Jリートの利回りはなぜ高い?3つのメリットとデメリット
By Oh!Ya編集部
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高利回りな金融商品として紹介されることの多い「Jリート」は、どうして優れた利益率を持つのかご存知でしょうか?
いかに「稼ぎやすい投資手段」として知られていても、その根拠が分からなければ大切な資産の預入先としては不安です。
そこで、今回はJリートが高利回りである理由を解説し、特徴を確認しつつ他の投資手段と比較していきます。
目次
なぜJリートの利回りは高いのか
Jリートの高い利回りは、還元率の優れた分配金により実現しています。Jリートの分配金が掲載されている「JAPAN-REIT.COM」を見れば、その様子は一目瞭然です。
2019年1月時点では、最も分配金利回りが高いもので6.92%、最も低い銘柄であっても、2.86%と比較的高い水準にあります。
これら分配金における還元率の高さは、「当期利益の9割を分配すれば法人税が免除される」という税制により実現しているもの。つまり、Jリートの運営元である投資法人は、決算のたびに運用利益から経費を差し引いた「ほぼ全ての利益」を投資家に分配しているのです。
一方、株式投資の配当金などは、当期利益から法人税が徴収されます。さらに、次期事業に充てる資金の確保として「内部留保」を行い、そのうえで配当金を決めるため還元率は小さくなりがち。この一連の流れを要するため、高還元を実現するには不向きなのです。
上記のように、Jリートが他の投資手段より利回りが優れているのは、根拠や裏付けがあり決してデタラメな情報ではありません。
他にもJリートにメリットはあるの?
Jリートの強みは高い還元率だけにとどまらず、他の投資手段にはない数々の魅力を備えています。
この項では、Jリートが持つメリットをピックアップしました。
売買単価の高い大型不動産に少額投資できる
不動産市場のなかでも特に資金流入が盛んなのは、オフィスビルや商業施設などのビジネスにもちいられる分野。個人を相手にした住居賃貸よりも、好景気時に資金力のある法人へ大型不動産を貸し付けた方が、一度の利益は遥かに大きいのです。
しかし、大型不動産は売買単価が数億~数十億円にのぼるため、一般的な資金力しか持たない個人投資家には手が出ません。そのため、個人投資家はスケールの小さい投資対象を選ぶ「我慢する道」しかないように思えますよね?
このようなジレンマは、Jリートに投資することで解消できます。Jリートは個人投資家から集めた大きな資金を運用するので、売買単価が高い案件へ多数投資することが可能。間接的ではあるものの、わずか数万円から大型不動産のオーナーになれるのです。
地震による相場下落に対して耐性がある
不動産は実物資産であるため、どうしても災害リスクを避けられません。
特に日本国内は地震が多く、阪神淡路大震災や東日本大震災など、私たちも数々の大災害を経験してきました。これらは、不動産を運用する全ての投資家が悩む問題ともいえます。
しかし、Jリートで運用する不動産は耐震性能が評価されており、東日本大震災での下落率は株式市場よりも限定的でした。その後、相場価格の持ち直しもスムーズに進み、株式投資や個人レベルでの不動産投資よりも、地震に対する懸念は小さいといえます。
運用の手間をかけず不動産投資ができる
本来、不動産投資は投資先選定から融資申請、運用中の修繕・改装まで全プロセスを自力で行う必要があります。これをクリアして、実際にサラリーマン大家として活躍する人は多いものの、スキマ時間を活かして不動産投資を始めるのはハードルの高さを感じてしまうものです。
一方、Jリートは銘柄の売買以外にほとんど手間が必要ありません。常にJリートの運営元が市場リサーチと不動産売買・運用を行ってくれるため、不動産投資における難しい部分は全て代行してもらえるのです。
これにより、時間の捻出が難しいサラリーマンであっても、余暇時間を損ねることなく投資を始められます。
Jリートのデメリット・リスクとは
どのような投資手段でも、メリットの裏側にはデメリットが隠れており、それはJリートも例外ではありません。
この項では、Jリートが抱えるデメリットやリスクを解説していきます。
金利上昇による利益率低下のリスク
ゼロ金利時代といわれ、融資に適用される金利が低くなっているいま、多額の借入を利用する不動産投資には追い風が吹いているといえます。しかし、現状の景気停滞を乗り越えて金利が上昇すれば、借入金利は高くなり融資を気軽に利用できなくなるのです。
この傾向は、投資家から集めた資金のほか、金融機関からの借入も活用するJリートにとってはマイナス。不動産売買の回転率は下がるため、利益率が低下する恐れがあります。
投資先の投資法人が倒産するリスク
数ある投資手段のなかで、Jリートは比較的安全性の高い金融商品であるものの、経営不振による倒産の可能性があります。
たとえば、いまなおJリート初の破綻事例として名前が挙がる「ニューシティ・レジデンス投資法人」は、リーマンショックを要因として経営難を引き起こしたケースの1つ。この例では、金融恐慌による融資引締めにより、購入予定の不動産に融資が付かず「キャンセル時の違約金」の発生により破綻しました。
この問題以降は「合併に関する法律改正」が行われたため、倒産リスクは抑えられているものの、いまだ倒産の可能性はゼロだとはいえません。
Jリートが上場廃止になるリスク
Jリートは株式と同じように、上場廃止になるリスクをはらんでいます。
上場廃止が決まれば、売り優勢の傾向が強くなり相場価格は低下。買い進める投資家がいないために、売買が成り立たないこともあります。
個人投資家に対策できることは少ないものの、あらかじめ「上場廃止になる条件」を知っていれば、危うげのある銘柄を未然に回避できます。これらの条件全てを覚えることは難しいため、以下に「最低限知っておきたい上場廃止基準」を用意しました。
上場廃止基準
- 上場投資口の総口数が4,000口未満である場合
- 毎年12月末の時点で、1年あたりの売買出来高が20口未満である場合
- 純資産総額が5億円未満となり、1年以内に5億円以上にならない場合
- 資産総額が25億円未満となり、1年以内に25億円以上にならない場合
- 資産内訳における不動産比率が70%未満となり、1年以内に70%以上にならない場合
出典:(JPX日本取引所グループ「上場制度」を一部抜粋・改編)
上場廃止の基準として、特に分かりやすい指標が上記の5つ。純資産総額の増加は、おおむね売買出来高の増加に比例するため、総じて「投資家による取引量が極端に少ない」ために起こるものです。
より詳細な上場廃止基準は、JPX日本取引所グループがサイト内に掲載する「上場制度」にて確認できます。
不動産投資とJリートはどちらが高利回りなの?
不動産投資とJリートは、同じ不動産市場へ投資するため比較されやすいです。しかし、これら2つの投資手段は、利回りの傾向に大きな違いがあります。
まず、不動産投資における着目すべきポイントは以下の2つ。
- 物件・立地・築年数などにより、利回りのボリュームゾーンは広い
- 金融機関からの融資を利用して、多額の資金を投資に充てられる
1つ目は、不動産投資の利益率は「投資不動産の条件」により大きく変わるという点です。そのため、満室時でもほとんど利益の出ない物件、利回り20%超の高利回り物件など多くのケースがあります。
ただし、2つ目の条件として挙げた融資の存在により、自己資金に対する利回りが跳ね上がります。たとえば、同程度の利回りであっても、投資額が異なれば以下のように結果は大きく変わるのです。
- 投資額500万円を利回り10%/年で運用=1年あたりの利益は50万円
- 投資額5,000万円を利回り10%/年で運用=1年あたりの利益は500万円
単純に同程度の利回りであれば、投資額に比例してリターンも大きくなります。そのため、優良な投資不動産を見つけて融資を取り付けられるなら、不動産投資はJリートに比べて何倍もの利益率を誇るのです。
これらの特性から、2つは以下のように区別できます。
- 不動産投資:不動産選定と資金調達さえ上手くいけば、利回り5~10%以上を狙える
- Jリート:安定的に利回り2~6%前後を狙って投資できる
不動産投資は利益率の上限が高く、Jリートは利益を得るまでの難度が低いといえます。
株式投資とJリートはどちらが高利回りなの?
株式投資は、不動産投資と並んで「投資の王道」と呼ばれる手段の1つ。多種多様な企業に投資できる特性上、利回りのボリュームゾーンに関しては不動産投資より大きいです。
ただし、安定利益を目指すなら「テクニカル分析」や「ファンダメンタル分析」といった、高度な知識を要する分析が不可欠。Jリートにも同じような分析手法をもちいるものの、そもそもJリートは「不動産賃貸業」という領域内で分析が完結するため、リサーチに必要な情報量の規模が全く異なるのです。
また、前半部分で触れたように、配当金狙いの株式投資は「法人税」と「内部留保」の存在により、投資家への還元率は小さくなりがち。高配当な設定であったとしても相場価格がどんどん下落する銘柄も少なくありません。
一方で、このような危険を避けて安心できる有名企業を選べば、配当利回りは2~3%前後まで落ち込んでしまいます。
- 株式投資:高利回り銘柄は存在するものの、投資先が多く高度な分析能力が必要
- Jリート:銘柄総数が少なく比較分析は容易。分配金利回りは安定して2~6%ほど
上記のような見方ができるため、分析力や先見性に自信があり、自力で見つけた有望企業に投資したい場合は株式投資がおすすめです。
なお、過去には短期間で株価を10倍以上に伸ばした企業もありますが、これらの事例に憧れて「ギャンブル的な思考」で投資しても結果は出ません。株式投資で結果を出し続けるのであれば、「投資先のビジネスモデル」を理解する努力が必要だと覚えておいてください。
投資信託とJリートはどちらが高利回りなの?
Jリートは和名で「不動産投資信託」と呼ばれており、投資信託と同様の仕組みで運用されています。そのため、同列の存在として比べられることも多いです。
しかし、投資信託も株式投資と同様、投資家へ還元するまえに法人税を差し引かれます。そのため、同等の利益が出たとしても分配金は少なくなりがちです。
なお、高利回り商品として宣伝される「毎月分配型」の投資信託は、安易に手を出して良いものではありません。
「毎月分配型」や「アクティブファンド」に分類される投資信託に注意
毎月分配型は、名前の通り分配金が毎月還元されるのですが、これは運用元本を削りつつ分配している場合が多いのです。つまり、「投資信託を購入したお金が戻っている」に過ぎず、結果として純粋な利益率は高くありません。
このような投資信託の存在を考慮すれば、現状ではJリートの方が平均して優れた利回りを期待できます。なお、それでも投資信託を選ぶのであれば、毎月分配型にくわえて「アクティブファンド」の存在にも注意してください。
アクティブファンドは利益追求を目的としており、日経平均株価などの指標にシンクロするよう設計された「インデックスファンド」の対になる投資信託です。市場調査を専門にする会社のリサーチにより、長期運用になるほどアクティブファンドは運用成績が伸び悩むと分かっています。
これらの理由から、Jリートではなく投資信託を購入するなら、「毎月分配型」と「アクティブファンド」を避けるのが望ましいです。
まとめ
今回は、Jリートが高利回りを実現している理由や、他の投資手段との比較ポイントをご紹介しました。
Jリートの優れた利益率は誤魔化して作られたものではなく、「法人税の免除」という強みによって実現しています。事実として高利回りは一過性のものではなく、Jリートの登場以降ずっと維持されてきました。
- 自己資金以上の投資額をもちいて、高利回りを目指すなら「不動産投資」
- 分析力や先見性があり、自力で見つけた有望企業に投資するなら「株式投資」
- 専門家に運用を一任できて、かつ歴史の長い投資手段を好むなら「投資信託」
こういった魅力を感じる場合を除けば、安全性・収益性を両立したJリートへの投資はおすすめです。