不動産投資におけるファンドの役割と基礎知識まとめ
By Oh!Ya編集部
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不動産投資を検討している人の中で、「不動産ファンド」という言葉を目にした方が多いと思います。しかし、この言葉は中々馴染みのない言葉ではあります。
一方、現物不動産投資は何となく想像できると思いますがその違いについては疑問を感じる人もいるでしょう。そこで今回は、不動産投資におけるファンドの役割、およびファンドに関連する投資、そして現物不動産投資との違いを解説します。
不動産ファンドとは?
まず、不動産投資におけるファンドの役割を理解するためには、以下を理解しておきましょう。
- 不動産ファンドの概要
- 不動産ファンドの利益構造
- SPCとは?
- ノンリコースローンとは?
SPCやノンリコースローンは見慣れない言葉だと思いますが、仕組み自体は単純なものです。
不動産ファンドの概要
不動産ファンドとは、投資家から出資してもらい、その出資額と金融機関からの融資を利用して不動産を取得し、その不動産からの収益を出資者に還元するものです。ファンドによって、不動産の種類に違いがあり、その不動産種類などによって投資家は出資するかの判断をします。
たとえば、「住宅系」であれば賃貸マンションを中心に保有し、「商業系」であれば商業ビルを中心に保有します。賃貸マンションであれば入居者の賃料収入がメインの収益となり、商業ビルであればテナントからの賃料収入がメインの収益です。
投資家は、そのファンドが扱う不動産の種類や、そのファンドの実績などを加味して出資するかを決めるというわけです。
SPCとは?
さて、不動産ファンドが何をするところなのか分かったところで、次に不動産ファンドの肝となるSPCについて解説します。SPCとは、「Special Purpose Company」の略量で、日本語では特定目的会社といいます。SPCに関しては以下の点を理解しておきましょう。
- SPCをつくるメリット
- ノンリコースローンとは?
SPCをつくるメリット
SPCは法人ですが、その法人が独自に何か事業を行い、利益を得るわけではありません。SPCはあくまで不動産を購入するだけの法人であり、言わば「器」の役割を担います。そんなSPCのメリットは、「自社のバランスシートから分離できる」という点になります。
つまり、SPCで保有した不動産がいくら赤字を出しても、自社の業績には関係ないということです。言い換えると、大量に不動産を保有するとリスクがあるので、SPCという別法人をつくることでリスクを逃がしているということになります。
ノンリコースローンとは?
さて、不動産ファンドを理解する上でSPCと並んで重要なのが、ノンリコースローンという融資です。ノンリコースローンについては以下を理解しておきましょう。
- ノンリコースローンの仕組み
- ほかのローンとの違い
- ノンリコースローンのデメリット
SPCとノンリコースローンは、不動産ファンドが収益を上げるためのキーワードです。つまり、不動産ファンドに関連する投資を行うときに、本当に収益を上げられるか?の判断材料になる要素ということです。
ノンリコースローンの仕組み
ノンリコースローンは、日本語で「非遡及(そきゅう)融資」と呼ばれています。仕組みを簡単にいうと、「担保設定したもの以上の支払い義務を負わないローン」のことです。つまり、どんなに赤字を計上しても、担保以外の金銭や資産を請求されません。
一般的には融資を受けて保有する不動産が担保になるので、事業に失敗して支払いができなくなっても、その不動産を処分されるだけで済むというわけです。
ほかのローンとの違い
たとえば、銀行から3,000万円の住宅ローンを借りて自宅を購入したとします。そのとき、銀行は自宅を担保に入れます。そして、仮に住宅ローンの支払いができない場合には自宅を処分するという流れです。
しかし、仮に2,000万円の残債が残っている状態で自宅が1,300万円で処分されれば、700万円のローンが残ります。その際は、銀行から700万円の返済も要求されるので、不動産も処分された上でさらに借金も残るというわけです。一方、ノンリコースローンの場合は700万円の借金は残りません。
ノンリコースローンのデメリット
このように、不動産ファンド、引いては出資者にとってメリットが大きいノンリコースローンですが、ノンリコースローンにはデメリットもあります。それは、ノンリコースローンは金融機関にとって不利なので、通常の融資よりも金利が高く、審査は厳しいという点です。
不動産ファンドの利益構造
さて、不動産ファンドの仕組み、SPCおよびノンリコースローンについて理解できたら、次に具体的に不動産ファンドがどのような利益構造になっているかという点を解説します。不動産ファンドが利益を上げる流れは以下の通りです。
- 投資家から出資金を募る
- 出資者に対して還元率を示す
- SPCをつくりノンリコースローンを利用し物件取得
- 不動産を運用して還元する
上記は、不動産ファンドを利用した「個人の投資」にも通じる部分なので、きちんと理解しておきましょう。
投資家から出資金を募る
たとえば、Aファンドを立ち上げたとして、そのAファンドは投資家から出資金を募り20億円を集めたとします。一般的には「機関投資家」といわれる、生命保険会社など法人から出資を受けるケースが多いです。
ちなみに、不動産ファンドを利用した個人向けの投資には「REIT」というものがあり、REITについては後述します。
出資者に対して還元率を示す
このとき、出資者に「出資額の6%を還元します」として売りこんだとすれば、投資家は実質利回りで年間6%の収益を見込んで出資するということです。たとえば、投資家がそのファンドに1億円出資すれば、年間で600万円の収益を上げられると期待しています。
逆に言うと、いくら還元率を提示されても「この還元率は無理そうだな・・・」と判断すれば出資しません。その判断基準が、上述した「ファンドがどの種類(住宅系や商業系など)の不動産を取得するのか?」という点や、「そのファンドを立ち上げた法人の実績」などになるのです。
SPCをつくりノンリコースローンを利用し物件取得
その後AファンドはSPCをつくり、たとえばSPC名義で出資金20億円を元手に、さらに金融機関から20億円の融資を受けたとします。その合計40億円の資金を元手にして、商業ビルを4棟保有したとしましょう。
もちろん、何の物件を保有するかはファンドによります。賃貸マンションかもしれませんし、ホテルかもしれません。このとき、仮にノンリコースローンの金利が5年後に一括返済することを条件に3%だったと仮定します。また、商業ビルからの収益が年間3億円だったとしましょう。
不動産を運用して還元する
前項までを整理すると・・・
- 年間収益:3億円(商業ビル4棟)
- 年間ローン金利:6,000万円(20億円×金利3%)
- 出資者への分配金:1.2億円(20億円×還元率6%)
上記がザックリとした収支です。ほかにも運用費用などの諸費用がかかりますが、分かりやすいように一旦割愛します。この収支を計算した 1.2億円がこのファンドが得る収益です。
これが不動産ファンドの利益構造になり、この利益構造が成立することで出資者は儲けることができるのです。投資家が得る分配金は、上手く行けば自分が出資した額の6%です。
REIT(不動産投資信託)とは?
さて、前項までで不動産ファンドの仕組みを理解できたと思います。次は、不動産ファンドの仕組みを利用して個人が投資をするREITについて、以下の点を解説していきます。
- REITの概要
- REITを取得する流れ
- REITのメリット
- REITのデメリット
- REITに向いている人
上述したように、いわゆる「不動産ファンド」に出資するのは機関投資家なので、個人が出資するケースはほぼありません。そのため、不動産ファンドを利用した個人が行う投資はREITになるので、前項の不動産ファンドの仕組みを頭に置きながら以下を読み進めていきましょう。
REITの概要
REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略称で、そこにJAPAN(日本)のJを付けて「J-REIT」とも言われます。そもそもREITはアメリカで生まれた投資であり、それと区別するために「J」を付けているだけなので、日本国内でREITと言えばJ-REITを指す場合が多いです。
REITは「不動産投資信託」と呼ばれるくらいなので、投資信託の一種であり基本的には上述した不動産ファンドと同じ仕組みになります。要は、不動産投資法人が不動産を購入し、その不動産からの収益を出資者に分配するという仕組みです。
不動産投資法人がファンドと同じ役割を担い、投資家が出資する方法はREITを購入することです。REITは株などと同じように上場されているので、証券会社を通じて購入することになります。
REITの仕組み
さて、不動産ファンドの仕組みを理解していればREITの仕組みも何となく分かると思いますが、改めてREITの仕組みを理解するために以下を解説していきます。
- REITで利益を出す流れ
- REITに関連する各会社
- 不動産ファンドとの違い
REITで利益を出す流れ
REITで利益を出す流れは不動産ファンドと概ね同じです。投資法人が投資家から出資金を募り、そこに融資を加えて不動産を購入します。
そして、不動産の運用を各会社に依頼して、その会社への手数料や自社の利益などを差し引いた収益を投資家に分配するという仕組みです。
REITに関連する各会社
REITには以下のように関連する会社がいくつもあります。
- 運用会社
- 資産保管会社
- 事務受託会社
運用会社とは、不動産の選別や賃貸条件など大きな戦略を立てたり、財務戦略を立案したりする、REITの肝となる会社です。資産保管会社とは、保有している不動産の管理を行う会社で、投資信託が担うケースが多いです。事務受託会社の役割とは、会計や納税関連を担当しています。
REITと不動産ファンドの関係
不動産ファンドとは「出資者からお金を募り不動産を購入し、その収益を分配するところ」なので、REITも不動産ファンドの一種です。一般的に、「私募REIT」や「私募ファンド」のように、「私募」という言葉が付けば、機関投資家用の不動産ファンドと思っておきましょう。
一方、REITは個人を対象にした不動産ファンドの投資商品です。いわば、「不動産ファンドの仕組みを利用した個人向けの投資商品」ということができます。
REITを取得する流れ
REITの取得は以下のような流れです。
- 証券会社を選定する
- 証券会社に口座を開く
- 証券会社を通じてREITを購入する
株と同じように、証券会社に口座を開き、証券会社を通じて購入するという簡単な流れになります。証券会社によって、取り扱い銘柄や売買手数料が異なるので、その点を比較して証券会社は選択すると良いでしょう。
REITのメリット
そんなREITのメリットは以下の点になります。
- 少額から投資できる
- 分散投資が可能
- 専門家が運用する
- 流動性が高い
- 収益率が高い
少額から投資できる
REITは「1口」単位で取得することができ、中には10万円以下のREITも存在します。REITを購入することで間接的に不動産を購入することにつながるので、10万円以下で不動産投資ができるという点は大きなメリットといえます。
分散投資が可能
投資法人はいくつも不動産を購入するので、必然的に分散投資ができます。不動産は地震などの天災リスクもあるので、各地に不動産を分散させた方がリスクヘッジできます。また、空室時も複数の物件を所有することで、収益を補えるというメリットがあるのです。
仮に、現物不動産でリスク分散するとなると、複数の不動産を所有することになります。そのため、初期費用が多額になるというデメリットつながるのです。
専門家が運用する
不動産投資は、物件選定や賃料設定、修繕など色々と「決めること」が多いです。REITであれば、それを全て専門家が行うので精度の高い投資になるという点もメリットといえます。
流動性が高い
上述したように、REITは証券取引所に上場されているので流動性が高いです。株式取引と同じように、価格さえ合えば一瞬で取引が成立します。分配金を得ることで収益を上げることもできますが、REITは売買益を得るという選択肢もあるのです。
収益率が高い
REITは保有している不動産からの収益を分配しますが、REITの場合は「収益の90%超を分配する」などの一定の条件を満たせば、実質的に法人税はかかりません。また、利益を自社内に留めておく「内部留保」もないので、収益率が高い点もメリットになります。
事実、不動産証券化協会※のデータを見ると、REITの利回りは4%であり、東証一部の利回りの2%と比較すると収益率の高さが分かると思います。
REITのデメリット
一方、REITには以下のリスクがある点がデメリットになります。
- 不動産市場のリスク
- 金利変動リスク
- 天災リスク
- 上場廃止になるリスク
- 運営に関するリスク
上記の不動産市場・金利変動・天災リスクは不動産投資ならではのリスクです。一方、ほかの2つはREITならではのリスクといえるでしょう。
不動産市場のリスク
不動産市場は景気に左右されやすいです。つまり、賃料や売買価格は景気によって大きく左右し、それによって賃料収入や不動産価値が変わります。そうなると、REITを保有することで得られる分配金の減額や、REIT価格の減額につながるのです。
金利変動リスク
REITは、金融機関からの借入も行っているので、金利が上昇すれば支払金額が増えます。それは「支出増」になり、不動産から得る収益を圧迫することにつながるので、前項と同じく分配金・REIT価格の減額につながってしまうのです。
天災リスク
不動産は現物資産である故に、火災・地震・水害などのリスクにさらされます。もちろん、天災が起こったときは企業にも影響して株価が下がるケースはありますが、不動産は実際に劣化したり破損したりするリスクがあるのです。
上場廃止になるリスク
REITは証券取引所に上場していますが、上場を維持するためには証券取引所が定める基準をクリアしている必要があります。仮に、上場基準に抵触した場合は上場廃止になり、REITの価値が極端に下がる、もしくはゼロになるリスクもあるのです。
運営に関するリスク
REITは投資法人が運営しています。投資法人は通常の法人なので、破綻するリスクがあるのです。破綻すれば、株と同じくREIT価格は著しく下落するリスクがあります。また、投資法人だけでなく、上述した関連会社が破綻することでも影響を受けます。
現物不動産投資とは?
さて、ここまで不動産ファンドに関連する投資について解説してきました。次に、不動産投資の代表格である現物不動産投資について、以下の点を解説していきます。
- 現物不動産投資の概要
- 現物不動産投資を行う流れ
- 現物不動産投資のメリット・デメリット
現物不動産投資の概要
現物不動産投資には、大きく分けると以下のような種類があります。
- 一棟不動産の投資
- 区分所有の投資
- 民泊による投資
- 土地活用
厳密に言うと現物不動産投資はもっとありますが、一般的な種類でいうと上記の4種類です。
一棟不動産の投資
一棟不動産の投資とは、アパートやマンションを一棟所有して、そこの賃料収入を得るという投資になります。一棟を自ら建築するケースもありますが、一棟を中古で購入するケースもあります。特にマンションは鉄筋コンクリート造で規模も大きいため、初期費用も高額になる点が特徴です。
区分所有の投資
区分所有とは「一室」を購入して賃貸に回す投資です。アパートの一室やマンションの一室、戸建を購入して賃貸経営することも区分所有の投資といえるでしょう。初期費用も一棟不動産ほどはかからないので、最も一般的な現物不動産投資です。
民泊による投資
民泊とは、自分の所有している家に第三者を宿泊させて、宿泊費用で収益を上げる投資です。民泊仲介サイトに物件を登録して集客するという流れになります。
土地活用
土地活用とは、以下のように土地を活用して収益を得る方法です。
- 駐車場経営
- アパート経営
- 土地信託
- 太陽光発電
とにかく、土地を使い収益を上げること全般が土地活用です。土地にアパートを建築すれば、上述した「一棟不動産の投資」となります。
現物不動産投資のメリット・デメリット
現物不動産投資のメリット・デメリットといっても、前項のように種類がたくさんあります。そのため、種類ごとのメリット・デメリットを以下のように解説していきます。
なお、それぞれの現物不動産投資にも種類があるので、一棟不動産の投資は「アパート経営」、区分所有の投資は「1R(ワンルーム)マンション投資」、土地活用は「駐車場経営」をピックアップしています。民泊の投資は一般的ではないので、ここでは割愛します。
項目 | アパート経営 | 1R投資 | 駐車場経営 |
---|---|---|---|
収益性 | ◎高い | ×低い | △やや低い |
初期費用 | ×高い | 〇やや低い | ◎低い |
ランニングコスト | ×高い | 〇やや低い | ◎低い |
流動性 | △やや低い | 〇普通 | ◎高い |
節税効果 | ◎高い | 〇やや高い | ×低い |
ノウハウ | ◎身に付く | 〇やや身に付く | △あまり身に付かない |
※横スクロールできます。
収益性
収益性は複数の部屋から賃料収入を得られるアパート経営が一番高く、次に駐車場経営、1R投資とつづきます。もちろんエリアによって異なりますが、1R投資は賃料自体が低く1室が所有できないので、そこまで大きな収益を得るのは難しいでしょう。
駐車場経営は、コインパーキングと月極駐車場があります。どちらもアパート経営には及ばず、エリアによっては1R投資と同じくらい、またはそれ以下の収益になります。
初期費用
初期費用は断トツでアパート経営が高いです。特に、土地にアパートを建築する場合は建築費用が1億円を超すケースも少なくありません。一方、1R投資は中古で1室購入して賃付けするのが通常ですが、面積が小さいので取得費用は安いです。
そして、駐車場経営はさらに初期費用が低くなります。月極駐車場であれば、土地に区切りを付ければ良いので、大した金額にはなりません。コインパーキングも、コインパーキング業者が費用負担するケースが多いです。
ランニングコスト
ランニングコストも、アパート経営が断トツで高いです。室内の補修や管理費用以外に、外観の補修費用などがあるからです。1R投資は基本的に1室の補修や管理費用なので、アパート経営ほどは高くはなりません。駐車場経営のランニングコストは、固定資産税などの税金くらいなので低いといえます。
このように、アパート経営は収益性が高いですが、初期費用とランニングコストも高いので、失敗したときのリスクも大きいです。一方、1R投資と駐車場経営は、収益性は高くありませんが初期費用とランニングコストが低いので失敗したときのリスクも低くなります。
流動性
流動性(売りやすさ)に関しては、金額が高くなるアパートが一番低く、1R投資、駐車場経営と続きます。1R投資もマンションの一室を売るので「建物を売る」という意味ではアパート経営と同じですが、金額が遥かに安いのでアパートよりは売りやすいといえます。
駐車場経営は、建物がなく「土地を売る」という感覚なので、流動性は高いです。さらに、駐車場経営をやめてアパート経営をするなど、用途変更がしやすい点もメリットといえます。
節税効果
まず、土地に建物を建築しており、さらに借家にしていると固定資産税・都市計画税の軽減が大きいです。その意味では、土地を所有し、かつアパート経営しているケースが最も節税効果が高いといえます。
ただ、そもそも現金より不動産で所有している方が相続税の評価額が下がるので、その意味では現物不動産投資をしている以上、節税効果は高いといえます。
ノウハウ
アパート経営の場合は、複数の部屋を所有する上に、外観や共用部も自分で管理します。そのため、不動産投資に関するあらゆるノウハウが身に付くというメリットがあるのです。また、1R投資も一室とはいえ、補修や家賃の設定、物件選びなど、色々なノウハウが身に付くでしょう。
このノウハウは、さらに事業を拡大するときに役立ちます。一方、駐車場経営の場合は、特に自分なりに工夫するポイントは少ないので、不動産投資のノウハウは大して身に付きません。
現物不動産投資を行う流れ
さて、前項のようなメリット・デメリットに違いのある現物不動産投資ですが、投資を行う流れは以下の通り概ね同じです。
- 条件を決める
- 物件を探す
- 申し込み・契約を行う
- 運用開始
条件を決める
条件とは、エリアや物件のことです。どんな物件に投資をするか?初期費用はどのくらいかけるか?借り入れはするかしないか?するなら金額はどのくらいか?など、不動産投資に関するもろもろの条件を決めます。
物件を探す
次に物件探しです。中古や新築も含め、前項の条件に合うような物件をひたすら探します。駐車場経営であれば既に土地は所有しているので、どの業者に依頼するかを選定するイメージです。アパート経営や1R投資の場合には、仲介会社と連携して物件を探します。
申し込み・契約を行う
目当ての物件があれば、次に申込・契約を行います。この過程で価格交渉などもありますが、通常は仲介会社が主導して行います。価格や引渡しなど、もろもろの条件が合えば売買契約書にサインをします。駐車場経営であれば、委託先と業務委託契約などを結ぶという流れです。
運用開始
物件を取得すれば、いよいよ運用開始です。現物不動産投資の特徴でもありますが、物件取得をして終わりではなく、その後に運用する必要があります。運用方法はそれぞれ異なりますが、一般的に管理会社などの専門業者に依頼をして管理・運用を任せます。
REIT VS 現物不動産投資
さて、ここまでで不動産ファンド、および不動産ファンドに付随する投資である「REIT」、そして現物不動産投資について理解できたと思います。次は、REITと現物不動産投資を比較して、どちらの投資が自分に向いているのか?という話です。
その点を知るために、以下の項目で比較していくので、自分にどちらが向いているかを検証しましょう。なお、今回は現物不動産投資の中でもポピュラーな一棟投資と区分投資の2つに絞った話です。
- 収益はどちらが高い?
- リスクはどちらが高い?
- 難易度はどちらが高い?
結論からいうと、収益は現物不動産の方が高いですが、リスクや難易度はREITの方が低いです。そのため、投資をして資産を増やしたいのであれば現物不動産投資の方が良いでしょう。
あくまで、REITは投資の一種であり、資産の増加は「少しずつ」になります。そのため、メインに置くというよりはサブとしてポートフォリオの一端を担うようなイメージが良いです。
収益はどちらが高い?
収益性に関しては、現物不動産投資の方が高いです。収益性は利回りを比較すると分かりやすいでしょう。上述したように、REITの利回りは4%ほどですが、現物不動産投資の利回りは、物件にもよりますが5%~8%ほどが一般的です。
また、現物不動産は自分が融資を受けて不動産を購入できるので、自己資金の何倍もの資産が持てます。それが収益性の高さにつながっているというわけです。
REITで得る収益
たとえば、自己資金が300万円あり、300万円分のREITを取得したとします。その際、利回りが4%の場合には年間で12万円の収益ということです。
現物不動産で得る収益
同じく、自己資金が300万円であり、借入をして3,000万円の現物不動産投資をしたとします。仮に、利回りが6%であれば年間180万円の収益が入ってくるというわけです。
これは、前項のREITと比較すると15倍の収益であり、融資を受けることによる「レバレッジ効果」があるからこそできる実現できる収益性です。このように、「運用が成功する」という前提ですが、収益性は現物不動産に軍配が上がるでしょう。
現物不動産を持っている
また、現物不動産投資の場合は土地や建物という資産が手元に残ります。もちろん、価値変動はありますが、大地震などで滅失しない限りは価値がゼロになりリスクは極めて低いです。一方、REITは上述の通り、上場廃止など「価値がゼロ」になるリスクがあります。
この「現物不動産を所有している」という点も、現物不動産投資の方が収益性は高いという理由の1つといえるでしょう。
リスクはどちらが高い?
一方、リスクに関しては現物不動産の方が高く、それは以下の項目ごとにチェックすることで分かります。
- 初期費用の高さ
- ランニングコストの高さ
- 災害リスク
- 流動性
- 入居者トラブル
- 空室・家賃下落リスク
初期費用の高さ
上述したように、駐車場経営を除いて現物不動産は初期費用が高くなります。1R投資であっても、融資を受け一千万円単位の初期費用になってくるので、その点は基本的に自己資金だけで行うREITと大きく違う点でしょう。
融資を受けるということは、「借金の返済」というものがあり、それには金利も上乗せされます。返済できなければ担保に入れている不動産は処分されるので、その点においても現物不動産投資の方がリスクはREITよりは高いです。
ランニングコストの高さ
現物不動産投資には、以下のようなランニングコストがかかります。
- 室内や外観の補修・修繕費用
- 室内の設備交換費用
- 固定資産税・都市計画税
- 管理会社への委託費用
- マンションであれば管理費・修繕積立金
- 確定申告を税理士へ委託すれば税理士への報酬
もちろん、REITも投資法人が不動産を保有しているので、上記の金額はかかっています。しかし、投資家が直接負担するわけではないので、実際の支出としてはゼロです。この点も、REITの方がリスクは小さくなる理由になります。
災害リスク
上述したように、REITにも災害リスクはありますが、現物不動産投資よりも小さいです。というのも、REITの場合は投資法人が複数の不動産を購入するので、災害が起きてもリスク分散できるからです。
一方、現物不動産投資は複数の不動産を所有することで災害リスクの分散はできますが、そうすると「借入の増大」など新たなリスクが生まれます。
流動性
流動性においては、REITの方が圧倒的に高いです。現物不動産の売却は、順調にいっても査定~引渡しまで半年程度の時間がかかるのが一般的です。一方、REITの場合は上述したように価格さえ合えば一瞬で売買が完了します。
入居者トラブル
不動産投資の本質は賃料収入なので、入居者とトラブルになるリスクもあります。もちろん、REITも間接的に不動産を所有しているので、入居者とのトラブルリスクはあります。しかし、実際に対応するのは運用会社ですし、たくさんの物件を保有しているのでリスクは分散できます。
一方、現物不動産投資の場合は、管理会社が対応するもののオーナーである自分が判断することもあるので手間がかかります。また、場合によっては、賃料未払いなどのリスクもあるのです。
空室・家賃下落リスク
これまで解説したように、空室・家賃下落リスクはREITにもあります。しかし、やはりここでも「複数の物件を所有している」という点が大きく、仮に一室が空室になってもほかの物件でカバーできます。一方、現物不動産投資の場合は、空室・家賃下落リスクはダイレクトに影響します。
特に、1R投資などのような区分所有の投資に関しては、空室が出た時点で収益はゼロです。その点から、現物不動産の方が空室・家賃下落リスクは高いといえます。
難易度はどちらが高い?
難易度は、以下の点において現物不動産の方が高いといえます。
- 物件・銘柄選び
- 運用する手間
物件・銘柄選び
現物不動産でいうと「物件選び」、REITでいうと「銘柄選び」になりますが、現物不動産の物件選びの方が若干難しいです。というのも、REITの場合は専門家が物件を選んでくれるので、専門家が出しているホワイトペーパーを比較すれば銘柄は決まります。
ホワイトペーパーは、株式会社でいうIR情報のようなものなので、その資料を読めばREITの情報は分かるのです。一方、現物不動産の場合は自ら情報を集め判断する必要があります。ただ、不動産投資に関する知見やノウハウは現物不動産投資の方が高まるといえます。
運用する手間
不動産を運用する際は、管理会社に以下を任せます。
- 賃借人の募集
- 物件の案内
- 賃借希望者との交渉
- 賃貸借契約の締結
- 家賃の回収
- 家賃の改定など
ただ、現物不動産の場合は自らがオーナーになるので、さまざまな場面で判断が求められます。たとえば、「この人と契約を結んで良いか?」「家賃は下げるか?」などです。その意味ではREITよりは手間がかかるといえます。
まとめ
このように、不動産ファンドの仕組み、そして不動産ファンドを利用した投資であるREITに関しての理解が深まったと思います。そして、現物不動産投資の仕組みやメリット・デメリット、そしてREITとの違いも解説しました。
相性にもよりますが、資産を増やすという目的であれば現物不動産の方が良いでしょう。やはり、上述した融資を利用することでのレバレッジ効果が絶大です。リスクもありますが、投資にはリスクはつきものなので、まずは少額でできる現物不動産投資からおすすめします。
色々と情報収集の方法がありますが、本やネットなどで情報収取をした後は、実際にセミナーに参加するなどをおすすめします。