表面利回りと実質利回りの違いとは?数字に強い骨太の投資家になろう
By Oh!Ya編集部
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利回りが不動産投資の「成績」と「実力」を示すとても重要な数値であることは、多くの方がすでにご存じだと思います。しかしこの利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」という大きく分けて2つの指標があります。
実際にはさらに他にも「○○利回り」という数値があるのですが、特によく用いられているのは表面利回りと実質利回りの2つです。
この両者にはどんな違いがあるのか、それを正確に説明できますでしょうか?不動産投資の投資判断や投資の成績を知るうえでとても重要な指標なので、この記事では表面利回りと実質利回りの違いから、それぞれの算出方法や投資判断に役立てる方法を解説していきます。
目次
不動産投資の重要指標、「表面利回り」と「実質利回り」について
最初に知っておいていただきたいのは、表面利回りと実質利回りの違いです。しかもこの両者以外にキャッシュフローROIやイールドギャップなど、不動産投資には重要な指標がいくつもあります。最初に、これらの基本的な事項の解説から始めたいと思います。
表面利回りと実質利回りの違いとは
それぞれの詳しい計算方法などについては後述しますが、表面利回りと実質利回りの大きな違いは、「どれだけ不動産投資の実情に即しているか」という点に集約されます。
「表面」と「実質」という言葉が登場するので、このうちどちらがより現実に即しているかは、言うまでもないでしょう。実質利回りのほうが、より不動産投資の現実を表している数値ということになります。
最初に、この基本となる事実について押さえておいてください。
なぜ2つの利回り表示があるのか
表面利回りと実質利回りという2つの指標があること、そして実質利回りの方が不動産投資の現実に即していることをお伝えしましたが、ここである疑問をお持ちになったのではないかと思います。
その疑問とは、「それなら表面利回りなんて必要ないのでは?」というものです。利回りの数値から人が知りたいのは、不動産投資でどれだけ儲けを出すことができるのかという一点です。実質利回りがあるのであればそれを見れば良いわけで、表面利回りなど見ても意味がないというわけです。
これはごもっともなのですが、表面利回りは年間の家賃収入を物件の取得費用を単純に割っただけの数値なので、とてもシンプルな計算で求めることができます。つまり、表面利回りは目安として利用するのに好都合なのです。
それに加えて、必要経費を差し引いていないので表面利回りは実質利回りよりも高い数値になります。収益物件を販売している不動産会社としてはより高い利回りを表示して買ってもらいたいという思いがあるので、表面利回りで表示するのが普通です。
表面利回りは他の物件と比較検討をする時にも使える目安として、さらに不動産会社にとって都合の良い表示方法であるわけですが、不動産投資の真の姿を知るには実質利回りを重視するべきだというのが、この両者の使い分けです。
表面利回りと実質利回り以外にもある、利回り表示
この記事では表面利回りと実質利回りの2つについて解説を進めていきますが、実は不動産投資にはこれら以外にも「○○利回り」という表示があります。
1つ目は、想定利回り。これは対象となる物件が目標となる利益をもたらすためには、どれだけの利回りが必要であるかという数値です。表面利回りや実質利回りはその物件の実力を示す数値ですが、想定利回りはその物件に課す目標といったところでしょうか。投資計画を立てる時に想定利回りを算出し、それを実質利回りが上回っていれば投資価値があると判断できるといったように、戦略を立てる際に用いられることの多い指標です。
もう1つご紹介しておくと、期待利回りという指標もあります。これは新築物件に主に用いられる指標で、「その物件を運用してこれくらいの利回りが出る見込み」という未来の見通しを示しています。新築物件にはまだ運用実績がないので、類似物件などのデータを考慮しながら期待利回りが設定されます。
実質利回りよりも実情に即した「キャッシュフローROI」
不動産投資に関する数字の話は、まだまだ続きます。ここで登場するのは、キャッシュフローROI(または単にキャッシュフローと呼ばれることもあります)という指標です。ROIというのはReturn Of Investmentの略で、「投資によって得られるリターン」と訳されます。
実質利回りは家賃収入から物件を維持管理する必要経費を差し引いたものですが、キャッシュフローROIが持つ最大の特徴は、ローン返済分を考慮していることです。
高額物件だけに、ほとんどの不動産投資案件では金融機関の融資が前提になります。融資=借金なので返済の必要があるわけで、月々の家賃収入から返済分を差し引いたものが投資家の手元に残ります。このように最終的に投資家の手に入るお金のことを投資家は「手残り」と呼ぶことが多いですが、キャッシュフローROIは手残りのことであり、不動産投資の真の姿を最も表している数値であるとお考えください。
利回りに関連して知っておくべき「イールドギャップ」
さらにもう1つ、不動産投資に関連する数字のお話をします。まだあるのかとウンザリ気味になってしまうかも知れませんが、これが最後なのでお付き合いください。ここで解説する最後の重要指標は、イールドギャップです。
イールドとは利回り、ギャップとは差のことです。2つある利回り(金利)の差を示すのがイールドギャップということです。では、何と何の差なのでしょうか。
先ほどから解説してきた表面利回りと実質利回りは、いずれも収入から算出される数値です。そしてローンの金利は支出に関する数値です。表面利回りと実質利回りのどちらを用いるかは場面によって異なりますが、収入に関する利回りから支出される金利の差が、イールドギャップです。
例えば表面利回り7%の物件を、ローン金利2%で購入したとしましょう。この場合、表面利回りとのイールドギャップは5%となります。これをキャッシュフローROIとローン金利で比較してイールドギャップを求めると、そのイールドギャップがそのまま投資家の手残りを示す利回りということになります。
お金を借りて投資をする価値があるかどうかを知るうえでとても重要な指標なので、ぜひ覚えておいてください。
成功している不動産投資家は数字に強いという事実
ここまで表面利回りと実質利回りの違いからその他にもある利回り、キャッシュフローROI、そしてイールドギャップなど数字に関する解説をしてきました。なぜこんなに多くの数字があるのかというのは、不動産投資の投資判断にそれだけ慎重さが必要だからです。
ここまでの解説をお読みになっただけでも、表面利回りだけで物件購入を決めてはいけないことはお分かりだと思います。しっかりと必要経費やローン返済などを考慮した上で不動産投資の姿を数字で追っていくことは、投資家に求められるスキルです。
数字に強い投資家は成功している、その逆に成功している投資家は数字に強いというのは、どちらも成立する真実です。ぜひこの記事の解説をマスターして成功する投資家を目指していきましょう。
次の章からは表面利回りと実質利回りの計算方法など詳しい解説に進んでいきます。
表面利回りの基本と計算方法、活用方法
表面利回りと実質利回りの解説を順次進めていきますが、ここではまず表面利回りについて詳しく解説します。
表面利回りとは何か
表面利回りは、文字通り表面上に見えている数値だけで求める利回りのことです。「グロス利回り」と呼ばれることもありますが、どちらも同じ意味です。
すでに解説してきている通り、表面利回りは不動産投資の実際の姿を知るためのものというより、目安として用いられるものだとお考えください。
表面利回りの計算方法
表面利回りの計算方法は、実に簡単です。以下の公式で求めることができます。
表面利回り = 年間の家賃収入÷物件取得費用×100
単位は、パーセントです。
表面利回りだけで不動産投資は分からない
この記事ではすでに何度か述べている通り、表面利回りはあくまでも目安として使用される数値です。そのため不動産投資の真の姿を表しているとは言えず、異なる物件同士の比較検討をしたり、「どれくらいの利回りが期待できるか」という相場観をつかむといったことが、正しい使い方です。
では、表面利回りは何のためにあるのか?
実質利回りのほうが不動産投資の実情に近いため、何のために表面利回りがあるのかという点についてすでに述べてきましたが、表面利回りの役割はやはり比較検討と相場観のイメージです。
売りに出されている収益物件では利回り表示がすべて、表面利回りです。そのほうが数値が大きくなるので物件をアピールしやすいということもありますが、他の収益物件もすべて表面利回りが表示されているため、同じ条件に統一することで比較検討しやすくしているという意味もあります。
あくまでも目安ではありますが、不動産投資の検討をする時に最初の入口となるのは、表面利回りなのです。
実質利回りが必要な理由と計算方法、活用方法
表面利回りの次には、より不動産投資の実情を示すとされている実質利回りについての解説です。計算方法と具体的な使い方について解説していきます。
実質利回りとは何か
表面利回りに対して実質利回りは「実質」という言葉があるように、不動産投資に必要な経費などを家賃収入から差し引いて計算するため、より現実に即した利回り表示です。「ネット利回り」と呼ばれることもあります。
実質利回りで考慮される経費
家賃収入から必要経費を差し引いて求めるのが実質利回りですが、実際にどんな経費を差し引くのかと言いますと、主なものは以下の通りです。
- 不動産管理費
- 修繕積立金
- 固定資産税
- 都市計画税
- 修繕費用
- 水道光熱費
- リース料
物件によっては一部ないものもありますが、おおむねこれらが不動産投資で必要となる費用です。実際の不動産投資ではこうした費用を支払わなければ先に進まないので、実質利回りではこれらの費用を差し引いて不動産投資の利回りをより正確に計算することができます。
実質利回りの計算方法
それでは実際に実質利回りはどうやって計算するのでしょうか。以下がその公式です。
実質利回り = (年間の家賃収入 - 必要経費、税金) ÷ 物件取得費用 × 100
こちらも表面利回りと同じく、単位はパーセントです。表面利回りとの違いは、必要経費と税金を家賃収入から差し引いている点です。どんなに少なく見積もってもこうした経費がゼロになることはないので、必然的に実質利回りは表面利回りよりも低くなります。
実質利回りは万能か
必要経費を差し引いて計算をしているため、実質利回りは不動産投資のシミュレーションに頻繁に用いられています。それでは実質利回りが不動産投資の全容を明かしているのかというと、実はそんなことはありません。なぜなら、不動産投資には他にも支出要素やリスク要素があるからです。
ここまで表面利回りと実質利回りは、いずれもその物件が満室経営になっていることを前提に計算をしています。しかし実際の不動産投資では空室になっている期間もあるでしょう。物件の空室率を考慮すると、これも完全なゼロにはならないため、実際の収入は実質利回りよりも低くなるはずです。
また、設備の予想外の故障や修繕などもあるでしょうし、最も大きな要素であるローン返済も考慮されていないのが実質利回りの弱点です。
実質利回りでも不動産投資の真の姿は分からない
実質利回りでも不動産投資の完全シミュレーションができないとなると、実質利回りだけで投資判断をするのは危険だということになります。もちろん表面利回りより現実に即しているのは間違いありませんが、投資家が最終的に意識するべき手残りを計算するには実質利回りだけでは足りません。
そこで知っておいていただきたいのが、冒頭でもご紹介したキャッシュフローROIです。次章ではこのキャッシュフローROIについての解説をします。
実質利回りよりも現実に即したキャッシュフローROI
投資家にとって最も把握するべき数値が、手残りです。最終的にいくらキャッシュが手元に残るのかを知ることで、その物件に投資するべきかの最終判断が可能になります。そのためのきわめて重要な指標である、キャッシュフローROIについて解説します。
不動産投資のキャッシュフローROIとは何か
不動産投資での収入源は入居者からの家賃収入です。あとは物件を売却した時に値上がり益が発生したら、それも収入源になります。後者の収入はキャピタルゲインともいいますが、よほど地価が上昇しているエリアでない限りはなかなか難しいでしょう。特に不動産投資の人気エリアである東京では不動産の高止まりが続いているため、キャピタルゲイン狙いの投資はさらに難易度が高くなっています。
そうなると唯一に近い収入源となる家賃収入が、最終的にいくら残るのかを知るために用いるのが、キャッシュフローROIです。キャッシュフローROIの「ROI」を取って、単にキャッシュフローと呼ばれることもあります。
なお、キャッシュフローROIは不動産投資だけでなく、企業経営など利益を追求する経済活動全般に用いられています。不動産投資も利益を追求するビジネスの一種なので、最終的に経営している人の手元にいくらキャッシュが残るのかを知ることは、他の事業と同じだけ重要であるということです。
キャッシュフローROIを重視するべき理由
この記事では表面利回りと実質利回りの違いとそれぞれの詳しい解説をしてきました。これらはいずれも不動産投資をする際に「この物件に投資するべきか否か」を知るために用いるものです。
それに対して、キャッシュフローROIは投資するべきか否かというだけでなく、その事業がどれだけ利益をもたらしてくれるのかという経営戦略に関わるものです。
その物件に投資をして年間どれだけのキャッシュを稼ぐことができるかが分からないと、他の物件や事業を含めた総合的な経営像が浮かび上がってきません。そのため、不動産投資でも他の事業と同じように、キャッシュフローROIを最終的な物差しにする必要があります。
例えると、「絵に描いた餅」が本物の餅になったらどうなるか?という正確なシミュレーションをするのがキャッシュフローROIです。
キャッシュフローROIで考慮される要素
先ほど少し触れたように、キャッシュフローROIでは実質利回りの計算で考慮した必要経費と税金に加えて、空室リスクやローン返済分を考慮します。
利回りを計算する際には満室経営が前提となりますが、それはあくまでも理想であって現実ではありません。ある程度空室が発生する可能性を考慮しておくことで、その物件を買った後の経営環境が見えてきます。
そしてもうひとつ、ローン返済を考慮するのも現実性という意味では重要です。現金で物件を買う人はほとんどいませんし、そもそも融資を活用することで不動産投資のレバレッジ効果というメリットを享受できるのですから、現実に即したシミュレーションという意味では、ローンを利用したらどうなるかという収支を計算しておくべきです。
リスク要因とローン返済を考慮することで得られたキャッシュフローROIが満足できる数値であった場合、はじめてその物件は「きちんとシミュレーションをした結果、投資価値がある」と判断できるわけです。
キャッシュフローROIの計算方法
それでは、キャッシュフローROIの計算方法を解説しましょう。すでにここまでの解説をお読みになった方には想像がついていることと思いますが、計算式は以下の通りです。
キャッシュフローROI = (家賃収入 - 必要経費、税金) × 想定稼働率 - ローン返済額 × 100
ここで家賃収入とローン返済額はいずれも、年額ベースで計算します。想定稼働率という新しい言葉が出てきましたが、これは中古物件であればこれまでの稼働率実績を入れるのが最も正確です。新築物件や築浅物件など稼働率が分からない場合、筆者は目安として年85%としています。これは逆に言うと、その物件の想定空室率は年15%だということです。
この計算式でプラス収支となった場合、かなり高い確率でその収益物件に投資するとプラス収支が維持されると考え良いことになります。
不動産会社はキャッシュフローROIを教えてはくれない?
ここで解説したキャッシュフローROIについて、不動産投資を検討している方の中に「初めて知った」という方が多かったのではないでしょうか。その理由は、収益物件の物件情報にキャッシュフローROIが記載されていることはないからです。
これは何も、表面利回りはもちろん実質利回りよりも低くなることが確実なキャッシュフローROIを見せたくないという理由だけではなく、キャッシュフローROIはかなり物件に対する検討が煮詰まってこないことには正確に算出することが難しいからです。
キャッシュフローROIを正確に知るには空室率の想定や融資条件を加味する必要があり、それは物件情報を見ている段階では分からないことが多く、どうしても正確な数値を出しにくい現実があります。
そのため、物件情報から得られる情報だけでは表面利回りしか知ることができず、そして不動産会社から具体的な提案を受ける際に実質利回りがようやく見えてきて、その物件を買ったらどうなる?というシミュレーションの段階でようやく空室率や融資条件が見えてくるため、キャッシュフローROIを計算することができるわけです。
表面利回りと実質利回りを知って、悪徳不動産投資会社から身を守ろう
表面利回りと実質利回りの違いを知りたいと思った方の頭の中には、ある思いがあるのではないでしょうか。それは「不動産会社に騙されたくない」というものです。ここでは、そんな懸念を払拭してしっかり理論武装することの意義と悪徳不動産投資会社に騙されないためのノウハウを解説します。
不動産投資で成功するために必要な理論武装
昨今、不動産投資を巡って穏やかではない話を見聞きすることが多くなりました。金融機関や不動産投資会社の不祥事はもとより、そこまで分かりやすい事例ではなくても悪徳不動産投資会社にクソ物件を買わされた人が赤字と返済に苦しみ、ひどい場合は不動産投資をしたばかりに自己破産に追い込まれてしまったという事例まであります。
特に多くの被害が出ているのが、医師や企業経営者といった属性の高い人たちです。収入が高く融資の審査に有利な人たちであるがゆえに、詐欺に近いような投資話に乗ってしまうと融資を受けることができてしまうため、大損をしてしまうのです。
悪徳とまでは言わなくても海千山千の不動産会社にうまく乗せられてしまい、利益が出ない物件をつかまされてしまうことはあるでしょうし、「うまく乗せられているのではないか」という疑念を持ったままだと成功するものも成功しないかも知れません。詐欺まがいの悪質な不動産投資会社に騙されないというのはもちろん、納得のいく不動産投資を始めるためにも利回りの知識を自分で持っておくことは重要なのです。
表面利回りと実質利回りから、キャッシュフローROIを推測する
この記事では表面利回りと実質利回りの計算方法、そしてそこからさらにキャッシュフローROIを計算する方法を解説してきました。空室率や融資金利については分からない部分もありますが、筆者が用いた目安の数値などを使ってだいたいの数値を計算することはできます。
不動産投資会社から提案を受けた時には、実質利回りとともにキャッシュフローROIがどれくらいになるのかというシミュレーションの提示も受けます。その数値が自分で計算した結果と比較してみて、一致していれば理想的です。
もし一致しない場合(特に不動産投資会社から提示された数値のほうが大きい場合)、その根拠は何なのかという点を深堀りして説明を受けることが可能になります。
もしかすると提案時に空室率を低く見積もるなど楽観的なシミュレーションになっているかも知れません。また、その逆にその不動産投資会社の提携金融機関を利用すると手計算をした時の金利よりも低い金利で融資を受けられるかも知れず、いずれにしても提案の内容に納得できる商談になるはずです。
実質利回りがプラスなら「投資価値あり」なのか
多くの場合、不動産投資会社から提案の段階では実質利回りをもとに「この物件はいいですよ」と勧められることでしょう。では実質利回りがプラスになっているのであれば、その物件に投資価値があるのかというと、この記事をお読みになっている方であればそうとは限らないとお気づきになることでしょう。
融資の金利が想定よりも高ければイールドギャップが小さくなってしまい、投資家の手残りはその分少なくなります。突発的な出費に耐えられるだけの余裕がなくなり、一応は黒字経営なのに資金ショートしてしまうという事例はよくあります。
一連の不祥事によって今は新規貸し付けをしていませんが、個人向け不動産投資ローンで大きく業績を伸ばしたスルガ銀行は、当時3.5%の融資金利を適用していました。筆者は2%前後の融資金利を想定したシミュレーションをするため、この時点で1.5%もの差があります。つまり、この条件で融資を受けた場合はイールドギャップが1.5%も低下してしまうということです。
不動産投資会社から提案されている物件については、融資金利の見通しを含めたイールドギャップがどれだけになりそうなのか、そしてそこからキャッシュフローROIがどれだけ残るのかという点をしっかり尋ねて、納得のいく答えを得るようにしましょう。
実質利回りでは想定条件に注意しよう
キャッシュフローROIの計算式において、筆者は空室率を考慮しました。これについても若干曲者で、不動産投資会社によっては空室率を考慮していない場合があります。理由は簡単で、そのほうがキャッシュフローROIのシミュレーションを良く見せることができるからです。
新築ならともかく、中古物件では売りに出されている時点で満室だったとしても、それが100%のまま維持されることはまずありません。そのため、不動産投資会社からの提案では想定条件に注意してください。
中古物件で満室想定になっている場合は、その理由を尋ねてください。そこで「これまでずっと満室だったので、それを想定しています」という答えが返ってきたら、その不動産投資会社が取り扱ってきた類似物件でその後も満室が続いているのかどうかを確認しましょう。もしそこで他の物件では一部空室が出ているのであれば、それを想定したシミュレーションにするべきなので、その点を確認すると「本当の数値」が出てくるかも知れません。
キャッシュフローROI計算の正確性で不動産投資会社の品格が分かる
必要経費を低く見積もれば実質利回りを高く見せることができますし、空室率や融資金利を楽観的な数値にすれば、キャッシュフローROIも高く見せることができます。もちろん不動産投資会社としては物件を買ってもらいたいという思惑があるので、できるだけ数値を良く見せたいという気持ちは分かります。
しかし、それが果たして顧客目線と言えるかというと、そうではないでしょう。特に不動産投資の初心者向けにそのような収益性が怪しい物件を、良く見せたシミュレーションを提示して売ろうとするのは、感心できることではありません。
前項のように投資家からの指摘で「本当の数値」が出てくるということは、投資家が何も指摘しなければそのまま条件の悪い物件を売ろうとしていたかも知れません。
こうしたことは不動産投資会社の品格が良いとは言えず、そんな会社から物件を購入するのはやめておいたほうが良いと思います。
見た目の数値が決して良くなくても、想定条件を厳しめにしている不動産投資会社のほうがリスクをうまく織り込んでいるわけで、長い付き合いを考えるのであればそういった提案をする会社を選ぶのが成功への早道です。
まとめ
表面利回りと実質利回りの違いや計算方法、そしてとても重要なキャッシュフローROIとイールドギャップなど、不動産投資には欠かせない数字の数々を解説してきました。数字に強い投資家は成功していると述べましたが、それは自分で計算することができることで本当に良い物件を見極める力があるからです。記事の最後では自分で計算ができることで悪徳不動産投資会社から身を守る方法についても解説しましたが、こうした理論武装によって骨太の投資家を目指してください。