不動産投資で火災保険について知っておくべき5つのこと
By Oh!Ya編集部
3,220view
不動産投資は、不動産という現物資産を保有するので、どうしても火事や地震などの災害リスクに弱い投資です。
そのため、リスクヘッジのために火災保険に加入するのが一般的ですが、実は火災保険についてあまり良く知らない…という方もいるでしょう。しかし、物件によっては保険へ加入するかどうかは非常に重要です。
そこでこの記事では、不動産投資における火災保険にフォーカスを当て、火災保険の概要や保障範囲、そして家財補償や地震保険についても合わせて解説していきます。
目次
1.火災保険は必須加入
不動産投資で火災保険について知っておくべき1つ目は、火災保険はローンを組むと必須加入であるという点です。
不動産投資で物件を購入するときは不動産投資ローンを組むことが大半なので、多くの不動産投資家は火災保険に加入していることになります。
ローンを組むと火災保険が必須な理由
ローンを組むと火災保険に必須加入である理由は、金融機関が万が一のときに備えたいからです。というのも、仮に火災などが起きて家が毀損してしまえば、その不動産の資産価値は落ちます。
資産価値が落ちれば、家賃が下落することもありますし、補修費用も高額になるかもしれません。場合によっては、建物が滅失してしまうこともあり得ます。
そうなると、その物件のオーナーは金融機関にローンを返済できなくなる可能性があるのです。
そのため、金融機関としてはローンの借入者に火災保険へ加入してもらい、そのような事態へのリスクヘッジをさせるというわけです。
キャッシュで購入する場合も付保することが多い
仮に、ローンを組まずにキャッシュで物件を購入する場合は、火災保険に加入する必要はありません。しかし、詳しくは後述しますが火災保険はそこまで高いものではなく、保障範囲も非常に広い保険です。
そのため、仮にキャッシュで物件を買うときも火災保険への加入は検討した方が良いでしょう。事実、内閣府の調査によると、火災保険に加入している人の割合は8割を超えます。
2.火災保険の金額と相場について
不動産投資で火災保険について知っておくべき2つ目は、火災保険の費用に関する以下のことです。
- 保険料を左右する要素は?
- 相場金額
火災保険に加入すると保険料がかかるので、不動産投資の「支出」に読み込む必要があります。
保険料を左右する要素は?
火災保険料を左右する要素は以下の点です。
- 建物の構造
- 延べ床面積
- 築年数
- 災害リスク
- 家財補償を付けるかどうか
最も大きな要素は構造であり、鉄筋コンクリート造などの耐火の建築物の方が保険料は安いです。また、延べ床面積が広かったり、築年数が古かったりすると保険料は上がります。
さらに、そのエリアの災害リスクや、家財補償を付保するかどうかも保険料が変わる要素です。
相場金額
では、次に具体的な相場金額について解説します。
損保ジャパン日本興亜さんのサイトで火災保険料をシミュレーションできるので、事例として以下の物件で火災保険料をシミュレーションしてみましょう。
マンションの保険料
以下の条件で、火災保険料を算出してみます。
- 物件種別:マンション
- エリア:東京都
- 洪水や土砂災害の心配:あり
- 築年数10年
- 広さ:30㎡
- 家財補償:なし
その結果、建物の保険金額は530万円で、加入者が支払う保険料は2,850円(年間)です。仮に、300万円の家財保証を付けると4,890(年間)になります。
このように、マンションは耐火建築物ということもあり、火災保険の保険料はさほど高くないことが分かるでしょう。ただ、契約期間やプランなどによって保険料は変わるので、あくまで目安金額と認識ください。
一戸建ての保険料
一方、一戸建ても以下条件で保険料をシミュレーションしてみます。
- 物件種別:一戸建て
- エリア:東京都
- 洪水や土砂災害の心配:あり
- 構造:木造
- 建物価格:1,900万円
- 広さ:100㎡
- 築年数10年
- 家財補償:なし
この場合、保険金額は1,900万円で、支払う保険料は32,740円(年間)です。
また、上記の「構造」を木造ではなく耐火構造(鉄骨など)にすると、保険金額は2,910万円で保険料は23,430円(年間)です。
このように、一戸建ての場合は構造上の問題もあり、マンションより高い保険料となります。投資物件で戸建を選ぶケースは少ないですが、この保険料の違いは認識しておきましょう。
なお、前項と同じくこちらも目安金額として認識ください。
3.火災保険の保障内容を知る
不動産投資で火災保険について知っておくべき3つ目は、火災保険の保障内容に関する以下のことです。
- 保障は多岐に渡る
- ほかの家からの「もらい火」について
特に、火災保険の保障内容は「火災」だけでない点は認識しておくと良いでしょう。
保障は多岐に渡る
火災保険は「住まいの総合保険」と呼ばれるくらい保障内容が手厚く、具体的に以下のような保障内容になります。
- 火災:失火やもらい火による火災の保障
- 落雷:落雷による損害保障
- 破裂や爆発:破裂や爆発による損害保障
- 風災・雹災・雪災:風・雹・雪などによる損害保障
- 水濡れ・漏水などによる水濡れの損害保障
- 水災:台風や集中豪雨による損害保障
- 盗難:盗難にともなう損傷や汚損による損害保障
- 騒擾・集団行為等にともなう暴力行為:左記による損害保障
- 建物外部からの物体の落下・飛来・衝突:左記による損害保障
このように、火災だけでなく落雷やガス漏れでの爆発、漏水なども保障内容に含まれています。また、大雨での水災や盗難被害なども保証範囲内なので、万が一のときにも安心です。
ほかの家からの「もらい火」について
次に、「もらい火」について詳しく解説していきます。というのも、「火災」は自分の所有している部屋だけで発生するのではなく、隣戸や隣家からの「もらい火」による被害もあるからです。
実は、もらい火による損害は、もらい火を引き起こした相手に損害賠償請求できない場合があります。
これは、失火責任法という法律で定められており、相手が故意や重過失でない限りは損害賠償を請求できないので、自分自身が火災保険に加入していないと何の保障もないということです。
このようなリスクもあるため、火災保険への加入は必須といえるでしょう。
4.火災保険の保障範囲を知る
不動産投資で火災保険について知っておくべき4つ目は、火災保険の保障範囲について以下の点を知っておくことです。
- 専有部は自分自身の責任
- 共用部は管理組合かオーナー
上記はマンションの話であり、戸建の場合は専有部・共用部という考え方はありません。つまり、戸建の場合は、自分だけの責任で火災保険に加入するかどうかを判断します。
専有部は自分自身の責任
専有部とは、簡単にいうと「室内」のことです。たとえば、投資用マンションの一室(区分)を購入し、そこに客付けをして賃料収入を得るとします。
その場合、室内で火災が起きたり、水漏れが起きたりした場合には、区分所有者の責任になります。そのため、区分所有者は火災保険に加入し、専有部の火災などに対して対策をする必要があるのです。
共用部は管理組合かオーナー
一方、マンションには以下のような共用部があります。
- エントランス
- 外部廊下
- エレベータホール
- 駐輪場や駐車場など
上記の共用部に関しては、区分所有者ではなくその物件のオーナーや管理組合(入居者全員で組成される組合)で、火災保険に加入するか否かを決めます。
一棟投資の場合
たとえば、一棟マンション投資をする場合はその建物のオーナーになるので、共用部の火災保険は自分自身で加入するか否かを決めるということです。
もちろん、その保険料はオーナーが支払うことになるので、その保険料を加味した家賃設定にする必要があります。
分譲マンションを投資用にする
一方、分譲マンションを購入して投資用にする場合は、そのマンションの管理組合が共用部へ火災保険の加入をしているかどうかを確認しましょう。
仮に加入していなかったら、自分だけの一存で加入の判断はできません。
5.建物と家財の違いについて
不動産投資で火災保険について知っておくべき5つ目は、建物と家財補償に関する以下の点です。
- 建物部分とは?
- 家財補償は別途加入する必要がある
建物部分とは?
火災保険に加入すると、上述した火災などによる損害が保障されます。保障されるのは、以下に定義される「建物部分」です。
- 畳、ふすまなどの建具
- 建物に取り付けてあるエアコン
- 浴室やキッチン、洗面に付随する機器
- 門や塀など(一戸建て)
- 建物付属の物置や車庫(一戸建て)
- 建物の基礎部分 (一戸建て)
- 建物に固定してあるTVアンテナ(一戸建て)
上記が建物部分に該当するので、たとえば庭木やバルコニーに並べているグリーンなどは建物部分ではないので保障の対象外です。
家財補償は別途加入する必要がある
火災保険は家財補償に加入するかを選びます。家財補償に加入すると、火災などによって以下の商品などが損失を受けた分も、一定の範囲内で保障してくれます。
- 建物に収容している家具・衣服など
- 1個1組が30万円以下の貴金属や宝石など
たとえば、有価証券、プリペイドカード、動物、植物などの生き物、そしてデータ、ソフトウェア、プログラムなどは含まれません。
また、建物の外に持ち出している「家財」も含まれないの注意しましょう。プランによっては、たとえば「1個1組が30万円を超える貴金属や宝石など」も保障されるので、詳細は保険会社で確認しましょう。
6.地震保険との違い
不動産投資で火災保険について知っておくべき6つ目は、地震保険に関する以下のことです。
- 地震保険の保障内容とは?
- 地震保険の保障金額
- 地震保険は火災保険よりも高額
地震保険は単体で加入することはできず、必ず火災保険とセットで加入することになります。
地震保険の保障内容とは?
地震保険は以下のような内容を保障する保険です。
- 地震による火災で家が損傷した
- 地震による津波の影響で家が流された
逆にいうと、地震によって発生する火災で損失を受けても、地震保険を設定しないと火災保険だけでは保障されません。
ただ、地震による火災でも、自動車や1個または1組の価額が30万円を超える貴金属類などは対象外なので、詳細は保険会社ごとの商品を確認しましょう。
地震保険の保障金額
火災保険は、実際に被害を受けた金額が保険金として支払われますが、地震保険は仕組みが違います。というのも、地震保険は以下のように損失度合いによって、支払われる保険料が異なるからです。
- 全損:地震保険金額の100%
- 大半損:地震保険金額の60%
- 小半損:地震保険金額の30%
- ⼀部損:地震保険金額の5%
このような仕組みになっているので、たとえ地震保険が下りたとしても、地震によって受けた被害を全て賄えるかは分からない点は認識しておきましょう。
地震保険は火災保険よりも高額
地震保険は火災保険よりも高額になりますので、気になる方は三井住友海上さんのサイトでシミュレーションすることができます。
上述した火災保険と同じ条件で地震保険を付保すると、保険料は以下の通り増額します。
- 建物の保険金額 530万円:保険料2,850円(年間)→9,480円(年間)
- 建物の保険金額 1,900万円:保険料32,740円(年間)→69,700円(年間)
このように、地震保険を設定することで倍以上の支払い金額になるため、地震保険へ加入するかどうかは次章で解説する「災害リスク」を加味して判断しましょう。
7.災害リスクを調べておこう
不動産投資で火災保険について知っておくべき7つ目は、災害リスクを調べておくことです。特に、地震保険に加入するか…家財補償に加入するか…の判断は、以下を調べた上で判断しましょう。
- 火災のリスク
- 高低差を調べる
- 浸水リスクを調べる
- 地震によるリスクを調べる
- 液状化リスクを調べる
災害リスクを調べることは、保険に加入するかどうかの判断だけでなく、建物の資産価値を測る上でも重要な要素になります。
火災のリスク
消防庁の資料によると、平成30年の総出火件数は約3万7,900件でしたので、単純計算で1日につき104件の火災が起こっています。
日本全国の世帯数は約5,800万世帯なので、火事に遭う確率は0.04%以下です。このように、火災に遭う可能性は極めて低いですが、火災に遭った場合の経済的リスクは計り知れません。
そのため、現金で購入する人も、ローンを完済して火災保険への加入義務がなくなった人も、基本的には火災保険への加入した方が良いでしょう。
高低差を調べる
次に、不動産が所在するエリアの高低差を調べましょう。というのも、次項で解説する浸水リスクは、その土地の標高によって影響を受けるからです。
もちろん、標高が高い方が大雨などによる浸水リスクは低くなります。調べ方は、国土地理院のサイトから該当するエリアを調べるだけです。
浸水リスクを調べる
次に、浸水リスクを調べましょう。浸水リスクは行政のサイトなどでハザードマップを確認することです。たとえば、豊島区のハザードマップを見てみましょう。
豊島区全体で見ると、浸水リスクがゼロのエリアも多いですが、エリア内には2m以上の浸水リスクがあるエリアも存在します。
ハザードマップの多くは、平成12年9月に発生した東海豪雨(総雨量589mm時間最大雨量114mm)という実際の豪雨を想定しているので、実際に起こる可能性がある現実的なリスクです。
たとえば、標高を調べたところ該当物件の標高が低い位置にあり、浸水リスクも高いエリア…かつ低層階の物件を購入する場合には、火災保険で「家財」に加入しておくなどでリスクヘッジすると良いでしょう。
地震によるリスクを調べる
次に地震によるリスクを調べましょう。調べ方は行政のサイトなどで、地域危険度を調べることです。
地域危険度には、以下の項目があります。
- 建物倒壊危険度
- 火災危険度
- 総合危険度
建物倒壊危険度とは、災害時に活動困難度を考慮した建物が倒壊する危険度です。火災危険度とは、同じく災害時活動困難度を考慮した火災の危険度になります。
また、総合危険度は上記を合わせた危険度数です。地域危険度は「●丁目」まで細かく分かれているので、いざ地震が起きたときのリスクは確認しておきましょう。
液状化リスクを調べる
次に、液状化リスクについては以下を知っておきましょう。
- 液状化とは?
- 液状化マップを調べる
液状化とは?
液状化とは、地震によって地盤の水分が結合し、地盤が液状化することです。地盤が液状化すると地盤沈下などを引き起こします。
2011年に発生した東日本大震災では、東京都の湾岸部や千葉県の一部で液状化被害が発生しました。つまり、震度5程度の地震でも液状化が発生するリスクはあるということです。
地震によって地盤が液状化したことで、「自宅の建物が傾いた」などの被害があれば、地震保険から補償を受けることが可能です。
液状化マップを調べる
液状化マップでは以下のようなことが分かります。
- 液状化の可能性が高い地点が含まれている
- 液状化の可能性がある地点が含まれている
- 液状化の可能性が低い
液状化リスクは目に見えないので、液状化マップで見る以外にリスクを測る方法がありません。仮に、液状化リスクが高い物件であれば、地震保険への加入を検討すると良いでしょう。
まとめ
このように、実は火災保険の保障内容は多岐に渡り、支払う保険もそれほど高額ではありません。しかし、構造や広さなどによって保険料は異なるので、シミュレーションをしてザックリとした保険料を把握しましょう。
また、地震保険や家財補償は別途加入する必要があるので、上述した災害リスクをチェックした上で加入するかどうかを確認することが重要です。