財形貯蓄のメリットとデメリットを解説!主要な投資先と比較してどっちが得する?
By Oh!Ya編集部
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会社員や公務員の方々であれば、「財形」という言葉をお聞きになったことはあると思います。しかしこの記事をお読みの方はおそらく、言葉はご存じでも実際に始めているわけではなく、「どんなメリットがあるのか」とお考えだと思います。
財形とは財形貯蓄のことで、勤務先が福利厚生として設けている資産形成の方法論です。せっかくの制度であり、人によってはメリットがとても大きくなるので、そんな方はぜひ利用していただきたいと思います。
それでは、財形とはどんな制度で、どんなメリットがあるのか?この記事は10分ほどで読むことができますが、その10分で財形のメリットをマスターできるように情報を網羅していきたいと思います。
財形制度の基本
財形貯蓄とは何か?まずはこの根本的な疑問にお答えします。財形貯蓄の概要を知ることで、よりメリットについての理解が深まると思います。
財形貯蓄とは?
財形貯蓄とは企業が福利厚生の一環として設けている制度で、勤労者向けの資産形成サービスです。財形貯蓄を希望する従業員から企業は給料天引きの形で毎月の積立金を預かり、それを契約している金融機関に積立預金をします。金融機関で積立預金をすることは誰でも簡単にできますが、財形貯蓄の最大の特徴は給料天引きであることです。
毎月の給料だけでなく、ボーナスからも天引きで積み立てることができるため、ボーナスの積み立ても併用するとまとまった貯金を作ることができます。
3種類ある財形貯蓄
財形貯蓄には、3つのタイプがあります。それぞれ目的や使い勝手が異なるので、個別に解説します。
①一般財形貯蓄
特に使途の制約がなく、勤務先に財形貯蓄の制度があれば簡単に始めて簡単に引き出せるのが一般財形貯蓄です。資金の使途だけでなく利用可能年齢にも特に制限がなく、また1年後から自由に解約できるので、3つある財形貯蓄の中では最も自由度の高いタイプといえます。これだけ自由度が高いこともあって、他の住宅と年金それぞれの財形貯蓄と違って運用益に対する非課税メリットはありません。
②財形住宅貯蓄
財形貯蓄の一種で、積み立てたお金の使途を住宅の購入費用やリフォームの費用に限定しているのが、財形住宅貯蓄です。積立金が550万円までは運用益に対して非課税になることや、財形住宅融資という制度を使って住宅ローンを利用できることなど、勤労者がマイホームを持つために必要な頭金の準備から住宅ローンによる資金の調達がセットになった制度です。お金を引き出すには住宅購入やリフォーム費用に限定されますが、その目的でお金を貯めたい人にはメリットが大きいと思います。
③財形年金貯蓄
財形住宅貯蓄は、財形貯蓄の中でも住宅購入資金のための貯蓄に特化した制度です。それに対して財形年金貯蓄は、老後資金のために特化した財形貯蓄です。60歳になった時点から積み立てたお金を受け取る仕組みになっていて、その時には積み立ててきた元本と運用益を合算したお金が毎月年金として支払われます。老後資金として積み立てをしながら非課税メリットが得られる制度としてはiDeCoが有名なので、最近はそちらを選択する人も多くなっています。
財形貯蓄の仕組み
財形貯蓄の大きな特徴は、自分が金融機関にお金を入れなくても給料から天引きされて自動的に積み立てられていくことです。お金を積み立てる本人である勤労者に支払われる給料の中から事業主(勤務先のことです)が給料天引きの形で積立金を差し引き、それを財形制度取扱金融機関(多くの場合は銀行や信用金庫)に勤労者個人の積立金として預け入れます。
最初のうちは給料から財形貯蓄の分を差し引かれていることを意識しますが、だんだん慣れてくるとそのことをあまり意識しなくなってきます。そうなると「知らない間にお金が貯まっている」という状況を作ることができるため、もともとは自分のお金とは言えオトク感を実感しやすいと思います。
財形貯蓄を利用できる人
財形貯蓄を利用するには、勤務先に財形貯蓄の制度が導入されている必要があります。財形貯蓄は福利厚生の一種なので、すべての企業で導入されているわけではありません。特に最近のベンチャー企業などではその福利厚生の分も給料に含めて現金で支払うという考え方のところも多くなっているため、その場合は自分で金融機関に積立貯金をすることで同じ効果が得られます。
他には財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄の場合は加入年齢が55歳までとなっているなど、一定の条件があります。詳しくは財形貯蓄の公式ホームページにある情報でご確認ください。
財形のメリット5つ
財形貯蓄のメリットを、5つの項目で解説します。多くの方がご存じのメリットだけでなく、ぜひとも知っておいていただきたいメリットもあります。
貯金習慣がない人でもお金を貯めやすい
給料天引きの形で積立貯金ができるため、どうしても自分で貯金をするとうまくいかない、途中で続かなくなってしまうという人であってもお金を貯めやすいメリットがあります。そもそも財形制度自体が勤労者の資産形成を支援するための制度として位置づけられており、「勤労者本人に任せていたら資産形成がうまくいかない可能性が高い」というニュアンスが含まれています。
自分で貯金習慣を持っている人にとっては大きなお世話ともいえるニュアンスですが、自分で貯金の目標を達成する自信がない人から意外に重宝されているのが財形貯蓄です。
低利の住宅ローンを利用できる
財形貯蓄でお金を積み立てている人には、財形住宅融資という住宅ローンが利用できる特典があります。財形貯蓄の中には財形住宅貯蓄というマイホーム購入向けの仕組みがあるので、これを利用している人にとってはローンの頭金を準備できるだけでなく、住宅購入費用の調達にも使えるため、とてもメリットの大きい制度となります。
住宅ローンの金利は大手メガバンクよりネット銀行のほうが安いという法則がありますが、財形住宅融資の金利はほぼネット銀行並みの水準なので、市中の銀行で住宅ローンを組むのであれば財形の融資を利用した方がメリットが大きくなる可能性大です。
なお、財形住宅融資は一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3つどれを利用している人にも利用資格があります。
税金面でのメリット
財形貯蓄では金融機関に積立貯金をしていくことになりますが、その際には利息がつきます。定期預金タイプだと超低金利なのであまりメリットはありませんが、金額が大きくなってくるとそれでも利息の金額も大きくなってくるため、そこから差し引かれる約20%の税金が重くのしかかってきます。
財形貯蓄の中でも住宅と年金のタイプには、上限550万円までの非課税優遇制度があります。仮に550万円を5%で運用していたとしたら、年間の運用益は27万5,000円です。そこに20%の税金がかかったとすると、税額は5万5,000円です。財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄であればこれが無税になるため、メリットをリアルに感じられるのではないでしょうか。
もっとも、財形貯蓄で年利5%の運用というのは現実問題として難しいので、実際にはそこまで大きな差にはならないと思いますが。
奨励金制度がオトク
先ほどから述べているように、財形貯蓄は企業にとっての福利厚生です。少しでも社員がスムーズに資産形成ができるよう、マイホームを買いやすくできるよう、そして老後の不安を解消できるようにという思いで運用されている制度です。そのため、企業によっては財形貯蓄をしている人に上乗せ金利の特典を設けているところがあります。
奨励金を設けている場合、その利率は年利1%から5%程度です。5%もの奨励金が出ていたらメリットはかなりのものになりますが、逆に1%であったとしても、今どき1%の利回りで運用できる金融商品はそうそうなりので、これだけでもメリットは相当なものです。
お勤めの勤務先に財形貯蓄制度があるのかという確認時には、奨励金制度があるのかどうかも確認してみてください。もし奨励金制度がある場合は、迷わず財形貯蓄を始めるべきです。
貯金の目的によっては達成しやすい
一般財形貯蓄であればいつでも引き出し自由なのでメリットとしてはあまり大きくないのですが、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄はどちらもお金の使い道が定められているため、それ以外の目的でお金を引き出しにくくなっています。
引き出しにくいというのは具体的に、もし本来の使途以外の目的でお金を引き出すとそれまで適用されていた非課税メリットが無効になり、それまで免除されてきた税金がさかのぼって課税されます。
この仕組みは急なお金の入用などで困っている人にとってはデメリットとなりますが、マイホームの購入や老後資金の準備など目的を達成したいと思って積み立てをしている人にとっては、この「引き出しにくいこと」が逆にメリットとなります。
財形のデメリットもチェックしておこう
メリットの次には、財形制度のデメリットについての解説です。本質的に手堅くお金を貯めていく制度なのでデメリットといってもそれほど致命的なものはないのですが、念のためにチェックしておきたいと思います。
金利が低い
財形制度で利用する貯蓄商品はほとんどが定期預金に近いものなので、金利は総じてかなり低くなります。2019年9月現在、大手メガバンクで年利0.01%、労働金庫で0.015%という水準です。非課税メリットが適用されればこのまま利息も一緒に積み立てていくことができますが、いかんせん金利がこれだけ低いと税金がかかっていてもかかっていなくても、あまり差が感じられないかもしれません。
金利の面では他にも非課税メリットが得られる積み立て制度があるので、それらの制度を使った方が高い利回りを確保できるケースがあります。財形貯蓄だけにフォーカスするのではなく、つみたてNISAやiDeCoなどの制度とも比較検討をしながら計画を立てるのが良いと思います。
運用商品によっては元本割れの可能性がある
財形貯蓄ではどんな金融商品に積み立てをしていくかという選択をすることができます。金融機関によっては定期預金しか選択肢がない場合もありますが、選択肢が広い金融機関だと投資信託や保険商品などで積み立てをしていくことも可能です。定期預金の場合は超低金利であるものの元本が保証されており、1,000万円までは預金保険による保護の対象にもなっています。つまり、定期預金で1,000万円までの積み立てをしていくのであれば資産の保全効果は抜群に高いのですが、その一方で低金利です。
もう一方の株式型投資信託や保険商品の場合は利回りが3%や5%といった運用も可能になりますが、その反面元本保証ではありません。もちろんそれは財形貯蓄であっても変わりはないので、こうした元本保証ではない金融商品で積み立てをしている場合は元本割れのリスクがあることを留意しておいてください。
ただし、こうした商品では元本割れのリスクがあるといっても積み立てたお金がゼロになってしまったり、半分以下になってしまうといったことはごく稀なので、そこまで不安に感じる必要はないと思います。
財形貯蓄の種類を途中変更できない
一般と住宅、そして年金。財形貯蓄には3つのタイプがあると解説してきましたが、一旦これらのうちどれかを始めると、途中で他のタイプに切り替えるといったことができません。それぞれの財形貯蓄は目的や制度的な仕組みが異なるため、どうしてもタイプを変えたい場合は一旦解約をして、別の財形貯蓄に入りなおす必要があります。
種類によっては使途に制限がある
一般財形貯蓄ではお金の使い道が自由なので、お金の入用が発生したら自由に引き出すこともできます。その代わり非課税メリットなどがないため、一般財形貯蓄は勤務先を経由した積立貯金という感覚で良いと思います。
しかし、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄の場合はお金の使い道に制限があるため、それぞれの財形で定められた使い道以外の使途でお金を引き出すことはできません。いえ、引き出すことはできますが全額解約となって過去の非課税分もすべて課税されるため、さかのぼって税金を支払うことになります。
ただ、これには逆の考え方もあります。財形貯蓄は貯金習慣がなかなか身につかない人であっても半ば強制的にお金を貯めることができるため、住宅や年金のタイプにあるような使途の制約はむしろ「引き出しにくい」ことがお金を貯めるという目的においてメリットにもなりうると考えることもできるわけです。
誰でも利用できるわけではない
財形制度にメリットを感じたとしても、残念ながら利用できる人とそうでない人がいます。勤務先の福利厚生として運用されている制度だけに、「勤務先」がない人、つまり自営業や自由業、さらに専業主婦などの人たちはそもそも財形を利用することができません。
会社員であっても勤務先の会社で財形制度が導入されていなければ利用できないので、利用を検討している方は勤務先の財形制度がどうなっているのかを確認してください。
最近では資産形成の方法が多様化しており、昔のように何でもかんでも会社任せということでもなくなりつつあります。会社は仕事をしに行くところ、給料をもらいに行くところと割り切り、資産形成は自分で手当てをするという人も多くなっており、その社会背景を受けて社歴の浅いベンチャー企業などではあまり導入されていない傾向があります。
財形制度にメリットを感じたとしても、誰でも利用できるわけではないところに注意してください。
財形のメリットが生きる人、利用するべき人
それでは、財形の制度を利用することでメリットがより大きくなる人というのは、どんな人でしょうか。これまでの解説内容を踏まえて財形貯蓄を利用するべき人物像を4つの項目で洗い出してみます。
貯金習慣に自信がない人
財形貯蓄を最も利用するべきなのは、何といっても貯金習慣に自信がない人です。貯金習慣がない人に共通している特徴は、「生活費の余りを貯金する」という考え方を持っていることです。それができれば苦労はないと筆者も思うので、本気で貯金をするのであれば最初に貯金する分を抜き取ってしまい、残りのお金で生活をするのが正しい順序です。
仮にこれができていたとしても、ちょっとしたお金の入用で貯めているお金を引き出してしまっては、意味がありません。貯金といっても自分のお金なので、自由になってしまうところが貯金習慣をくじいてしまいます。
その点、財形貯蓄は給料天引きという最も早いタイミングでの貯金なので、否応なく天引きされた残りのお金で生活することになります。先ほども述べましたが、財形貯蓄をしていると給料から天引きされていることに最初は意識するのですが、だんだんそれに慣れてくると「こういうもの」という割り切ることができるようになってきます。その感覚で生活を続けていると、いつしか財形で思わぬ金額が貯まっていた・・・というのが理想の形ではないでしょうか。
勤務先の財形貯蓄に奨励金や給付金の制度がある人
定期預金などで積み立てをする場合、運用利回りによる資産増はほとんど期待できません。しかし、勤務先の財形貯蓄に奨励金制度があったら話は別です。福利厚生の一環として財形貯蓄制度を設け、そこに奨励金が付く場合は少なくとも1%以上の利回りになっていうることが多く、利回りが高い企業だと5%もの奨励金が付くこともあります。
仮に定期預金など元本保証の金融商品で財形貯蓄をしている場合、そこに勤務先の奨励金が上乗せされたら「元本保証+高利回り」という夢のような金融商品が出来上がります。もし勤務先の財形制度に奨励金があるのであれば、それがどれだけあるのかをぜひチェックしてみてください。
住宅ローンを組んでマイホームを購入したいと思っている人
会社員や公務員として働いている人の中には自分が現役のうちにマイホームを手に入れたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。しかし、そのためには住宅ローンの審査に通らなければなりませんし、住宅ローンの審査には一定の頭金が必要です。このお金をどれだけ用意できるかで審査にも大きく影響を及ぼすため、今は貯金がないという方も住宅ローンを申し込む時までには数百万円クラスの貯金を持っている必要があります。
そこで活用したいのが、財形住宅貯蓄です。何せ住宅購入のためでなければ資金を引き出すことができないのですから、目的にもしっかり合致しています。しかも財形住宅貯蓄で積み立てをしている人は財形住宅融資を利用できるのですから、頭金の準備と住宅ローンの両方を手に入れることができます。
住宅ローンを組んでマイホームを買いたいと思っている方にとっては、財形住宅貯蓄はかなりメリットが大きい制度だと思います。
安全性をとにかく重視して資産形成をしたい
一部の金融機関では株式型の投資信託や保険商品で運用することができますが、財形貯蓄を利用している人の大半は定期預金で積み立てをしています。元本保証なので資産保全効果が高く、「増やすより貯める」という感覚の人が財形を好むからです。
ここまでの3項目この項目をすべて総合すると、以下の項目にひとつでも多く該当する方は、財形貯蓄を利用するメリットが大きいと考えられます。
- 貯金習慣がなく、お金を貯める自信がない人
- 勤務先の財形制度に奨励金が設定されている
- 住宅ローンを組んでマイホームを買いたいと思っている
- 安全性重視の資産形成を、できることから始めたい
筆者の印象でも財形を利用している人が全体的に手堅い人生設計を立てている人が多いため、コツコツとお金を貯めてマイホームを買ったり、老後資金の準備をしたりとお金の必要なことに備えたいという方は、財形向きといえるでしょう。
財形は本当にオトクなのか?他の金融商品と比較
財形貯蓄についてはメリットとデメリットがあり、それらを総合すると財形を利用するのに適している人とそうでない人がいるという解説をしてきました。それでは最後に、財形と他の金融商品を比較してみて、財形の実力がどれほどのものなのかを探ってみましょう。
定期預金
安全に資産形成をしていきたいという方にとって最有力なのが、銀行や信用金庫などで手軽に始めることができる定期預金です。何といっても元本保証、しかも1,000万円までは預金保険の保護があるということで、資産保全効果は絶大です。
しかし、その一方で超低金利の影響をもろに受けているため、お金を増やすという機能はほとんどありません。財形貯蓄をしたとしても金融機関で定期預金をする形になることが多いため、事実上はほぼ同じものだと考えて良いでしょう。
財形の場合は企業によって奨励金があったり、住宅や年金のタイプであれば運用益の非課税メリットがあるため、金利が同じなのであれば財形貯蓄のほうが有利です。
個人向け国債
次に、同じく事実上の元本保証であることが魅力の個人向け国債です。個人向け国債は毎月のように募集があるため、いつでも始められて元本だけでなく最低金利が保証されるため、きわめて手堅い金融商品です。
気になる金利は、最も高い「変動10」という10年もので0.66%です。0.01%がざらである定期預金と比べると、なかなかの高金利です。また5年ものの「固定5」では0.05%となりますが、これでも定期預金と比べると5倍です。比較の対象があまりにも低金利なので0.05%が5倍といっても、やはり利息は雀の涙です。
個人向け国債は買い方を工夫することで証券会社のキャッシュバックやポイント還元などがあるため、そういった仕組みをうまく活用するのであれば一般財形貯蓄よりメリットのある金融商品といえます。
株式配当
ここからは、元本保証ではない金融商品です。投資といえば株を連想する方はとても多いと思いますが、ここで比較対象とするのは株式投資の中でも配当狙いの投資です。
保有している銘柄の企業がしっかりと利益を上げると、配当という形で株主に還元されます。株式投資というと株価の変動を利用して値上がり益を狙うイメージが強いですが、配当の出ている株を長期保有して配当収入を狙うのが本来のあるべき姿です。
株価変動に一喜一憂することなく、例えばトヨタ自動車などの大型株を保有していれば、2019年9月現在でも3%近い配当利回りが出ています。もちろん元本保証ではないので株価の下落によって元本割れの可能性はありますが、比較的安全性が高く、高利回りを狙いやすいので、銘柄選びを間違えなければ財形貯蓄よりも有利といえます。
インデックス型投資信託、ETF
続いて、投資信託による資産形成です。投資信託の中には積極的に利益を狙うアクティブ型と、株価指数など平均値と連動するように運用されているインデックス型があります。この説明だけを見ると前者のアクティブ型のほうが魅力的に見えますが、それは目論見通りの利益が出ていればの話です。実際には積極的な利益どころか元本割れをしてしまっているような投資信託もたくさんあるので、筆者はインデックス型を推奨します。
インデックス型の場合、たとえばTOPIX連動型であれば東証一部に上場されている全株式に投資をしているのと同じ効果が得られ、リスク分散効果に優れています。ETFはそういったインデックス型投資信託の中でも証券取引所に上場されているもので、手軽に売買できることや運用コストの安さが魅力です。
おすすめは日本株や米国株、不動産市場の指数などと連動する銘柄で、こうした投資信託は積み立ても可能なので、財形と比べると筆者の推奨度はこちらのほうが高くなります。
REIT
不動産に特化した投資信託のことを、REIT(リート)といいます。目下、日本では大都市圏での不動産好調が続いており、こうした優良物件で運用しているREITの人気も上々です。
J-REITといって証券取引所に上場している銘柄では平均利回りが3%となっており、比較的安全な金融商品でありながらかなりの高利回りです。
また、J-REIT全体の値動きを指数化した東証REIT指数という指標がありますが、これと連動するように運用されているインデックス型投資信託であれば、J-REIT全体に投資をしたのと同じ効果が得られます。リスク分散効果も高く、順調に利益が出ているので、こちらもおすすめです。
もはやこのレベルになると財形貯蓄とは比較しにくく、「お金を増やす」という目的を重視したい方はこちらを選ぶべきです。
FXスワップ
FXというとギャンブル性が高い投資というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、FXにはスワップといって毎日受け取れる利息のような仕組みがあります。ご存じの通り日本は長らく超低金利であり、世界には日本をはるかに上回るような高金利の国があります。
日本円を売ってこれらの高金利国の通貨を買うと、その金利差を調整するためにスワップが支払われます。2019年9月現在、アメリカドルは1万ドルあたり60円前後、高金利国で知られるトルコのトルコリラだと1万リラあたり80円のスワップが発生しています。
FXではレバレッジといって少ない資金で大きな外貨を売買することが可能ですが、レバレッジを数倍程度適用してこうした金利の高い通貨を保有し続けていると、スワップが毎日貯まっていくのでこれが運用益となります。
ただし、外国為替市場では日々通貨のレートが変動しており、同じ通貨を長期間保有するのは円高による為替差損のリスクがあります。そこでFXにおいても積立投資を実践して、定期的に同じ分だけ買い続けると購入価格が平均化され、時間軸の分散によるリスク削減が可能になります。この手法はドルコスト平均法と呼ばれ、世界中の投資家が実践している有効性の高い方法論です。
しかし、やはりFXはリスクの高い投資です。年に数回、「フラッシュクラッシュ」と呼ばれる災害レベルの円高が起きることがあります。その時には大きく含み損が拡大し、一撃でロスカットとなってしまう可能性もあります。このリスクは常に隣り合わせなので、資金の余裕を持たせることやレバレッジを高くしすぎないことなどといったリスク管理がとても重要です。
このリスク管理を徹底するのであれば、「毎日利息が入る」というのは魅力なので、財形とは違った価値観の運用が実現します。
ソーシャルレンディング
クラウドファンディングの仕組みを応用して、資金を調達したい企業などが投資家からお金を募り、そのお金で事業を行った結果生まれた利益を投資家に配分する仕組みがあります。これを、ソーシャルレンディングといいます。
すでに多くの案件が運用されており、7%や10%といった利回りも珍しくないので投資家からの人気も高まっています。
しかし、これだけ高利回りであるということはリスクも高いということを忘れてはいけません。支払い遅延や最悪は破綻という可能性もあり、実際にそういった事例も起きています。
財形と違ってリスクをどれだけ取れるかという金融商品なので、すべてをソーシャルレンディングに依存するのではなく財形による積み立てと併用するという程度の付き合い方がいいと思います。
まとめ
財形制度の基本からメリットとデメリット、そしてどんな人に向いているのかを解説した上で、主要な投資手法と比較してみました。最終的な結論は、「財形は有利な環境が整っている人は始めるべき」となりますが、もし財形のメリットをあまり享受できないのであれば、末尾で解説した他の金融商品による資産形成も検討してみてください。