不動産投資に潜む10のリスクとその対策
By Oh!Ya編集部
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退職金の減額や人員削減が当然のように行われる昨今、給与一本でライフプランを立てることが困難になってきました。こうした状況を打破しようと不動産投資を検討している会社員は、不動産投資のリスクとリターンの狭間で悩んでいることでしょう。
この悩みを断ち切るためには、リスクの種類とその解決方法を知るほかありません。
今回は、不動産投資における10通りのリスクと回避策について解説していきます。
目次
不動産投資における代表的なリスクは大きく5つ
代表的な5つのリスクはたびたび取り上げられており、ネット記事で情報収集が容易にできるいま、投資未経験であっても概要を知っている初心者は多くいます。
代表的な5つのリスク |
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入居率低下 |
家賃滞納 |
家賃下落 |
金利上昇 |
地震・火災 |
実は、これらはリスク全体の半分程度。見落としやすい残り5つのリスクを確認するまえに、おさらいも兼ねて不動産投資における代表的なリスクを解説していきます。
人口減少により懸念が深まる「入居率低下」
日本国内における不動産投資の最大のリスクは、人口減少による入居率の低下です。
皆さんもご存じの通り、日本国内の総人口は年を追って減っています。これは、国内にある総戸数に対して、住居を必要とする人が徐々に減っているともいえるのです。
家賃収入の金額は「1部屋あたりの家賃×入居者数」によって決まるため、入居者数が少なくなれば収入も比例して低下します。つまり、このまま人口減少の流れが加速すれば、不動産投資で収益を得られる投資家は減っていくはずです。
少子高齢化を背景にした入居率低下の問題は、不動産投資において大きなリスクになるため、成功を収めるうえで「空室率を減らす戦略」の立案は不可欠になっていくでしょう。
収益性に甚大な被害を及ぼす「家賃滞納」
空室なら「家賃が発生しない」と分かっていますが、入居中にもかかわらず家賃が支払われない問題は、突発的に収支計算が狂うため厄介です。滞納期間が伸びるほど夜逃げのリスクも高まるため、具体的な対策を用意できていない投資家は心穏やかでないでしょう。
また、前述した人口減少の流れを解決する一案として、外国人の移住を促進しようとする主張も増えてきました。これは不動産投資家にとって朗報だと思えるものの、外国人向けに物件を運用する投資家のなかには、「外国人は滞納率が高い」と訴える声が多々あります。
今後、労働人口の不足を補うため外国人流入が進むなら、ますます家賃滞納の対策考案は不可欠になるでしょう。
少しずつ賃料収入が減っていく「家賃下落」
物件は築年数の経過に伴い古臭さが出てしまい、新築時に比べて競争力が損なわれるため、家賃設定は少しずつ安くなります。立地や間取りが似ていても、より新しい住居の方が「綺麗で快適だろう」と思った経験は、皆さんも一度や二度あるのではないでしょうか?
なお、海外では「中古物件の市場価値が高くなる」というケースもあるのですが、これは日本国内の場合当てはまりません。長期的に見れば、ほぼ確実に家賃は下がっていくと覚悟しておきましょう。
当初の家賃設定がそのまま続くと仮定していると、10年,20年後の収支予想が一気に狂ってしまうので、ある程度シビアな基準で家賃下落を想定することをおすすめします。
ローン返済額が増えてしまう「金利上昇」
不動産投資を始めるにあたり、金融機関から融資を受けるケースも多々あります。このとき、融資は「固定金利型」か「変動金利型」のいずれかを選ぶことになります。
金利のタイプ | 各タイプの特徴 |
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固定金利型 | 返済中の金利が一定。変動金利型より金利は割高 |
変動金利型 | 返済中の金利が変動する。固定金利型より金利は割安 |
リスク管理の観点でいえば、返済中に金利の変動がない固定金利型を選ぶのが無難です。しかし、投資家には「少しでも返済額を抑えたい」という心理が働くため、実際には変動金利型を選ぶケースが多いのです。
こうして変動金利型を選ぶのは間違いではないものの、金利が大きく上昇する局面が来た場合に、返済額が跳ね上がる懸念があることを忘れてはいけません。
不動産投資の融資は数百万~数千万円単位になることも珍しくないため、変動金利型を選べばわずかな金利変動が命取りになることを覚えておいてください。
運用物件に大ダメージを与える「地震・火災」
リスクのなかで最も理不尽な痛手となるのが、地震・火災などの被災によるダメージです。地震の恐ろしさは誰もが知るところである一方、火災に対する認識は乏しいケースが散見されます。
たとえば、燃えやすく地震に弱いのは木造物件だと連想しがちですが、一概に鉄骨造の方が災害に強いとはいえません。鉄骨は「燃えない素材」だから、火事にも強いとイメージする人がほとんどです。
しかし、鉄骨は激しく熱されると強度が著しく下がり、耐火被覆が施されていても超高温には長時間耐えられません。一方の木材も、火が付けばたちまち焦げてしまいますが、中心部に炎が及ぶまでには時間がかかるため、必ずしもすぐさま焼け落ちるわけではないのです。
「木造だから保険に入るべき」や「鉄骨は頑丈だから保険は不要」などと誤った認識を持たず、どのような物件でも災害で大ダメージを受ける可能性があると意識すべきです。
不動産投資に潜む見落としがちな5つのリスク
ここまでにご説明したリスクは、どのネット記事にも記載されているものばかりです。ここからは、以下の見落としやすい5つのリスクについて解説していきます。
見落としがちな5つのリスク |
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資産価値の低下 |
施設の移転 |
短期譲渡所得税 |
悪徳コンサルタント |
サブリース契約 |
どれも見過ごせば致命的なダメージを負うリスクなので、注意深く読み進めてください。
売却時の価格が購入時より安くなる「資産価値の低下」
築年数が経過することで家賃下落が起こることは、多くのネット記事や書籍で解説されており広く認知されています。しかし、築年数の経過に伴って資産価値が低下し、売却時に価格が下がることまでイメージしている投資初心者は多くありません。
なかでも、最も損をする可能性が高いのは、資産価値の低下を想定しないまま新築物件を購入してしまうパターンです。
実は新築物件は、本来の物件価格より2割ほど価格が上乗せされています。そのため、新築物件を購入した直後に売却したとしても、いきなり20%程度損をしてしまうのです。
たとえ新築物件でなくても、不動産市場には「第三者の利益」が上乗せされた物件は数多くあるので、物件の状態・周囲の賃貸需要などを考慮して、以下のポイントを確認することをおすすめします。
割高な物件を掴まないために注意すべき点3つ |
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1.買った瞬間に損をする物件ではないか |
2.将来手放すとき、誰もが欲しがる物件なのか |
3.最悪、売却できなくても問題ない物件なのか |
もともと長期的に運用するつもりであっても、物件のキャッシュ化を迫られるケースは往々にしてあるため、3だけでなく1・2の条件も満たす物件を探すのが理想的です。
また、客観的な目線で出口戦略を考えることで、改めて「どうしてこの物件を買おうとしたのか」を再確認する機会にもなるので、不用意にリスクを抱えないよう行動するならチェックは必須です。
廃校や企業の業績不振による「施設の移転」
購入を検討する物件における賃貸需要の維持を、以下のような施設に依存していないか確認しましょう。
賃貸需要を引き上げている施設 |
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大手企業の支社・生産工場 |
大学・専門学校などの教育機関 |
1つの商業施設・娯楽施設 |
大手企業が社宅として借り上げている物件、近隣の大学生が入居者の大半である物件など、特定の施設が賃貸需要を生み出している場合、その施設の移転により空室が多発するリスクがあります。
一見すると施設の移転は突発的なもので、回避は不可能だと感じるものです。しかし、地元の掲示板や聞き込みによるリサーチをすれば「あの大学は今年も定員割れ」など、移転を予感させる情報を得られることも多く、努力次第である程度対策できるリスクだといえます。
短期売買により発生する「短期譲渡所得税」の存在
物件を売買して得た利益(譲渡所得)は、他の所得と分けて納める税金を算出します。計算式は以下の通りです。
譲渡所得の計算方法 |
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譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用) |
特別控除を適用できる場合は、さらに控除額を差し引きます。こうして求めた譲渡所得に所定の税率を掛けるのですが、税率は物件の保有期間によって大きく異なる点に注意してください。
区分 | 所得税 | 住民税 |
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短期譲渡所得(保有期間が5年以下) | 15% | 5% |
長期譲渡所得(保有期間が5年超) | 30% | 9% |
出所:国税庁「土地や建物を売ったとき」を抜粋・改編
このように、保有期間5年以下の短期譲渡には、高い税率が課せられることに注意しましょう。短期譲渡所得の課税を見落としてしまうと、買値と同程度かそれ以上で売り抜けたとしても、結果的にマイナス収支やプラマイゼロになる可能性もあるのです。
投資初心者を食い物にする「悪徳コンサルタント」
ひと昔前より健全化されてはいるものの、不動産業界には悪徳業者が多くいます。なかでも危険なのは、アドバイスを提供する「不動産コンサルタント」の立場でありながら、投資初心者を食い物にする人たちの存在です。
真っ当なコンサル事業をしている事業者もいる一方で、不動産会社から「物件紹介のバックマージン」を受け取ることを最優先にしている事業者もいます。
後者は、良い物件の情報が流れてきたときには自身で購入し、良い物件が市場に出回っていないときに粗悪な物件を紹介して稼いでいるのです。投資の世界に限っては、輝かしい経歴を並べて専門家を名乗っていても、安易に信用しないよう気を付けなければなりません。
一方的に損をする可能性もある「サブリース契約」
サブリース契約は、物件運用を業者に委託して、毎月の家賃収入を保証してもらえる夢のような契約です。これまでにも「30年のあいだ家賃を保証します」という謳い文句によって、数多くの投資初心者がサブリース契約を結んでいます。
しかし、実際のところ、サブリース契約はハイリスク・ローリターンなシステムだといえます。物件運用を一任した段階でサブリース会社が「借主」、物件を借り上げてもらった投資家が「貸主」となり、借地借家法によって投資家の立場が弱くなってしまうからです。
実際に、サブリース会社は優位な立場であることを活かして、一方的に家賃保証の減額を提示したり、サブリース契約の解約を通告したりといった事例が発生しています。
サブリース契約のリスクは「サブリース契約でなぜ揉める?トラブルの原因になる問題点を徹底解説」の記事で解説しているので、あわせてご参照ください。
不動産投資のリスクを回避する3つのテクニック
ここまで、不動産投資に関連する10通りのリスクをご説明しました。なかには「確実に防ぐ方法」が存在しないリスクもありますが、発生する確率を抑えたり被害を最小限に加えたりすることは可能です。
この項では、10通りのリスクに対処するためのテクニックを、順番に3つ紹介していきます。
「入居者が住みたい家」を意識し続ける
入居者目線を持って不動産投資を実践するという意識は、リスクを抑えるために欠かせません。これにより、今回ご説明したリスクのうち以下の3つを対策できます。
対策できるリスク | 入居者目線を持てばどうなるの? |
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入居率低下 | ニーズを理解して、改装・設備交換に無駄なコストをかけず最適化できる |
家賃下落 | ニーズに合致した物件を用意することで、値下げ競争に巻き込まれない |
施設の移転 | 付加価値を付けて「移転に関係なく住み続けたい物件」を用意できる |
投資家はつい利益率ばかりを追求しがちですが、入居者が追求しているのは「住みやすさ」です。築浅物件であれば物件の新しさでカバーできるものの、築古物件になれば入居者目線を欠いた途端に空室が増えてしまいます。
上手く客観的な視点を持てない初心者期間は、基準の1つとして「その物件に自分なら住むのか」という問いを投げかけ続けることをおすすめします。
「お金を守るための知識武装」を徹底する
不動産投資に関する正しい知識を身に付けることで、理不尽にお金を失うことはなくなります。
弱肉強食の世界ともいえる不動産業界で、大きな痛手を負わないためには知識武装が必須。しっかりとした知識を備えていれば、つぎのような場面で必ず役立ちます。
対策できるリスク | 知識武装による効果の具体例 |
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家賃滞納 | 家賃保証会社を利用することで、滞納時も収益を確保できる |
金利上昇 | 金利上昇の許容度を考慮し、返済できる水準で融資を受ける |
資産価値の低下 | 資産価値に着目して、割安か割高なのかを判断できる |
短期譲渡課税 | 割高な課税を織り込んで、売却時期を決められる |
悪徳コンサルタント | 破綻した論理による誘導を察知できる |
サブリース契約 | 借地借家法を理解して不利な契約を結ばない |
「もう少し不動産投資に詳しければ」と後悔しないためにも、特に1軒目の購入前は入念に情報収集を続けることをおすすめします。
「不測の事態」までイメージして損をしない運用を心がける
地震や火災のような不測の事態は、あらゆるリスクのなかで最も回避が困難です。
いつ起こるか分からない災害に対して、投資家が取れる対策は大きく3つあります。
地震・火災の対策 |
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ハザードマップを参照して「災害が少ない地域」にのみ投資する |
2軒目以降をバラバラな地域に投資し、被害の可能性を分散する |
損害保険に加入して、災害時は補填で経営を立て直す |
対策は3つあるものの、ハザードマップを活用して分散投資をしても、被災する可能性を大幅に抑えることはできません。そのため、収益の安定しない1,2軒目のうちは特に、リスクを最小化するため損害保険に加入することをおすすめします。
「不動産投資を始めない」という選択に潜むリスクとは?
不動産投資を始めるとき、「大きなリスクを取って資産運用をして良いのか」と躊躇してしまうものです。確かに、不動産投資には今回ご説明した10通りのリスクがあります。
一方で、実は「不動産投資を始めない」という選択にもリスクがあるのです。
この項では、不動産投資を始めないことで起こる、3つのリスクを解説していきます。
定年退職まで給与一本に頼ったライフスタイルになる
資産運用をしていない会社員の多くは、収入源が本業の給与一本です。大手企業のリストラが話題になっている昨今、たった一本の給与所得が突然なくなる不安を抱えたまま、定年退職まで安心して生活できるでしょうか?
リスクを対策しつつ不動産投資を始めて、毎月まとまったキャッシュフローを得るスタイルと、失職を恐れつつも給与一本で働き続けるライフスタイルは、どちらがリスキーなのか再確認してみてください。
また、会社員のなかには金融商品を運用しているケースもありますが、株式投資の配当収入は多くても投資額に対して3%程度。配当金のある企業数は多くはないため、実際には配当収入がゼロという場合も多く、金融商品でまとまった定期収入を得ている会社員は稀です。
その点、不動産投資は利回り10%程度の物件も珍しくなく、毎月のキャッシュフローを得る手段として最適だといえます。
資産収入がないまま老後生活に突入してしまう
現役のうちは給与一本、退職以降は「退職金+年金+現預金」を生活費に充てるというのが、従来の一般的なライフプランでした。しかし、どの世帯もこういった老後生活を送れていたのは、潤沢な退職金と公的年金を受け取れていた平成初期までです。
にもかかわらず平均寿命は少しずつ伸びており、厚生労働省が公表する「平成30年簡易生命表の概況」によれば、男性の平均寿命は81.25年、女性の平均寿命は87.32年と例年通り前年度を更新する結果になりました。
つまり、ますます国や企業の援助に頼れなくなる状況下で、長い長い老後生活を乗り越えていかなければなりません。やがて資産収入のない世帯は、老後も現役時代と同程度の労働を強いられる可能性すらあるのです。
まとまった資産収入を得られる不動産投資は、こういった「老後の金欠」というリスクを解消する手段として、現実的な選択肢の1つだといえます。
インフレに対応できないまま資産を目減りさせる
2020年現在、日本は「インフレ率2%」を目標にして金融政策を実施しています。実際のところ、目標には到底及ばない水準にとどまっていますが、将来的にインフレが実現すれば資産運用をしない世帯は資産を目減りさせてしまいます。
というのも、インフレーションは物価上昇のことだからです。毎年2%のインフレが実現すれば、それは毎年2%ずつ物価が高くなるということ。つまり、相対的に保有している現金は、毎年2%ずつ価値が減っていくのです。
一方、物件は市場で流通する一商品であるため、インフレに伴って相場価格が高くなっていきます。こういった理由から、現金をそのまま保有している世帯は年々資産を減らし、物件を保有している世帯は年々資産が増えていくのです。
リスクが小さいと思いがちな銀行預金は、インフレが実現した途端に不利な運用方法となるため、政府がインフレ率2%を目標にしている期間は注意しておきましょう。
まとめ
不動産投資は、決して「安心安全な資産運用」とはいえません。しかし、リスクの多くは基礎知識を学ぶことで対策可能であり、物件を上手に運用すれば本業の給与を超えるキャッシュフローを得られます。
そして、資産運用をしないことがノーリスクだというのは誤りであり、あくまでリスクの種類が異なるのだということを忘れてはなりません。
リスクの対策を理解して資産運用を行うのか、資産運用を行わず退職金や公的年金の減額に恐怖しつつ過ごすのか、どちらを選ぶにせよライフプランの再確認をおすすめします。