区分と一棟を10項目で徹底比較!はじめての不動産投資ならどっち?
不動産投資を検討している人の中には、区分マンション投資と一棟投資のどちらを行うか迷っている方も多いでしょう。大事なのは、どの投資を選ぶかというよりは、どの投資が自分に合っているのかを知ることです。
そのため、まずは区分マンション投資と一棟投資の特徴をつかみ、メリット・デメリットを理解しましょう。その上で、投資の目的によってどの種類の不動産投資をすべきかを判断するという流れです。
マンション区分投資と一棟投資の違い
まずは、マンションの区分投資・マンションの一棟投資・アパートの一棟投資を比較します。
項目 | マンション区分投資 | マンション一棟投資 | アパート一棟投資 |
---|---|---|---|
収益性 | △低い | ◎高い | ○やや高い |
初期費用 | ◎低い | ×高い | ○やや低い |
資産価値下落リスク | △やや高い | ◎低い | △やや高い |
仕様・設備 | ○やや高い | ○やや高い | △やや低い |
リスク分散 | ×しにくい | ○しやすい | ○しやすい |
節税効果 | ○やや高い | ◎高い | △やや低い |
管理の手間 | ◎少ない | ×多い | △やや多い |
耐久性 | ○高い | ○高い | △やや低い |
物件の自由度 | ×なし | ○あり | ○あり |
融資のハードル | ○やや低い | ×高い | △やや高い |
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以下より、各項目について掘り下げていきましょう。
収益性
収益性は一棟投資の方が良いです。やはり、複数の部屋を所有できるので、運用に成功したときは収益額も大きくなります。一棟マンションと一棟アパートの違いは、その規模と賃料です。
一般的には一棟マンションの方が規模は大きく賃料も高くなります。そのため、上手く運用できれば一棟マンションが最も収益性の高い物件というわけです。
初期費用
初期費用は、区分マンションが最も安価です。アパート一棟の場合は中古で購入すれば安価なものもありますが、やはり規模的には区分マンションよりも高くなりがちです。仮に、新築アパートを建築する場合は、金額は億を超えるケースも多くなります。
また、一棟のマンションを建築するなら億はゆうに超えてきます。マンションの場合は中古でも億は超えてくるので、この中では初期費用は断トツで高くなります。そのため、よほどの資産家でない限り、一棟投資をするならアパート投資を選択するケースが多いでしょう。
資産価値下落リスク
資産価値の下落リスクは、やはり鉄筋コンクリート造のマンションの方が低いといえます。アパートは木造か軽量鉄骨の場合が多く、耐用年数※に以下の違いがあります。
- 鉄筋コンクリート造:47年
- 鉄骨造:22~38年(大半は30年)
- 木造:22年
耐用年数を経過すれば建物の売却価格はゼロに近い金額になるので、その点においては木造か軽量鉄骨造のアパートの方が不利です。ただ、アパートは土地の資産価値が大きいというメリットはあるので、区分マンションと同じくらいでしょう。
一方、一棟マンションの場合は、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年であり、かつ土地の資産価値もあるので資産価値下落リスクは低いといえます。
仕様・設備
物件にもよりますが、仕様・設備は鉄筋コンクリート造のマンションの方が高いケースが多いです。アパートは賃料の安さも魅力の1つなので、仕様・設備のグレードを上げてしまうことで家賃が上がることは好ましくありません。
そのため、アパートよりもマンションの方が仕様・設備のグレードが高くなりやすいというわけです。
リスク分散
一棟物件の場合は、リスク分散しやすいです。リスク分散というのは、空室や家賃下落というリスクを分散することであり、一棟物件の場合は複数の部屋を所有しているのでリスク分散しやすいということです。
たとえば、家賃が8万円に設定している、総戸数8戸のアパートを所有しているとします。その場合、月間家賃収入64万円、年間では768万円です。仮に、この中の2室で空室が2か月発生しても、年間家賃収入は736万円となり、下落率は4%強です。
一方、区分マンションの場合で空室が2か月出れば約16.6%も下落するので、収益としてはマイナスに転じるリスクもあります。
節税効果
不動産投資の節税効果は色々とありますが、最も効果があるのは減価償却費用の計上による「不動産所得税の節税」でしょう。減価償却費用とは物件を取得した費用を経費として計上することで、この計上期間が長い方が節税につながります。
そして、この計上期間は耐用年数と比例するので、耐用年数の長い「マンション」の方が節税効果は高くなるのです。
管理の手間
管理の手間に関しては、一棟物件の方が手間はかかります。区分マンションの場合、管理費・修繕積立金を支払う代わりに、管理や修繕に関しては全て任せることができるので楽です。一方、一棟物件の場合は共用部や外観の補修や、物件の管理はオーナーの仕事になります。
特に、一棟マンションは規模が大きく、共用施設も広いのでより管理の手間はかかるといえるでしょう。管理は管理会社に委託するので実務は多くないですが、判断するのはオーナーの仕事です。
耐久性
ここでいう耐久性とは、地震や火災など災害への耐久性のことです。耐久性においては、鉄筋コンクリート造のマンションの方が、木造もしくは軽量鉄骨造のアパートよりも高いといえます。
物件の自由度
物件の自由度とは、外観や共用部を変更できるか?という意味での自由度です。そんな物件の自由度は一棟物件の方が高いです。というよりは、区分マンションの場合は共用部を自分の意志で変更することはできないので、自由度はないといえるでしょう。
そのため、区分マンションの場合は自分が希望していない外観の補修や、共用部のルール変更、設備導入などもあり得ます。逆に、自分が希望しても希望通りにならないこともあります。一方、一棟物件の場合はオーナーである自分の判断で変更を加えることができるという自由さがあるのです。
融資のハードル
融資のハードルは、区分マンションが一番低く、その次にアパート、さいごに一棟マンションという順番でしょう。というのも、物件取得価格が一棟マンションは圧倒的に高いからです。そのため、借入額的に融資の審査に通りにくいといえます。
区分マンションと一棟アパートは、中古の一棟アパートであれば安価なケースもあります。しかし、そのような一棟アパートは築年数が経過していることが多いので、資産価値的に審査が厳しいです。
そのため、価格のバランスと構造面からの資産価値を考えると、区分マンションが最も審査ハードルは低いといえるでしょう。
区分マンションの種類による違い
さて、前項で区分マンションと一棟物件と違いが分かったと思います。ここでは、区分マンションにフォーカスし、区分マンションでも大きさによる特徴の違いを解説していきます。
1Rマンションの特徴
まず、1Rマンションの特徴は以下の点です。
- 取得価格が安い
- 需要が高い
- 価格競争に巻き込まれやすい
1Rマンションは、室内は似たりよったりの部分があるので、立地が物件選びの最重要ポイントになります。
取得価格が安い
1Rマンションの特徴は何といっても取得価格が安いという点です。最もコンパクトな物件であるので、物件価格も安いですし、それに伴う諸費用も安くなります。その分、賃料も安価になりますが、取得価格が安いという点は、初心者の方でもはじめるハードルは低いといえるでしょう。
需要が高い
1Rのメインは単身者であり、単身者は戸建に住む人は少ないです。また、家を購入する人も少ないので、賃貸需要は高いといえます。
また、特に都内ではワンルームマンションの建築規制があるので、今後はワンルームマンションの建築を今までのようにできません。そのため、供給が少なくなってきて、競合物件は少なくなる可能性があるというメリットにもつながります。
価格競争に巻き込まれやすい
一方、ワンルームマンションの場合は賃料の安さが売りになるので、価格競争に巻き込まれやすいです。つまり、競合物件が家賃を下げれば相場賃料が下がり、自分の物件も家賃を下げざるを得ない状況になるということです。
1K
1Kの特徴は以下の通りです。
- 間取りによって人気が異なる
- 需要は高い
- 設備・仕様にこだわる層が出てくる
1Kの場合は、1Rよりは室内に対するこだわりを持つ人が増えます。
間取りによって人気が異なる
1Kになってくると、1Rよりは間取りにこだわる層が増えてきます。部屋の形や家具配置のしやすいさなども判断基準になってくるので、1Rよりも物件選びは難しいといえます。
需要は高い
1Kも1Rマンションと同じく、単身者がメインターゲットです。そのため、賃貸需要は高い物件といえるでしょう。
設備・仕様にこだわる層が出てくる
また、間取り以外にも1Rよりは設備・仕様にこだわる層が出てきます。水回りの設備のグレードや、室内の仕様にこだわる層が増えるので、さらに物件選びは難しくなるといえるでしょう。
1LDKマンションの特徴
- 取得価格はやや高い
- 需要はやや低い
- ターゲットは広がる
1LDKの場合は取得価格がやや高く、賃貸需要は落ちます。ポータルサイトなどで調べると分かりますが、1Rや1Kの部屋と比べ、1LDKの賃貸物件は少ないです。
ただ、単身者だけでなく2人暮らしの人もターゲットになるという点はメリットといえます。とはいえ、全体的な賃貸需要は1Rと1Kの物件よりは低いので、賃貸経営には向いているとは言い難いでしょう。もちろん、1LDK以上の部屋はさらに賃貸経営には向いていないといえます。
自分の投資スタンスを明確にしよう
さて、区分マンション・一棟マンション・一棟アパートの特徴、および区分マンションの部屋ごとの特徴が分かったところで、次は自分の投資スタンスを明確にしましょう。
自分の投資スタンスを明確にすることで、上述したどの特徴に合致するかが分かってきます。つまり、自分はどの投資をすれば最もメリットを受けられるかが分かってくるということです。
不動産投資の場合、大きく分けてその物件単体で収益を上げるというスタンスと、今後物件数を増やして事業を拡大するというスタンスがあります。
メイン物件におくスタンス
不動産投資は複数の物件を所有することもありますが、「この1物件をとりあえずメインにしたい」と考えている人は以下の点がポイントです。
- 基本は一棟物件
- 好立地の場所で所有
- 利回りよりもキャッシュフロー
基本は一棟物件
メイン物件におくというスタンスなら、基本的には一棟物件が良いでしょう。というのも、区分マンションを選択した場合、その物件だけで大きな収益を上げる必要があります。そのため、賃料を高くできる良い物件を取得する必要があるということです。
ただ、上述したように区分マンションはリスク分散できないので、その物件選びに失敗すればフォローできません。つまり、区分マンションをメインに置くということは、かなりのリスクが伴うということです。そのため、基本は比較的安価なアパートの一棟投資が適しているでしょう。
好立地の場所で所有
ただ、メインにするということは、その物件である程度の収益を得る必要があります。そのため、築古の立地が悪い安価なアパートだと、思ったような収益を上げられないかもしれません。
数ある投資の中の一つであればそれでも良いですが、メインにするならある程度好立地で、家賃が見込める物件にしなければいけません。
利回りよりもキャッシュフロー
また、メイン物件を選定するときに大事なのは、利回りではなくキャッシュフローです。それぞれの計算式は以下になります。
- 利回り=(年間家賃収入-年間経費)÷物件取得価格
- キャッシュフロー=年間家賃収入-年間経費-ローン支払い
要は、利回りは「何年で物件取得価格を回収できるか?」という指標であり、キャッシュフローは「手元にいくらのお金が残るか?」という指標です。メインの物件に置くのであれば、最も大事なのは手元にいくら残るのか?という指標であり、初期費用を回収できる年数は物件を比較するときの目安におくべきでしょう。
投資の足掛かりにしたいスタンス
次に、将来的に物件数を増やし、事業を拡大するというスタンスです。言うなれば、その物件を投資の足掛かりにするということであり、そのときのポイントは以下です。
- コンパクトなマンションがおすすめ
- 実績を残して融資を引っ張る
- ノウハウを吸収する
- 出口戦略が重要
まずは、そもそも事業拡大を見越した上で物件選びをする必要があります。その前提で物件を選び運用するという点が重要になります。
コンパクトなマンションがおすすめ
投資の足掛かりにするのであれば、コンパクトな区分マンションが良いでしょう。上述した例でいうと、1R~1Kくらいの物件が妥当でしょう。なぜなら、物件価格が安価なので融資も付きやすいですし、上述したようにある程度賃貸需要は見込めるからです。
実績を残して融資を引っ張る
また、事業を拡大するなら、その物件で黒字化を達成するという実績が必要です。区分マンションはリスク分散ができないので、黒字化するためには空室率を下げるのが必須課題です。その実績を残すことで融資の審査には通りやすくなるので、逆にいうと赤字運営だと事業拡大は困難になります。
そのため、大きく儲けることよりも、いかに堅実に黒字化するか?に主眼を置きましょう。つまり、利回りが高くキャッシュフローが良い物件というよりは、どちらもそこそこの数値であり、かつ空室率が低そうな立地の物件が良いというわけです。
ノウハウを吸収する
投資の足掛かりにするために、その物件から色々なノウハウを学びましょう。そのためには、たとえばサブリースなどの契約形態はおすすめしません。サブリースは賃付けなどを含めすべての賃貸業務を委託するので、オーナーとしてノウハウを学べないのです。
管理会社に管理は委託するものの、なるべくオーナーの視点を忘れずにいましょう。賃借人をきちんとジャッジしたり、退去時の補修などをきちんと自分の目で確かめたりすれば、少しずつノウハウは吸収されていきます。
まとめ
このように、まずは区分マンション・一棟マンション・一棟アパートのそれぞれの特徴をつかみましょう。そうすれば、何となく自分に合った物件が分かってくるはずです。
そして、収益のメインの物件に置きたいのか、投資の足掛かりにしたいのかでも物件選定や運用は変わってきます。大事のことは自分のスタンスに合っている物件を選ぶことであり、そのためには特徴を知らないことにははじまりません。