年金受給手続きに関する全情報を知って「うっかり不利益」をなくそう
By Oh!Ya編集部
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年金受給開始年齢が近づいている方にとって、年金はどんどん身近な存在になってきているかと思います。いくらもらえるのかという関心に加えて、年金は自分から手続きをしないと受給することができない、しかも一定の時期を過ぎると権利が消滅してしまう・・・という話を見聞きしたことはないでしょうか?
それが本当なら、年金受給の手続き方法をしっかり把握して適切な時期に手続きをしておかなければ、という思いが強くなると思います。老後の生活を支える大切な資金源でもあるので、この記事では年金の手続きについて全情報をまとめました。
年金の手続きが気になる方が、今知っておくべきこと
年金の手続きについて気になり始めているという方にとって、この段階でまず知っておくべきことをまとめました。
結局、年金は何歳から貰えるのか
そもそも年金は、何歳から受給することができるのでしょうか。60歳?65歳?それよりも引き上げられて70歳といった具合に諸説が飛び交っていることはご存知かと思いますが、これは「65歳」という認識を持っておいていただければ問題ありません。
それではなぜ、60歳や70歳といった年齢が俎上に上がるのでしょうか。
60歳という年齢については、かつての年金受給開始年齢がそうだったことが影響していると思います。そこから年金受給開始年齢が65歳に引き上げられたわけですが、制度が変わる際の段階的な措置として60歳、61歳、62歳といったように受給開始年齢が生まれ年によって引き上げられた経緯がありますが、まもなく年金受給開始という世代の方々にはすでに関係のない話だとお考えください。
次に、70歳という年齢が飛び交うことについて。こちらについてはまだ噂の段階ですが、年金財政がひっ迫することによって将来的に年金受給開始年齢が65歳から70歳に引き上げられるのでは?という説がある影響でしょう。
もっとも、自らの意思で年金受給開始年齢を遅らせると年金額が大きくなるので、その制度からの影響もあるでしょう。しかし、どちらかというと「年金の受給開始年齢がさらに引き上げられる!」という噂が独り歩きしている感の強いのではないでしょうか。
あれこれ言われているためややこしく感じる方も多いと思いますが、年金は65歳から受給できるものであるという認識で問題ありません。
年金は手続きをしないと貰えない
受給開始年齢の次に重要なのが、手続きの必要性です。国は年金を徴収する時は何の手続きも必要としない一方で、いざ受給となると手続きが必要になるのですから、どこかアンフェアな気もしますね。
しかし、年金が手続きをしなければ振り込まれないのは事実です。そもそも年金が振り込まれる口座情報を伝えなければ、どこに振り込めば良いのか分からないままなので、そのためにも手続きが必要であるとお考えください。
年金の手続きは「書類の到着」から始まる
手続きをしないと年金は振り込まれないということだけだと、「取るだけ取っておいて不親切だ」とお感じになるかも知れませんが、もちろん何もしてくれないわけではありません。
年金の受給開始年齢が近づくと、年金請求書といって年金の受給を請求するための書類一式が自宅に届きます。年金の手続きはこの書類の到着から始まるので、それまでは特に手続き上ですることはないと思っていただいて問題ありません。
年金の手続き書類が届かなかったらどうする?
年金受給開始時期が近づき、3ケ月前に書類一式が届くとは言っても「ちゃんと届くのか」という不安をお持ちの方はおられるでしょう。もちろん年金手続きの書類は住民票が所在している住所に届けられるわけですが、郵便事故や実質的に住んでいるところが住民票所在地ではないこともあると思います。
そんな時の対処法も知っておくことで、該当する時期に年金の手続き書類が届かないという場合には最寄りの相談窓口に問い合わせてみてください。
国民年金は住民票が所在している市町村役所、厚生年金は最寄りの年金事務所が問い合わせ先となります。
年金の手続きをせず放置するとどうなる?
これも多くの方がお持ちの疑問だと思いますが、年金の手続きをせずに放置していると、どうなるのでしょうか。先ほどから「年金は手続きをしないともらえない」と述べてきていますので、手続きをしなければいつまでたっても受給開始とはなりません。
そこまでは理解できたとして、そのままずっと放置しているとどうなるのでしょうか。
年金には時効があるため、受給開始年齢から5年間をすぎると権利が消滅します。これは「年金の時効」といって、国民年金法第102条第1項と厚生年金保険法第92条第1項に明記されているため、法律によって定められています。
老後の生活を支える貴重な収入源でもある年金を、手続きをしなかったばかりにもらえなくなるという事態だけは避けなければなりません。その意味でもこの記事で解説する年金の手続きについては正しい理解が必要になります。
年金を25年納めていなくても受給資格があるって本当?
年金はトータルで25年以上加入して、その期間分の年金を納めていないと受給資格がないということを聞いたことはありませんでしょうか?
これは「年金の受給資格期間」といって、年金加入期間が短い(つまり年金納付額が少ない)人にまで受給資格が発生すると不公平感があるということで設けられていたルールです。
このルール自体は今も存在していますが、平成29年から年数が変更になっており、今は受給資格期間が10年となっています。25年と比べるとかなり短くなっているので受給資格から漏れる方が大幅に減ったとは思いますが、それでも10年に満たない方は受給資格がないので、ご注意ください。
年金請求手続きの流れ
それでは、年金請求書などの書類が自宅に届いてから年金の受給が始まるまでの、一連の手続きの流れを解説したいと思います。
年金請求書が自宅に届く
年金の請求手続きは、ご自宅に書類が届くことからスタートします。受給開始の3ヶ月前を目安に届くので、その時期になったら「書類が届く」ということを頭の片隅に置いておいてください。
届く書類には、以下のような年金請求書が入っています。
差出人は「日本年金機構」です。まずは、上記の書類がちゃんと届いているかどうかを確認してください。
年金請求書に必要事項を記入する
受給開始年齢の3ケ月前を目安に届く年金請求書に必要事項を記入します。主な記載事項は、以下の通りです。
- 住所、氏名
- 基礎年金番号
- 生年月日
- 受取金融機関の口座情報
とてもシンプルな請求書なので、必要事項はこれだけです。どれも簡単に知り得る情報ばかりなので、年金請求書の作成で困ってしまうことはほとんどないと思います。
必要書類を準備する
年金請求書を提出する際には、必要書類があります。その必要書類を関係窓口で揃えます。必要書類の内訳と入手窓口については、次章で詳しく解説します。
必要書類を揃えて請求手続きをする
次章で解説する必要書類を揃えて、年金の請求手続きを行います。年金の請求手続きは年金事務所に対して行いますので、最寄りの年金事務所をチェックしておいてください。最寄りの年金事務所の所在地については、以下のサイトから探すことができます。
年金の受給が始まる
請求手続きが処理されると、年金受給開始年齢になったら指定した口座に年金の振り込みが始まります。この年金受給は、生涯続きます。
年金請求手続きの必要書類一覧
年金請求手続きに必要な主な書類と、それぞれの入手方法について解説します。
年金請求書
年金の請求手続きに最も重要なのが、年金請求書です。これは受給開始年齢の3ヶ月前を目安に自宅に届くので、届いた請求書に必要事項を記入すればOKです。自宅に届くので書類の入手方法についての解説は不要かと思いますが、もし「然るべき時期」に届いていないとお感じであれば、前章でご紹介した最寄りの年金事務所に問い合わせてみてください。
年金手帳、基礎年金番号通知書
年金に加入している方は、年金手帳や基礎年金番号通知書をお持ちだと思います。そのまま保管されている方は、それをご用意ください。自営業と会社勤めをどちらも経験されている方など、複数をお持ちの方もおられると思います。その場合はお持ちの分をすべてご用意ください。
基礎年金番号はとても重要な情報ですが、こちらが分からないという場合は、日本年金機構にお問い合わせください。
戸籍謄本など
本人を証明するための資料として、戸籍抄本か戸籍記載事項証明書、または戸籍謄本を用意します。これらの書類はいずれも市町村の窓口で入手可能です。注意したいのは、受給権が発生してから6ヶ月以内の書類でないと有効ではないことです。
このことを考えると、これらの書類は年金請求書が届いてから入手するのが確実だと思います。
金融機関の情報が分かる資料
年金の受給は、銀行振り込みという形になります。そのため、年金請求手続きの際には希望する金融機関の口座情報が必要です。銀行や信用金庫、信用組合など口座をお持ちの金融機関に関する情報を証明するための資料として、預金通帳のコピーやキャッシュカードのコピーを用意します。
最近では通帳を発行しないネット銀行などの口座も多くなっていますが、その場合であってもキャッシュカードもないということは少ないと思いますので、キャッシュカードのコピーを用意すればOKです。
印鑑
日本は今もなおハンコ文化なので、年金請求の際にも印鑑が必要です。公的な書面なので実印でなければならないとお考えの方は多いのですが、認印でOKです。認印でOKということは、印鑑証明書も不要です。
65歳よりも前から年金を受給できるのでは?という疑問にお答え
年金手続きに関してよく出てくる疑問として、「65歳よりも前から年金を受給できる可能性」があります。この章では、その可能性に関する具体的な情報をお届けします。
生年月日によっては65歳よりも前から受給できる人がいる
現在のように年金が65歳からの支給になったのは、最初からのことではありません。本来年金は60歳から受給できるものだったのですが、高齢化の進行によって年金財政がひっ迫してきたことから、現在のように65歳に引き上げられた経緯があります。
その移行期間において不公平感が出ないように、特例として65歳よりも前から受給できる年齢の人たちがあります。男性で昭和36年4月1日、女性で昭和41年4月1日以前生まれの人にはその可能性があるのですが、これらの世代の人たちはすでに年金受給開始年齢に差し掛かっており、これから年金の受給が始まる世代にはあまり関係がないことになりつつあります。
年齢によって65歳になる前から年金の受給が始まるという制度はあるものの、すでにこれから年金の受給が始まる世代に人たちにはあまり関係のないことと思っておいたほうが良いと思います。
65歳よりも前の年金は「特別支給」
65歳よりも前から年金を受給することを、特別支給といいます。特別支給という言葉のニュアンスによって、年収が低い人など特別な条件の人のものだと思われている部分があると思います。しかし、これは年金の支給開始年齢を引き上げることによる激変緩和措置なので、特定の人を救済するという主旨の制度ではありません。
そこで注意したいのが、受給資格があるのに手続きをしていないばかりに受給の権利を放置したままになっているケースです。特に最近で定年の延長や人手不足などの対策として60歳定年の会社であってもそのまま働き続けている人も多くいます。そんな人の中には特別支給の対象者が相当数いる可能性があるので、「男性で昭和36年4月1日、女性で昭和41年4月1日以前生まれ」に該当する方は一度チェックしてみることをおすすめします。
特別支給の年金請求手続き
ところで、特別支給の対象になっている人は、年金請求の手続きをどのようにすれば良いのでしょうか。これについては一般の65歳から支給される年金と全く同じで、受給開始年齢の3ケ月前を目安に自宅へ年金請求書が届くことから始まります。
すでにこの記事では年金請求手続きの流れを解説していますが、65歳になる前の特別支給であっても手続きの流れや必要書類は同じです。
特別支給の受給開始年齢一覧
特別支給の受給開始年齢は、生年月日によって段階的に異なります。かなり細分化されているので、以下の一覧表を見ていただくのが一番早いと思います。こちらは日本年金機構が提示している一覧表なので、この中でご自身がどのカテゴリに―属するかをチェックしてみてください。
先ほども述べましたが、年金の特別支給についても受給開始年齢になっているのにそのまま放置しているだけでは受給開始となりません。必ず手続きが必要になるので、ご注意ください。
よくあるのは、請求手続きの書類が届いてもまだ65歳になるまで数年あるので「自分には関係ない」として放置してしまうケースです。そのままにしている権利消滅となるので、年金機構から何か届いたらどんな書類であってもしっかりと目を通すようにしましょう。
特別支給を受けている人が65歳になったら
65歳になる前の年金は特別支給であると述べてきました。特別支給と呼ばれていうだけあって特別な措置なので、一般の年金とは区別されています。そこで注意したいのが、特別支給の年金を受給している人が65歳になり、一般の年金を受給する資格を得た時です。
特別支給の年金を受給しているので、そのまま特段の手続きをしなくても一般の年金に移行してそのまま受給を継続できる・・・と言いたいところですが、実はそうではありません。特別支給の年金が終わるのと同時に一般の年金受給が始まるので、それを受け取るための手続きが必要です。
この場合の手続き方法は、すでに解説してきた通りです。特別支給の年金が有る無しにかかわらず、65歳の年金受給開始年齢が近づくと、3ヶ月前を目安に年金請求書が届くので、それに必要事項を記入して必要書類とともに年金事務所に申請をします。
この手続きについてはすでに解説しているので、そちらをご参照ください。
年金手続きのQ&A集
最後に、年金手続きに関してよくある質問に対する回答をまとめました。年金の手続きについて疑問がおありの方は、まずこちらをご覧ください。
自営とサラリーマン、両方の時期がある場合はどこに手続きをする?
年金の加入期間は、最長で40年です。その40年間のうち大半は社会人として活動している期間なので、それだけの時間があれば単一の会社に勤めてそのまま定年を迎えると言う人ばかりではないでしょう。むしろ今では転職が珍しくなく、中には起業・独立を目指す人も多くいます。
複数の会社で勤めた経験をお持ちの方であれば、勤務先は変わったとしても厚生年金に加入しているということでは共通しているので、厚生年金の加入者に属します。厚生年金加入者の方々は年金請求を年金事務所に行えばOKなのですが、問題は自営業や無職などの身分だった期間がある方です。
社会人生活を自営業のみで過ごした方は、国民年金のみの加入者となりますので、年金の請求手続きは最寄りの市町村役所にある窓口に行います。しかし、自営業や無職など国民年金のみの加入期間と会社員など厚生年金の加入期間が混在している方の場合は、年金事務所が申請窓口となります。
少々ややこしいのですが、以下のように覚えておいていただければ、適切に行動がとれるかと思います。
- 自営業や無職のみ(会社勤めの経験なし) → 市町村の窓口
- 少しでも会社勤めなどを経験している → 年金事務所の窓口
もちろん、申請窓口を間違えたからといって不利益になることはありません。そこで正しい申請窓口を案内してくれるとは思いますが、二度手間を防ぐという意味で覚えておくと便利です。
繰り下げ支給ってなに?
前章では65歳になる前に年金を受給する可能性について解説しました。実は年金受給には、65歳になる「前」だけの話ではなく「後」の話もあります。ここでいう「後」とは、65歳になってもまだ年金を受給せず、もっと後に遅らせる手続きのことです。自らの意思で年金受給開始年齢を遅らせることを、「年金の繰り下げ」といいます。
本来受給開始となる年齢になっているのに、まだ現役で仕事をしていて収入があるなどの理由で年金がなくても大丈夫という方は、年金の繰り下げをすると大きなメリットがあります。そのメリットとは、受給額の増加です。
年金機構としては、「まだ年金は要らない」と言っている人の分だけ年金が浮くので、その分を実際に支給開始となった時に年金額の上乗せという形で返してくれます。
65歳になっても年金を受給せず、繰り下げるとどれだけ年金額が増えるのでしょうか。これを計算するには、「繰り下げ月数×0.7%」と覚えておくと計算しやすいと思います。例えば、1年繰り下げて66歳から受給開始にしたとすると、「12ヶ月×0.7%=8.4%」となり、66歳からの受給額が8.4%増額します。
この年金の繰り下げは最長で70歳まで可能なので、もし70歳まで目一杯繰り下げたとしたら合計で60ヶ月の繰り下げとなり、「60ヶ月×0.7%=42%」となり、なんと42%もの増額となります。
ここで注意したいのは、年金の繰り下げにも手続きが必要だということです。年金請求書が届いているのに「まだ要らない」として放置しているだけでは繰り下げの意思表示をしたことにはならず、単に放置しているだけとなり、時効へのカウントが進んでしまいます。
年金の繰り下げを希望する場合は、年金繰り下げ請求書という書類を提出する必要があります。書面は以下の日本年金機構のサイトからダウンロード可能です。
「ねんきん定期便」を保管していない場合はどうなる?
以前にあった「消えた年金」の問題を契機に、年金制度は大きく改革されました。その一環として「ねんきん定期便」という年金の加入状況を知らせる書類が誕生月に届くようになりました。
この「ねんきん定期便」を見ると現在の年金加入状況や、将来いくら年金がもらえるかといった情報が記載されているので、年に一度年金の状況をチェックするのに役立ちます。逆に考えると、改革前はこのような書面を発行していなかったので、いざ年金受給が近づいてくるまで自分の年金の状況を受動的に知る手段がなかったのですから、なかなか恐ろしい状況が長らく続いていたことになります。
この「ねんきん定期便」は年に一度届くので、紛失したとしても翌年に届くものを待てるのであれば、特に問題はないと思います。もし今すぐ年金の状況知りたいと思っているものの、すでに「ねんきん定期便」を廃棄、紛失している場合は年金事務所に問い合わせればすぐに情報を入手することができるので、「ねんきん定期便」を保管していなかったとしても、大きな問題ではありません。
年金の手続きに疑問や不安があったら、どこに相談できる?
ここまで年金の手続きに関する概要から具体的な手続き方法、よくある疑問点に対する回答まで順に解説してきましたが、年金に関する問題はケース・バイ・ケースという側面も強いため、すべての方に当てはまる情報ではない部分があります。
この記事で解説してきた内容でまだ疑問が残るという場合は、年金事務所に問い合わせ、相談をするのが最も確実なので、こちらに全国の相談窓口をご案内いたします。
行政のサービス向上が叫ばれており、これらの窓口ではいわゆるお役所的な対応ではなく、とても親切に対応してくれるようになっていますので、お気軽に問い合わせてみてください。
まとめ
年金は老後の生活を支える、貴重な収入源です。もちろん年金だけでは足りないという認識はほとんどの方がお持ちだと思いますが、それでも無いよりはマシなので、適切な手続きをすることによって不利益がないようにしましょう。
最後にひとつだけ、絶対に押さえておきたいポイントを念押ししておきたいと思います。年金は自分から手続きをしないと一切受給することができず、その他の手続きや意思表示に関しても同様です。徴収する時は何もしなくても勝手に持っていく印象がありますが、こちらがもらう側になった時は自分から動かなければ何ももらえないことを念頭に置いておいてください。