退職金の平均額ってどのくらい?厚生労働省のデータから学歴・勤続年数別に算出
By Oh!Ya編集部
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企業を退職すると受け取れる退職金について、勤められている会社ではどのくらい貰えるのか気になるという方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、退職金の平均額について、公的データを元にいくつかのパターンをお伝えするとともに、自分で退職金を計算する方法や、退職金の制度、税金にお伝えしていきます。
※本記事の情報は「平成30年就労条件総合調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)を加工して作成しました。
退職金の平均額ってどのくらい?
退職を考えている方やすでに退職された方、また退職を考えていなくても将来いくらくらい貰えるのか知っておきたい方など様々あるかと思いますが、ここでは退職金の平均額についてお伝えしていきます。
会社員の退職金平均支給額は大卒・定年退職で1,983万円
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」によると、平成29年1年間の勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に対して子宮された退職者1人平均退職給付額は、大学卒の方で定年退職で1,983万円、会社都合退職で2,156万円、自己都合退職で1,519万円、早期優遇退職で2,326万円となっています。
支給形式別の平均支給額では両制度併用型が2,357万円
退職金は、退職時に一括して受け取る退職一時金制度と、毎年一定額を受け取る退職年金制度がありますが、同データでは大学卒かつ定年退職の場合で、退職一時金制度のみが1,678万円、退職年金制度のみが1,828万円、両制度併用が2,357万円となっています。
一時金制度のみの会社と併用制度を取り入れている会社では700万円程度の差があることが分かります。
老後に必要とされるお金は退職金で賄える?
厚生労働省の「高齢者の生活実態」によると、老後に必要とされるお金は、60代の型で最低日常生活費が23.5万円/月、ゆとりある老後生活費が37.8万円/月となっています。
年額に直すと、前者が282万円/年、後者が453万円/年となり、仮に2018年現在の平均寿命である87歳まで生きるとすると、65歳から22年間の生活費用が必要です。
最低日常生活費は22年×282万円=6,204万円、ゆとりある老後生活費は22年×453万円=9,966万円もの費用が必要となります。
もちろん、この期間は年金を受け取ることができます。
国民年金・厚生年金保険受給権者の平均年金月額の推移によると、平成28年度の平均受給額は国民年金で5万5,373円、厚生年金で14万5,638円でした。
仮に厚生年金で考えるとしても、1年間で約175万円、22年間で約3,845万円のため、最低日常生活費としても6,204万円-3,845万円=2,359万円、ゆとりある老後生活費としては9,966万円-3,845万円で6,121万円必要となります。
「老後資金」として退職金をあてにするにはやや少ない額であることが分かります。
中小企業の退職金の相場は?
厚生労働省のデータでは、会社員の退職金の平均額を知ることができますが、実際には中小企業では退職金自体ないことも少なくなく、またあったとしても支給額は平均より低いのが一般的です。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」によると、「卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準」における定年時の退職金支給額は大学卒で1,203万円となっています。
定年退職でない場合の勤続年数に応じた退職金の支給額(中小企業)
東京都産業労働局の同データでは、定年退職以外に勤続年数ごとのモデル退職金を知ることができ、その額は以下のとおりです。
- 10年(32歳):自己都合121万円/会社都合157万円
- 15年(37歳):自己都合229万円/会社都合283万円
- 20年(42歳):自己都合373万円/会社都合435万円
- 25年(47歳):自己都合569万円/会社都合636万円
- 30年(52歳):自己都合785万円/会社都合852万円
近年では一つ企業に定年まで勤め上げるスタイルは珍しくなりました。
中小企業にお勤めの方で、転職を考えている方は参考にされてみてください。
公務員の退職金の相場は?
公務員の退職金の相場として、人事院が2015年に行った「民間の退職金及び企業年金の調査結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解の概要」によると、国家公務員の1人当たりの退職給付は約2,537万円となっており、民間の相場よりやや高い水準となっています。
定年退職でない場合の勤続年数に応じた退職金の支給額(公務員)
内閣官房「退職手当の支給状況」によると、自己都合退職における勤続年数ごとの平均退職金は以下の通りです。
- 5年未満:23万円
- 5〜9年:87万円
- 0〜14年:274万円
- 15〜19年:528万円
- 0〜24年:942万円
- 25〜29年:1,384万円
- 30〜34年:1,734万円
- 35〜39年:1,993万円
- 40年以上:2,193万円
厚生労働省のデータと東京都労働産業局のデータ、人事院や内閣官房のデータそれぞれで元データ親集計方法が異なるため単純な比較は難しいですが、民間の企業と公務員とでそれほど大きな差はないことが分かります。
退職金制度がある企業は約80%
次に、先ほどと同じく厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査結果の概況」によると、退職金制度がある企業は80.5%となっています。
会社規模による内訳をみると、1,000人以上の会社で92.3%、300〜999人の会社で91.8%、100〜299人の会社で84.9%、30〜99人の会社で77.6%と、会社規模が大きいほど退職金制度がある割合が高いことが分かります。
退職金がない場合、退職後どうなる?
退職金制度がない会社に務められている場合、老後資金を自分で準備する必要があります。
先に計算した通り、最低日常生活費だけでも23.5万円/月が必要となるのに対し、年金の支給額は厚生年金の平均で14万円程度しかありません。
その差額については、確定拠出年金制度(iDeCo)などを活用して若い頃から自分で備えていかなければならないでしょう。
また、退職金は無しでも「合法」です。企業側が必ず支給しなければならないという法律はありません。以下の記事では、退職金にまつわる様々な不安要素について触れています。
退職金の仕組みについて
ここからは、退職金制度の仕組みについて大きく以下の4つに分けて解説していきます。
- 退職一時金制度
- 企業年金制度
- 本人拠出金制度
- 前払い制度
それぞれ見ていきましょう。
退職一時金制度
退職一時金制度とは、退職の給付にあたって確定拠出制度などの外部積立を行ず、内部積立のみで一時金を支払う制度で、内部積立である点と、一時金による支払いである点が特徴です。
上述した大卒、定年退職の場合の平均額が1,983万円というのはこの退職一時金制度によるものです。
まとまった額を受け取ることができるため、老後の生活の準備をすることができます。
退職一時金制度については、以下の記事でも詳しく解説しています。
企業年金制度
確定給付年金など、企業が独自に設定する企業年金の事で、退職一時金制度と併せて制度を取り入れている会社も多いです。
退職一時金制度が退職時に一括して支給を受けられるのに対し、企業年金制度では基本的に毎月一定額を受け取っていく形になります。
国民年金や厚生年金とは別に企業年金から年金が受け取れると考えるとよいでしょう。
本人拠出年金
退職一時金制度や企業年金制度では、基本的に会社が積立てくれる制度なのに対し、自分で積立ていく制度もあります。
例えば、企業年金基金の本人拠出年金では、毎月の給与より天引きされて年金が積立られています。
他にも、確定拠出年金(iDeCo)など、企業が年金制度を用意していなくても自分で積立できる制度もあります。
会社によって、また個人によって退職一時金だけのケースもあれば退職一時金と企業年金制度の双方を受けているケース、さらに本人拠出年金の3段階で支給を受けられるケース、その逆にどの制度からも支給を受けられないケースもあります。
ご自分の務められている会社でどのような退職金制度が用意されているのかよく確認しておきましょう。
前払い制度
ここまでご説明した内容とはやや異色ですが、昨今では退職金の前払い制度を導入する企業も増えています。
退職金前払い制度とはその名の通り、通常は退職時に受け取る退職金を在職中から一定額を給与に上乗せする形で前払いを受けられる制度です。
前払い制度を利用することで、企業側は1,000万円以上にもなる退職金を一括で支払うリスクを排除でき、従業員側は毎月の給料を高くすることができるというメリットがあります。
一方、デメリットとしては退職金であれば受けられる税制優遇を受けられないと言う点や、社員が転職しやすくなるという点が挙げられます。
退職金の前払い制度については、以下の記事でも詳しく解説しています。
退職金前払い制度はお得?資産運用も加味したメリット・デメリット
退職金の計算方法
ご自分が現在務めている会社で、将来受け取れる退職金がいくらなのか調べるにはどうすればよいのでしょうか?
退職金制度を設けている企業では、退職規定が設けられているのが一般的で、就業規則などで確認できるので、自分で計算することができます。
退職金の計算方法には、大きく4つのタイプがあります。
- 定額制
- 基本給連動型
- ポイント制
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定額制
定額制の退職金制度であれば計算も簡単です。
このタイプでは、勤続年数に応じて退職金の額が決められており、基本的に勤続年数が長くなるほど退職金の額が大きくなります。
例えば、勤続年数5年で30万円、勤続年数10年で100万円などと定められている企業で、10年目で退職した場合は100万円受け取ることになります。
基本給連動型
次に、基本給連動型タイプは、退職時の基本給に応じて退職金の額が決められるタイプで、退職時の基本給に、勤続年数に応じた割合をかけて算出します。
基本的に、勤続年数が長いほど退職金の額は大きくなります。
例えば、勤続年数に応じた割合が勤続年数5年で1、勤続年数10年で3などと定められている場合、退職時の基本給が35万円であれば、勤続年数5年の場合で35万円、勤続年数雨10年の場合で105万円受け取れる計算になります。
ポイント制
ポイント制では、企業が従業員に対して付与したポイントに応じて退職金の額が決定するタイプで、勤続年数が長くなるほど高いポイントが貰え、また役職ごとのポイントや退職理由ごとのポイント、会社への貢献度に応じたポイントなどの合計額で退職金の額が決まります。
このタイプだと自分で退職金の額を算出するのはなかなか難しいと言えるでしょう。
受け取った退職金にかかる税金はどうなる?
毎月の給料やボーナスには税金が課され、サラリーマンであれば源泉徴収されるため額面で100万円のボーナスだったとしても手取りの金額がそれよりもかなり少ないことが少なくありません。
退職金の場合、税金はどのように計算されてどの程度差し引かれるのでしょうか。
退職所得控除について
退職金はその額が大きいことから多額の税金を支払わなければならない可能性もありますが、退職金として受け取ったお金に対しては、退職所得控除の適用を受けることが可能で、これによりかなり税負担を和らげることができます。
退職所得控除の計算は以下の計算式で行います。
勤続年数20年以下の場合:勤続年数×40万円(80万円に満たない場合は80万円) 勤続年数20年超の場合:(勤続年数-20年)×70万円+800万円
例えば、勤続年数が10年の場合は400万円、20年の場合は800万円、30年の場合は1,500万円、40年の場合は2,200万円の控除を受けることが可能です。
退職金の所得控除については、以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
退職金の平均額について、それぞれ公的なデータを元に会社員全体、中小企業、公務員などについて見ていき、また退職金の制度や税金についても解説しました。
退職金の金額や制度の有無は規模が大きいほど制度を導入している割合が高く、また退職金の額も高い傾向にあることが分かりましたが、より具体的にはそれぞれの会社の規定を確認するしかありません。
具体的に退職金について調べたいのであれば、自社の職務規定などで確認するようにしましょう。