REIT初心者は必ず確認!5つのリスクと対策を理解しよう
By Oh!Ya編集部
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REITをはじめようと検討している人の中で、「REITは安定しているイメージはあるけど、どのようなリスクがあるのか分からない…」を思っている人も多いでしょう。REITは安定性が高い投資ではありますが、投資であることには変わりないのでリスクはあります。
今回は、そのリスクを5つに絞って、その内容と対策を解説していきます。それらを理解しておくことで、収益性の高い銘柄選びや、自分の目的に合った銘柄選びにつながるというわけです。
1.価格変動リスクへの対策
まずは、価格変動リスクへの対策として以下を理解しておきましょう。
- 価格変動リスクとは?
- どのくらい価格変動しているか?
- ほかの投資との比較
- 対策は不動産種類とチャート
価格変動リスクとは?
REITで収益をあげる方法は、「分配金」と「REITの売買益」の2種類です。価格変動リスクは、主に後者の売買益を指します。分配金は、そのREITを発行しているファンドの業績次第です。つまり、そのファンドが所有している不動産運営の良し悪しによって決まります。
一方、REIT価格は需給バランスで決まるので、そのREITに需要(≒人気)が集まればREIT価格も上がります。REIT価格が上昇したところで売却すれば、上昇した分の利益を得られるというわけです。逆に、REIT価格が下落すれば損失を受けるので、それが価格変動リスクになります。
どのくらい価格変動しているか?
REITの価格が今までどのくらい変動しているかはREIT指数を見てみましょう。REIT指数とは、全62銘柄(2019年月時点)の加重平均(≒平均)のことです。
日付 | REIT価格 |
---|---|
2016年10月 | 1,787円 |
2017年4月 | 1,772円 |
2017年10月 | 1,681円 |
2018年4月 | 1,764円 |
2018年10月 | 1,788円 |
2019年3月 | 1,969円 |
このように、REIT全体でみると、REIT価格は比較的安定しており2019年3月時点では高い水準であることが分かります。
ほかの投資との比較
では、ほかの指数である日経平均株価とREIT指数を比較してみましょう。
日付 | REIT価格 | 日経平均株価 |
---|---|---|
2016年10月 | 1,787円 | 17,425円 |
2017年4月 | 1,772円 | 19,196円 |
2017年10月 | 1,681円 | 22,011円 |
2018年4月 | 1,764円 | 22,467円 |
2018年10月 | 1,788円 | 21,920円 |
2019年3月 | 1,969円 | 20,975円 |
日経平均株価は東証一部上場の銘柄のうち、主要225銘柄をピックアップした加重平均になります。つまり、日経平均株価とREIT指数は根本的に異なる指標なので、金額ではなく推移を比較しなければいけません。
REIT指数は最安値と最高値の差は約15%ですが、日経平均株価は約23%と8ポイントも差があります。このデータからも、REITは株式よりも変動がブレにくいことが分かります。
不動産種類とチャートをチェック
ただし、比較的REIT価格が安定しているからといって、今後も上昇し続けるとは限りません。そのため、価格変動リスクを検証するためには、以下の点を理解しておきましょう。
- チャートの見方
- 価格変動リスクの低い不動産種類
- その他チェックポイント
チャートの見方
REIT価格は証券会社などのHPではチャートで見ることができます。その際は、以下を意識してチェックしましょう。
- 長期的な価格推移(トレンド)
- 現在のトレンドの理由
まず、「1か月」や「半年」などのスパンではなく、「3年」「5年」などの長期スパンでチェックすることです。そうしないと、そのREITのトレンドは分かりません。また、現在のREIT価格水準が高くても低くても、その理由を探る必要があります。
単に市況が良いからなのか、運用している不動産の調子が良いのか…を見極めることで、将来のREIT価格を占うことができます。
価格変動リスクの低いREIT
一般的に価格変動リスクが低いREITは以下です。
- 複合型
- 総合型
複合型とは、「オフィスビル特化」や「商業施設特化」など、特化型を2つ組み合わせたREITです。総合型とは特化型を3つ以上、もしくはそもそも不動産種類にこだわらないREITです。
いずれにしろ、色々な種類のREITを持つことでリスク分散することが可能です。ただし、総合型や複合型でも「オフィスビル中心」など偏りがある銘柄も存在するので、きちんとポートフォリオをチェックしましょう。
その他チェックポイント
そのほかにも、以下の点をチェックしましょう。
- 保有不動産の棟数
- 保有不動産のエリア
- 不動産種類の比率
棟数やエリアをチェックすることで、リスク分散の度合いを測ることができます。また、仮に「商業施設特化型REIT」でも、アウトレットやGMS(総合スーパー)など種類が異なります。
その種類によってリスクも異なるため、上記をチェックすることで価格変動リスクを測ることが可能です。
2.金利変動リスク
2つ目のリスクは金利変動リスクです。金利変動リスクはREITの仕組みにも関連してくることなので、以下の点を理解しておきましょう。
- 金利変動リスクとは?
- jリートは出資金+借入金で不動産を取得
- 金利変動リスクへの対策
金利変動リスクとは?
金利変動リスクとは、金利が変動することで支出増になり収益が悪化することです。REITは、REITを発行しているファンド(投資法人)が不動産を取得し、その不動産から得る賃料収入が分配金やREIT価格に影響してきます。
そのため、金利上昇によって返済額が上がるということは、不動産から得る収益が悪化するということです。収益が悪化すれば、リート価格と分配金の下落要因になります。
jリートは出資金+借入金で不動産を取得
そもそも、REITは以下の流れで不動産を取得します。
- ファンド(投資法人)がREIT(証券)を発行
- 投資家はREITを取得することで資金を出資
- ファンドは出資金と金融機関からの借入で不動産を取得
- ファンドが不動産を運営する
このように、投資法人は投資家からの出資金と借入金で不動産を取得しますが、REIT投資をする場合は、自分が間接的に不動産を保有するという意識をもちましょう。
その意識をもつことで、金利変動リスクなどもきちんと確認するようになります。
金利変動リスクへの対策
このような金利変動リスクへの対策は、各ファンドのHPで借入状況をチェックすることです。多くのファンドで、自社HPのIR情報欄に「借入金状況」のようなページがあり、以下をチェックすることが可能です。
- 利率
- 金利タイプ(固定か変動か)
- 借入日
- 返済期限
ただし、金利変動リスクはREITのリスクの中で大きな要素ではありません。そのため、ある程度銘柄を絞った上で、最終的にいくつかの銘柄で迷ったときに調べることをおすすめします。
3.災害リスク
3つ目のリスクは災害リスクです。災害リスクについては以下を理解しておきましょう。
- 災害リスクとは?
- 災害リスクへの対策
災害リスクとは?
災害リスクとは、以下のような災害によって不動産が毀損するリスクです。
- 地震
- 火災
- 台風
REITは「不動産運営」から収益を得るので、天災によって不動産が毀損すればマイナス要因になります。たとえば、地震によって建物が毀損し、その部分の補修が必要だったり、毀損したことでテナントや住人が退去したりというリスクがあるのです。
災害による影響は全ての投資にいえることですが、REITは実物資産である「不動産」運営なので、災害リスクをダイレクトに受けやすいという特徴があります。
災害リスクへの対策
当然ですが、災害を人の手で事前に防ぐことはできません。そのため、検討しているREITに関して以下の点をチェックしましょう。
- 保有不動産数をチェック
- 保有不動産のエリアをチェック
上記は、どちらもファンドのHPの「ポートフォリオ」でチェックできます。ポートフォリオをチェックすれば、そのファンドの保有している不動産の詳細が分かるので、必ずチェックするようにしましょう。
保有不動産数をチェック
まずは保有不動産の「数」が大切です。一般的には、不動産の棟数が多い方がリスク分散はできます。というのも、1つの物件が災害によって影響を受けたとしても、棟数が多ければほかの物件でカバーできる可能性が高まるからです。
そのため、ファンドが保有している棟数は重要であり、リスク分散の観点からは見逃せないでしょう。
保有不動産のエリアをチェック
しかし、ただ保有不動産の数が多ければ良いというわけではなく、棟数に加えてエリアもチェックしましょう。なぜなら、いくら保有棟数が多くても「東京23区」など、エリアが固まっていればリスク分散の効果は半減するからです。
もちろん、都心の方が人口流入は多い…などのメリットもありますが、あまりにエリアが集中している場合は災害リスクを軒並み受けやすいといえます。その点も踏まえ、ポートフォリオでは棟数・エリアのチェックが重要というわけです。
4.投資法人の倒産・上場廃止リスク
4つ目のリスクは、投資法人の倒産・上場廃止リスクです。この点については、以下を理解しておきましょう。
- 倒産・上場廃止リスクとは?
- 倒産・上場廃止リスクへの対策
倒産・上場廃止リスクとは?
投資法人はあくまで法人なので、業績が悪くなれば倒産する可能性はあります。投資法人はREITを発行するためにつくられるので、「業績=不動産運用状況」です。
また、REITは上場しているので、上場している市場が定めている「上場規定」に抵触すれば上場廃止になる可能性もあります。
過去の例は?
実際にREITが破綻した例は存在し、それは2008年10月9日民事再生を申請したニューシティ・レジデンス投資法人(NCR)です。破綻理由は以下になります。
- 資金調達の目途がない状態だった
- その状態でポートフォリオの10%(277億円)の物件取得を発表
- 結局資金調達に失敗
- 契約不履行の違約金を支払えず民事再生申請
平たく言うと、金融機関からの借入が固まっていないのに、大型物件を取得すると大風呂敷を広げ、結局調達失敗…違約金発生…破綻…という流れです。
倒産・上場廃止で起こること
倒産および上場廃止が起こると、株式投資と同じくそのREITの価値はなくなります。たた、REITの場合は「収益不動産」は残るので、ほかの投資法人と合併することがほとんどです。
とはいえ、倒産・上場廃止の発表があればREIT価格は暴落する可能性が高いので、投資家にとってはリスクといえるでしょう。
倒産・上場廃止リスクへの対策
倒産・上場廃止リスクへの対策は、その投資法人のIR情報をきちんとチェックすることです。いくらスポンサーに大手企業がついていても、その投資法人とスポンサーは別会社なので関係ありません。
情報を見る上での注意点
ただ、上述したNCRの事例のように、不動産運営に失敗したわけではなく、借入調達に失敗するかどうかまでは、IR情報を見ただけでは分かりません。
そのため、IR情報で物件運営状況をチェックしつつ、そのファンドの物件取得方針などをチェックし、リスクの小さい戦略を取っているかをチェックしましょう。
戦略の具体例
たとえば、野村不動産マスターファンド投資法人は、物件取得について以下のような2つの方針を組み合わせています。
- 景気変動に左右されない収益の安定化が見込めるセクター
- 景気変動による収益の上昇が期待できるセクター
もちろん、これだけの戦略で倒産・上場廃止リスクを占うことは難しいですが、仮に「景気変動による収益の上昇が期待できるセクター」である、ヘルスケアや宿泊事業のシェアが大きくなったときは、リスクが上がったときだと判断できます。
つまり、倒産・上場廃止リスクをきちんと調査することで、リスクが上がるタイミングも見極めることでき、結果的に銘柄選定や銘柄選定後の「売り時」も測ることができるのです。
5.REIT全体が落ち込むリスク
5つ目のリスクは、REIT市況全体が落ち込むリスクです。REIT全体が落ち込むリスクをチェックするために、以下を理解しておきましょう。
- REIT指数をチェック
- 空室率などの不動産情報
REIT指数をチェック
まずは、上述したREIT指数をチェックします。REIT指数は、証券会社などで「証券コード:1488」を入力すれば東証REIT指数を調べることができます。または、Googleなどの検索エンジンに「1488」と直接打ち込むだけでREIT指数が分かるはずです。
REIT指数の推移を見ることで、REIT市場全体の盛り上がりをチェックすることができます。長期的に見て下降トレンドなのか?上昇トレンドなのか?をチェックすることで、今は様子見なのか波に乗るのか…もしくは「これから上昇していくから買い」なのか、自分の予想を立てることができるのです。
空室率などの不動産情報
REIT指数をチェックしたら、今後は空室率などの不動産情報をチェックします。たとえば、三鬼商事が出典しているレポートや、CRBEが出典している資料で、オフィスビルの空室率や商業施設の店舗市場動向などが分かります。
これらの情報を総合することで、どの不動産種類を保有しているファンドを選ぶか?今は買い時なのか売り時なのか?などが分かってくるというわけです。
気になる「不動産投資」との比較
REITを検討している人は、同じ「不動産」というカテゴリーで不動産投資も一緒に検討する人が多いです。そのため、さいごに不動産投資とREITを比較していきます。
端的に不動産投資とREITの違いを表すと以下になります。
- 不動産投資はレバレッジ効果が高い
- 流動性・初期費用を優先するならREITが良い
不動産投資はレバレッジ効果が高い
まず、不動産投資はレバレッジ効果が高いです。レバレッジ効果とは「小さい資金で大きな資産を取得する」というような意味であり、不動産投資においては融資を利用できる点がレバレッジ効果が高い要因です。
どのくらいの融資を受けられるかは借入者や物件にもよりますが、自己資金の10倍程度の借入を行うことも可能です。高額な資産を取得した方が収益は高いので、レバレッジ効果の高い不動産投資の方が資産形成しやすい投資といえます。
流動性・初期費用を優先するならREITが良い
一方、流動性・初期費用を優先させるならREITの方が良いでしょう。流動性とは「売りやすさ」のことであり、REITの場合は市場が開いている平日の日中、かつ時価であれば即決済可能です。一方、不動産投資の場合は現金化するまで半年程度かかることも少なくありません。
また、REITの初期費用はREITを取得するための資金…あとは証券会社に支払う少額の手数料くらいです。一方、不動産投資の場合は物件価格の5%~8%前後の初期費用がかかるので、流動性・初期費用の低さを優先するならREITの方が良いでしょう。
まとめ
REITも投資なので、上述したようなリスクがある点は理解しておきましょう。大事なのは、リスクの内容を知り対策を理解しておくことです。それによって、どのような情報を取集すれば良いのか?が分かってきて、結果的に銘柄選びの精度が上がるというわけです。
今回は、REITのリスクについて特化して解説しましたが、REITのメリットや仕組みなど詳しく知りたい人は以下の記事を確認ください。