太陽光発電投資で失敗する理由とは?実際の失敗談から徹底分析!
By Oh!Ya編集部
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太陽光発電投資は、太陽光発電所を構えて電力会社に電気を売る「売電事業」の1つ。太陽光発電は数ある再生可能エネルギーのなかでも、特に次世代の主力電力として期待されており、普及のための制度により収益性が優れていることから支持されています。
しかし、太陽光発電投資の失敗事例は後を絶たず、大損をする投資家も多いです。
今回は、なぜ太陽光発電投資で失敗してしまうのか、その理由を5つに分類してご説明します。
【理由は5つ】なぜ太陽光発電投資に失敗してしまうの?
太陽光発電投資に失敗してしまうケースには、いくつかのパターンがあります。こうしたパターンのなかにある共通点を把握することで、どういった投資家が失敗していたのか具体的にイメージできるはずです。
この項では、失敗事例の理由をひも解いて、理由を5つピックアップしていきます。
理由1:太陽光発電の業界に悪徳業者が一定数いるため
徐々に業界内の健全化は進んでいるものの、太陽光発電投資は歴史が浅いため「素人を食いものにする悪徳業者」がいまだ一定数います。投資家の実力不足、リサーチ不足といった要因ではなく、このように理不尽な理由で大損をするケースも実は多いのです。
具体的にどのような手口で悪徳業者に陥れられるのか、実際に起こった事例をいくつか取り上げました。
魅力的な条件の権利売買を持ちかけたまま工事未着工
産経新聞で取り上げられた「工事が中断…手付金を払えど施設はできず 完成物件も問題続々」の記事では、手付金を支払ったにもかかわらず工事を進めないという、悪質なケースが記載されています。
太陽光発電投資は、FIT(固定価格買取制度)という制度により売電単価が一定になるため、安定収入を生むとして期待されてきました。記事内に登場する悪徳業者は、FIT制度初期に取得した「売電単価の高い案件」の販売をウリにしており、これに申し込んだ投資家がいたようです。
しかし、投資家から金銭を受け取ったものの、地主の了解を得ていなかったために工事を始められず、そのまま事業が進行しないままとなっていました。同社は、ほかにも複数件トラブルを起こしています。
実体のない所有権を分割売買する集団詐欺
消費者庁が公表したニュースリリース「設備認定を受けただけで実体のない太陽光発電所の所有権を分割販売する「株式会社アイコン」に関する注意喚起」では、ニュースタイトルにあるように、株式会社アイコンが実体のない所有権を販売していました。
株式会社アイコンは、太陽光発電所に投資をするという、同社の事業内容を伝えるパンフレット・申込書を配布。投資家宅には、これら資料の到着直後に別の会社から電話があり、内容は株式会社アイコンが販売する「太陽光発電所の所有権」の購入を勧めるものでした。
しかし、のちに消費者庁が調査を進めたところ、一連の取引は「存在しない太陽光発電所」の所有権を扱っていたと発覚したのです。ニュース内に登場する投資家は、最終的に返金してもらってはいるものの、一歩間違えれば大きな被害に繋がっていたと予想されます。
理由2:自然災害により損壊・破損するケースが多い
太陽光発電所は、台風や土砂崩れなどの自然災害により、損壊・破損するケースがあります。特に平成最後の年となった2018年は、1年を通して各所で自然災害が起こりました。
その被害件数は50件超にものぼり、これから太陽光発電投資に参入する投資家たちは、いやでも自然災害を意識せざるを得ない状況となっています。
2018年の被災事例は50件超
経済産業省が2018年11月に公表した「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について」によれば、同年に発生した以下の自然災害による太陽光発電所の被害は、合計54件でした。
- 2018年7月の豪雨
- 台風21号
- 台風24号
- 北海道地震
このうち最も被害数が多かったのは、台風21号による強風でした。強い風により太陽光パネルが飛散してしまったのです。
また、下記画像のように、太陽光パネルそのものは引き剥がされなかったものの、強風により砂利が飛散してパネル全面を破損させた事例もあります。
出所:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について」
このほか、強風についで豪雨による土砂崩れも多く発生しており、太陽光発電所を建設する際には周辺環境・地盤に問題ないか意識されるようになっています。
理由3:メンテナンスフリーだと勘違いしてしまった
「メンテナンスフリー」と謳って、太陽光発電投資を勧める広告は多々あります。
確かに、太陽光パネル自体は数十年にわたり機能し続けますし、太陽光さえあれば自動的に収入を得られます。しかし、これは長期的な運用を可能にする要素ではあるものの、メンテナンスを一切しなくて良いという理由には繋がりません。
メンテナンスフリーという言葉を真に受けて、何も手を加えないまま太陽光発電投資を行えば、いくつもの問題が発生します。放置し続ければ、太陽光発電投資を継続できない状況となるため注意してください。
周囲の草木を放置すれば発電量は低下する
メンテナンス業務を怠ったとき、最初に問題となる可能性があるのは「周囲の草木が作る影」です。草木が影を作れば発電量は著しく下がり、結果として売電収入が低下するため、草木への対処は必須なのです。
太陽光発電所を建設するとき、同時に土地自体をコンクリートで覆ってしまうケースもありますが、これは多大な費用を要するため一般的ではありません。実際には、定期的な草刈り・除草剤散布を行って、草木が伸びるのを防ぐケースがほとんどです。
そのため、基本的には「除草を業者に依頼する」か「自身で除草作業をする」という二択になり、メンテナンスフリーとはいえません。また、除草は年2~4回ほど必要となり、コストも数十万円単位で必要となるため、たかが草木だと侮らないようにしましょう。
清掃を怠れば「ホットスポット」が発生する
太陽光パネルを清掃せずに放置していると、枯葉や鳥のフンなど汚れが溜まってきます。これは、草木による影と同様に発電量を低下させるほか、「ホットスポット」と呼ばれる太陽光パネルの発熱を引き起こすため注意してください。
ホットスポットは、太陽光パネルの一部が電気抵抗を起こすことで、ほかの部分から流れてきた電気を通さなくなり、熱に変わる現象です。この発熱を原因として、太陽光パネルが焦げたり燃えてしまったりすれば、パネル交換のために多大なコストを求められます。
なお、ホットスポットは汚れのほか、配線不良や内部のひび割れによっても引き起こされるため、やはり定期的なメンテナンスは不可欠だといえるでしょう。
理由4:太陽光発電所が盗難被害にあってしまった
太陽光パネルは高額で取引されているため、盗難被害が後を絶ちません。2019年5月には「太陽光パネル、大量窃盗か 栃木・那須町、1772枚」のニュースにあるように、2,000万円超にのぼる太陽光パネルが盗まれています。
また、太陽光パネルだけでなく金属部分やケーブルも盗難対象となるため、太陽光発電所付近にはフェンス設置などの対策が必要となります。
理由5:リサーチ不足のまま太陽光発電投資をスタート
ここまで、太陽光発電投資が失敗に終わる理由を解説してきましたが、これら以外にも考えられる失敗要因は多くあります。たとえば、初心者が見落としがちな要因に「出力制御」があります。
出力制御は、電力の需要に対して供給量が過多になったとき、電力会社が太陽光発電所からの電力をカットする施策です。売電を止められるということは、つまり「出力制御中は売電収入がゼロになる」ということ。
一部の電力会社は出力制御を実施する姿勢を強めているため、これを知らずに太陽光発電投資を始めてしまうと、シミュレーションを下回る可能性があります。失敗とまでいかなくとも、計画の大きな狂いが懸念されることに留意してください。
太陽光発電投資の失敗を回避する対策とは?
太陽光発電投資を失敗させる要因は数多くあるものの、これらは投資を始めるまえに対策を把握しておくことである程度回避できます。
現時点で太陽光発電投資の参入を少しでも考えているなら、ぜひ覚えておいてください。
悪徳業者の特徴を知って営業トークから見極める
太陽光発電投資の失敗において、最も避けたいのは悪徳業者にはめられることです。実際にプロの詐欺師を目のまえにして、営業トークの真偽を見抜くことは極めて難しいですが、冷静に以下のポイントに意識して内容を吟味してみましょう。
- 実際に既存顧客の太陽光発電所に案内してもらえるか
- メリットだけでなくデメリットについて言及しているか
- 「いまだけ」や「特別に」という言葉を多用していないか
- 収支シミュレーション算出の根拠をすべて解説してくれるか
表面的な言葉だけで商品の魅力ばかり伝えるのではなく、根拠や実績を惜しみなく解説してくれるか否かを見極めましょう。
前半部分で解説したように、悪徳業者の多くは「実体のない案件」を販売しているものが多いため、不明瞭な部分がなくなるまで質問を続けるのは効果的。悪徳業者ではなくても、自身の認識不足による失敗は起こり得るので、徹底して疑問をなくすよう努めるのはおすすめです。
太陽光発電投資の正しい知識を身に付ける
悪徳業者の特徴を知ることは重要ですが、何より自身が太陽光発電投資について理解を深めることが欠かせません。いくら営業マンの怪しさに敏感になったとしても、それっぽいデータを並べてこちらを欺く業者は多いのです。
今回ご紹介した事例に登場している株式会社アイコンも、すでに経済産業省から許可を取っていると主張し、権威ある機関の名前を出すことで上手く信用を勝ち取っていました。
こういった主張に惑わされず、わずかな違和感に気付くためには、やはり基礎知識を身に付けておくことが大切です。
任意保険への加入を検討する
太陽光発電投資に対する自然災害や盗難被害は、任意加入の保険で対応できるケースがあります。
保険の種類 | 内容 |
---|---|
火災保険 | 自然災害・盗難被害をカバー |
動産総合保険 | 自然災害のほか不測な事故をカバー |
賠償責任保険 | 設備破損で他者に与えた被害をカバー |
休業補償保険 | 発電が停止したとき、売電収入を補填 |
大枠としては上記のようなイメージですが、地震保険は別途特約が必要になったり、契約会社により補償内容が違ったりするため、任意保険の内容は入念な確認が必要です。
今後は「出口戦略」を考えない投資家も失敗の可能性大
太陽光発電投資における、従来の失敗要因はここまで解説した5つですが、今後は「出口戦略を考えない投資家」の失敗率が高まると考えられています。
安定収入の要「FIT制度」は2020年頃に終了となる懸念も
これまで太陽光発電投資の利益率は、FIT制度を制定して国が電力会社の買取価格を決めることで支えられてきました。
しかし、2019年6月度に公表された経済産業省の議論のなかで、近いうちに「10kW以上の太陽光発電投資」に限り、FIT制度の終了を示唆する意見があったのです。
そのため、早ければ2020年にもFIT制度は終了し、欧州に取り入れられている「入札形式で買取価格を決める制度」に変更される可能性があります。
これが実現すれば20年間の収支シミュレーション、運用プランが全く異なる形になると予想され、制度に支えられた安定収入に頼らない姿勢が必要になるでしょう。従来のように「とりあえずFIT制度適用期間は安心」という考えは通用しないため、常に出口戦略を考えることとなるはずです。
継続的な利益獲得を目指せる不動産投資も要検討
安定収入に期待をして興味を持っていたものの、ここまでの解説を読んで「太陽光発電投資には旨みが少ない」と感じた方は、不動産投資が適しているかも知れません。
不動産投資と太陽光発電投資には、以下のような共通点があります。
不動産投資と太陽光発電投資の共通点 |
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毎月、継続的に収入を得られる |
収入が金融市場に影響されない |
融資を利用して多額の投資ができる |
ここまでは一緒なのですが、不動産投資と制度改正により逆風の吹く太陽光発電投資には、決定的な相違点があります。それは、太陽光発電投資は制度に則って収入が変わる一方、不動産投資は「自身で価格設定ができる」ということです。
不動産投資は「人々に住居を与える」といったビジネスモデルであり、入居者がその物件に魅力を感じてくれるなら価格設定はどこまででも高くできます。
しかし、太陽光発電投資は電力会社が電力を買って終わりというわけではなく、電力会社が再度消費者に電力を販売するため、投資家側の裁量で際限なく価格設定を高めることができないのです。
太陽光発電投資のように特定の機関に依存せず、こうした一種の「しがらみ」がない不動産投資は、独立した経済基盤を築くことに適しています。
まとめ
太陽光発電投資の失敗を招く理由を見て、どのように感じましたか?
あらかじめ回避できそうな問題もあれば、対策こそできるものの完全に阻止するのは難しい問題もあり、頼みのFIT制度も10kW以上の太陽光発電投資は適用外になります。
目標を達成するための投資として、太陽光発電投資を選んでも良いのか、いま一度考えてみてはいかがでしょうか?