将来のために個人年金保険は利用すべき?メリット・デメリットを解説
By Oh!Ya編集部
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年金の受給開始年齢の延長、終身雇用制度の崩壊といった不穏な話題が飛び交うなか、個々で老後資金を準備する動きが活発化しています。
個人年金保険は、そうしたニーズに応える選択肢の1つ。現状では「皆が選んでいるから」といった理由で加入するケースも多いですが、個人年金保険にはデメリットも潜んでいます。
今回は、皆さんにとっての最適解であるか判断いただけるよう、個人年金保険の特徴や他の選択肢を解説していきます。
目次
個人年金保険は「自分で年金を準備する保険」のこと
個人年金保険は、民間の保険会社と契約して準備する年金保険を指します。保険商品の1つで、公的年金とは別に老後資金を用意するために利用されています。
保険料を毎月積み立てて、契約時に定められた年齢に達すると年金を受け取るという契約が一般的。公的年金の不足に備えて契約するほか、後述するように節税対策としても機能するため、手持ちの資産を賢く貯蓄する目的で利用されています。
公的年金と個人年金保険の違い
個人年金保険を、公的年金と混同してしまうケースは多く見られますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?それぞれの違いを3つの視点から解説していきたいと思います。
国が運営する制度か保険会社が販売する商品か
公的年金は、国が運営している全ての年金制度を指します。日本は「国民皆保険」という仕組みを導入しており、原則として日本国民は公的年金に加入しなければなりません。
公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があり、それぞれ以下のような特徴を持っています。
- 国民年金:自営業者や無業者を含めて全ての国民を対象とする年金制度
- 厚生年金:公務員や企業の従業員が国民年金と併せて加入する年金制度
一方で個人年金保険は、保険商品の一種であるため加入は任意。公的年金だけでは老後資金に不安が残るといった人たちの、安定した老後生活を送りたいという希望のもと選ばれています。
金銭が「他人」に使われるか「自身」に返ってくるか
公的年金は「賦課方式」と呼ばれる仕組みで成り立っており、現役世代が収めた年金はそのまま高齢者に仕送りされる形で使われています。それに対して個人年金保険は、払い込んだ金銭が自身のために積み立てられていって、一定の年齢に達すると自身に直接返ってくる仕組みです。
このように公的年金と個人年金保険のあいだには、払い込んだ金銭が高齢者のために使われるのか、将来の自分のために積み立てられるのかという違いがあります。
受給条件と適用期間が異なる
公的年金は、現役世代のうちに払い込んで老後に返ってくる「老齢年金」のイメージが強いですが、ほかにも遺族年金や障害年金といった複数の年金を受給できます。
- 遺族年金:被保険者が亡くなったとき遺族に対して給付される年金
- 障害年金:病気・怪我により生活が制限されるとき給付される年金
一方、個人年金保険は老後に給付される年金のみ。以下の3つに分類されるものの、どれも老後に受給するものばかりです。
- 終身年金:存命中ずっと年金を受給し続けられるタイプの個人年金保険
- 確定年金:特定の期間中ずっと年金を受給できるタイプの個人年金保険
- 有期年金:特定の期間、かつ存命中のみ年金を受給できるタイプの個人年金保険
このように、終身年金は価格設定が割高であるものの、存命中はいつまでも年金を受給できるため資金面の安心感は抜群です。一方、確定年金は終身年金と異なり、長生きしても受給年数は伸びませんが、仮に期間終了前に亡くなったとしても遺族に年金が支払われます。
そして、最後に挙げた有期年金は確定年金と同じく指定期間を設けるものの、被保険者が亡くなった場合には受給がなくなります。どれが良いとは断言できませんが、より確実性を重視するのであれば確定年金が有力です。
個人年金保険を利用する3つのメリット
個人年金保険が、どうして長期的に支持を集めているのか。その理由は、個人年金保険が持つ3つのメリットにあります。
自動引き落としなので継続しやすい
個人年金の保険料は、毎月決まった日に指定の口座から引き落とされ、積み立てたお金は簡単に引き出せません。そのため一度契約したあとは、ほとんど手間をかけず自動的に老後資金が貯蓄されていきます。
つい預金に手を出して貯金を続けられないという方でも、安心して積み立てていけます。
銀行の預金よりも利回りが高い
低金利の影響もあり、銀行の普通預金や定期預金に預けても以前ほどお金が増えなくなりました。現在のメガバンクの定期預金の利率は0.01%程度です。
この利率で毎月2万円を25年間積み立てた場合、以下のような結果になります。
※イオン銀行「つみたてシミュレーション」を利用
25年目時点での評価額は600万7,531円。これだけ継続して預金を続けても、わずか7千円程度しか増えません。
一方、個人年金保険で同じ金額を同じ期間積み立てると、どれくらいになるのでしょうか?明治安田生命の個人年金保険である「5年ごと利差配当付特別個人年金保険」のシミュレーションを利用して、結果を算出してみました。
※明治安田生命「5年ごと利差配当付特別個人年金保険 シミュレーション」を利用
個人年金保険の内容は各社差があるため、必ずしも同じ結果になるわけではありません。ただ、あくまで一例ではあるのですが、銀行預金と比較したときの差額は歴然。
こちらの試算では、払い込んだ金額よりも約28万円増えています。
節税対策として機能する
税金が課せられる所得を課税所得と呼ぶのですが、これは所得から経費と所得控除を差し引いたものを指します。
個人年金保険の払込金額は、所得控除の1つである「生命保険料控除」の対象になるため、保険料に応じて所得税や住民税の負担を軽減できます。
ただし、いかなる場合も控除対象になるわけではなく、以下の条件を満たす必要があるため注意が必要です。
- 年金の受取人が契約者本人または配偶者であること
- 保険料は年金受給が始まるまでに10年以上、定期的に支払う契約であること
- 満60歳以降に支払われる10年以上の定期年金、または終身年金であること
出所:国税庁「生命保険料控除の対象となる保険契約等」を抜粋・改編
なお、払込金額が生命保険料控除の対象になるか否かは、保険会社から送付される証明書を参照することでも確認できます。
個人年金保険を利用するデメリットは3つ
個人年金保険には複数のメリットがありましたが、その一方でデメリットも存在します。この項では、個人年金保険のデメリットを3つ解説していきます。
中途解約すると元本割れしてしまう
個人年金は、払い込んだ保険料の総額よりも受け取るお金の合計額が少なくなる「元本割れ」を起こす可能性があるため注意しましょう。
保険料を払い込んでいる途中で解約した場合、解約によって戻ってくるお金である解約返戻金の額は、解約までに支払った保険料の合計額を下回るのです。
特に契約してから数年と短期間で解約すると、高確率で元本割れが起きてしまいます。そのため、個人年金保険に加入するときは、家計における収入の減少や支出の増加のリスクを考えたうえで、余裕を持って加入しましょう。
インフレーション(好景気)に弱い
インフレーションにより物価が上昇すれば、相対的にお金の価値は下がります。たとえば、下記のような物価の変化を想像してみてください。
- 現在:1LのジュースAを100円で買える
- 未来:1LのジュースAを200円で買える
この変化により、1LのジュースAは価格が2倍になったと考えられます。また、ジュースAを購入するのに100円玉を1枚払えば良かったものを、2枚求められる時代になったとも変換できます。
これが、インフレーションによる貨幣価値の下落です。個人年金保険(変額保険を除く)は、契約時に受給される金額が決まるため、先ほどのように景気が良くなるほど「受給される金銭の価値」が下がってしまいます。
なお、デフレーションにより物価が下がったときには、相対的にお金の価値が高くなるため、一概にこの特性をデメリットだと断言することはできません。ただし、可能性として「インフレーションによる損失」があることを理解しておきましょう。
契約した保険会社が倒産する可能性もある
公的年金は国が運営しているため、すぐに破綻する可能性は低いです。しかし、民間の保険会社により管理される個人年金保険は、年金の受給前に倒産してしまう可能性があるのです。
生命保険契約者保護機構の救済措置により、被保険者が払込金額の全てを失うことはありませんが、契約時の想定より減額することも考えられます。
そのため契約前に、検討している保険会社の経営状況が良好かどうか、各保険会社のディスクロージャー誌を参照するのがおすすめです。
個人年金保険に加入した方が良いのはどんな人?
個人年金保険は、公的年金を補完するための金融商品ですが、全員にとって必要なわけではありません。個人年金保険に適しているのは、以下のような項目に該当する方です。
- 資産運用が苦手な人
- お金を貯めるのが苦手な人
それぞれ順番に解説していきます。
資産運用が苦手な人
老後の資金を確保する方法として、投資信託や不動産投資などの資産運用があります。上手く運用を続けられれば、年間利回り3~5%という数字も現実的であるため、銀行預金や個人年金保険より効率的に老後資金を用意することも可能です。
ただ、大きなリターンを期待できる反面、損失を負ってしまうリスクもあります。
一方、個人年金保険は自分で運用をする必要がなく、比較的安全に老後資金を用意できます。途中で解約した場合は元本割れを起こすため、損をする可能性が全くないわけではないですが、資産運用に抵抗のある人は個人年金保険が適しているでしょう。
貯金を継続できない人
「今月から貯金をしよう」と考えて、いつも挫折してしまう人にも個人年金保険は適しています。個人年金保険は、保険料の支払い方法を口座振替による月払いにすることで、半強制的に積み立てていけるため、貯蓄する分を先取りする仕組みを作ることが可能です。
こういった特性を利用すれば、自力で貯金ができない人であっても、大きなストレスをかけずに老後資金を用意できます。
今後は個人年金保険という選択では力不足
個人年金保険をメインにして老後資金を用意するのは、これからの日本における最適な選択肢とはいえません。従来は会社員として定年まで勤め上げて、貯蓄と退職金を合わせて余裕を持ってセカンドライフに臨めました。
しかし、平成に突入してから退職金は下落傾向にあり、大企業ですら定年まで従業員を抱えられない状況になっています。追い打ちをかけるように、2019年5月には金融庁から「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない」と記述された報告書が公開されました。
このような状況を迎えてなお、銀行預金や個人年金保険のような選択肢を取るのは、ある意味無謀です。前項では個人年金保険が適している人を列挙しましたが、いつまでも個人年金保険のみで良いわけではありません。
個人年金保険という安全性・継続性に優れた商品を利用しつつも、少しずつ資産形成に力を入れることをおすすめします。
リスクを抑えた資産形成には「投資信託」がおすすめ
個人年金保険を検討していた、もしくは利用しているけれど力不足と聞いて心配になった。
こういった場合、いきなり価格推移の激しい資産運用に手を出すのは危険。まずは投資信託のような、数百円から小さく取り組める資産運用を始めるのがおすすめです。
- 資産運用が苦手な人:ファンドマネージャーに投資判断を一任できるため安心
- 貯金を継続できない人:自動積立があるため感覚的には個人年金保険に近い
このように「個人年金保険が適している人」が求める条件とも合致しており、資産運用の入口として申し分ありません。投資信託の詳しい情報は、当メディアの「【実際儲かる?】投資信託で得られる利益の目安」で解説しているので、気になる方は参考にしてみてください。
頼れる副収入を望むなら「不動産投資」が最適
少額で取り組める投資信託は、貯金に近い感覚の資産運用として人気ですが、コンスタントに大きな利回りを目指せるものではありません。投資の世界においてリスクとリターンは表裏一体であるため、低リスク設計の投資信託では大きなリターンを狙いづらいのです。
その点、不動産投資は「金融機関から借入を行う」というリスクを取ることで、大資本を活かした効率的な資産運用ができます。そして、皆さんもご存知のように賃貸住宅の家賃設定というのは、いきなり半分になったり倍額になったりはしません。
つまり、入居者さえ付ければ、非常に安定して利益を得られるビジネスモデルなのです。「不動産投資コラム」では不動産投資の知識がない方に理解いただけるよう、分かりやすく充実度の高いコンテンツを用意しています。
将来に不安を抱きつつも、個人年金保険や投資信託で物足りないと考えている場合は、不動産投資が選択候補として有力です。
まとめ
意外と理解できていない公的年金と個人年金保険の違いから、個人年金保険のメリットとデメリット、今後厳しくなる老後の人生設計まで幅広く解説しました。遠くない未来、公的年金だけでは老後資金を用意できなくなる状況がほぼ確実にきます。
こういった事態に備えて、私たちは各々の経済状況に応じた選択肢を取らなければなりません。それが、今回のメインテーマである個人年金保険なのか、投資信託や不動産投資なのかを自ら考える必要があるのです。
Oh!Ya(オーヤ)は、こうした皆さんの「お金にまつわる問題」を解消するために、資産運用に関するコンテンツを発信しています。不動産投資を中心とした資産運用の話題、年金や退職金問題について気になる方は参考にしてみてください。