クラウドファンディングのメリットとデメリットを完全解説【パターン別】
By Oh!Ya編集部
1,698view
投資家でなくても最近耳にすることが多くなった「クラウドファンディング」。経済の仕組みが大きく変わる!というポジティブな論調だけでなく、怪しげなものなので要注意!というネガティブな論調も少なくありません。
そこで、この記事ではクラウドファンディングのメリットについて投資家目線と、参考までに起案者目線の両方で基本から解説していきたいと思います。投資先として検討するのであれば必ず避けては通れないデメリットやリスクについてもしっかり解説していきますので、クラウドファンディング投資をお考えの方はメリットだけでなく、双方向の情報をマスターしてください。
目次
投資家にとってのクラウドファンディングのメリット4つ
投資家にとって、現段階でのクラウドファンディングは、「もしかして新しい投資先として魅力的なものかも?」という存在だと思います。その魅力は本当なのか、まずはクラウドファンディングのメリットを4つご紹介します。
高い利回りの投資案件でハイリターンを狙える
おそらくクラウドファンディング投資における最大のメリットは、高い利回りです。クラウドファンディングの中には投資型、融資型と呼ばれる種類があって、これらのクラウドファンディング案件はいずれも高い利回りが提示されています。
クラウドファンディング案件を検索できるサイト「クラウドポート」の利回りランキングを見てみましょう。
出典:ソーシャルレンディング各社を横断比較 - CROWDPORT (クラウドポート)
赤い囲みを入れたところが、それぞれの案件の利回りです。上位5位がすべて11%を超えていることが分かります。もちろんこれは高利回りのランキング上位なので特に目立っている案件ばかりをご紹介していますが、そのほかの案件であっても7%台が標準的な利回りとなっており、超低金利時代にあってこのメリットがいかに大きなものかは実感していただけると思います。
既存の投資商品だけではなく幅広い思想や価値観に投資できる
これは投資家としてのメリットと言えるかどうかは微妙なところですが、クラウドファンディングの中には特定の地域やプロジェクトを応援する目的の案件も多数あります。
地震や台風など自然災害の被災地を応援する案件、特定のアーティストが何かプロジェクトを仕掛けるための案件、環境保護を目的とした案件など、その種類は実に多岐にわたります。
単純にリターンを狙うだけでなく、同じ投資をするのであれば何か自分の思想や興味のある課題の解決に貢献してあげたいという気持ちを形にできるのも、クラウドファンディングのメリットです。
ただし、こうした特定の目的やプロジェクトを支援するためのクラウドファンディング案件は金銭的な見返りを前提としていないものもあるので、投資案件として検討する場合は注意してください。
投資の中間コストが少ない
融資型クラウドファンディングはソーシャルレンディングとも呼ばれ、急成長中です。このソーシャルレンディングがなぜ成長しているのかというと、中間マージンの少なさというメリットも大いに関係しています。
既存の金融システムでは銀行が預金者から預かったお金を融資することで資金調達を可能にしていますが、当然ながら銀行の取り分が発生します。銀行という巨大な組織を維持しなければならないので、その取り分はかなりの規模になります。
ソーシャルレンディングであれば資金を必要とする人(起案者)と資金を提供する人(支援者)がクラウドファンディングのマッチングサイトで直接つながるため、中間マージンをかなり少なくすることができます。
このことは起案者にとっても資金調達コストを安くするメリットがありますし、投資家にも高利回りという形でメリットがもたらされます。
これまで投資できなかったような高額案件に投資できる
クラウドファンディングの中には不動産投資案件が多数あります。不特定多数の人から集めたお金を対象となる不動産に投資をして、そこから得られたリターンを出資した人に分配するという仕組みです。
こうした仕組みは不動産系ソーシャルレンディングと呼ばれることが多いですが、こうした案件で取り扱われているのは数十億円もするような高額不動産物件です。個人投資家の資金規模ではこうした物件への投資は難しいですが、それをクラウドファンディングが可能にしてくれます。
起案者にとってのクラウドファンディングのメリット3つ
クラウドファンディングで資金調達をする人のことを、起案者といいます。ここでは起案者の目線でクラウドファンディングのメリットを3つに整理してみました。
安価に資金を調達できる
起案者にとって、クラウドファンディングの最も大きなメリットは資金調達コストの安さです。いわゆる中間マージンがほとんど発生しないため、イメージとしては「街を歩いている人に声をかけてお金を集める」ということがネット上で可能になります。さらに言えば、街頭で募金をするよりも効率が良いので、より低コストだとも考えられます。
資金調達コストは、そのまま事業の収支に直結します。クラウドファンディングで安く資金を集めることができれば、その分事業の成功確率が高くなります。
既存の金融システムでは難しいような案件でも資金調達しやすい
やる気はあるけれど資金がない、斬新なアイディアはあるけれど担保になる不動産を持っていないので銀行から資金を調達できない、といったことは数えきれないほどあるでしょう。実際にこうした理由で、世に出ることがなかったアイディアやビジネスモデルは山のようにあったことでしょう。
クラウドファンディングでは、その人の資金力や担保価値を重視する人だけでなく、アイディアの優位性で資金を出すかどうか判断をする人も必ずいます。これまでの金融システムでは資金調達ができなかったような案件であっても、クラウドファンディングならお金を集められる可能性があります。
共感さえ得られれば資金調達ができる
前項でも少し述べたことですが、クラウドファンディングで資金調達をするには銀行が重視する自己資金力や担保価値だけでなく、起案者が提示している事業内容や提案への共感が重視されます。
極端な話、全くお金がなく不動産も持っていない人であっても、提案している内容があまりに斬新で有望なのであれば、資金を集めることができるのがクラウドファンディングのメリットです。
投資家が注意したいクラウドファンディングのデメリット(リスク)5つ
起案者にとってのクラウドファンディングのメリットを解説した次は、投資家目線に戻りましょう。投資家目線で、クラウドファンディングのデメリットやリスクもしっかり知っておいていただきたいので、5つのポイントで解説します。
案件が成立するとは限らない
クラウドファンディングの情報サイトを見ていると、達成率という数値が表示されていることにお気づきかと思います。この達成率とは、目標としている資金に対して現在どれだけの資金が集まっているかを示すものです。 先ほどの「クラウドポート」にも、達成率の表示があります。
出典:ソーシャルレンディング各社を横断比較 - CROWDPORT (クラウドポート)
これは、先ほどと全く同じランキング画面です。必ずしも達成率が利回りのランキングと同じではないことが見て取れます。案件の募集がいつ始まったかによっても達成率は影響を受けますが、募集期間を満了しても100%に達していない場合は案件不成立となります。
不成立となると投資そのものが成立しないので、損をするわけではありませんが、期待していた利回りを得ることもできません。クラウドファンディング投資には「必ずしも成立するとは限らない」という概念があることを押さえておいてください。
思惑通りのリターンになるとは限らない
高利回りはクラウドファンディング投資の大きなメリットですが、それはあくまでも目標値です。もちろん元本保証でもありませんから、期待通りの利回りで案件が終了するかどうかはやってみないと分かりません。最悪の場合は元本を下回ってしまう可能性もゼロではないので、これはクラウドファンディングのリスクです。
実際に「maneo」というソーシャルレンディングサイトで巨額の焦げ付きが発生しており、クラウドファンディング投資のリスクが顕在化しています。「今どきの新しい投資だから安心」ということはなく、むしろ新しい投資の形なので未知のリスクがあると考えたほうが良いと思います。
クラウドファンディング運営会社の倒産リスク
クラウドファンディングで資金調達をするためには、クラウドファンディング運営会社のサイトで募集をするのが一般的です。投資家もクラウドファンディングを運営会社のサイトで投資案件を探して、そこに口座を開いて投資をするという形になっています。
ここで心配になるのが、クラウドファンディング運営会社の倒産や破綻です。投資案件自体は健全であっても、運営会社がなくなってしまうとお金のやり取りをする方法がなくなってしまうので、大きな影響を受けることは避けられません。
「みんなのクレジット」というソーシャルレンディング業者が投資家から集めた資金を不正流用していたことが発覚し、大問題になりました。しかも同社は経営が行き詰ってしまう可能性が高く、投資家の資金の多くが毀損するのではないかと言われています。
クラウドファンディング投資では、このようなリスクが存在していることを留意しておいてください。
期日が定められている案件は途中で現金化できない
クラウドファンディングの募集案件は、原則として投資期間が最初に定められています。そしてその期間は投資家のお金を事業に使っているので、途中で解約をしたり現金化をすることはできません。
これは起案者(事業をする人)の立場で考えると分かることですが、集めたお金で事業を行い、まだ結果が出ていない時に「お金の入用があるので返してほしい」と言われてもそれは無理な相談です。
一度投資をして満額成立となったら、満期になるまで資金を返してもらうことはできないとお考えください。
善意だけで運営されているとは言い切れない部分がある
クラウドファンディングの募集案件を見ていると、投資家への高いリターンを謳っているもの、もしくは社会的な意義を謳っているものなど、「この人たちなら信用できそうだ」と思えるような情報が開示されています。
しかし、その人たちはあくまでも赤の他人であり、クラウドファンディングを募集している情報以外のことをほとんど知らない人たちです。その人に自分の資金を預けるのですから、そこには信頼が欠かせません。
残念ながら、必ずしも善意や熱意で募集されているクラウドファンディング案件ばかりではないのが現状です。先ほど述べた「みんなのクレジット」は運営会社そのものが悪意を持っていた疑いが濃厚ですが、運営会社に悪意がなくても案件の募集をしている起案者が十分なビジネスの勝算を描いていない可能性はあり得ます。
これからクラウドファンディングはどこへ向かうのか
メリットとデメリット(リスク)をお読みになった方にとって、次に生まれてくる疑問は「結局のところ、クラウドファンディング投資はアリなのか?」というものではないでしょうか。まだまだ歴史が浅い仕組みだけに、今後どうなっていくのかという見通しを含めて考えてみたいと思います。
市場規模の拡大に伴ってメリットも拡大する
クラウドファンディングには、まだまだ成長の余地があります。その中でもソーシャルレンディングは超つくと言って良いほどの成長を続けており、新しい金融システムとして機能する可能性を見せつけています。こうした仕組みが誕生したアメリカでは日本をはるかに上回る市場規模になっているので、日本でも同様の成長が続くことは間違いないでしょう。
ヒトとカネが集まれば、そこに投資やビジネスのメリットが生まれるのが経済の基本です。これからもクラウドファンディングは成長とともにメリットもより大きくなっていくことでしょう。
保証付きなど安全性を確保した案件が登場
先ほど解説したクラウドファンディング投資のリスクをお読みになって、思っていたよりも怖いものだとお感じになった方も多かったのではないでしょうか。もちろんクラウドファンディング運営会社などといった当事者もこのことを認識しており、クラウドファンディング投資の安全性を高める工夫が見られるようになってきました。
不動産系のソーシャルレンディングでは、担保価値100%の案件が多くなってきています。これはつまり、もしその案件が不調に終わった場合であっても担保を売却すれば投資金額の100%を回収できるため、投資家が損をする可能性が低いという案件です。
その他にも保証付き案件といって募集企業やその代表者などが連帯保証をすることで、案件が不調に終わった時に投資家へその分を補填する条件がついているものも増えてきました。
このように投資家を守るスタンスを取っているソーシャルレンディング業者は信頼に値すると考えることができるので、投資の安全性を確保するのにあたって検討材料となるでしょう。
問題のある運営主体や案件は淘汰されていく
クラウドファンディング運営会社に問題があるようだと、投資家は安心してお金を預けることはできません。「みんなのクレジット」の事例はその典型例ですが、今後もこうした事例が起きる可能性は十分にあるでしょう。しかし、投資家は簡単にこうした問題のある業者の情報を入手できる環境にあるので、問題がある業者は長くはもたないでしょう。
これとよく似たものとして、FXがあります。個人投資家の方々の中にはFX投資を経験された方も多いと思いますが、FX業界にもブームに乗じて怪しげな業者が乱立した時期がありました。投資家のお金を抱えたまま破綻してしまった業者や投資家にお金を返さないような業者もありましたが、そういった業者も含めて問題のある業者はほとんど淘汰されました。
クラウドファンディング投資の世界でも、これと同じことが進行しています。投資家をしっかりと守るスタンスを持っていない業者は自然に消えていくことになるので、業界の健全化は進むと見られます。
既存企業が続々と参入をしてくる
クラウドファンディングに対して、NPOや個人、中小企業などが資金を調達するためにもっぱら利用されているというイメージをお持ちの方は多いかも知れません。確かにそういった資金的なバックボーンに乏しい起案者にとってメリットのある仕組みなので多いことは間違いないのですが、新しい金融システムとして発展を続けるクラウドファンディングを大企業が放置するはずがありません。
すでに多くの大企業がクラウドファンディングに参入しており、ユニークな新規事業などの資金調達方法として活用している事例があります。
例えば、ソニーの「FES Watch(フェスウォッチ)」という斬新なコンセプトの腕時計は、サイバーエージェント社が運営する「Makuake」というクラウドファンディングサイトで資金調達が行われた案件として有名です。
今後もこうした大企業の参入が相次ぎ、クラウドファンディングはより透明性の高いものへと進化していくことでしょう。
まとめ
クラウドファンディングのメリットやデメリット(リスク)、さらに今後クラウドファンディングはどこに向かうのかという展望について述べてきました。投資先として検討する場合には特にリスクに留意する必要がありますが、7%を優に超えるような高利回り案件が目白押しなだけに、安全性の高いものを探して投資ポートフォリオに組み込んでみてはいかがでしょうか。