【最新版】Jリートにおけるファンド選びの重要ポイント2選
手軽に不動産市場へ投資できる「Jリート」をご存知でしょうか?
Jリートは、いまだ世間からの認知度こそ高くないものの、利益率や安定性の高さから多くの支持を集める金融商品です。また、近年の訪日客増加が追い風となり、今後ますます人気を獲得すると予想されています。
ただし、これを知ってJリートを始めようかと考えたとき、最初に「ファンド選びの難しさ」という壁にぶつかります。不動産といっても思い浮かぶのは、アパートやマンションばかり。オフィスビルやホテルを扱うJリートは、私たちにとって少々イメージしづらいのです。
そこで、今回はJリートの概要と「ファンド選びの基準」を解説していきます。
国内不動産に投資できる「Jリート」とは?
Jリートは「不動産投資信託」とも呼ばれる、不動産市場を対象とした金融商品です。
構造は投資信託に近く、投資家たちがJリートを購入することで、「投資法人」に資金が集まります。その資金の運用は、不動産運用の専門家である「資産運用会社」により一任され、日本各地の収益不動産の売買・賃貸に充てられる仕組みです。
これらの投資活動により発生した運用利益は、Jリートに投資した投資家へ「分配金」として還元されます。
目次
Jリートはどんな人におすすめ?
投資未経験でも手軽に売買できるJリートは、つぎのような人におすすめできる金融商品です。
分配金による安定収入に魅力を感じる人 少額から日本の不動産市場に投資したい人 運用に手間をかけず資産形成を行いたい人 個人レベルでは手を出せない大型不動産に投資したい人
やはり、Jリートはわずか数万円から投資可能で、還元率の高い分配金の存在により「手堅い利益」を得られるという点が最大のメリットです。
また、売買はネット上で完結し、実際の不動産運用を専門家に任せられることから、「スキマ時間で投資をしたい」といったニーズにもピッタリ。個人投資家には運用が難しい「大型不動産」を扱えることも、Jリートを購入するメリットとして挙げられます。
ファンド選びにおける重要ポイント
Jリートが多くの魅力を持つ金融商品だと分かったものの、具体的にどのファンドに投資すれば良いのか分からないものです。
この項では、「Jリートを分析する指標」と「公開されているファンドの情報」から、適切な投資先を判断するためのポイントを解説していきます。
指標からファンドの価値を見極める
指標は分析対象を数値化・可視化したものであるため、明確な判断基準があり初心者でも分析が容易。ただし、1つの指標だけで高精度な分析を行うことは難しく、基本的に複数の指標を使って判断します。
まずは最もベーシックな5つの指標をピックアップしました。
NAV倍率
NAV倍率は、「現時点での相場価格」と「対象銘柄の適正価格」の差額をあらわす指標。購入検討するJリートが割安なのか、それとも割高なのか判断する際に活用します。
指標の使い方は「NAV倍率が1以下であれば割安」、「NAV倍率が1を超えるなら割高」と分類するだけの単純なものです。しかし、多くの投資家がJリートの比較検討にもちいることからも、判断基準として十分に機能すると裏付けられています。
FFO倍率
FFO倍率は、「複数の分析対象を比較する」という役割を担う指標。分析対象Aは分析対象Bと比べたとき割安なのか、それとも割高なのか判断する際に活用します。
2つ以上の分析対象を比較して「FFO倍率が低いものは割安」、「FFO倍率が高いものは割高」。Jリートの分析指標としてメジャーで、NAV倍率と併せて使用されることが多いです。
なお、分析対象に制限はなく、以下のようにスケールの異なる要素同士を比較することも可能です。
「Jリートの市場全体」と「個別銘柄」を比較 「ヘルスケア施設全体」と「個別銘柄」を比較
こうして多角的に分析すれば、狭い範囲だけを見て投資する「早まった決断」を阻止できます。
NOI利回り
Jリートの収益性をあらわす指標が「NOI利回り」です。基本的には、NOI利回りが高いほど投資に対するリターンが大きいと判断できます。
Jリート全体での中央値は4~5%前後。これよりも分析対象のNOI利回りが優れていれば、収益性は高いと判断できます。
しかし、近年見られる「地方の過疎化」に伴い、都市部から離れたエリアでは賃貸需要が著しく低下してきました。これを理由に地方の不動産価格は下落している一方で、想定利益は据え置きであるため「実体のないNOI利回り上昇」が起こっています。
そのため、NOI利回りを参考に投資先を検討する際は、数値だけを見るのではなく「運用不動産が地方中心ではないか」という部分に着目しなければなりません。
本当に優れた収益性を持つJリートは、賃貸需要の高いエリアで多数の不動産を運用しつつ、NOI利回りがハイスコアな銘柄です。
トレンド推移
Jリートの相場価格には、株式市場などと同じように「上昇トレンド」と「下降トレンド」が存在します。そして、これらのトレンドには持続性があり、上昇トレンドに合わせてJリートを購入すれば、そのまま値上がりする可能性が高いです。
上昇トレンドを判断する方法は至ってシンプル。分析したいファンドの日足チャートと週足チャートをそれぞれ開き、どちらも右肩上がりになっていることを確認したうえで、その銘柄を購入するだけです。
このように、上昇トレンドに乗り利益を狙う方法は「順張り」と呼ばれ、投資において最も基本的なテクニックとして知られています。一方、下降トレンドの転換点を見極めて購入する「逆張り」は、高度な判断力を要する上級者向けの手法。
初心者が真似すれば不用意に損失を生むため、まずは順張りを狙って売買する方法をおすすめします。
取引出来高
取引出来高は「分析対象の売買量」を判断するための指標。基本的には、取引出来高が多いほど参入者・流入資金の規模は大きいと予測できます。
取引出来高が極端に少なければ「売買が成立しない」という危険な状況に陥るため、どれだけ割安な銘柄を見つけても安易に手を出してはいけません。購入したのは良いものの、売却できず身動きが取れなくなるリスクがあります。
くわえて、売買が成り立たない銘柄は「上場廃止基準」に抵触するケースもあり、最悪の場合は保有銘柄を手放せないまま上場廃止となるため注意が必要です。
公開情報から運用するファンドを決める
指標と同じく参考にすべきなのが、公開されている運用状況やスポンサー企業です。
指標は分析に有効であるものの、つい表面上の数字ばかり見てしまいがちになります。そのため、公開情報を見て運用の実態を知ることは、より多角的な分析に欠かせません。
「運用する不動産の種類」と「Jリートを支えるスポンサー企業」の2つが、どのような影響を持つのか解説していきます。
どのような不動産を運用しているのか確認
おおむね、Jリートにおける運用不動産のカテゴリーは6パターン。それぞれ、つぎのような特徴を持っています。
オフィスビル
ビジネスの中心街に建設されるオフィスビルは、Jリートのなかでも大部分のシェアを誇る不動産。法人相手に賃貸契約を行うため、一度に動く資金量が大きく収益性は高いです。
ただし、不景気に突入すると多くの企業が資本力を失うため、景気変動により利益率に幅があるといえます。構成内容の大部分がオフィスビルである銘柄は、経済のトレンドに流されやすいため、リスク・リターンともに大きくなりやすい投資先です。
商業施設
商業施設に分類される不動産は、商業ビルとショッピングセンターに大別されます。
商業ビルは都心に多く、景気により収益性が変動しやすい ショッピングセンターは郊外に多く、長期契約による安定利益が期待できる
基本的には上記のような特徴を持っており、商業ビルとショッピングセンターは真逆の特性を持っています。そのため、商業施設を中心に運用している銘柄は、不動産の所在地・種類を確認したうえで購入するのがおすすめです。
なお、不動産の詳細情報や構成内容は、投資法人の公式サイトから閲覧できます。
住宅(マンション)
不動産投資と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは住宅物件の運用ではないでしょうか?
私たちにとって住居となる不動産は、オフィスビルや商業ビルのように、景気が悪いからといって契約を解除するものではありません。人々が存在する限り必要であり続けるため、需要がなくなることのない「手堅い投資先」だといえます。
ただし、個人を相手に賃料収入を回収する特性上、収益性は決して高くありません。そのため、できるだけリスクを抑えつつ、コツコツと利益を重ねる運用スタイルに適しています。
物流施設
実店舗やショッピングサイトに並ぶ食料品・工業製品など、多くの商品は配送前に物流施設へ保管されます。
その名の通り、施設全体はスムーズに作業できるよう物流に特化。商品を運ぶエレベーターや、輸送トラックの搬出入エリアが設けられています。
一般には馴染みのない施設ではあるものの、ネットショッピングの普及に伴い建設数は増加。トラックによる輸送・配達が中心である限りは、需要がなくなる可能性は低く、長期契約を前提としているため安定利益が期待できる不動産です。
宿泊施設
宿泊施設は観光客数により売上が変動するため、事業者の財務状況は季節・流行により左右されます。そのため、ホテルなどを扱う投資法人は「固定賃料」と「変動賃料」を使い分けつつ、安定利益を狙って運用しています。
いまだJリート内での市場は小さいものの、2020年代の東京オリンピックや大阪万博を控えるなか、投資家たちから寄せられる期待は大きいです。訪日外国人が増えれば資金流入が見込めるため、今後特に注目すべき分野だといえます。
ヘルスケア施設
病院や老人ホームなど、医療・介護にまつわる不動産は、ヘルスケア施設と呼ばれます。
大きなリート市場を持つアメリカでは、高齢化の進行に伴いヘルスケア施設の需要が高まってきました。そのため、少子高齢化という同様の問題を持つ日本も、あとを追って市場が拡大すると予想されています。
住居と同じように、人々がいる限り必要であり続ける分野であるため、長期的に堅実な利益率が期待できます。
スポンサー企業の資本力・業種をチェック
投資家から集めた資金を運用する「資産運用会社」には、サポーターとしてスポンサー企業が付きます。
スポンサー企業の存在は軽視されがちですが、金銭的なバックアップのほか情報提供や人材派遣などを行うため、資産運用会社に対する影響は大きいです。
特にスポンサー企業として心強いのは、つぎのような業種。
不動産会社:独自のパイプラインで優良不動産を提供 金融機関:多額の資金を要する不動産売買・運用を大資本でバックアップ
厳しい不況時に持ちこたえられるかは、スポンサー企業の力に左右されるため、必ず確認すべきポイントです。
初めてのJリート運用に適したファンドとは?
NAV倍率はFFO倍率などの指標は、相場価格の変動により常に左右するため、この項では「公開情報」をもとに安定的な運用実績を持つファンドをご紹介します。
購入を検討する際は、分析時点での指標・公開情報が優れていること。および上昇トレンドを確認したうえで、投資することをおすすめします。
日本ビルファンド投資法人
Jリートの市場が始まった当初に上場し、業界初となる「資産規模1兆円」を達成したファンド。格付機関からトップクラスの評価を得ており、長期目線での堅実な運用方針を打ち立てていることがおすすめの理由です。
数百億円規模の不動産を多数保有しており、それでいて財務状況も安定的。出資元として「三井不動産株式会社」が付いており、Jリートにおける定番銘柄といえます。
日本ロジスティクスファンド投資法人
「日本ロジスティクスファンド投資法人」は、物流施設に特化したJリートとして、いち早く上場したファンドです。2018年末にも複数の物流施設を契約・取得しており、いまなお勢いに乗っています。
こちらも格付機関からの評価が高く、スポンサー企業は業界大手である「三井物産アセットマネジメント・ホールディングス株式会社」。価格推移が堅調なことから、初めてのJリート運用におすすめです。
まとめ
日本の不動産へ手軽に投資できる「Jリート」について解説しました。
訪日客増加で不動産市場が期待される一方、これは大型不動産を売買できない個人投資家は関係ないと思われがちです。しかし、Jリートへ投資すれば、オフィスビルや宿泊施設などの大型不動産を容易に運用できます。
2020年代を目前にしたいま、不動産市場に投資資金を仕込むチャンスは残りわずか。刻一刻とイベント開催は近付いているので、間に合うあいだに参入を検討してみてください。