競売での不動産投資はリスクが高い?買い方と注意点を徹底解説!
By Oh!Ya編集部
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不動産投資で収益物件を購入するときは、利回りが重要と言われています。一般的な利回りとは表面利回りのこと。 収益物件を賃貸運用することで得られる賃料収入に対して、物件の購入価格を割って算出したものが利回りです。投資する物件の利益率を比較するための指標として使われています。
物件を探していると、アパートやマンションなどは高利回りの物件もありますが、販売価格が高いため「なかなか投資対象にならない」ということもあるのではないでしょうか? 建物の現況が良くても、投資額に対してあまり収益にならないのであれば意味がありません。
そこで、競売物件を利用して高利回りで不動産投資をするという方法があります。競売物件とはどういうもので、どうやって購入するのでしょうか?
今回は、競売物件を買うときのポイントや注意点をご紹介します。
競売物件を買って不動産投資はできる?
そもそも競売物件とは、どういう物件のことを言うのでしょうか?
競売物件とは、住宅ローンの返済が困難になってしまい、債権者に担保物件を差し押さえられて競売に掛けられた物件のこと。 一般の方が住宅(戸建・区分マンション)を購入するときは、金融機関の住宅ローンを利用しています。ローンの融資を行った金融機関は、貸したお金を確実に返してほしいので、融資希望者が購入する住宅に対して抵当権を設定。住宅を担保としてお金を貸します。
抵当権とは、お金を借りた人がローンの返済不能状態になってしまった場合に、債権者(銀行)が優先して住宅を売却することができる権利です。売却をした代金から貸したお金を返してもらう、という仕組み。
投資家が不動産投資を行う際に銀行から融資(不動産ローン)を受けた場合も同様に、ローンの返済不能状態になれば、債権者に収益物件を差し押さえられ競売にかけられてしまいます。
一般の不動産売買と競売の違い
通常の不動産の売買は、個人間での取引がほとんど。住宅を売りたい人(売主)と、中古住宅を買いたい人(買主)が売買契約を締結して行います。このとき、買主は住宅ローンを利用して銀行から融資を受けているのが一般的。 住宅や収益物件の情報は、不動産ポータルサイトなどで見ることができます。
競売の場合は、裁判所が競売物件を一般公開しており、入札した人が落札できれば物件を取得できる、という仕組みです。 一般の不動産売買は売主と買主が合意すれば、売買契約によって物件を取得できます。ところが、競売物件の場合はたくさんの人が入札しているため、落札できなければいつまでたっても物件を取得することができません。
通常の不動産売買と競売物件とでは、物件を入手する方法が異なるのです。
競売によるメリット
競売物件を競落することによるメリットは、どんなものがあるのでしょうか。通常の不動産売買にはない特徴があります。
一般の不動産相場よりも安く買える
競売物件は、一般の不動産売買で取引される額よりも、2割から3割程度安い、というメリットがあります。競合する入札者がいなければ、通常の不動産相場よりも安い価格で競落することが可能です。
通常の不動産市場にはない物件がある
競売物件の種類はかなり豊富。
- 事務所や店舗用テナント
- オフィスビル
- アパート・マンション
- 戸建
など、ほとんどの不動産を網羅しています。この中から、自分の投資スタイルに合った物件を探していくことができます。一般の不動産ポータルサイトの利用と同じような感覚で物件探しができるのです。
また、競売物件には、「物件明細書」「現状調査報告書」「評価書」などがあり、物件についての情報を細かく知ることができます。これらの物件情報は裁判所が調査したもので、情報としての信頼性が高いもの特徴です。
購入する相手方が裁判所なので安心
通常の不動産売買は、個人と個人の取引です。個人同士の売買がいつもスムーズにいくとは限りません。場合によってはトラブルになり契約の解除や損害賠償請求に発展することも。
競売物件の場合は、売主という立場の人が存在しません。競売物件は、債権者(金融機関)が債務者(物件の所有者)から物件を差し押さえて競売にかけられた物件です。所有者と直接売買をするわけではありません。
競売の際は裁判所が落札して物件を入手する形式なので安心できます。
競売のデメリット
競売物件は、通常の不動産相場よりも3割程度安く、裁判所から買えて安心、というメリットがあります。しかし、同時にデメリットも潜んでいるので注意しておきましょう。
競売物件の情報がわかりにくい?
一般の不動産売買では、個人同士の取引の間に不動産仲介業者が入ります。仲介業者は宅建業法や民法で規定された法令を遵守して業務を行わなければなりません。 もし、売買を行う物件にシロアリや雨漏りなどの物理的瑕疵があった場合。その瑕疵について売主や仲介業者が知っていたら、買主に伝える義務があるのです。
また、隠れた瑕疵(売主や仲介業者が瑕疵のことを知らない・気づいていない欠陥)については、売主の瑕疵担保責任が適用できます。売主の瑕疵担保責任とは、売買契約後にシロアリや雨漏りなど建物に物理的な瑕疵があることで修繕が必要な場合に、修繕に掛かる費用を「売主が負担しなければない」というもの。
売買契約書に瑕疵担保責任を免責する特約があるときは、この限りではありません。しかし、瑕疵について売主や仲介業者が知っているときは告知する義務があるのです。
これに対して、競売物件の場合は不動産仲介業者が介入しないため、瑕疵があったとしても誰も教えてくれません。裁判所は競売物件について調査し、物件情報を公開する義務があります。しかし、瑕疵について直接教えてくれるわけではありません。 競売物件を入札したい人が、競売物件の情報を見て、自分でチェックする必要があるのです。
内見ができない
前述の通り、一般の不動産売買では、売主が住宅や収益物件を売却しています。しかし、競売物件の場合は裁判所が扱っているため売主がいません。 物件を確認したいときでも、まだ債務者(所有者)が住んでいる場合がほとんど。そのため、現地で土地や建物の外観を確認することはできますが、室内を見せてもらうことは不可能に近いです。
入札時などに現金が必要
競売物件は入札形式です。せっかく入札しても、他に高い金額で入札している人がいれば、競売物件を買うことができません。 また、入札を行うためには、事前に裁判所に「入札保証金」を収めなければなりません。入札保証金は裁判所が決めた金額で、売却基準価格の2割を提出する必要があります。
入札保証金は、競落できた場合は、購入代金の一部とすることができます。逆に、競落できなかった場合は入札保証金の全額が返還されます。
入札をするときに、入札保証金を現金で収める必要があるため、初めからある程度の資金を用意しておかなければなりません。必ず落札できるわけではないため、入札時に入札保証金を収めて、落札できなかったら返還。ということを繰り返すことになるため手間がかかります。
不動産ローンの利用が困難
一般的な住宅などの不動産を購入するときは、住宅ローンや不動産ローンを利用することができます。しかし、競売物件の場合はほとんどローンを組むことができません。競売物件を購入するときは、物件価格分の現金を用意しておく必要が出てきます。
占有者がいるときは立ち退いてもらう必要がある
競売物件には、まだ債務者がそのまま住んでいる場合がほとんどです。競落したあとに手続きがすべて完了すれば競売物件は自分のものになりますが、債務者が立ち退いてくれない可能性もあります。また、債務者の家族や借主(所有者から物件を借りて住んでいる人)が占有者となっていることも。
ただし、民事執行法の改正により、占有者に対して裁判所から引渡命令を出してもらうことができます。引渡命令を発令してもらうためには、競落した人が裁判所へ申し立てなければなりません。
それでも競売物件に占有者が居座り続けている場合は、「占有移転禁止」保全処分によって、占有者に対して強制執行をすることができます。 これまでは、物件の明渡請求の訴訟を提起して強制執行手続きをしなければなりませんでした。しかし、いまでは民事執行法の改正によって占有者を強制的に退去させることが可能です。
競売は誰でも参加できる?
競売物件への入札は、原則として誰でも参加可能です。宅建業者でなくてもかまいません。 しかし、入札への参加を制限されている人もいます。
●入札に参加できない人 1. 債務者 2. 過去に競売物件を競落したが購入代金を支払わなかった人 3. 妨害行為をする人
上記の3点に該当する人は入札への参加をすることができません。
不動産競売はオークション形式ではない
競売物件を購入するときは裁判所へ入札保証金を収めて入札をします。そして一番入札の金額が高い人が競落して物件を取得できる、という流れです。
一般的なオークションのような形式ではありません。同じ競売物件に対して何回も入札できるわけではないので、競落できない可能性を考えて入札する額を決める必要があります。
競売物件はどうやって買うの?
通常の物件を探すときは、不動産ポータルサイトや不動産情報誌から物件情報を見ることができます。しかし、一般の物件情報には競売物件が載っていません。 では、どうやって探せば良いのでしょうか?
競売物件を購入するまでの流れ
競売物件を購入するための全体の流れを把握しておきましょう。 以下が競売物件を入手できるまでの手順です。
- 競売物件を探す ↓
- 入札 ↓
- 開札 ↓
- 売却許可決定の確定 ↓
- 代金の納付 ↓
- 明け渡し交渉 ↓
- 引き渡し命令・強制執行 ↓
- 登記識別情報通知書の送付 ↓
- 物件の引き渡し
競売物件の情報を得ることから始まり、入札から競落、明け渡しを経て実際に物件を取得できます。
不動産競売物件情報サイトでチェック
まずは購入するための競売物件を探してみましょう。 競売物件を探すときは、「BIT(不動産競売物件情報サイト)」から情報をチェックできます。
- 競売物件の情報
- 物件の売却結果
- 過去データ
- 競売のスケジュール
- 全国データ
- 用語集
- 手続き案内
- 使い方
BITを見れば、競売物件に関する多くの情報を得ることができます。
また、不動産競売流通協会が運営している「981.jp」からも競売物件の情報を見ることが可能です。 (参考:BIT 不動産競売物件情報サイト) (参考:981.jp 不動産競売流通協会)
見かたとしては、一般の不動産ポータルサイトなどと同じようなイメージです。少し違うのは、「売却基準価額」と「買受可能価額」「買受申出保証額」が載っていること。
売却基準価額とは、裁判所が評価書を基に定めた競売物件の基準価格です。裁判所の執行官や不動産鑑定士が物件調査を行い、公示地価、路線価、過去の不動産取引事例などを基に不動産価格を評価します。 必ずしも売却基準価額で競落されるとは限りません。それ以上やそれ以下の額になる可能性があります。
買受可能価額は、「最低この価格以上でないと競落できませんよ」というもの。買受可能価額以下の金額では入札できません。
買受申出保証額は、入札に参加するために裁判所へ収める保証金のこと。買受申出保証金は、「売却基準価額」の2割です。
また、詳しい物件情報については、裁判所から3点セットと呼ばれる「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」がもらえます。
入札の手続き
実際に競売物件へ入札するための手順を見ていきましょう。BITや981.jpのサイトから競売物件情報を得たら、スケジュールを確認します。物件情報のところに「入札期間」が掲載されているので、その期間内に入札の手続きをしなければなりません。
入札手続きの流れは以下の通りです。
- 入札書類を入手 ↓
- 住民票を準備 ↓
- 指定の金融機関の口座に保証金を振り込む ↓
- 入札書・入札保証金振込証明書に記入 ↓
- 裁判所へ入札書類を提出
入札書は、直接裁判所へ行って配布してもらう方法と、裁判所から郵送してもらう方法があります。郵送の場合は、予め返信用封筒を入れてから裁判所へ郵送して、入札書を送ってもらう形です。
まだ購入したい競売物件が決まっていなくても、入札書だけは早めに準備しておきましょう。裁判所から郵送してもらうにはある程度の時間がかかってしまいます。入札したい競売物件が見つかっても、手続きの準備ができていなければすぐに入札へ参加することができません。
裁判所からもらえる種類は、他に「入札用封筒」「裁判所保管金振込依頼書」「保証金振込証明書」などがあります。
保証金の入金をする
買受申出保証額と同額の保証金を裁判所へ収めましょう。一般的には、金融機関で裁判所専用の振込依頼書を使用します。
必要な書類等
入札に参加する際には、予め必要書類を準備しておかなければなりません。 必要なものは以下の通りです。
- 入札書
- 入札保証金振込証明書
- 添付書類(住民票)(法人の場合は代表者事項証明書または登記事項証明書)
- 印鑑
入札書類を提出する際は、裁判所の執行官室に直接持参するか、郵送による方法があります。郵送する場合は、「入札書在中」と記載している封筒に入札書を入れて提出しましょう。
開札結果を確認
開札結果を確認するには2つのパターンがあります。
- 裁判所の落札結果会場で確認
- BITのサイトから落札結果を確認
裁判所からもらった3点セットの中に、開札会場の日時と場所が記載されています。また、BITなどの競売物件情報サイトからも確認が可能です。BITのサイトへアクセスして、「売却結果」のところから開札結果を確認できます。
入札後の手続きについて
開札の期日から約1週間後になると、落札した人に対して売却許可決定が出されます。落札者に問題がなければ、原則として開札期日から約1ヶ月以内に「売却許可決定通知書」や「代金納付通知書」が届くので、忘れないように確認しておきましょう。
原則として開札期日から約1ヶ月以内に届く - 売却許可決定通知書 - 代金納付通知書 が送られてくる
競落が決定すると、「売却許可決定謄本」の受け取りができます。売却許可決定謄本とは、競落した物件を落札者が買受人となることができるという証明書のこと。売却許可決定日に裁判所で受領できます。 受領の際には、入札書に押印していた「印かん」と、「本人確認ができる証明書(運転免許証や保険証など)」、「印紙代150円」が必要です。
また、売却許可決定が出たあとは、事件記録の閲覧ができます。事件記録は、債権者から競売の申し立てがあったときから売却許可決定が出るまでの調査資料一式のこと。 債務者と関係者の氏名や住所、連絡先などが載っており、建物図面や登記情報の確認ができます。 事件記録は、対象競売物件に関する利害関係者しか閲覧することができません。
特別売却とは?
競売物件が期間内に落札されなかった場合は、特別売却となります。特別売却になると、先着順で競売物件を買うことが可能です。購入する額は買受可能価額以上である必要がありますが、早い者勝ちになります。
特別売却の期間は、「開札期日の翌開庁日から5開庁日までの間」となるのが一般的です。
残代金の納付
競落が決まったら、競売物件を買い受けるために残代金を納付します。売却許可決定後に「代金納付通知書」が裁判所から送られてくるので、確認しましょう。
代金を納付した後は一緒に準備するべき必要書類があります。 主な必要書類は以下の通りです。
- 代金納付期限通知書
- 代金を入金したことを証明する「振込依頼書控え」
- 住民票
- 固定資産税評価証明書
- 登記事項証明書
- 登録免許税
できるだけ早めに準備しておきましょう。
残代金の納付前に気を付けること
落札したら、競売物件の写真や動画を撮影し、建物や敷地内の現況を証拠として残しておくことをおすすめします。物件の引き渡し前に占有者(債務者)によって火災が起こったり、損壊されていても、証拠があれば相手に損害賠償請求をすることが可能です。
また、競落した後は諸費用が掛かります。
- 登録免許税
- 不動産取得税
登録免許税は、所有権を移転登記する際に課税される税金です。競売物件を落札したあとは、債務者から落札者へ所有権を移転しなければなりません。その所有権移転を登記する際に登録免許税がかかります。 登録免許税の額は、固定資産税評価額の2%。たとえば、競売物件の固定資産税評価額が1,000万円の場合は、20万円が登録免許税となります。
不動産所得税とは、売買や競売の落札などによって不動産を取得した際に課税される税金のこと。都道府県から課税されます。 不動産所得税の課税額は、不動産を取得したときの「土地・建物」の固定資産税評価額の4%です。
占有者の明け渡し交渉
前述の通り、競売物件を落札して所有権の移転登記をしたあとは、落札者の所有物となります。 しかし、債務者がまだ居座っている場合もあるため、退去してもらうために交渉をしなければなりません。 たいていの債務者は住宅ローンの返済が困難になって住宅の競売を余儀なくされています。そのため、次の居住先を考えていない場合があり、交渉がスムーズにいかないことも。
なかなか退去してもらえそうになければ、裁判所に申し立てて引渡命令を出してもらいましょう。
競売物件と占有者(債務者)の今後についての選択肢
トラブルなく速やかに物件を引き渡してもらうためには、占有者と今後について話し合う場を設けることも必要になってくるでしょう。占有者としても、今後のことは不安です。引っ越し先や荷物の置き場をどうするかなど考えていかなければなりません。
占有者と話し合うときは、けっして高圧的にならず、占有者の不安を汲み取ってあげることが大切です。
占有者と賃貸借契約を結ぶ
今後の選択肢の1つとして、落札した競売物件には「引き続き占有者に住んでもらう」、というパターンです。 もともと競売物件を賃貸運用するための収益物件として購入したのであれば、そこに住んでいた占有者と賃貸借契約を結び、家賃を払ってもらえば目的を果たせます。占有者としても、そこに住み続けられるメリットがあるので、安心できるのではないでしょうか。
占有者に退去してもらい自分で住む
競売物件を安く購入してリフォームすれば自分で住むことも可能です。マイホーム目的で競売物件を落札する方もいるので、その場合は、占有者に退去してもらった後に自分や家族で住むというパターンです。
占有者に退去してもらい賃貸物件として出す
占有者が、競売物件に住み続けることや賃貸借契約を拒んだ場合は、やはり退去してもらわなければなりません。その場合は、一般の入居者を募集して賃貸物件として運用することになります。
占有者は退去したが残留物がある場合
占有者が退去したあとに、荷物などがそのまま残っている場合があります。この場合は、荷物を占有者に引き取ってもらったり、「残置物産物の所有権放棄合意書」などにサインをもらって処分しなければなりません。
引き渡し命令・強制執行
競売物件を落札したあとに残代金を支払い、無事に所有権を取得することができれば、占有者に対して物件の明け渡しを求めることができます。
前述の通り、もし占有者が退去しない場合は、裁判所に引渡命令を申し立てて強制執行の手順を踏んでいくしかありません。 代金を納付してから半年以内であれば、引渡命令の申し立てを行うことができます。
登記識別情報通知書が送付される
所有権の移転登記手続きが完了すると、裁判所から登記識別情報通知書が送られてきます。いわゆる「権利書」という重要な書類ですので、大切に保管しておきましょう。
物件の引き渡し
所有権の登記が完了し、占有者が問題なく退去すれば、物件の引き渡しをうけることができます。そこからは完全に自分の所有物となるので、収益物件としての運用をスタートしていきましょう。
競売物件の注意点
競売物件は一般の不動産相場よりも安く買える、というのがメリットです。しかし、競売物件には債務者が居住していて「なかなか退去してもらえない」リスクや、「建物の損傷が激しい」などのリスクがあることを忘れてはなりません。
不動産に詳しい人が教えてくれるわけではない
通常の不動産売買は、不動産仲介業者が物件を紹介してくれます。物件情報の細かい部分や、建物の現況について案内してくれたり、ローンの手続きなどについても提案してくれるので安心です。
しかし、競売物件の場合は、自分で裁判所の調査を基にした物件情報を確認するしかありません。競売物件の情報に書かれている内容がすべてなので、不動産に詳しいプロからアドバイスがあったり、物件の買い方を提案してくれることはないのです。
競売物件の購入はすべて自己責任で行わなければなりません。また、もし競売物件の敷地が接道義務を満たしていなければ、「再建築ができない」、という大きな落とし穴があります。
建物が経年劣化によってボロボロになるまで、収益物件として賃貸運用していくのであれば問題ありません。しかし、将来的に売却するのであれば、再建築不可の物件は建て替えができないため、「なかなか売れない」という可能性もあるのです。
競売物件の情報を見るときは、土地・建物の現況調査報告や権利関係についてしっかりと確認しておきましょう。
瑕疵担保責任の追及ができない
もし競売物件を競落したあとに建物の瑕疵(欠陥)などがあった場合でも、元所有者や裁判所に対して瑕疵担保責任を追及することはできません。
一般の不動産売買であれば、売主の瑕疵担保責任があります。しかし、競売物件には適用されないので注意しておきましょう。
競売物件を売却するときは「宅建業」としてみなされる
転売することが目的で競売物件を購入するときは注意が必要です。
宅建免許が必要?
競売物件を落札して所有権を取得したあとに転売すると、「宅建業」としてみなされてしまうことに。宅建免許のない人が競売物件を転売した場合は、宅建業法違反となり罰せられる可能性があります。
実際に平成16年の判例があるので、ぜひ目を通しておいてください。 (参考:最高判 平成16・12・10 「不動産を競売で落とす行為は宅建業法にいう売買にあたるとした事例」)
上記の判例は反復して競売物件の転売を行っていたものですが、「宅建業法の売買」とみなされるような行為は、宅建業者として行わなければなりません。
自己の居住用や賃貸経営であれば違法性はない
競売物件の転売は、宅建業法違反になる可能性がありますが、賃貸運用であれば問題ありません。競落した物件をリフォームやリノベーションによって綺麗にしてから一般の入居者へ賃貸することができます。
管理費や修繕積立金の滞納リスク
競売になっている物件は、所有者がローンの返済不能状態になってしまったことが原因です。主な理由としては、「失業してしまいローンが支払えなくなった」というケース。
不動産のローンが支払えないということは、その他の支払いも困難になっていると考えられます。たとえば区分所有マンションなどの場合は、管理費や修繕積立金を毎月管理組合に支払わなければなりません。 ところが、この管理費・修繕積立金の支払いも不能状態になっていれば、滞納している可能性が高いのです。
競売物件を安く買えたとしても、元の所有者(債務者)が管理費・修繕積立金を滞納していると、物件を買った人が負担しなければならなくなります。
こうした滞納リスクについても注意しておかなければなりません。
リフォームやリノベーションが必要
築年数にもよりますが、競売物件が古い建物の場合は、リフォームやリノベーションをしなければ賃貸運用ができない場合があります。ローンの返済が不能状態になった債務者は、生活スタイルが乱れていることもあり、室内の状態が著しく悪くなっている場合もあるのです。
競売物件を購入するときは、リフォームやリノベーションが必要なことを覚悟しておきましょう。
競売物件で実際に賃貸経営を始めよう
競売物件を無事に取得することができたら、実際に賃貸経営を始めてみましょう。収益物件の賃貸運用は、入居者を募集することから始まります。
不動産管理会社と仲介業者を探そう
収益物件は、管理と客付けが重要です。客付けとは、入居者をみつけて賃貸借契約をすることを言います。物件の管理業務は不動産管理会社、客付け業務は不動産仲介業者に依頼しましょう。両方の業務を行っている会社もあります。
リノベーションでオンリーワンの物件に生まれ変わる
競落した物件は建物の状態がひどく悪くなっていることがあります。クロスが剥がれていたり、壁に穴が空いていることも。こうした問題は、リフォームやリノベーションによって解決しましょう。
とくにリノベーションであれば、設備を新しく交換しつつ間取りの変更もできるため、建物が新たに生まれ変わります。入居者が快適な居住性を求めるので、綺麗な建物にすることで客付けが行いやすくなるでしょう。
空室率を常に意識しておこう
収益物件の大きなメリットは、賃貸運用をすることで家賃収入が得られることです。しかし、入居者がいなければ、その分の収入がありません。 転勤などの理由によって入居者は常に入れ替わる可能性があるため、できるだけ早く次の入居者が見つかるように、空室対策を考えておく必要があります。
不動産管理業者や仲介業者と相談しながら、空室対策を練っていきましょう。
まとめ
競売物件の購入するのは、「不動産のプロが多い」というイメージが強いのではないでしょうか。確かに、競売物件の入札を行っているほとんどは不動産業者です。
しかし、競売への参加は誰でも気軽にできます。競売物件の情報も、パソコンやスマートフォンがあれば、Webサイトから簡単にチェックすることが可能です。入札から落札までの一連の流れも、一度覚えてしまえばそんなに難しいものではありません。
競売物件の情報を見るときは、売却基準価額、買受可能価額、買受申出保証額の内容を理解しておくことが大切です。あとは自分で公示地価や路線価、不動産ポータルサイトなどで物件の実勢価格を確認すれば、いくらで入札すればいいかが分かるようになってきます。
予め裁判所から3点セットをもらっておきましょう。良い競売物件を見つけたときに素早く入札が行えます。競売物件を賃貸運用したり、自分で住むことが目的であれば、違法性はまったくありません。
また、不動産のプロが競売物件に入札するときは、築年数が浅く不動産価格が高めの物件を狙う傾向にあります。不動産投資の初心者が競売物件に挑戦するときは、プロが狙わない物件を押さえていけば良いのです。 たとえば、築年数は古いが不動産価格が安く、利回りが高くとれそうな物件。プロと素人の棲み分けを意識しておくことで、落札しやすくなるでしょう。
こまめに「BIT」や「981.jp」のサイトを確認して、自分の投資スタイルに合った物件を探してみてくださいね。