REITと現物不動産投資との違いは?勘違いしやすい5つのポイント
By Oh!Ya編集部
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不動産投資について調べていくうちに、REITという投資商品に行き着く人も多いのではないでしょうか?
一般に不動産投資は現物の不動産を保有するものを指し、REITと現物不動産投資は根本的な違いがあります。
今回は、知識ゼロの方も分かるようにREITの仕組みについて解説し、その後で現物不動産投資との比較を解説していきます。
この記事を読めば、REITとはどのような投資か、現物不動産投資とはどのような点が異なるのか、について理解できると思います。
REITの基礎知識
REITとは不動産を証券化した金融商品のことであり、株と同じく証券会社で売買することができます。REITの基礎知識として以下の点を理解しておきましょう。
- REITの仕組みとは?
- REITで得る利益とは?
- 現物不動産投資とは何が違う?
- 株式投資とは何が違う?
REITの仕組みとは?
REITと投資家との関係は以下の流れを理解すると分かりやすいです。
・REITの運営会社が投資法人をつくる
・投資法人が投資家から資金を募る
・投資家から募った資金と借入で物件を購入
・その物件を運用会社に委託
・その物件で得た家賃収入を投資家へ還元する
最大の特徴は、投資家から資金を募るときに、証券(REIT)を発行して証券会社に上場させることです。投資家はその証券を購入することで、資金を投資法人に出資(投資)したような扱いになります。イメージとしては株券を購入して、その企業に出資するようなものです。
REITを取得することで間接的に不動産を所得していることになり、個人で高額な不動産を購入できない投資家が好んで取得します。
REITで得る利益とは?
REITを取得することで投資家が得る利益は以下です。
- 分配金
- REITの売買益
分配金
分配金とは株でいう配当金にあたります。投資法人が取得した物件の家賃収入を、投資家へ分配金として還元します。
当然投資法人や運用会社の利益は差し引かれますが、物件運営が上手くいけば投資家への分配金も上がります。逆に、上手くいかなければ、分配金も低くなります。
REITの売買益
REITは株式と同じで上場しているので、REITの価格は需給バランスで変わります。そして、REITは株式と同じように証券会社を通じて売買できるので、その売買益も投資家の利益となります。ただ、REITの価格が下がれば当然損失になってしまう点は覚えておきましょう。
現物不動産投資との違い
現物不動産とREITの大きな違いは、直接物件を所有するかどうかの違いです。現物不動産の場合、自分で物件を探し、自ら融資を受けて購入します。そして、その物件に客付けをして、賃料収入を得るという流れです。
一方、REITはたくさんの投資家がお金を出し合い、そのお金を利用して物件の選定や運用をします。そして、それらは全て投資法人に一任するという仕組みです。
そのため、直接物件の所有権があるわけではなく、間接的に物件の収益を受け取るという点が、REITと現物不動産投資の一番の違いでしょう。
株式投資との違い
株式投資とREITは証券という点では似ていますが、投資対象が異なります。株式投資の場合は、その株券を発行している株式会社に投資しますが、REITの場合は投資法人が取得する物件に投資します。
もちろん、その運用元である投資法人の業績などもチェックしますが、それと同じくらい「どんな物件に投資するのか」も重要です。要は、企業に投資するのが株式投資で、そこに「不動産」の要素も加えたのがREITということです。
REITのメリット
REITのメリットは以下の点です。
- 流動性が高い
- 比較的利回りが高い
- 売却益も期待できる
- 自然と分散投資をしている
- 運用をプロに任せられる
- 初期費用が安い
流動性が高い
流動性とは「商品の売りやすさ」のことで、REITでいう流動性は証券の売りやすさを指します。REITは証券なので証券会社を通じて売買可能です。 一方、現物不動産は証券ではなく高額な商品になるので、本来であれば流動性は低いです。
不動産を間接的に保有しているにも関わらず、流動性が高いという点はREITの大きなメリットといえるでしょう。流動性が高いと資産の組み替えもできますし、現金が突然必要になったときも対応できるというメリットにつながります。
比較的利回りが高い
REITは比較的利回りの高い投資商品です。株式やREITなどの証券における利回りは、「分配金(配当金)÷投下金額」で計算される数値になります。不動産証券化協会の資料※によると、代表的な投資商品の金利は以下の通りです。
- REITの利回り:4%前後
- 東証一部の株式投資の利回り:2%前後
- 長期金利の利回り: 0%前後
仮に、REITを1,000万円所有しており、利回りが4%ということは年間で40万円の分配金がもらえるということです。REITの収入源は家賃収入なので、比較的安定して高い利回りを得られる利点があります。
売却益も期待できる
上述したようにREITは流動性が高く、REITの価額が上がっている状態で売却すれば売却益を得られます。一方、現物不動産投資の基本的な収益は家賃収入であり、売却益ではありません。
なぜREITは売却益を得やすく、現物不動産は得にくいかというと、流動性以外にも諸費用の問題があるからです。REITは証券会社を通じて売買するので、ネット証券などであれば手数料は安価です。数百万円のREITを売買したときでも、せいぜい千円単位の手数料でしょう。
一方、現物不動産は仲介手数料をはじめとする諸費用が高額になり、百万円を超えるケースも少なくありません。このように、REITが売却益も期待できる背景として、売買時の諸費用の安さも大きな理由として挙げられるのです。
自然と分散投資をしている
REITを取得していると、自然と分散投資しているというメリットもあります。というのも、投資法人は複数の物件を取得するからです。仮に、1つの物件であれば災害リスクや空室リスクなどは分散できませんが、REITの場合は複数物件を所有しているので、自然にリスク分散できているのです。
運用をプロに任せられる
REITの場合は、物件取得も客付けも、賃料設定も何もかもを投資法人というプロに任せることができます。この点は、投資家の手間がかからないというメリットですが、同時にプロに任せることで運営が成功する確率は上がる点もメリットとなります。
初期費用が安い
最後に挙げるREITのメリットは、初期費用が安いという点です。初期費用とは投資商品を取得するための費用のことであり、REITの初期費用は非常に安価です。REITは1口○○万円という単位で売買されており、銘柄の中には数万円から取得できるREITもあります。
また、上述したように売買手数料も安価なため、取得時の費用もほとんどかかりません。この「初期費用が安い」という点は、投資をはじめるハードルに直結するので、その意味ではREITは初心者でもはじめやすい投資といえるでしょう。
REITのデメリット
一方、REITのデメリットは以下の点です。
- 実物の不動産を所有できない
- 色々な場面で手数料を取られている
- 上場廃止リスク
- 運用会社の倒産リスク
実物の不動産を所有できない
やはり、実物の不動産を所有できないというのは大きなデメリットといえます。実物の不動産を所有していれば相続税評価額が下がるので相続税対策にもなりますし、自分の判断でリフォームしたり、賃料を変えたりできます。
REITは、全てをプロに任せられるというメリットはありますが、逆にいうと自分では何もできないのです。
色々な場面で手数料を取られている
こちらもメリットと裏腹な部分ですが、プロに任せている分、様々なところで手数料が発生しています。投資法人に物件取得や運用会社の選定を任せていますが、当然投資法人は自社の利益をもらいます。その利益は投資家にとっては支出となるので、現物不動産よりは利回りは低くなりがちなのです。
上場廃止リスク
REITは証券として上場しているので、上場している市場の上場規定をクリアしています。しかし、株券と同じようにその上場規定に抵触してしまうと、上場廃止となるリスクがあるのです。
上場廃止の規定に抵触すればREIT価額は暴落するでしょうし、仮に上場廃止になれば証券は紙くず同然となるリスクもあります。
運用会社の倒産リスク
投資法人も「法人」なので倒産するリスクはあります。物件の運営に失敗し、赤字を計上し続ける状況になれば、倒産するリスクは十分にあるのです。ただ、投資法人が倒産しても不動産がなくなるわけではないので、不動産は恐らく別の会社に引き継がれることになるでしょう。
しかし、投資法人が倒産に追い込まれれば、そのREITを手放す人は増えると予想されます。そうなると、REIT価額の下落につながります。
REIT VS 現物不動産
ここまででREITの概要、およびメリット・デメリットが理解できたと思います。そして、それらを解説する過程で現物不動産とREITの違いにも少し触れてきました。それらを今一度以下にまとめます。
項目 | REIT | 現物不動産 |
---|---|---|
収益性 | △ | △~◎ |
初期費用 | ◎ | △ |
流動性 | ◎ | △ |
手間 | ○ | △ |
節税効果 | × | ◎ |
このように、収益性・初期費用・流動性・手間・節税効果の観点からは上記の違いがあります。
資産をつくるなら現物不動産投資
資産をつくりたいなら現物不動産投資が良いでしょう。なぜなら、収益性は現物不動産投資の方が高くなりやすいからです。上述したように「REITは利回りが高い」のは事実ですが、それは株式投資や長期金利と比較したときの話です。
REITの利回りは4%でしたが、現物不動産投資が仮に4%の利回りであれば、利回りは低い物件になります。エリアによっても大きく異なるので一概にはいえませんが、不動産投資の利回りは低くても5%前後、高ければ10%以上の物件もあります。
そのため、資産を作りたいのであれば現物不動産投資をすべきでしょう。
レバレッジ効果の強さ
資産をつくるなら現物不動産投資であるもう1つの理由は、現物不動産投資はレバレッジ効果が高いからです。銀行から融資を受けることで、自分の自己資金の10倍くらいの資産を手に入れることも珍しくありません。
一方REITは、信用取引を利用してせいぜい3倍程度のレバレッジ効果でしょう。また、信用取引の場合は分配金に調整値が入るので、満額もらえるわけではありません。
そのため、仮に同じ利回りであっても、得られる収益額はレバレッジ効果の高い現物不動産投資の方が圧倒的に高いです。
REITはポートフォリオの一部
REITはポートフォリオの一部として考えると良いでしょう。ポートフォリオとは、投資商品の保有比率のことです。要は、全資産のうち○○%は現物不動産で、○○%はREITで、○○%は株式で…という内訳のことになります。
REITは資産を増やすというよりは、貯金に回しておくくらいなら投資したいという人に向いています。つまり、大きく資産を増やさなくても良いけれど、貯金として眠らせておくくらいなら投資に回したいという人です。
しかし、それほど資産が増えるわけではないので、あくまでポートフォリオの一部と考えましょう。
REITの購入方法と種類について
最後にREITの購入方法とREITの種類について簡単に解説します。
REITの購入方法とは?
REITを購入する方法は以下の流れです。
- 証券会社に口座を開く
- 証券会社に入金する
- REIT銘柄を選ぶ
- 買い注文を入れる
- 価格が合えば売買成立
証券会社の口座開設は、ネット上だけで完結できます。スムーズにいけば1週間程度で口座開設は完了です。また、口座を開設するための費用は特にありません。
そして、証券会社の口座に入金し、そのお金でREITの買い注文を入れるという流れです。このように、REITの売買自体は非常に簡単にできます。
REITには種類がある
REITには以下のように色々な種類があります。
- 総合型
- 複合型
- 商業施設主体型
- 事務所主体型
- 物流施設主体型
- 住居主体型
- ホテル主体型
- ヘルスケア主体型
要は、どの分野の不動産を取得するのか、という話です。商業施設主体型であれば、商業施設を保有し、そのテナント収入が収益になります。ホテル主体型であれば、そのホテルから得る宿泊費用が収益です。つまり、REITによって、どの種類の不動産を取得するのかの特徴があります。
仮に、インバウンド需要が伸びそうであればホテル主体型に投資したり、比較的安定している住居主体型に投資したりと、種類を理解することで自分の好みに合わせてREITを取得できるのです。
まとめ
このように、REITと現物不動産投資は根本的に異なると考えられます。だからこそ、メリット・デメリットが異なり、投資スタンスによってどちらを取得した方が良いかは異なります。
資産をつくりたいのであれば現物不動産投資でないと難しいです。逆に、リスクをあまり取らずに、小さい収益でも良いという人はREITの方が向いているでしょう。