全部知ってる?投資信託の6つのリスク
By Oh!Ya編集部
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低リスク運用に適している投資信託は、初めての資産運用に最適。さまざまな書籍やサイトで「初心者向きの投資」としておすすめされています。
そんな、安定商品として知られる投資信託には「6つのリスク」がありますが、皆さんはご存知ですか?
いくら低リスクな投資信託といえども、何も知らない状態で運用をスタートするのは禁物。注意すべき6つのポイントが答えられなかったなら、今回ご説明するリスクの種類や対策が役に立つはずです。
目次
投資信託はどんな金融商品なの?
投資信託は、証券会社を通じて購入できる金融商品の1つ。低リスクで安全性に優れており、投資初心者にも適していることで知られています。
この「投資信託の安全性」を実現しているポイントは以下の3つです。
1.資産運用の専門家「ファンドマネージャー」が投資先を決定する
2.複数の株式・債券に「分散投資」するため、自動的にリスクが分散される
3.投資信託は数百円から購入できて、保有するだけで「分配金」が還元される
どうして上記のポイントが安全性に繋がるのか、順番に解説していきます。
ファンドマネージャーが投資先を決定する
投資対象の調査不足や売買タイミングのミスなど、投資における失敗は付きもの。なぜなら、本業の片手間で行う投資には「取引時間・学習機会」などに多くの制約があり、私たちは万全な体制で臨めないからです。
一方、ファンドマネージャーは資産運用を本業としているため、素人の私たちとは比較にならないほど金融市場について勉強しています。当然ながら、分析手法の基本ともいえる「テクニカル分析」や「ファンダメンタル分析」も熟知しており、金融市場に向かう準備は常に万全です。
こうして比較すれば両者の差は明らか。資産運用で好成績をあげる確率は、間違いなく素人よりもファンドマネージャーの方が優れています。つまり、「知識・経験が豊富な専門家」が運用してくれることこそ、投資信託の安全性が担保されている第一の理由です。
分散投資による適切なリスク管理体制
資産運用でリスク軽減をはかるとき、最も効果的な方法が投資先の分散です。ただ、やみくもに分散投資をしても効果は薄く、リスク軽減の観点でいえば「特性の異なる投資先」を選ぶ必要があります。
つまり、効果的な分散投資は投資初心者にとって容易ではないのです。
そこで、投資信託ではファンドマネージャーが自動的に投資先を分散。専門家の知識をフル活用して、常に最適なリスク管理状態を維持してくれます。
少額投資が可能かつ保有するだけでリターンが得られる
株式投資を少額からスタートする方法はありますが、大企業の株式を購入して安定運用を目指すには数十万円が必要です。さらに、分散投資を始めるなら数百万円を用意しなければならず、投資初心者が扱う金額として相応しいとはいえません。
一方、投資信託であれば最低数百円から投資が可能。1つの投資信託を保有した時点で分散投資になるため、投資額にかかわらず安全性が高いのです。
また、投資信託はファンドマネージャーの運用成績に応じて、分配金と呼ばれるリターンが還元されます。保有しているだけで受け取れるため、売買差益を狙ってトレードする必要が無く、高度な判断能力が不必要であることもメリットです。
運用時に発生する6つのリスク
投資信託は低リスクであるものの、銀行預金や国債のように「元本保証」というわけではありません。
この項では、投資信託が抱える6つのリスクについてご紹介します。
価格変動リスク
投資信託の投資先は株式や債券であるため、おおむね金融市場に連動します。そのため、日経平均株価やTOPIXが下落基調のときは、基本的に保有する投資信託も値下がりしてしまいます。
また、ファンドマネージャーの分析・判断のもと運用が行われますが、専門家といえども確実に運用成績を伸ばせるわけではありません。場合によっては成績不振により、分配金や取引価格が低下するリスクがあります。
為替変動リスク
為替変動リスクは、各国の通貨同士の交換基準となる「為替レート」の変動により生じます。
たとえば、米国株式を扱う投資信託を1,000ドル分購入した場合、為替レートが資産価値にもたらす影響は以下の通りです。
為替レート | 資産価値(ドル) | 資産価値(円) | |
---|---|---|---|
購入時点 | 1ドル100円 | 1,000ドル | 10万円 |
円高 | 1ドル90円 | 1,000ドル | 9万円 |
円安 | 1ドル110円 | 1,000ドル | 11万円 |
※横スクロールできます。
購入してから資産価値(ドル)は変わっていないですが、為替レートが上下することで円換算したときの価格が変動しています。これにより、投資信託の運用成績が好調だとしても、円高になるほど資産価値(円)は目減りしてしまうのです。
なお、為替変動は専門家であっても予測が難しく、コントロールはほぼ不可能。為替変動リスクを回避したい場合は、下記のような運用方法で対策するほかありません。
・国内を投資対象にした投資信託を購入する ・為替変動を回避する契約を結んだ「為替ヘッジ」を行う投資信託を購入する
金利変動リスク
投資対象として債券を扱う投資信託の運用は、金利変動リスクを伴います。
たとえば「金利5%の債券」を100万円分購入すれば年間利益は5万円、満期まで保有すれば利益総額は50万円です。しかし、間もなくインフレが訪れて、同じ債券が金利10%に上昇したと仮定します。
新たに登場した「金利10%の債権」は年間利益が10万円、満期まで保有すれば100万円と非常に魅力的です。そのため、「金利5%の債券」は相対的に資産価値が下がり、以前の取引価格では売れません。そして「金利5%の債券」を保有する人は以下のような選択を迫られます。
・「金利10%の債券」を諦めて「金利5%の債券」を運用し続ける ・「金利5%の債券」を割安な価格で売却して「金利10%の債券」に乗り換える
最適な選択肢は売却価格により変わりますが、どちらにしても「金利5%の債権」は価値を下げており、金利上昇は間接的に損失をもたらしたと考えられます。
カントリーリスク
投資している国・地域の経済情勢が悪化した場合、運用資産が価値を下げてしまう可能性があります。
平和である日本に住んでいると想像しづらいリスクですが、海外を対象にした投資信託を購入するときには注意が必要。低リスク運用を目指すのであれば、内乱・革命が起こる気配の無い「開発途上国以外のエリア」に投資すべきです。
信用リスク
「株式・債券の発行元」が破たんして、債務不履行になる危険性を信用リスクと呼びます。
投資信託は株式や債券を投資対象とするため、常に信用リスクと隣り合わせ。順調に運用成績を伸ばしていても、投資先の国・企業が突発的に破たんすれば、投資信託の分配金や取引価格が下落する可能性は高いです。
分散投資で運用されているため損失は限定的であるものの、組み込み割合の大きい投資先が債務不履行となれば多大なダメージを被ります。
低リスクに運用するためのポイント
投資信託はもともと低リスクな金融商品ですが、なかには長期運用に不向きな銘柄もあります。また、運用を工夫すれば一層安定した運用が可能です。
この項では、投資信託の安定運用に欠かせない「6つのポイント」をご紹介します。
インデックスファンドを購入する
投資信託の種類は、大きく以下の2つに分類されます。
投資信託の種類 | 運用方針 |
---|---|
インデックスファンド | 日経平均株価などの指標にシンクロさせつつ運用される |
アクティブファンド | 指標やインデックスファンドより高い運用成績を目指す |
※横スクロールできます。
上記の運用方針を比べたとき、アクティブファンドがより多くの利益を得られると判断してしまいますよね?
しかし、長年インデックス・プロバイダーを務める「S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス」の調査により驚きの結果が判明しています。
同社が発表した資料*¹によれば、運用が長期的になるほどインデックスファンドがアクティブファンドの運用成績を上回っているのです。この傾向は、日米の両市場で確認されており、投資信託の優劣を語るときに説得力のある根拠としてもちいられています。
そのため、リスクを抑えつつ安定運用を目指すなら、インデックスファンドへの長期投資がおすすめです。
*¹ 出典:(S&P Dow Jones Indices「SPIVA® Japan Scorecard, SPIVA® U.S. Scorecard」)
購入や売却のタイミングを分散する
投資信託はファンドマネージャーが効果的に投資先を分散しており、リスクが小さいことで知られています。しかし、投資対象はあくまで金融市場の一部であるため、市場全体が一度に下落する事態には対応できません。
このような問題は、投資先以外の要素を分散することで解消できます。具体的な方法は以下の2つです。
購入のタイミングを分散させる
投資先の分散と同様、効果的なリスク軽減の方策として「ドルコスト平均法」と呼ばれるテクニックが有名です。これは、一定期間ごとに「同じ金額」で「同じ商品」を買い付ける手法で、高値掴みを回避する効果があります。
ドルコスト平均法の具体的な活用手順は以下の通りです。
手順 | 具体例 |
---|---|
年間の投資額を設定する | 1年間で120万円投資する |
購入する時期を設定する | 毎月1日に購入する |
購入する投資対象を決める | インデックス型の投資信託A |
年間投資額を分割して投資 | 毎月1日に投資信託Aを10万円購入する |
※横スクロールできます。
こうして段階的に投資を行えば、たとえ最初に割高で購入してしまっても、次第に取得平均額は適正化されていきます。
なお、購入タイミングの分散は、半年単位や1年単位に変更しても問題ありません。大切なのは、一定期間ごとに「同じ商品」を「同じ金額」だけ買い続けることです。
売却のタイミングを分散させる
取得平均額を適正化する購入タイミングの分散とは異なり、売却タイミングの分散は「売却平均額」を適正化する手法です。
たとえば、売買差益が「マイナス100万円」のタイミングで、投資信託を全て手放せば損失額は100万円です。しかし、その後に取引価格が200万円ほど値上がりすれば、先ほどの売却は最善の選択ではなかったといえます。
このとき、初めに運用商品の半分を売却。もう半分を値上がりしたタイミングで売却すれば、損失額は相殺されます。もちろん取引価格がさらに値下がりする場合もありますが、売却タイミングの分散は売却額が「極端な結果」になる可能性を軽減するのです。
そのロジックは、以下の図表から見て取れます。
1度目の売却がプラス | 1度目の売却がマイナス | |
---|---|---|
2度目の売却がプラス | 利益額+利益額:利益が最大化 | 損失額+利益額:相殺 |
2度目の売却がマイナス | 利益額-損失額:相殺 | 損失額-損失額:損失が最大化 |
※横スクロールできます。
売却タイミングの分散を利用すれば、上記のように利益・損失が最大化する確率は小さくなります。その一方で、利益と損失が相殺される確率は大きくなり、結果の振れ幅が狭くなるのです。
毎月分配型の投資信託を避ける
投資信託のなかには「毎月分配型」と呼ばれる、運用成績にかかわらず分配金を還元する銘柄が存在します。これは、高利回りかつ安定してリターンを得られるのですが、なぜ毎月分配できるのか疑問を抱きませんか?
実は、毎月分配型の投資信託は、運用元本を削りつつ分配を行っています。つまり、毎月分配型の高い利回りは「投資資金が戻って来る」から実現しているのです。
当然ながら、ファンドマネージャーの運用成績が伸び悩めば、運用元本は少なくなる一方。運用規模が小さくなることで収益性も低くなるため、長期的な視点で見ればパフォーマンスは悪いといえます。
運用コストに注意する
投資信託は購入に対して「購入手数料」、運用に対して「信託報酬」と呼ばれる経費が必要です。
このとき、特に注目すべきなのは運用コストである信託報酬。投資信託は中長期運用でコツコツ利益を重ねるため、運用コストがかかるほど長期目線での利益率が低くなるのです。
条件が近い投資信託を比較するときは、より信託報酬が安いものをおすすめします。
まとめ
今回は、投資信託における「6つのリスク」と「安定運用に不可欠なポイント」をご説明しました。
投資信託は安全性の高い金融商品として知られていますが、決してノーリスクではありません。金融恐慌や局所的な経済破たんにより、大きな損失を被る可能性は十分に考えられるのです。
これらのリスクは、後半部分で解説した運用方法をもちいれば軽減できるため、ぜひ投資信託の運用に取り入れてみてください。