節税効果はウソ?!不動産投資で「節税」を意識し過ぎてはいけない5つの理由
By Oh!Ya編集部
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「節税のために不動産投資を行う」
このように考えている人はいませんか? 確かに、不動産投資は「節税効果の高い」投資として有名で、色々な税金の節税効果が高いのは事実です。しかし、節税効果を意識し過ぎると、物件選びや運用方法を間違える場合があります。
不動産投資の本質はあくまで「家賃」から得る収益であり、節税はその次の要素です。今回は、節税目的の不動産投資の注意点をお伝えします。
目次
そもそも何が節税なのか?
そもそも不動産投資は何が節税につながるかを簡単に説明します。節税になるのは以下の税金です。
- 所得税と住民税の節税
- 相続税の節税
- 固定資産税の節税
所得税と住民税の節税
不動産投資の基本は家賃収入であり、その家賃収入で利益が出れば「不動産所得」になります。不動産所得は総合課税といわれる税金で、ほかの所得と合算するという仕組みです。つまり、会社員であれば給与所得と合算し、個人事業主であれば事業所得と合算します。
そのため、仮に不動産所得が赤字になればほかの所得がマイナスになり、それが結果的に所得税と住民税の節税につながるというわけです。ただ、これには後述する「理由1」で解説する減価償却費用について理解しなければいけません。
この減価償却費用があるからこそ不動産投資は節税効果が高いのであって、それを知らないと単に赤字を計上しているだけになります。
相続税の節税
相続時には、現金をはじめとした資産に相続税がかかります。不動産の場合は、その不動産の評価額を算出して、その評価額に相続税の税率を掛けて控除額を差し引くという計算方法です。不動産は、現金で持っている場合よりも評価額が低くなります。
たとえば、現金6,000万円で購入した不動産が、相続税時は評価額が4,500万円まで下がるのは良くあることです。この「評価額の軽減」を利用して、相続税を節税できるのは不動産投資の特徴でしょう。
固定資産税の節税
固定資産税とは不動産を所有していると発生する税金です。また、土地はそのまま放置するよりも、そこに借家を建築して賃貸物件として回した方が、さらに固定資産税は安くなります。
つまり、「固定資産税の節税効果が高い」とは、土地として放置するよりも借家を建築にした方が節税効果は高いということです。裏を返すと、そもそも不動産を所有しなければ固定資産税はかからないので、不動産投資をすることで「固定資産税の節税効果がある」という言い方は間違いになります。
あくまで、土地を所有しているなら、その土地を放置しているよりは借家を建築して投資した方が固定資産税は安価になるということです。
さて、ここまでで不動産投資による節税効果の概要を理解できたと思います。前提として、節税効果は不動産投資の副次的なメリットに過ぎず、不動産投資の本質は家賃収入によって収益をあげることです。
節税については、「節税できる理由」を知っておき、物件選定や収支計算をする際の材料として認識しておきましょう。
理由1:減価償却費用の計上期間が決まっている
まずは所得税・住民税の節税につながる「減価償却費用」について、以下の点を解説していきます。
- 減価償却費用と節税の関係性
- 減価償却費用の計上期間とは?
- 減価償却費用を計上しない場合の税金
単に「節税効果が高い」という点だけを鵜呑みにして、減価償却費用のカラクリを知らないと、単純に「赤字だから結果的に税金が安くなっている」という状態にもなり得ます。つまり、本質である家賃収入ではマイナスになっているということなので、不動産投資をしている意味がなくなってしまうのです。
減価償却費用と節税の関係性
減価償却費用は、所得税・住民税の節税につながる大きな要素です。そのため、以下の点を理解しておきましょう。
- そもそも不動産所得とは?
- 減価償却費用とは?
- 減価償却費用は構造による
上記を理解しておくことで、物件によって減価償却費用が異なる・・・つまり節税効果が異なる理由が分かってきます。
そもそも不動産所得とは?
不動産所得の計算式は以下です。
不動産所得=年間家賃収入-年間経費
つまり、年間に計上する経費が高額であるほど、不動産所得が低額になるということです。ただ、経費があるということは支出があるということです。しかし、減価償却費用はその年に支出として計上しているわけではありません。
減価償却費用とは?
減価償却費用は、その物件(建物)の取得費用を、毎年経費として計上できる費用です。たとえば、建物価格が2,500万円のマンションをフルローンで購入したとします。つまり、実際は融資を受けているので、その物件購入のために手元資金は減っていません。
しかし、減価償却費用として年間数十万円を経費として計上できるので、その分不動産所得が下がり節税になっているのです。このように、本来支出はないのに減価償却費用として計上できるからこそ、不動産所得はマイナスになり、結果的に所得税・住民税の節税につながるのです。
減価償却費用は不動産構造によって変わる
減価償却費用は、以下のように計算します。
減価償却費用=建物購入価格×償却率
そして、上記の「償却率」は以下のように耐用年数によって決まっています。
- RC(鉄筋コンクリート造):償却率0.022(耐用年数47年)
- 重量鉄骨:償却率0.030(耐用年数34年)
- 木造:償却率0.046(耐用年数22年)
たとえば、重量鉄骨造のアパートを取得し、建物価格が3,000万円だったとします。その場合の減価償却費用は「3,000万円×0.030」となり、年間90万円を経費として計上できるというわけです。
減価償却費用の計上期間とは?
上述したように、減価償却費用を計上できれば、本来は手元に収益が残っていても、不動産所得はマイナスとして計上できる場合があります。不動産投資で所得税・住民税の節税につながるのは、まさにこの点が肝になるのです。
しかし、減価償却費用はいつまでも計上できる経費ではなく、計上できる期間が決まっています。つまり、その計上期間をきちんと把握していなければ、節税効果の恩恵を受けられないのです。だからこそ、減価償却費用の仕組みはきちんと理解しておかなければいけないというわけです。
減価償却費用の計上期間は以下2パターンに分かれます。
- 築年数が耐用年数を超えている場合
- 築年数が耐用年数を全て経過していない場合
築年数が耐用年数を超えている場合
築年数が法定耐用年数を経過している場合、以下の計算式になります。
計上期間=法定耐用年数×0.2(端数切り捨て)
たとえば、築23年の木造アパートを取得したときには、木造は法定耐用年数が22年なので「22年×0.2=4年(端数切捨て)」が経費計上できる期間になります。
築年数が耐用年数を超えていない場合
一方、築年数が耐用年数を超えていない場合は以下の計算式になります。
計上期間=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2(端数切り捨て)
仮に、築12年の木造アパートを取得したときは、木造は法定耐用年数が22年なので「(22年-築12年)+築12年×0.2=12年(端数切捨て)」が経費計上できる期間になります。
減価償却費用を計上しない場合の税金
上記のように、築年数によって計上期間が異なっているので、そもそも節税を目的に不動産投資をしても、いつかその効果はなくなります。だからこそ、節税は副次的なメリットになるのです。
ここで事例として、給与所得690万円の会社員が、年間家賃収入144万円、年間経費85万円のアパート経営をしている場合の収益を比較してみましょう。比較するのは、減価償却費用を計上できない状態と、できる状態の2通りです。
そもそも、給与所得だけの場合には「690万円×20%-42.75万円」という計算式になり、95.25万円が所得税です。住民税は所得税額に比例するので、所得税額が上がれば住民税も上がります。所得税率については、国税庁ホームページ※で確認ください。
減価償却費用を計上できない物件
まず、このケースでは不動産所得が「年間収入144万円-年間経費84万円」で60万円となります。減価償却費用を計上できない場合は、その60万円を給与所得690万円に足して税金を算出するので、以下の計算式になります。
(690万円+60万円)×23%-63.6万円=108.9万円
つまり、不動産所得が足されることで、先ほどの給与所得のみの所得税額(95.25万円)と比べて、13.65万円(108.9万円-95.25万円)所得税が増額されるということです。
減価償却費用を計上できる物件
一方、木造アパートを所有しており、建物価格が1,600万円の物件の場合には、「1,600万円×償却率0.046=73.6万円」が減価償却費用になります。つまり、この場合の不動産所得は「(家賃収入144万円-年間経費84万円-減価償却費用73.6万円=-13.6万円)です。
そのため、給与所得と合わせた所得税は以下の計算式になります。
(給与所得690万円-13.6万円)×20%-42.75万円=92.53万円
上記のように、減価償却費用を計上できない前項のケース(所得税108.9万円)と比べて、16.37万円も節税できるというわけです。
節税の本質を知る
仮に、「減価償却費用を計上できるから節税効果が高い!」と思って投資物件を購入しても、4年間しか減価償却費用を計上できない物件かもしれません。そうなると、期待していた節税効果が得られない可能性もあります。
また、節税をメインに置いて物件選びをすると、そもそも空室が多い物件になってしまうかもしれません。そうすると、減価償却費用を差し引かなくても不動産所得がマイナスという、本末転倒な事態にもなり得るのです。
だからこそ、節税は一旦おいて物件選びをして、そもそも不動産所得がプラスになるか、を最重視して物件選びをする必要があるのです。
理由2:法人化での節税はリスクが高い
不動産投資で節税を意識しすぎてはいけない2つ目の理由は、法人化での節税はリスクが高いという点です。というのも、不動産投資の節税には「法人化」という言葉が良く出てきます。
そのため、「法人化することでさらに節税効果を得られる」と思い、そこに魅力を感じて不動産投資を行う人は少なくないのです。しかし、以下のように法人化することで節税できる仕組みや注意点を理解しないと、前項の減価償却費用のようにお得に節税することはできません。
- 法人化で節税とは?
- そもそも法人化できない可能性もある
- 法人化による支出増とは?
法人化で節税とは?
そもそも、法人化することで節税につながるのは、以下のことができるからです。
- 法人税率が一定になる
- 役員報酬を控除できる
- 所得分散ができる
- 役員への退職金を計上できる
- 費用の計上範囲が広い
- 損益通算の幅が広い
- 連帯保証から離脱できる
- 相続時のメリット
節税の仕組み
節税の仕組みを簡単にいうと二点に絞られます。一点目はある一定の不動産所得であれば法人税の方が税額は安くなる点、二点目は経費として計上できる項目が法人の方が大きい点です。そのため、結果的に所得を減らすことができ、節税につながるというのが法人化することによる節税効果になります。
つまり、ある程度不動産所得が高額になるのが前提であり、「家族を役員に就かして報酬を経費計上する」など、実業を伴っている必要があるのです。そのため、不動産所得がそこまで高額にならなかったり、税務署から実業を伴っていないと指摘されたりすれば、節税効果はなくなってしまいます。
法人化は簡単ではない
このように、法人化することで節税することは簡単なことではなく、一定のリスクが伴います。そのため、不動産投資の節税ばかりに注目し、法人化することを前提に事業をはじめると、結果的に節税につながっていないということもあり得るというわけです。
まずは法人化しない状態で投資をはじめ、安定して家賃収益をあげられるように運用しましょう。その後、所得が増えてきたところで、税理士などを交えて法人化するかどうかを検討するという流れがおすすめです。
そもそも法人化できない可能性もある
また、法人化する以前の問題に、そもそも法人化できない可能性があります。というのも、会社員の場合は「副業規定」というものがあり、多くの会社では副業は禁止されているからです。通常の不動産投資なら副業に認定されませんが、それが事業と認定されれば副業と見なされる場合があります。
特に、「法人化」することで、自分の名義の法人を立ち上げ不動産投資事業を行うわけですから、会社によって事業と認定することもあるでしょう。そうすると、会社の副業規定に抵触する可能性があるので、もし法人化するなら事前に会社へ確認しましょう。
法人化による支出増とは?
また、法人化することで以下の支出がある点も認識しておきましょう。
- 法人登記
- 司法書士報酬
- 実印作成
法人するには登記が必要であり、登記を司法書士に任せると報酬がかかります。また、実印も作成する必要があるので、法人登記には合計で数十万円ほどかかると思っておきましょう。
また、費用面もそうですが、法人化すると準備や手間が増えます。確定申告書類の作成も個人で行うよりも煩雑になりますし、役員報酬の設定や退職金の設定、役員の社会保険手続きなど面倒なことが多いです。
その手間も費用に換算すると、法人化することで実現できる節税金額よりも、手間のかかる作業が増える方がマイナスかもしれません。法人化すると節税につながる可能性があるのは事実ですが、上述した点を踏まえて選択しましょう。
理由3:タワーマンション節税は適用できない
不動産投資で節税を意識し過ぎてはいけない3つ目の理由は、タワーマンション節税は適用出来ないという点です。一時期「タワーマンション節税」というものが流行り、確かにタワーマンション節税は節税効果が非常に高かったです。
この節税に限っていえば、節税目的で物件を購入してもメリットはあったでしょう。しかし、未だに勘違いしている方もいますが、実はタワーマンション節税はルールが変わり今では効果が薄れています。
タワーマンション節税とは?
タワーマンション節税とは、タワーマンションの高層階と低層階で価格が違う点を利用した節税方法です。たとえば、50階建てのタワーマンションがあるとします。この物件の最上階70㎡の部屋が1億円だとして、低層階である4階の部屋は70㎡で5,000万円だとします。
このくらい大規模のタワーマンションであれば、価格に2倍の差があるというのはあり得る話です。しかし、実は以前までこの物件の相続税評価額は、最上階でも低層階でも一律だったのです。そのため、この違いを利用したタワーマンション節税をする人が増えていきました。
タワーマンション節税の仕組み
前項の例で、仮にこのマンションの相続税評価額が70㎡の部屋で4,500万円だったとします。そのとき、1億円持っている人が現金をそのまま相続する場合と、最上階を1部屋(1億円)買って相続する場合、そして4階の部屋を2部屋買って相続する場合で相続税を比較してみましょう。
相続税の比較
相続税率※を適用すると、相続税額は以下のようになります。
- 現金1億円:1億円×30%-700万円=相続税2,300万円
- 最上階1部屋:4,500万円×20%-200万円=相続税700万円
- 4階2部屋:9,000万円×30%-700万円=相続税2,000万円
4階部分の2部屋は、合算して考えられるので、4,500万円の評価額×2部屋で9,000万円の評価額としてカウントされます。
相続税の基礎控除額は後述しますが、ここではタワーマンション節税の効果を解説したいので、基礎控除は無視しています。
※ 国税庁 相続税
実際の価値を考える
前項の3パターンで相続税が大きく異なりました。タワーマンション節税の場合は、たとえ低層階でも現金で持っているより相続税は軽減されますが、最上階を購入したときの比ではありません。
しかし、実際に物件を売却するときの価値は、最上階は1億円の価値がある前提で取引されます。もちろん、低層階の4階部分は1部屋5,000万円の前提です。
つまり、実売するときの価値は変わらないのに、タワーマンションの上層階を買うことで相続税評価額を極端に落とすことができるということです。そのため、相続税を節税しつつ賃貸でも収益を上げられるとして、タワーマンションを購入する人は多くいました。
タワーマンション節税はもうできない
しかし、上述したタワーマンション節税は普通に考えればおかしな話です。本来は実売価格が全然違う上層階と低層階では、相続税の評価額もその実売価格に合わせる必要があります。そのため、国税庁ではタワーマンションの相続税評価額が不自然にならないよう、全国の国税局に通達しました。
国税庁の通達には「著しく不適当と認められる評価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」とあります。つまり、上述したように1億円の物件が5,000万円の物件と同じように、評価額4,500万円として相続税の確定申告をすると、国税局からNGが出る可能性が高いというわけです。
タワーマンションの節税効果は、上述のように非常に大きいです。しかし、それを見越して不動産投資をすると、現在はルールが厳格化されているため、想定通りの節税ができない可能性も高いでしょう。
理由4:相続税は基礎控除が大きい
さて、前項と通じる部分がありますが、相続税は基礎控除額が大きいです。冒頭に、不動産投資の節税で「相続税が節税できる」といいましたが、そもそも基礎控除額が大きいので、資産が潤沢でない限り相続税はあまり気にする必要がないということです。
相続税の基礎控除額
相続税の計算は、相続税評価額に基礎控除を差し引いてから、税率を掛けて控除額を差し引きます。基礎控除額は「3,000万円と法定相続人1人につき600万円」です。つまり、妻と子供がいれば「3,000万円+600万円×3人」で、4,800万円までが基礎控除されるというわけです。
仮に、現金5,500万円を保有していて、妻が1人、子供が3人いる場合の相続税評価額は「5,500万円-4,800万円=700万円」となります。700万円に課せられる税率は10%なので、この場合の相続税は70万円になります。
※ 国税庁 相続税
相続税の節税をメインにしない
たとえば、前項の5,500万円の現金で不動産を購入すれば、評価額は恐らく3,000万円代後半~4,000万円代前半くらいに下がるでしょう。つまり、全額基礎控除されるので相続税がゼロということです。しかし、その代わりに不動産を所有することになります。
その不動産が上手く運用できなければ、現金で持っているよりも資産は増えないかもしれません。また、その物件価格が下落すれば、70万円の相続税を節税したところで意味がないかもしれません。
このように、不動産投資をする際、相続税の節税をメインにすると結果的に損をする可能性があります。もちろん、相続税が節税できるのはメリットではありますが、やはり副次的なメリットとして捉えるべきでしょう。
理由5:売却時はむしろ節税効果が低い
不動産投資で節税を意識し過ぎてはいけない理由の5つ目は、売却時はむしろ節税効果は低いという点です。上述したように、不動産投資の基本は家賃収入ではありますが、将来的に売却することもあるでしょう。
売却時に税金が高額になれば、それまでに節税を頑張っても意味がなくなってしまうことがあります。そのため、不動産投資をする際は売却時の税金を理解しておく必要があります。
売却時の税金とは?
売却時は不動産所得ではなく「譲渡所得」になります。この所得にかかる譲渡所得税は分離課税といい、不動産所得税の総合課税とは仕組みが異なります。
不動産所得は、給与所得などほかの所得と合算できましたが、分離課税の場合は単体での所得です。つまり、ほかの所得と合算しないということです。
そんな譲渡所得の計算方法は以下の通りです。
譲渡所得=(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の不動産価格+購入時にかかった諸費用)+減価償却費用
上記は、確定申告時に自動換算されるため、計算式を覚える必要はありません。しかし、単純に「売却金額-購入金額」ではない点と、減価償却費用が加算されるので譲渡所得がプラスになる可能性は十分にある点は覚えておきましょう。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は高額です。また、不動産を売却した年の1月1日時点で、保有期間が5年超(長期保有)か5年以下(短期保有)かで以下のように税率が異なります。
長期保有の税率
長期保有時の税率は以下です。
- 所得税:譲渡所得額×15%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×5%
短期保有の税率
短期保有時の税率は以下です。
- 所得税:譲渡所得額×30%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×9%
仮に、譲渡所得が500万円あり、短期保有なら198.15万円が税金になります。実際に収益ではない減価償却費用が所得にプラスされるので、決して500万円が手元にあるわけではない点は要注意です。
軽減措置がない
ほかに注意すべき点は、自宅ではなく投資用物件の売却の場合、「3,000万円の特別控除※」という軽減措置が利用できないという点です。この控除は、譲渡所得が3,000万円まで控除されるので、多くのケースで譲渡所得をゼロにできます。
そのため、自宅の売却で譲渡所得を支払うケースはほぼありません。しかし、投資用物件の場合はこの特例は利用できないので、その点を勘違いしないようにしましょう。
ほかの投資は?
さて、不動投資の売買益(譲渡所得)にかかる税率が高いというのは、株式投資と比較してみると分かります。株式投資も分離課税で、売買益に対して20.315%の税率がかかります。上述した短期保有の税率よりは高いですが、長期保有のときの税率とはほぼ同じと思うかもしれません。
しかし、不動産売却の譲渡所得は、減価償却費用が割り戻し(足される)ので、本来収益として手元に入っていないお金も譲渡所得として計上されるのです。減価償却費用は確かに所得税・住民税の節税効果は高くなりますが、実はこのようなデメリットもあります。
まとめ
さて、ここまで何度が解説してきましたが、不動産投資の基本は家賃収入です。つまり、いかに家賃収入を安定的に得て、年間経費を抑えるかが最重要ということになります。不動産の売却益や節税はその後についてくるオマケのようなものです。
だからこそ、不動産投資で節税は意識し過ぎず、まずは家賃収入を稼げるか、という観点で物件選定および運用を行いましょう。それが不動産投資で成功するための絶対条件といえます。