思い込みには要注意!全ての不動産投資が低リスクとは言えない理由
By Oh!Ya編集部
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令和に突入して間もなく、トヨタ自動車の社長が「終身雇用を守るのは難しい」という発言をしたことに注目が集まっています。これにより、今後はますます「自分の生活は自分で守る」という風潮が強くなるでしょう。
そんななか、新たな収入源を確保するため、従来以上に不動産投資が人気になることも予想されます。ただし、不動産投資自体は決して「低リスクな資産運用」ではないことに注意してください。
不動産投資は決して低リスクな資産運用ではない
セミナーや企業広告で「不動産投資は低リスクだ」と語られることは多々あります。しかし、不動産投資は決して低リスクな資産運用ではありません。
確かに、努力次第でリスクをコントロールしやすいという面はありますが、それは投資家の選択によってハイリスクにもローリスクにもなるということ。そのため、不動産投資を低リスクだと断言するのは、あまりに浅はかだといえるでしょう。
経済の世界では「リスクとリターンは比例する」という考え方が一般的です。つまり、大きな利益を狙おうとするほどハイリスクになり、コツコツと利益を狙うならリスクは小さくなるのです。
この法則を考慮すると、経済的自立を目指して不動産投資をスタートするのであれば、必然的に一定以上のリスクを取らなければならないと分かります。そのため、経済的自立を目指すうえで大切なのは、「リスクを極力抑えること」ではなく「リスクを理解して不用意な選択をしないこと」です。
「低リスクな資産運用だ」と思い込むことの危険とは?
リスクとリターンは比例するという法則があるにもかかわらず、不動産投資を低リスクな資産運用だと一括りにして始める人は多くいます。
しかし、こういった意識を持っている限り、以下のような失敗投資家に共通する状態に陥りやすく、長期的に成功を収めることが困難になります。
- 事業者としての自覚が不足する
- 損切りのラインを設定できない
これらは、それぞれ不動産投資で成功を目指すとき、深刻な障害として立ちはだかります。
事業者としての自覚が不足する
不動産投資は「投資」とはいうものの、実際には「賃貸業」です。運任せのギャンブルではなく、事業計画にもとづいて顧客に価値を提供し、対価として賃料収入を受け取るれっきとしたビジネスなのです。
これを理解しないまま、「何となく儲かりそうだから」といった理由で不動産投資を始めようとする人は、事業計画を立てず曖昧な運営方針のまま事業を続ける傾向にあります。
しかし事業計画は、事業者が取るべき行動を指し示すコンパスのようなもの。優秀な人材を多数有する上場企業でさえも、入念な事業計画を立てて長期的な成功を目指していることを考えれば、いかに事業計画が重要なものか分かります。
また、不動産投資でいち早く成功を収めたいと考えたとき、金融機関から融資を受けて投資効率を高めることが重要ですが、綿密に練られた事業計画を用意できなければ融資は下りません。そのため、事業者としての自覚が不足しているだけで、経済的自立から一気に遠のいてしまうのです。
どうして事業計画を用意できなければ融資が下りないの?
金融機関は、融資をした資金が返ってこなければ破綻するため、融資希望者の返済能力を見極めて融資するか否かを決めます。この、返済能力を見極めるという段階で重要となるのが、前述した事業計画です。
- 不動産を運用するにあたり、どの程度の出費・収入が発生するのか
- どういったビジョンを掲げて不動産投資をスタートするのか
- 空室・災害などのリスクをどのように切り抜けるのか
融資をする側としては、これらが明瞭かつ再現性の高いものでなければ、安心して多額の資金を貸し出すことができません。そのため事業計画がない、もしくは事業計画が粗末であれば融資は下りないのです。
損切りのラインを設定できない
不動産投資を低リスクだと思い込むことのデメリットは、融資を受けられないことだけではありません。事業計画を立てないという行為の根底にある意識は、「低リスクだから大失敗はしないはず」というものです。
こういった投資家は、総じて不測の事態に遭遇したときの対処法を用意しない傾向にあります。しかし、成功を重ねる投資家たちは誰しも、事業計画の立案と並行して「もし想定通りに事業が進まなかったら」というネガティブな未来も想像しています。
そうすることで、予想とは真逆の結果になったとき、どのくらい損失を出したら投資から撤退するのか具体的なビジョンを思い描いているのです。
順調に進んだときはさらに前進して、計画通りに進まなければ早々に損切りする。これは、不動産投資を低リスクだと盲信している限り難しいことだといえます。
不動産投資を低リスク化する4つの鉄則
不動産投資を低リスクだと評価するのは安易であるものの、前述したようにリスクをコントロールしやすい資産運用であるため、戦略によっては低リスク化することが可能です。
この項では、不動産投資を低リスク化するために守るべき、4つの鉄則についてご説明します。
投資額をできる限り抑えて不動産を購入する
前半部分で述べたように、不動産投資は低リスクな資産運用ではないものの、リスクのコントロールは難しくありません。なかでも「投資額を抑える」という手段は、シンプルかつ効果的です。
投資額が大きくなれば、必然的に金融機関からの融資額は多くなり、毎月多額の返済金を支払う必要があります。そのため、想定通りに収益を獲得できていれば問題ありませんが、空室が増えれば賃料収入でカバーできない返済分を「持ち出し(自己負担)」で対応する必要があるのです。
一方、投資額を抑えて自己資金だけで投資をすれば、支払いは税金や不動産の維持費のみ。融資を引いていないため返済に追われることはなく、多少の空室なら怯えることもなくなります。
こういった理由から、不動産投資を低リスク化するとき「投資額を抑える」という手法は有効なのです。
借入金利を徹底して下げる努力をする
リスク管理の観点でいえば、自己資金のみで不動産投資をスタートするのが理想的ですが、収益性の高い魅力的な不動産というのは高額なもの。希望する条件に見合う不動産は、融資を利用しなければ購入できない案件であるケースがほとんどです。
こういった場面では、融資を利用して不動産投資を始めるほかないのですが、このとき「融資の借入金利」に注意を払う必要があります。借入金利は一桁%であるため、多少の違いであれば軽視しやすいのですが、低リスク化を目指すなら少しでも下げる努力をすべきです。
たとえ、借入金利が2%異なるだけでも、返済総額には大きな違いが生じます。
5,000万円の金利3%・金利1%で受けたとき(返済期間35年)
借入金額 | 借入金利 | 返済期間 | 返済額/月 | 返済総額 |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 3% | 35年 | 19万円 | 8,081万円 |
5,000万円 | 1% | 35年 | 14万円 | 5,927万円 |
※1万円未満は切り捨て
どちらも借入金額は同額ですが、借入金利が2%異なるだけで返済総額には2,154万円の違いが生まれました。たった2%に違うだけで、新たに不動産を買い増しできるほどの資金が浮くと思えば、借入金利にシビアになることがいかに重要なのか分かるはずです。
そのため、融資を受けるときは「融資審査の緩さ」で選ぶのではなく、まずは審査が厳しくても低金利な金融機関から当たることをおすすめします。
なお、融資に関する詳しい情報は、当メディアの「これを知らずに不動産投資を始めるの?融資額を大きく変える「属性」の秘密」にて解説しています。どういった金融機関が低金利なのか、どういったタイプの人が審査に通りやすいのかが気になる方は、あわせて参考にしてみてください。
正しい情報を得られるようアンテナを張る
投資において正しい情報を知らないことは、それだけでリスクになります。たとえば、2018年度にニュースで大々的に取り上げられた「かぼちゃの馬車」の騒動は、情報収集を怠った投資家たちが被害に遭いました。
この騒動では、かぼちゃの馬車と呼ばれるシェアハウスを、サブリース契約による「30年間家賃保証」という魅力的な謳い文句で販売。しかし、販売されたシェアハウスの多くは、収益性が低く十分な賃料を回収できなかったため、家賃保証を維持できなくなり投資家への賃料支払いがストップしました。
のちに、かぼちゃの馬車を販売していたスマートデイズ社も破綻し、多額の負債を抱えた投資家だけが残されたのです。一連の問題は、スマートデイズ社のビジネスモデルに原因があるものの、この騒動は情報収集を怠らなければ回避できた可能性が高いといえます。
- シェアハウス「かぼちゃの馬車」が住居として粗末であること
- 8%前後の利回りに対して借入金利が3.5〜4.5%と高かったこと
投資家に知識が備わっていれば、これら2点の「かぼちゃの馬車が抱える欠点」を読み取れたはずなのです。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」が住居として粗末であること
まず、かぼちゃの馬車は住居としてのクオリティの割に高額で、決して快適な住まいとはいえませんでした。どの程度のクオリティであるかは、不動産サイト楽待がYouTubeチャンネルで配信している「本当に安物か!? 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」に潜入調査 」を見れば一目瞭然。
実際に見学にいって現地調査をすれば、いかに不便なシェアハウスであるかは投資初心者でも分かるはず。要するに「この家に自分が住みたいか」という問いに対して、迷いなくYesと返事できない住居であれば、それは良い不動産とはいえないのです。
しかし、多くの投資家が実際に現地調査に力を入れず、有名人を起用したCMと「30年間家賃保証」というポジティブな一面だけを信じて、不用意に投資へ踏み出してしまったことがこの騒動の原因だといえます。
8%前後の利回りに対して借入金利が3.5〜4.5%と高かったこと
上記のようなシェアハウスを、スマートデイズ社は利回り8%で売り出し、多くの購入者は借3.5〜4.5%と高い金利で融資を受けていました。たとえ、満室運用を続けたとしても利益の半分は利息として徴収されるため、返済後利回りは最大で4.5%。
また、この「利回り8%」という利益率はサブリース契約によるものだったため、家賃保証が破綻したあとの利回りはさらに下がったようです。
家賃保証が破綻してもなお、満室であれば黒字を確保できるという案件はあったようですが、住居としてのクオリティが低いために多くの投資家が客付けに難航。高すぎる金利で融資を引いたために、毎月赤字を出しながらローン返済を行うかぼちゃの馬車オーナーは多くいます。
1軒目の購入時こそ「衝動的な行動」は禁物
何かに挑戦しようとするとき「初めは勢いが重要だ」といった意見がありますよね?しかし、不動産投資を始めるとき、この考えの通りに衝動的に行動を起こすべきではありません。
たとえば、初心者セミナーで持ちかけられる営業トークは、その多くが参加者のモチベーションを高めて成約に繋げることを目的としています。「早く購入しないと売り切れる」や「いまご契約いただければ◯◯をサービスします」といったように、その場で行動を起こすように仕向けられるのです。
しかし、実際に初心者セミナーに持ち込まれるような案件は、ベテラン投資家からは見向きもされない成約率の悪いものばかり。賃貸需要が少ない・収益性が低いなどの理由を抱えている場合が多いのです。
こういった不動産を衝動買いしてしまうと、2軒目以降の拡大がままならなくなる可能性があります。
初めに不利な不動産を購入するとリカバリできなくなる
もしも1軒目に、黒字運用のできない悪条件な不動産を購入してしまうと、毎月赤字が発生して資金を貯められない状況に陥ってしまいます。たとえ、融資を利用せず自己資金だけで購入した不動産だったとしても、ほとんど収益を生まないのに税金だけかかる不動産は負債です。
しかし、不動産は文字通り「動かない資産」なので悪条件を覆すのは難しく、1軒目の購入直後は経済基盤が整っていないためこれを打破する方法は多くありません。そこで「融資を引いて2軒目を購入しよう」と思い至るケースが多いのですが、このときに1軒目が足を引っ張るのです。
前述したように、金融機関は融資希望者の返済能力から融資の可否を判断します。当然ながら、利益をほとんど生まない負債を抱える投資家は、金融機関から見れば返済能力が高いとは思えないもの。
さらに1軒目で失敗しているというネガティブな実績があるため、これが融資を渋る要因になってしまうのです。
まとめ
日本の将来に不安を覚えるサラリーマンは増えつつあり、その流れのなかで不動産投資にも注目が集まっています。
ただ、こういった不安を利用して、不動産投資を低リスクな投資方法だと主張する営業マンには、十分に注意しなければなりません。不動産投資は、確かに2つ目の収入源として有力な選択肢になり得るものの、考えなしに成功する資産運用ではないのです。
参入を検討するなら、今回ご説明した内容を忘れずに、事業者意識を持って投資に臨んでください。