するリスクに関して3つ目に知っておくべきことは、不動産投資で自己破産を回避する方法である以下を知ることです。
- 経費項目を理解する
- 返済後利回りを計算する
- ローンの借り換えを常に検討する
前項まででも、自己破産を回避する方法を解説してきましたので、その回避方法と合わせて上記を確認ください。
経費項目を理解する
まずは、不動産投資には以下の経費がかかる点を認識しておきましょう。
- 管理費や修繕積立金(区分マンション投資の場合)
- 建物自体の修繕費用(一棟所有の場合)
- 退去時の補修費用
- 管理会社へ支払う手数料
- 固定資産税・都市計画税
経費項目を理解するということは、上述したキャッシュフロー表の支出を理解するということです。将来に渡り上記の経費が、いつ・どのくらい発生するかを知ることで、収支バランスが崩れるのを防ぎます。
返済後利回りを計算する
次に、物件の収益性を測る際に活用される「利回り」の中で、「返済後利回り」を知ることです。一般的に表面利回りと実質利回りは知られていますが、実は返済後利回りが最も重要であり、返済後利回りを知ることで高値づかみ・資金ショートするリスクは小さくなります。
表面利回りと実質利回りを知る
表面利回りと実質利回りは以下の計算式です。
- 表面利回り:年間家賃収入÷物件価格
- 実質利回り:(年間家賃収入-経費)÷物件価格
実質利回りの方が現実的ですが、経費は物件ごとに変わってきますし、投資家によっても異なります。そのため、広告に載っている利回りは表面利回りであり、表面利回りで物件を選別した後に、実質利回りで物件を精査するイメージです。
返済後利回りを知る
返済後利回りは以下の計算式になります。
- 返済後利回り=(年間家賃収入-経費-ローン返済額)÷物件価格
このように、返済後利回りはローン返済額を加味しています。そもそも実質利回りでローン返済額を加味しない理由は、借入額も金利も借入者によって異なるので、経費以上に人によって金額が異なるからです。しかし、ローン返済額は大きな支出なので、これを加味しないと正確な利回りになりません。
そのため、実質利回りで物件を精査した後は、必ず返済後利回りも出しましょう。返済後利回りは2.5%~3%程度は欲しいといわれており、そのためには表面利回りで10%程度、実質利回りで5~8%程度は欲しいところです。
ローンの借り換えを常に検討する
さいごの対策はローンの借り換えを常に検討しておくことです。「不動産投資ローン 金利」で検索してもらえると分かりますが、どの金融機関も金利を明示していません。というのも、不動産投資ローンの場合、借入者のプロフィールによって金利は全く異なるからです。
優良な借入者であれば1%台で借りれることもありますが、一般的には2%台後半から3%程度でしょう。しかし、不動産投資をして実績を積むことによって低金利で借入できることもあるので、常にローンの借り換えは検討しておくべきです。
ローンの支払い額が減額されれば、その減額された分収支は改善します。そのため、収支悪化を未然に防ぐことができ、それが自己破産の防止につながっていきます。
まとめ
このように、不動産投資に失敗して破産するとは、収支バランスが崩れて支払いができなくなる状態です。その対策として色々と挙げましたが、まずは正確な資金計画やキャッシュフロー表の作成をして、不動産投資の「お金」に関して精査することが重要になります。
また、万が一破産しそうになっても、最悪の「競売」というケースを避ける方法を知っておくことで、破産に対する怖さは和らぐでしょう。いずれにしろ、優良な不動産会社というパートナーを見つけ、色々と相談しながら不動産投資を進めていきましょう。