NISAで投資信託を運用する2つのメリットと3つの注意点
By Oh!Ya編集部
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投資信託から発生した運用利益には、一律20.315%の税金が課せられます。そのため、たとえ100万円のプラスを得たとしても、約20万円は税金として支払う必要があるのです。
これでは、リスクを取って利益を獲得した喜びも半減しますよね?
こういった課税義務による負担は、非課税口座「NISA」を利用して軽減することをおすすめします。口座開設・維持は無料であるため、コスト意識の高い投資家も安心して使える点が魅力です。
今回は、投資信託の運用時に活用したい「NISA」の紹介と、利用未経験者が抱く疑問について解説していきます。
目次
投資信託の運用時に活用すべき「NISA」とは?
NISAは金融商品の運用利益を非課税にする、税制優遇制度の1つ。NISA口座と呼ばれる専用口座に買い付けた投資信託は、売却益や分配益がすべて課税対象外となります。
なお、利用には以下のような規定が設けられています。
- 1年間の非課税枠は120万円
- 非課税期間は投資信託の購入から最長5年間
非課税期間として設けられた5年間を超えた場合、新たに翌年度の非課税枠を利用する「ロールオーバー」か、通常の課税口座に移すことになります。
そのため、非課税期間を迎えるときに慌てないよう、5年のあいだに投資信託をどう処理するのか考えておく必要があるのです。
仮に長期的に運用して、複数回ロールオーバーを行う見込みがある場合、後述する「つみたてNISA」が利用候補として有力。つみたてNISAは、非課税枠が小さくなるものの長期運用に適しています。
より長期運用に最適化された「つみたてNISA」とは?
非課税枠を抑えて非課税期間が長く設けられた「つみたてNISA」は、少額かつ長期的な投資信託の運用に適している税制優遇制度です。
- 1年間の非課税枠は40万円
- 非課税期間は投資信託の購入から最長20年間
このような規定が設けられており、NISAの非課税枠を使い切ることのない投資家にとっては、より好条件な制度になっています。
なお、つみたてNISAは非課税期間が長期的であるため、NISAと異なりロールオーバーはありません。
子どもに対する経済教育として「ジュニアNISA」の利用もおすすめ
ジュニアNISAは、名前の通り未成年を対象にした税制優遇制度。子どもや孫の将来を見越て、親権者(祖父母を含む)による資産の代理運用が主な用途です。
- 1年間の非課税枠は80万円
- 非課税期間は投資信託の購入から最長5年間
上記のような規定のほか、やむを得ない場合を除いて「18歳まで引き出せない」という制限があります。そのため、短期投資で利益をあげる用途には相応しくなく、あくまで「子どもに用意する将来の資金作り」という目的にしか利用できません。
なお、20歳以降になった段階で、ジュニアNISAは通常のNISA口座へと切り替わります。
株式ではなく投資信託をNISAで運用するメリット
NISAは投資信託のほか、投資の王道と呼ばれる株式をはじめとする数多くの金融商品に対応しています。
なぜ、それらの金融商品ではなく、投資信託の運用にNISAを利用するのかご説明します。
投資額の自由度が高く非課税枠を効果的に使い切れる
株式投資は単元株数(最低取引単位)が設けられており、単元株数はほとんどが100株です。これにより株価が1,000円だったとしても、最低購入価格は10万円になります。
一方、投資信託は基本的に数百円単位から購入が可能です。そのため、多額の投資資金を用意できない場合でも、積極的にNISAを活用できます。
また、多くの投資資金を運用する投資家であっても、投資額を細かく決められる投資信託なら、非課税枠をピッタリ使い切りやすいのです。
最適な投資先をファンドマネージャーが分析してくれる
株式投資で着実に利益を重ねるためには、成長分野や企業の将来性を分析しなければならず、テクニカル分析やファンダメンタル分析などの複雑な知識を求められます。そのため、税制優遇制度の存在を知りつつも、本業の忙しさにより株式投資に手が回らないサラリーマンが多くいるのです。
しかし、投資信託であれば投資家は売買以外の作業が不必要。投資信託の保有中は「ファンドマネージャー」が、その時々で経済情勢を調査・分析して、投資家から預けられた運用資金を効果的に分散投資してくれます。
前提として、NISAは利益を出さなければ効果を発揮しません。これを考慮すれば、常に専門家レベルの資産運用ができる投資信託は、株式投資よりもNISAを有効活用できる確率が高いといえます。
こういった理由により、時間や手間をかけずNISAによる非課税の恩恵を受けたい場合、投資信託は最良の選択肢として候補に挙がります。
NISAでの運用に適した投資信託の選び方
いざ、NISA口座の利用を決意しても、どの投資信託が投資先として相応しいのか分かりづらいものです。
この項では、NISAを最大限生かせる投資信託の特徴を解説していきます。
長期運用ならインデックス型の投資信託を選ぶ
「長期運用の最適解」として名前が挙がる投資信託にも、長期運用に不向きな銘柄はあります。そのうちの1つが、利益追求を掲げてファンドマネージャーが積極投資する「アクティブファンド」。
投資信託は「ベンチマーク(対抗指標)」として、日経平均株価やTOPIXを設定することが多いのですが、アクティブファンドは常時ベンチマークを上回る運用成績を目指します。しかし、日米の市場調査により長期運用になるほど、アクティブファンドがベンチマークを下回る結果に終わると分かったのです。
そのため、NISAを利用して長期的に保有し続ける投資信託は、ベンチマークとシンクロするように設計された「インデックスファンド」が最適。短期目線ではアクティブファンドに劣るケースが多いものの、10年,20年と運用すれば高確率でインデックスファンドが好成績を残します。
運用コストは徹底してチェックする
投資信託は短期的な値動きが小さいため、目に見えて資産拡大が進むまでに数年間必要です。
しかし、投資信託は購入時に購入時手数料のほか、保有中に「信託報酬(運用経費)」が発生します。投資信託ごとの信託報酬はわずか数%の違いしかありませんが、運用しているあいだ毎日加算されるため、数年後に大きな差額となることを考えれば軽視できません。
年を追うごとに信託報酬は価格競争が激化しているので、類似するいくつかの投資信託をリサーチしてから運用を始めることをおすすめします。
分配回数は少ないほど投資効率が高い
投資信託が持つ魅力の1つに「分配金」があります。これは、各投資信託が運用成績に応じて、利益の一部を分配する投資家へのリターンです。
投資信託ごとに「毎月分配型」や「年1~6回分配」、「無分配型」などさまざまな形態があります。これらは、分配回数が少ないほど運用資金が分散されづらく、長期目線での資産運用を考えれば無分配型が最もおすすめ。
なぜなら、獲得した運用利益を引き出さずに再投資するほど、投資で得る最終的なリターンは大きくなるからです。こうして利益を投資以外の用途に使わず、運用資金に加え続ける手法を「複利運用」と呼びます。
長期運用で効果を発揮する「複利」の効果
「獲得した運用利益を再投資する」といったシンプルな方法で、複利による効果はあらわれます。
以下に、運用利益を再投資に充てない単利運用と比べて、複利運用がどれほど利益総額に差を生むのか算出しました。
1,000万円を元手に年間利回り3%で運用した場合
運用年数 | 複利運用 | 単利運用 | 利益差額 |
---|---|---|---|
運用1年目 | 1,030万円 | 1,030万円 | - |
運用2年目 | 1,060.9万円 | 1,060万円 | 0.9万円 |
運用3年目 | 1,092.7万円 | 1,090万円 | 2.7万円 |
運用10年目 | 1,343.9万円 | 1,300万円 | 43.9万円 |
運用20年目 | 1,806.1万円 | 1,600万円 | 206.1万円 |
運用30年目 | 2,427.2万円 | 1,900万円 | 527.2万円 |
※1,000円未満は切り捨て。
単利運用は利益を再投資せず、運用資金は同額のままであるため毎年の利益額は30万円。10年経過すれば300万円、20年経過すれば600万円と一定の増加率を保ち続けます。
一方、毎年の利益を再投資している複利運用は、2年目,3年目から小さいながらも差が生まれ始めました。運用年数が経過するごとに増加率が加速度的に伸び、運用30年目には単利運用と500万円以上のギャップが生まれています。
これを考慮すれば分配金を再投資に充てる、または運用資金を引き出さないよう設計されている「無分配型」を選ぶことが、NISA口座を最大限活用する方法だと分かるのです。
長期運用に向いている投資信託3選
前述した「NISAでの運用に適した投資信託の特徴」をまとめると以下の通りです。
- インデックスファンドである
- 投資信託が安く運用コストがかからない
- 手間をかけずに複利を活かせる無分配型
これらの条件を満たす投資信託はいくつかありますが、そのなかでも特に高評価を集める3つの銘柄をご紹介します。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
比較的新しく歴史が浅いものの、売買のハードルが高いとされる海外ETFを、日本円で運用できる投資信託として人気を集めています。
主な投資対象は「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」となっており、このETFは全世界の株式市場を対象に投資しています。そのため、実質的に「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」も世界中を投資対象にしている投資信託といえるのです。
運用コストは極めて低く成長率も堅実であるため、少額資金で世界の優良企業へ投資したい人におすすめ。多くの投資家から確かな支持を集めている、長期運用に最適な投資信託の1つです。
- 購入時手数料:無料
- 信託報酬:年率0.1296%
- 分配形式:無分配型
※2019年1月時の情報です。
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
コスト競争に力を入れており、過去に複数回の信託報酬引き下げを行ったことから、業界有数の低コストファンドとして知られています。
投資信託の構成内容は「日本を除く先進国の株式」を対象に設計されており、基準価格は緩やかに推移。持ち前の堅実さが評価され、純資産総額は登場以降ずっと伸び続けています。
今後も信託報酬の値下げが期待されているため、低コスト運用を追求する投資家は特にチェックしておくべき投資信託です。
- 購入時手数料:無料
- 信託報酬:年率0.11772%
- 分配形式:無分配型
※2019年1月時の情報です。
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
投資家に人気を集める投資信託は、経済大国であるアメリカの株式運用率が高いです。
そのようななか、この「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、国内外の株式・債券・不動産市場へ均等に投資していることが特徴。先進国と新興国にバランス良く投資できるため、とりあえず何か1本投資信託を購入したいという人におすすめです。
- 購入時手数料:無料
- 信託報酬:年率0.17172%
- 分配形式:無分配型
※2019年1月時の情報です。
非課税制度NISAを利用するうえでの注意点
NISAに明確なデメリットはないものの、いくつか気を付けるべきポイントがあります。 これらを知らないまま利用を始めると、予想外のプラン見直しを迫られるため注意しましょう。
NISA口座は1人につき1ヶ所のみ開設可能
NISA口座は1人につき1ヶ所しか開設できません。1ヶ所で利用すれば、その他の証券会社では開設できず、同時にNISAとつみたてNISAを併用することも不可能です。
このとき証券会社によってNISA自体の効果は変わらないですが、証券会社が取り扱う金融商品は異なることに注意しましょう。
NISAを活用して計画的に長期運用を始めるなら、口座開設の対象である証券会社で、「購入検討している投資信託」が販売されているのか確認することをおすすめします。
つみたてNISAで扱える投資信託は審査をクリアした銘柄のみ
つみたてNISAは少額での長期運用に適した制度ですが、買い付けられる投資信託は「金融庁の基準をクリアした商品」に限られます。
NISAで購入可能な投資信託が、つみたてNISAでは購入できないケースは多くあるので、つみたてNISAの利用を予定している場合は注意が必要です。
なお、つみたてNISA口座では株式を運用できないため、株式と投資信託に並行して投資したい場合はNISA口座を利用しましょう。
各年度の非課税枠は繰り越しできない
NISAであれば年間120万円、つみたてNISAであれば年間40万円というように、各NISA口座は年度ごとに非課税枠が設定されています。この非課税枠は1年経過するたびに更新され、年度末にどれだけ利用余力が残っていても翌年度には繰り越せません。
「今年は購入したい投資信託がないので、非課税枠を来年に持ち越そう」といった手法が通用しないため、年初に年間投資プランを立てることをおすすめします。
まとめ
投資信託をNISAで運用するメリットや、理想的な投資信託の選び方をご説明しました。
投資信託は株式投資などと違い、少額かつ少しの手間で十分運用できる金融商品です。スタートのハードルは低いながら、ファンドマネージャーによるプロレベルの運用結果が期待できて、貯金のような感覚でコツコツ積み立てられます。
投資未経験であっても成果が出しやすい分野なので、金融知識の勉強は苦手でありつつも、将来に向けて資産運用を始めたいという人におすすめ。NISAの非課税効果を活用して、10年後,20年後の生活を支える経済基盤を築いていきましょう。