アパート大家になる3つのメリットとその他投資との違い
By Oh!Ya編集部
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賃貸アパートに住んだことのある方でもやり取りするのは不動産会社の担当者ばかりで、大家さんに実際にお会いしたことはないという方も少なくないかもしれません。
実際に投資の一つとしてアパートの大家になることを検討する際、どのような仕事をすることになるか、イメージはつきますか?
本記事では、アパートの大家についてそのメリットやデメリットの他、どのような仕事をしているのか、また兼業大家と専業大家の比較などをお伝えしていきます。
アパートの大家とは
アパートの大家になると、どんな仕事をすることになるのでしょうか?
アパートの大家は一国一城の主
まず、アパートの大家は一国一城の主、つまりアパート運営という事業の責任を全て自分で負うことになります。
アパートの運営には、入居者の募集から契約、入居者のクレーム対応、家賃受け取り、退去手続き、修繕対応など様々なものが含まれます。
それらを自分で全てやることもできますし、管理費用を支払って管理会社に代行してもらうこともできます。
管理会社に依頼すれば、大家は管理について何もしなくても良い代わりに家賃収入による利益の一部を失うことになります。
家賃収入がどのくらいあるのか、修繕費用や税金はどのくらいかかるのか、ローンの返済はいくらくらいなのか、から計算して、管理を依頼すべきかどうかを自分で判断しなければなりません。
と、ここまではややマイナスの側面からお伝えしていますが、全ての責任を取る必要があるということは、全て自由にできるということでもあります。
経営手腕次第ではどんどん事業を拡大していけるのも大家の魅力です。
アパート経営と他の投資との違い
アパート経営は不動産投資の手段の1つ、つまり投資の中の1つです。
アパート経営と他の投資を比べた時の違いで大きいのは、アパート経営は賃貸収入のある不動産を購入するため、その対象となる不動産を担保にローンを借りることができる点です。
一般的に投資は手元にまとまった資金がないと大きなリターンを得ることができません。
一方でアパート経営は銀行からお金を借りて投資に取り組むことができるため、少ない元手で大きなリターンを得られるのです。
アパート経営とマンション経営の違い
ここでは、アパート経営について取り上げていますが、「マンション経営」との違いはどこにあるのでしょうか。
そもそもアパートとマンションの定義はあいまいではありますが、ここでは木造や軽量鉄骨で2~3階建ての比較的低階層の賃貸住宅をアパートとし、鉄骨造やRC造で高層階もあるものをマンションとします。
まず、マンションには1棟マンションと分譲マンションの違いがあります。
分譲マンションは基本的に賃貸用には作られておらず、居住用のため賃貸マンションより設備や性能の優秀なものが多くなっています。
また、分譲マンションに住む人全員でマンションを運営していくという考え方があり、管理組合による管理のもと、年に1回程度入居者参加による総会が開かれます。
さらに、分譲マンションでは管理組合に対して管理費や修繕積立金を支払う必要があります。
一方で、1棟マンションの場合はアパートとほぼ同じ扱いになります。
1棟マンションもアパートも土地と建物を丸ごと所有することになるため、仮に建物が古くなった場合は建物だけ取り壊して土地を売ることも、建て替えることもできます。
また、修繕については修繕積立金を支払うのではなく、全部自分で見積もりを取り、修繕するかどうかの判断をすることができます。
1棟マンションとアパートの違いは、マンションは基本的に鉄骨造やRC造で、アパートは木造や軽量鉄骨のため、ローンの借入期間において、マンションは長くとりやすいのに対し、アパートは借入期間をあまり長く取ることができません。
しかし、一般的にはアパートの方が建築費用を安く抑えやすいというメリットがあります。
アパート経営とマンション経営はこのような違いはあるものの、大枠では同じ投資だとも言えます。
次に、アパートの大家について書いていきますが、マンションの場合でも当てはまることも多いため、マンション経営に興味がある方も参考にしてみてください。
アパート大家のメリットとデメリット
アパートの大家のメリットとしては、以下のようなものがあります。 1.比較的低コストで始められる 2.安定した収入が得られる 3.土地という資産がある
一方、デメリットは以下のようなものです。 1.アパートローンを借りづらい 2.売却しづらい 3.大きな収益は得づらい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1・比較的低コストで始められる
アパートは、木造や軽量鉄骨で2~3階程度の低階層であるため、比較的低コストで始めることができます。
例えば3,000万円の借入で借入期間20年、金利2%であれば月々の返済額は約15万円で、仮に全部屋空室になった場合でも給与所得だけで返済を賄うことは不可能ではありません。
最悪のケースでも自己破産など考えなくて済みます。
メリット2・安定した収入が得られる
アパート運営は、各部屋を賃貸に出して入居者から家賃収入を得るもので、修繕や家賃の調整など入居希望者に魅力を感じてもらえる努力を続ければ安定した家賃収入を得ることができます。
また、ローンを利用した場合借入期間中は家賃収入から返済額を差し引く必要がありますが、ローンの返済が済んでしまえば後は家賃収入を丸々収入とすることができます。
特に若い内に始めれば、老後の収入の見込みをつけやすくなるというメリットもあります。
メリット3・土地という資産がある
アパートは土地と建物をセットで購入して(もしくは土地の上に新築して)運営していくものです。
建物は年数が経つごとに劣化し価値が落ちてしまいますが、土地は経済状況や周辺環境の変化の影響は受けるものの年数の経過だけでは価値が落ちません。
数十年後、建物がボロボロになってしまっても解体して土地だけで売却することもできれば、建て替えして新しい建物で運営することもできます。
デメリット1・アパートローンを借りづらい
アパートローンは建物の構造毎に定められた耐用年数に応じて借入期間が決められます。
アパートの構造は木造や軽量鉄骨で、これらはRC造や鉄骨造と比べて耐用年数が短く、20年程度までしか借入期間を伸ばすことができません。
こうしたこともあり、担保としての価値が低くなりがちで、RC造のマンションなどと比べると審査も厳しい傾向にあります。
デメリット2・売却しづらい
こちらも耐用年数の問題ですが、アパートは耐用年数が短いため、築年数の経った建物については買い手側のローンの審査承認を得ることが難しく、結果として売却しづらくなってしまいます。
デメリット3・大きな収益は得づらい
初期コストを安く抑えやすいアパートですが、その分室数は少なく、家賃も低く設定するのが一般的で、大きな収益を得ることは難しいです。
とはいえ、複数棟のアパートを取得していくことで収益を伸ばしていくことも可能です。
大家の仕事とは?
いざアパートを取得して入居者を迎え入れたら大家は以下のような仕事をする必要があります。
- 家賃管理
- 建物の修繕管理
- クレーム対応
- 空室対応
- 退去対応
詳しく見ていきましょう。
家賃管理
入居が決まると毎月入居者から家賃が振り込まれますが、その振り込みがちゃんと行われているのかチェックします。
もちろん振り込まれていなければ振り込んでもらうよう連絡する必要がありますが、これはすぐに連絡することが大切です。
入居者が家賃を振り込まない理由としては、「忘れていた」という理由が多いものですが、家賃の入金のないまま何日も連絡がないようだと次も平気で忘れてしまう可能性があります。
こうしたことが続くと、最終的に常習的な家賃滞納者になってしまう恐れがあります。
家賃滞納者への対応
家賃を支払いたくても払えない方や、支払うお金はあるのに支払わない方など様々ですが、大家としては頭の痛い問題になります。
空室であれば新しく入居者を募ればよいのですが、家賃滞納者がいればそれもできず、家賃収入を得ることもできません。
家賃滞納が続き、改善が見られないようであれば大家としては家賃滞納により契約解除を行う旨の内容証明を送り、それでも進展がなければ裁判などの法的手段により明け渡し請求などを行うことになります。
建物の修繕管理
玄関や廊下、駐車場などの共用部分の掃除やメンテナンス、電球交換などの日々の細々としたものから、外壁の塗り替えや張替え、エアコンの取り換えなど、建物をキレイに保ち、商品力を落とさないようにする管理をしていく必要があります。
クレーム対応
エアコンや水回りの故障など大家さんと入居者の問題や、隣の部屋の騒音問題など入居者同士の問題まで、アパートで発生した様々なクレームの対応をする必要があります。
設備の故障については、故障の原因によって負担の内容が変わってきますが、基本的に入居者はその後も家賃を支払ってくれることを考えると大切に扱ってあげると良いでしょう。
入居者同士のトラブルの場合、クレームを受ける側も伝える側も大切にしなければならないため細心の注意が必要です。
いずれの場合も、できるだけ早く対応することが大切です。
空室対応
入居者から退去の申し出があったら、退去の手続きを進めると共に新しい入居者を見つけるために不動産会社に連絡して入居者の募集を行ってもらうようにします。
空室対応はアパート運営のお仕事の中でも特に重要なものです。
空室が複数ある場合や、決まるまでに時間がかかる場合には入居募集をお願いしている不動産会社と相談して何らかの対策を講じていくことが大切です。
退去対応
退去時の立ち会いや敷金精算などを行います。
退去時の修繕にかかる費用はどこまでがどちらの負担なのかでトラブルになることが多いため、注意が必要です。
大家業とサラリーマンは兼業できる?
アパートの大家はそれだけで独立して生活できるようになるためには、何棟も安定して経営する必要があります。
将来的に専業化を考えている人も、初めは本業を持ちながら大家業も並行して行う必要があります。 しかし、本業の仕事と大家の仕事は両立できるものなのでしょうか?
大家業のほとんどは管理会社に任せられる
先ほどお伝えした大家のお仕事のほとんどは、管理手数料を支払うことで不動産会社に管理を任せることができます。
どこまでを管理会社に任せるかは不動産会社と大家との話し合いで決められ、仕事量が多ければそれだけ管理手数料も高くなります。
管理の範囲と管理手数料については慎重に計算した結果決めるべきですが、実際問題として本業をしながら大家業をするのであれば、ほとんど業務を管理会社に任せなくてはならないでしょう。
サラリーマンは損益通算を利用できる
大家業とサラリーマンとの兼業が有効なポイントとしては、アパートの運営で仮に1年間の収支がマイナスになってしまった場合でもそのマイナス分をサラリーマンの給与所得などプラスの分から差し引く損益通算を利用できることが挙げられます。
もちろん、マイナスにならないのが一番良いのですが、アパート経営では青色申告特別控除や減価償却費など実際に手元から出ていかない経費の存在もあるため、「実際に手元に残るお金はプラスだけど会計上はマイナス」という状態もあります。
この時も、もちろん損益通算可能なので、こうした制度を兼業のメリットとして活用するとよいでしょう。
専業大家と兼業大家それぞれのシミュレーション
ここでは、年間の収入を設定して、それぞれ専業大家の場合と兼業大家の場合で設定した年収を達成するためのシミュレーションをしてみたいと思います。
今回のシミュレーションではそれぞれ以下のように考えます。
- ローンは借入期間20年、金利2%のものを利用。
- 経費を家賃収入の10%
- アパート経営による税金を暫定的に家賃収入の10%
- 年間家賃収入は物件価格の10%
年収300万円の会社員が兼業年収500万円を目指す場合
会社員としての年収が(手取り)300万円ある人が手取りの年収を500万円した場合、どのような計算になるのでしょうか。
この場合、兼業なのでアパート経営で200万円の手取り年収があれば良いことになります。
アパート経営による手取り年収は、概ね以下の計算式で求められます。
- 手取り年収=年間家賃収入-年間経費-年間ローン返済額-税金
例えば、3,000万円の物件を購入すると以下の通りです。
なお、3,000万円を金利2%、借入期間20年で借りると年間返済額は約180万円です。
※3,000万円のアパートを1棟取得 300万円(年間家賃収入=利回り10%)-30万円(年間家賃収入×10%)-180万円(年間ローン返済額)-30万円(年間家賃収入×10%)=60万円(手取り収入)
3,000万円の物件では年間60万円の手取り収入を得ることができることが分かりました。
兼業大家で手取り年収500万円を概ね達成するためには、3,000万円程度の物件を3棟か、もしくは1億円程度の物件を1棟取得すればよいでしょう。
1億円を金利2%、借入期間20年で借りると年間返済額は約600万円です。
※1億円のアパートを1棟取得 1,000万円(年間家賃収入=利回り10%)-100万円(年間家賃収入×10%)-600万円(年間ローン返済額)-100万円(年間家賃収入×10%)=200万円(手取り収入)
専業大家で手取り年収500万円を目指す場合
一方、同じ計算で専業大家として年収500万円を達成するためには、概ね1億の物件を2棟、3,000万円の物件を2棟取得するか、2億5,000万円程度の物件を1棟取得すればよいことが分かります。
2億5,000万円を金利2%、借入期間20年で借りると年間返済額は約1,500万円です。
※2億5,000万円のアパートを1棟取得 2,500万円(年間家賃収入=利回り10%)-250万円(年間家賃収入×10%)-1,500万円(年間ローン返済額)-250万円(年間家賃収入×10%)=500万円(手取り収入)
とはいえ、実際には木造アパートで2億5,000万円、利回り10%の物件はなかなかないでしょうから、複数棟のアパートを取得することを考えた方が現実的でしょう。
いずれにせよ、専業とするのであれば借入額で2億5,000万円程度以上は必要なことが分かりました。 以下の表も参考にしてみてください。
物件価格 | 家賃 | 経費 | ローン返済額 | 税金 | 手取り収入 |
---|---|---|---|---|---|
3,000万円 | 300万円 | 30万円 | 180万円 | 30万円 | 60万円 |
1億円 | 1,000万円 | 100万円 | 600万円 | 100万円 | 200万円 |
2億5,000万円 | 2,500万円 | 250万円 | 1,500万円 | 250万円 | 500万円 |
なお、ここでは経費や税金などはかなりざっくりと設定していますし、実際には金利や借入期間の交渉、自己資金をいくらにするのかなどにより結果が変わってくるので、計算に関してはあくまで参考程度に考えて下さい。
まとめ
アパートの経営について、他の投資との違いや、メリット・デメリット、更には大家の仕事や、専業と兼業の比較などについてお伝えしました。
不動産投資の魅力は、物件取得代金をローンを借りて得ることができる点にあります。
しかし、アパートは木造や軽量鉄骨のため借入期間を長くすることができず、売却を視野に入れた戦略が練りづらいという特徴があります。
一方で、価格を比較的安く抑えられ、結果として高い利回りを実現しやすいなどアパートならではのメリットもあるため、それらのメリットを活用して取り組むとよいでしょう。