今さら聞けない!不動産投資における利回りの意味・他の投資との違い
By Oh!Ya編集部
2,180view
投資には利回りという言葉がよく出てきますが、しっかりとその意味を理解しているでしょうか。
本記事では、投資判断に欠かせない利回りについて、その概要を説明すると共に、金利や利率との違いの他、株式投資や不動産投資等、投資商品ごとに異なる利回りの使い方についてご紹介していきます。
目次
利回りとは
不動産投資や株式投資など、投資では利回りを考えることが大切です。
ところで、そもそも利回りとはどのようなものなのでしょうか?
利回りは投資金額に対するリターンを表すもの
利回りは、対象の商品を購入した際に、一定期間の間にその商品が生み出す収益が投資金額に対してどのくらいの割合なのかを示します。
一定期間には1日のものや1カ月のものなどもありますが、一般的には1年で表すことが多く、一定期間を1年としたものを年間利回りと呼びます。
年間利回りを求める計算式は以下の通りです。
年間利回り=年間収益÷投資金額×100(%)
例えば、1億円の不動産を購入して、年間の収益が1,000万円であれば1,000万円÷1億円×100(%)で10%の利回りとなります。
利回りが分かると、何年間で投資金額を回収できるかが計算しやすくなります。
例えば、利回り10%の商品であれば、1年間で投資金額に対して10%の収益があるので10年間で回収できることになります。
とはいえ、実際には税金や経費がかかります。
株式投資であれば税金は一律で20%のため計算しやすいですが、不動産投資の場合には、家賃収入の多さによって税率が変わるため正確に計算するのは難しくなります。
利回りと利率、金利の違いとは?
利回りと似たものに利率や金利がありますが、これらの違いについて解説したいと思います。
利率の意味とは?
利率は一定期間の利息が元金に対してどのくらいの割合かを示すもので、一定期間が1年のものを年利率と呼びます。
年利率の計算方法は以下の通りです。
年利率=利息額÷元金×100(%)
例えば、銀行に100万円預けて1年間で5万円返ってくるのであれば年利率は5万円÷100万円×100で5%となります。
金利の意味とは?
一方で、金利はお金を預けたり、ローンを組んだりした時に支払われる手数料のようなもので、基本的には利率と同じ意味のものです。
利回りと利率・金利の使われ方の違い
基本的には利率と金利は同じ意味となりますが、それでは、利回りとこれら利率、金利とはどのように違うのでしょうか。
利率や金利と、利回りの定義についてもう一度ご説明すると、以下のようになります。
- (年)利率・金利=1年で発生する利息の元本に対する割合
- (年間)利回り=1年で発生する収益の投資金額に対する割合
利率や金利と利回りとでは、基本的な考え方は同じですが、まずは投資なのか、預金やローンなのかでどちらを使うのかが変わります。
また、利回りについては投資に用いるものなので、不動産投資における表面利回りや実質利回りのように、さまざまな計算方法があります。
投資商品ごとの利回りの使われ方
利率や金利と利回りとの違いをご説明しましたが、利回りは投資金額に対する収益の割合を示すもので、投資対象によっていくつかの使われ方の違いがあります。
ここでは、株式投資と不動産投資について利回りの使われ方を解説します。
株式投資における利回り
株式投資には、株式を保有していることで得られる配当金による収益(インカムゲイン)と、株式を売却することで得られる売却益による収益(キャピタルゲイン)の2つの収益があります。
配当金による収益だけに着目したものに「配当利回り」があります。
配当利回りを求める計算式は以下の通りです。
配当利回り=配当金の額÷投資元本×100(%)
例えば、100万円投資して1年で2万円の利益があるのであれば2万円÷100万円×100で配当利回りは2%となります。
なお、株式投資には配当金の他に株主優待がありますが、優待が商品券などであればその金額を加算してもよいでしょう。
一方、売却益による収益を狙う場合、配当金を受け取れる権利日に対象の株式を保有しているか分からないため、売却益だけの利回りを想定した方が現実的です。
売却利回り=売買差益÷投資元本×100(%)
例えば、100万円の資金を運用して年間で5万円の収益を上げたとすれば、売却利回りは5万円÷100万円×100で5%となります。
なお、売却益狙いの投資でも配当金を受け取れるケースもありますが、この場合は配当利回りと売却利回りを足すだけで計算できます。
1株当たり利回りの計算方法
やや複雑になりますが、売却差益と配当金による収益の両方を取り入れ、さらに税金を考慮すると、以下のような計算式になります。
1株当たり利回り=(売値-買値)×保有株式数×0.8(税金)+配当金×0.8(税金)÷投資元本×100(%)
例えば、1株1,500円で1,000株購入した株式を1,800円で売却し、年間で30,000円の配当金を受け取った場合の1株あたり利回りは以下の通りです。
(1,800円-1,500円)×1,000株×0.8+30,000円×0.8÷(1,500円×1,000株)×100(%)=17.6%
150万円の投資に対し、税引き後の利益で売却益で24万円、配当金で2.4万円、合計26.4万円の収益で、利回りは17.6%であることが分かります。
複数銘柄保有する場合の利回りの計算方法
1株当たり利回りの計算方法についてご説明しましたが、この計算式では複数銘柄保有している場合でも、1銘柄ごとに計算しないといけなくなります。
そこで、複数の銘柄を保有する場合の利回りを求める計算式についても知っておくとよいでしょう。ここでは、株式投資利回りとして計算式を取り挙げます。
株式投資利回り=(含み損益の合計額+売却差益の合計額)×0.8(税金)+配当金の合計額×0.8(税金)÷投資元本の合計額
「含み損益」とは、株式を売却せずに保有し続けた場合の変動した額のことを指します。
例えば、
- A銘柄(1株あたり1,500円/1,000株保有/配当金1株につき30円)
- B銘柄(1株あたり2,500円/500株保有/配当金1株につき10円)
- C銘柄(1株あたり2,000円/200株保有/配当金1株につき20円)
だと、全て売却せずにA銘柄が1,800円に、B銘柄が2,700円に、C銘柄が1,500円に変動した場合は、含み損益は(1,800円-1,500円)×1,000株+(2,700円-2,500円)×500株+(1,500円-2,000円)×200株で、含み損益は39万円となります。
なお、同条件で株式投資利回りを計算すると、39万円×0.8+(30,000円+5,000円+4,000円)×0.8÷(1,500円×1,000株+2,500円×500株+2,000円×200株)=14.3%と計算できます。
不動産投資における利回り
不動産投資における利回りには、大きく表面り利回りと実質利回りに分けることができます。
不動産投資には各種経費がかかりますが、そうした経費を考慮せずに投資元本に対する収益の割合だけを求めるのが表面利回りで、以下の計算式で求めることができます。
表面利回り=1年間の家賃収入÷投資元本×100(%)
例えば、1億円で購入したマンションの年間の家賃収入が1,000万円であれば1,000万円÷1億円×100で表面利回りは10%となります。
また、不動産投資では、空室が出るとその分家賃収入は少なくなってしまいますが、空室を考慮せずに満室時の最大家賃のみを考慮する利回りを満室時想定利回りと呼びます。
満室時想定利回りだけで投資判断することは危険なので、経費も考慮した実質利回りを求めたほうがよいでしょう。
実質利回りの計算方法は以下の通りです。
実質利回り=(1年間の家賃収入-1年間の経費)÷投資元本×100(%)
例えば、1億円で購入したマンションが年間で1,000万円の収入を生み、経費が200万円かかった場合の実質利回りは1,000万円-200万円÷1億円×100で8%となります。
不動産投資においては投資判断に利回りを用いますが、その際には必ず実質利回りを求めることとし、またできるだけ正確な情報に基づいて経費を計算することが大切です。
以下で、株式投資と不動産投資それぞれについて利回りを用いた具体的な計算例をご紹介していきます。
株式投資における利回りシミュレーション
株式投資で利回りを用いて投資判断するとすれば、主に配当利回りを求めることが多いでしょう。
一方で売却利回りは投資判断に用いるより、年間の成績を計算するのに用い、翌年や翌々年に同じ成績であればどのくらいの利益が得られるか、といった計算に用いることができます。
配当利回り2%の銘柄を保有し続ける場合の計算
株式を数年間に渡って保有する場合は、その利回りを複利で考えることができます。
例えば、ある銘柄の配当金が数年間同じ額で、将来にわたって同じ額であることが想定される場合、その配当利回りが2%であれば、5年後の利益は以下のように求めることができます。 (ここでは計算を分かりやすくするため税金については考慮しません。)
- 1年目:100万円×2%=2万円
- 2年目:102万円×2%=2万400円
- 3年目:104万400円×2%=2万808円
- 4年目:106万1208円×2%=2万1224円
- 5年目:108万2,432円×2%=2万1,648円
- 合計額:104,080円
年間の成績で翌年の利回りを想定する
株式投資の平均利回りは6%程度とされていますが、自分で数年間運用してみて、その利回りがある程度安定しているのであれば、その利回りを自分の実力として想定し、保有資産を不動産投資など他の投資に配分するのか、株式投資を続けるのか判断の材料とすることができます。
例えば、300万円の資産を運用して、毎年30万円程度の利益を安定して出せているのであれば、利回りは10%となります。
翌年以降、5年間同じ成績で運用できたと想定すると、資金の推移は以下のようになります。 (税金は考慮しません。)
- 1年目:300万円×10%=30万円
- 2年目:330万円×10%=33万円
- 3年目:363万円×10%=36万3,000円
- 4年目:399万3,000円×10%=39万9,300円
- 5年目:439.23万円×10%=43万9,230円
- 合計:1,801,530円
5年間の運用で資産をおよそ1.6倍にできることになります。
もちろん、必ずしも同じ成績になるわけではないので注意が必要です。
不動産投資における利回りシミュレーション
不動産投資においては、物件取得前には必ず利回りの計算をするべきだとされる程重要です。
特に、正確な情報に基づいて経費を算出した上での実質利回りを求めることが大切です。
1億円の物件を取得する場合の実質利回りシミュレーション
ここでは、1億円の1棟マンションを購入する場合の実質利回りシミュレーションをしてみたいと思います。
ここで想定する物件の概要は以下の通りです。
- RC造/築20年
- 年間家賃収入:720万円
- 原状回復費/修繕費:36万円/年
- 管理手数料:36万円/年
- 固定資産税(1.4%)/都市計画税(0.3%):1億円×0.8×1.7%=136万円/年
- その他経費:36万円/年
※現状回復費/修繕費・管理手数料・その他経費については全て年間家賃収入の5%程度を想定。 ※固定資産税は、評価額が実勢価格の8割程度となることを想定。
実質利回りを求める前に、表面利回りを求めると、以下の通りです。
表面利回り=720万円÷1億円×100=7.2%
一方、各種経費を考慮した実質利回りは以下のようになります。
実質利回り=720万円-(36万円+36万円+136万円+36万円)÷1億円×100=4.76%
表面利回りを見ると、7.2%なのでおよそ14年で元本を回収できる計算なのに対し、実質利回りは4.76%なので実際には回収までに21年程の年数がかかることが分かります。
なお、実質利回りでは住宅ローン返済額が考慮されていません。
実際に手元に残る金額を計算するためには、返済後利回りを求める必要があります。
1億円の物件を取得する場合の返済後利回りシミュレーション
不動産投資では、毎月の家賃収入から各種経費とともに住宅ローン返済額が差し引かれて、最終的に手元に残る金額が決まります。
子の最終的に手元に残る金額の、投資元本に対する割合を示すのが返済後利回りです。
返済後利回りは、以下の計算式で求めることができます。
返済後利回り=(1年間の家賃収入-1年間の経費-1年間のローン返済額)÷投資元本×100(%)
ここでは、先ほどのシミュレーションと同じ条件で、以下の借入をした場合のローン返済額を加えて計算したいと思います。
- 借入額:9,000万円
- 借入期間:30年
- 借入金利:2%
- 毎月返済額:約33万円
- 年間返済額:約399万円
返済後利回り=720万円-(36万円+36万円+136万円+36万円)-399万円÷1億円×100=0.77%
以上のように、返済後利回りは0.77%となります。
利回りだけ見ると、回収には129年もの月日が必要なことが分かります。
とはいえ、毎月返済していくことでローンの残債が減っていく点や途中で売却すればまとまったお金を得られる点も考慮する必要があります。
あくまでも不動産投資における利回り計算は実質利回りをベースにし、手元に残る金額の計算等必要に応じて返済後利回りなどを活用するとよいでしょう。
まとめ
利回りについての概要や利率、金利との違いについて解説し、株式投資や不動産投資それぞれの利回りの使われ方の違いについて解説しました。
利回りは株式投資を始めるのか、不動産投資を始めるのかの判断や、どの金融商品、物件を購入するかの判断材料として用いることができます。
ただし、特に不動産投資における表面利回りと実質利回りの違いのように、その違いについてよく理解した上で活用しなければ誤った判断につながってしまう可能性があります。
投資判断の際には、本記事でご紹介したやり方で利回り計算を試してみるとよいでしょう。