不動産投資で団体信用生命保険が必須なのはなぜ?知っておくべき7つのこと
By Oh!Ya編集部
2,090view
先日、金融庁の資料で「老後は2,000万円必要になる」という旨の報告書が提出され話題になりました。このニュースを見て、自分の資産は自分で作らなければいけない…と思った人もいるでしょう。
そのような人の中には、収益性と安定性を求めて「不動産投資」を検討している人もいるはずです。
この記事では、不動産投資の特徴であ「団体信用生命保険(団信)」にフォーカスを当て解説します。団信は不動産投資をする上で意外と重要な要素なので、しっかりと理解しておきましょう。
目次
1.団体信用生命保険の概要
不動産投資で団信について知っておくべき1つ目は以下です。
- 団体信用生命保険の概要
- 団信は途中加入できない
- 基本は3種類
団信といっても「生命保険」くらいにしか認識していない方も多いでしょう。しかし、団信といっても1種類ではなく、それぞれ特徴があります。
団信の概要
団信とは、借入者が亡くなったときや高度障害になったときに、その時点の残債が支払われる生命保険です。たとえば、借入金額3,000万円のローンを組んで、団信に加入していたとします。
仮に、10年後に借入者が亡くなった場合に、その時点で残債が2,200万円あったとしましょう。このとき団信に加入していれば、その2,200万円の残債が補填されて完済できるというわけです。
住宅ローンを組むときは、フラット35以外は基本的に団信は必須加入です。一方、不動産投資ローンの場合は、必須加入にしている金融機関もあれば、任意加入の金融機関もあります。
団信は途中加入できない
また、注意点として団信は途中加入できないという点を認識しておきましょう。というのも、不動産投資の場合は、途中で団信に加入したいと思う人は意外と多いからです。
仮に、不動産投資で成功してれば、自分が亡くなっても大きな問題はありません。なぜなら、収益性を生み出す資産が家族に残せるからです。
そのため、一旦は団信には加入せず、不動産投資が成功するかどうかを見極め、想定通りに運用できなかったときに団信へ加入する…と考える人がいます。
しかし、団信は途中で加入できないので、このような考えの人は注意しましょう。
基本は3種類
一般的に、団信の種類は以下3種類です。
- 通常の団信
- 三大疾病特約付の団信
- 八大疾病特約付団信
通常の団信とは、前項で解説した「借入者が亡くなったときや高度障害になったとき」に残債が補填されます。
一方、三大疾病付き団信とは通常の団信に加えて「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」になったときも、残債が補填される団信です。
また、八大疾病とは、さらに「高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎」ときにも残債が補填されます。
このように、三大疾病や八大疾病付きにすると保障内容が手厚くなりますが、金利が上昇するなどのデメリットがあるので注意しましょう。
2.団信に加入できない場合もある
不動産投資で団信について知っておくべき2つ目は、団信に加入できない場合もあるという点です。この点については、以下を認識しておきましょう。
- 団信はあくまで生命保険
- 団信に加入できないとローンを組めないこともある
- 対策1:金融機関を変える
- 対策2:ワイド団信を検討する
団信はあくまで生命保険
団信は、あくまで生命保険の一種です。生命保険会社で保険に加入するときは、一般的に健康診断書を提出するでしょう。
不動産投資ローンの団信も、ケースバイケースではありますが、少なくとも「告知書」には疾病歴などは記入します。
つまり、その疾病歴や現在の健康状態によっては、団信に加入できないということです。
団信に加入できないとローンを組めないこともある
上述したように、不動産投資ローンの場合は団信加入が任意の金融機関もありますが、必須加入の金融機関も多いです。
そのため、健康状態が原因で団信加入できない可能性もあり、そのようなときのために以下の対策を覚えておきましょう。
- 対策1:金融機関を変える
- 対策2:ワイド団信を検討する
対策1:金融機関を変える
まずは、金融機関を変えることです。とはいえ、金融機関を変えても団信に通るわけではありません。
なぜなら、団信は金融機関ではなく、保険会社が加入を判断するので、金融機関を変えても審査基準が変わるわけではないからです。
つまり、「金融機関を変える」とは、団信が必須加入できない金融機関に乗り換えるという意味になります。
対策2:ワイド団信を検討する
ただし、金融機関ごとに金利などの条件面が異なるので、そう簡単に良い金融機関が見つかるとは限りません。
また、早く融資の審査に通らないと、検討している物件に申込みできずに、他の人に契約されてしまう可能性もあります。
そのため、なるべく金融機関を変えずに、同じ金融機関で再審査した方がスピーディーに進みます。方法としては、「ワイド団信」に加入することです。
ワイド団信は通常の団信よりも審査基準が緩く、通常の団信だとNGの場合でもOKになることがあります。
ただし、ワイド団信に加入すると金利がさらに上乗せされる…などデメリットがあるので、その点をきちんと確認した上で加入しましょう。
3.普通の生命保険に加入した方が良い場合もある
不動産投資で団信について知っておくべき3つ目は、民間の生命保険に加入した方が良い場合もあるということです。この点について以下を解説します。
- 団信の支払い金額
- 団信は年齢によって費用は変わらない
- 対策:民間の逓減保険を検討する
団信は決してお得な保険とは限りません。特に、年齢によっては損をすることさえあるので、十分注意しましょう。
団信の支払い金額
そもそも、団信に加入したときの支払いは、以下2つのパターンがあります。
- 団信加入を無料(銀行負担)にしている
- 保険料を金利に上乗せしている
「団信加入を無料にしている」といっても、実質は金利に上乗せしていることが多いですが、上記2パターンある点は認識しておきましょう。
団信は年齢によって費用は変わらない
一般的な生命保険は年齢によって支払う保険料が変わります。たとえば、ライフネット生命で定期死亡保険(2,000万円)に加入すると、年齢ごとに以下の保険料になります。
- 29歳:1,810円(毎月)21,720円(年間)
- 39歳:3,334円(毎月)40,008円(年間)
- 49歳:7,530円(毎月)90,360円(年間)
このように、プランが同じであれば基本的に年齢が若い方が支払い額は安くなるのが、一般的な保険です。
しかし、団信の場合には年齢は加味されません。つまり、「団信に加入すると○%金利上乗せ」というルールがあれば、29歳だろうが、50歳だろうが上乗せする金利は変わらないのです。
対策:民間の逓減保険を検討する
団信は前項のような仕組みのため、年齢が若い方が「団信は任意加入」の金融機関で借入をする場合は、民間の生命保険会社が提供する逓減保険を検討すると良いでしょう。
逓減保険については以下を解説します。
- 逓減保険とは?
- 逓減保険は団信の代わりになる
- 保険料の一例
逓減保険とは?
逓減保険とは、簡単にいうと保障される金額…つまり亡くなったときに補填される金額が、少しずつ減額されていく保険です。
たとえば、10年間は2,000万円の保障があり、以降10年間は1,000万円…そしてさいごの10年間は500万円になる…というイメージになります。
どのようなときに利用するかというと、子供が小さい時期は教育資金や養育費がかかるので保障を手厚くし、子供が成長するにつれて少しずつ保障を小さくする…というようなときに利用する保険です。
逓減保険は団信の代わりになる
逓減保険は団信の代わりになります。というのも、団信の保障も残債によって変わっていくため、時期が経過すれば少しずつ保障金額が減額されていくからです。
たとえば、2,000万円を借入期間25年、元利均等返済、金利2%で借り入れたときの残債は以下の通りです。
- 5年後:16,757,021円
- 10年後:13,173,276円
- 15年後:9,212,953円
- 20年後:4,836,483円
つまり、5年後と20年後では団信で保障される額が異なるため、仕組みとして逓減保険と同じというわけです。
保険料の一例
たとえば、楽天保険の逓減保険の保障金額と保険料を見ていきましょう。
- 1年~10年:保障内容3,000万円
- 11年~20年:保障内容1,000万円
- 21年~30年:保障内容500万円
保険料は年齢によりますが、25歳で月3,760円(年45,120円)、35歳で月4,470円(年53,640円)になります。
つまり、団信で金利を上乗せした方がお得か?逓減保険に加入した方がお得か?を判断し、支払い保険料が安い方、もしくは保障内容が手厚い方を選ぶのがベストということです。
4.無駄な保険に加入している可能性がある
不動産投資で団信について知っておくべき1つ目は、無駄な保険に加入している可能性があるという点です。
この点については、以下を解説していきます。
- 過剰な保障内容になっているかも
- 対策:既存保険の内容を見直す
不動産投資で団信に加入する場合は、現在加入している保険を見直すチャンスともいえます。
過剰な保障内容になっているかも
特に、若いうちから生命保険や医療保険などに加入している人は、自分が加入している保障内容を良く理解していない方もいるでしょう。
そのため、団信に加入することで、過剰な保障内容になってしまう可能性があります。
そうなると、団信に加入したことで金利が上乗せされ…民間の生命保険会社にも保険料を支払って…という無駄な支払いになっていることがあります。
対策:既存保険の内容を見直す
前項のような事態にならないためには、既存の保険を見直すことです。たとえば、高額な終身保険をかけているとしても、団信に加入すれば終身保険は不要かもしれません。
特に、三大疾病や八大疾病など、団信のプランを手厚くした場合には、既存の保険と被る部分も多くなるでしょう。そのため、民間の生命保険の担当者に連絡をして、既存の保険の見直しをおすすめします。
仮に、民間の生命保険を解約したことで年間10万円の保険料が浮いたのであれば、その金額はそのまま収益となります。
5.金利上昇による負担増
不動産投資で団信について知っておくべき5つ目は、金利上昇による負担増です。この点については以下を解説します。
- 金利上乗せ分はいくら?
- 対策:費用対効果できちんと考える
金利上昇は支出増になるので、不動産投資における収支が悪化するため要注意です。
金利上乗せ分はいくら?
金利がどのくらい上乗せされるかは金融機関によりますが、一般的には0.3%ほど金利が上昇すると思っておきましょう。
そもそも、不動産投資ローンは住宅ローンよりも金利が高いです。たとえば、住宅ローンだと最低金利は0.5%ほどですが、不動産投資ローンは低くても1%台、2%台~3%ほどの場合もあります。
つまり、少しでも金利を抑えたい状況の中で、団信によって金利が0.3%上乗せされるのは、借入者にとって大きな負担増になるというわけです。
対策:費用対効果できちんと考える
このような事情から、団信は任意加入で加入時に金利が上がる場合は、費用対効果をきちんと考えなければいけません。
たとえば、借入期間25年で金利が0.3%上昇したら、借入金額によってどのくらい返済額に違いが出るかを見ていきましょう。
借入金額 | 総返済額の増額分 | 毎月返済額の増額分 |
---|---|---|
1,000万円 | 412,200円 | 1,374円 |
2,000万円 | 824,400円 | 2,748円 |
3,000万円 | 1,236,600円 | 4,122円 |
4,000万円 | 1,648,800円 | 5,496円 |
5,000万円 | 2,061,000円 | 6,870円 |
上述した逓減保険に加入したときに支払う保険料も踏まえ、上記の金額が増額してまで加入すべきかは客観的に判断しましょう。
6.特約の内容を良くチェックする
不動産投資で団信について知っておくべき6つ目は、特約の内容を良くチェックすることです。たとえば、8大疾病付き団信の場合、「ガン」になったときに残債が補填されます。
しかし、たとえばガンの中でも「皮膚ガンは対象外」など、細かいルールが定められている場合があるのです。
そのため、特約を付保する場合には、特約の内容をよく見て判断しなければいけません。
7.団信のメリットを知る
不動産投資で団信について知っておくべき7つ目は、団信のメリットである以下を知ることです。
- 家族に残債無しの資産を残せる
- 保障が欲しいときに助けてくれる
- ほかの投資にはない保障
前項までで解説した点と、以下で解説する団信のメリットをきちんと理解しましょう。その上で、たとえば団信に任意加入の場合は加入するか、特約を付けるか…などの判断をします。
家族に資産を残せる
不動産投資で団信を設定する1つ目のメリットは、家族に残債なしの資産を残せるという点です。
逆にいうと、団信に加入していないということは、家族に不動産という資産は残せますが、赤字物件を残す可能性があります。
というのも、不動産投資の収益は「家賃収入-経費」であり、その経費の中で最も高額なのがローンの支払いです。
そのため、残債無しの資産を家族に残せるのであれば、その不動産から収益を生み出しやすいので、家族に「不労所得を生み出す良質な資産」を残すことができます。
保障が欲しいときに助けてくれる
不動産投資で団信を設定する2つ目のメリットは、保障が欲しいときに助けてくれる保険だからです。これは、上述した「団信の保障金額はローン残債である」という点に関連します。
たとえば、借入3,000万円で投資物件を購入した場合、もし借入者が亡くなってしまった場合に一番困るのは、残債がたくさん残っている状態のときでしょう。
というのも、仮に赤字物件になったときでも残債が多いと売りにくいからです。
つまり、団信の仕組みである「保障額は残債と連動する」というのは、保障が欲しい「残債が残っているとき」に手厚い内容になっており、保障があまりいらない「残債が減っているとき」には保証が手薄になっている保険なのです。
ほかの投資にはない保障
不動産投資で団信を設定する3つ目のメリットは、団信のような保障はほかの投資にはないという点です。
たとえば、一般的な投資には以下があります。
- 株式投資
- 投資信託
- REIT
- FX
- 国債や社債
上記の投資で、たとえば株式投資などは証券会社にお金を借りて取引する「信用取引」という手法がありますが、信用取引だとしても団信のような保障はありません。
つまり、「投資している人が亡くなったり高度障害になったりしたとき」家族が安心できる投資は、団信に加入できる不動産投資しかないのです。
まとめ
このように、実は「団信」といっても種類による特徴がありますし、金融機関によって上乗せ金利があったり無料だったりします。
また、逓減保険の方がお得な場合もあるので、その点も踏まえて加入するかどうかを判断しましょう。
金融機関選びのときは、金利などの条件面はもちろんですが、上述した団信に関することも確認することが大切です。