投資は怖い?初心者でも分かるリスク・リターン別完全投資ガイド
By Oh!Ya編集部
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資産形成に興味がありつつも、リスクに対する不安から一歩が踏み出せない人は大勢います。また、投資を学ぶ機会が乏しい日本では、リスクが悪いものだという認識が強いです。
しかし、リスクの高さはリターンの大きさに直結しており、損失の可能性は知識があればコントロールできる問題です。
今回は、有名な金融商品をリスク・リターン別に解説し、想定の範囲内で安全に資産運用をおこなう方法をご説明します。
投資にはリスクがつきもの
世の中にはさまざまな投資手段が存在しており、すべての運用方法にはリスクがあります。この項では、投資におけるリスクの考え方と、投資手段の選び方についてご説明します。
リスクとリターンは比例している
経済学においてリスクは「結果の不確実性」をあらわしています。
価格変動リスクが高いと聞いたとき、多くの人は「損をする」という認識に陥りますが、これは誤りです。価格変動のリスクが高くなれば、「損失額の振れ幅」と同時に「利益の振れ幅」も大きくなりやすいといえます。
この関係性を理解していなければ投資家の目標から外れた結果になりやすく、理不尽な損失をまねく原因にもなります。
目標リターンを設定して最適な投資手段を選ぶ
1,000万円の自己資金を1年で1万円ずつ増やす「ケースA」と、100万円の自己資金を1年で2倍にする「ケースB」では、最適な投資手段が大きく異なります。
たとえば、ケースAでは目標とする利回りは1%。年間のリターンとして、わずか数%の利益が期待できる投資先を選べば十分です。リスクとリターンの関係性を考慮すれば、景気悪化などの影響を受けても数%の損失でおさえられるでしょう。
一方で、ケースBでは目標とする利回りが100%。先ほどのように数%の利益しか期待できない投資先では、間違いなく達成できない数字です。この段階で、ケースBを目標とする投資家は「利回りが100%以上」になる可能性をもった高リスクな投資手段を選ばなければ、目標には到達できないのです。
上記の例から、目標リターンを設定して「適切なリスク」を取ることの必要性が分かります。必要以上にリスクを取れば、運用結果がどのように推移するのか分からないという不安をまねき、取ったリスクが少なすぎれば利益はほとんどありません。
低リスク・低リターンな投資
少額から投資可能かつ、分散投資という特性をそなえた金融商品は比較的低リスクです。
この項で紹介する3つの投資手段は、どれも実力のある専門家が資金を運用するものばかり。利回りこそ低いものの、コンスタントに小さな利益を重ねたい投資家におすすめです。
投資信託
投資家がファンドマネージャーに資金運用を任せて、国内外の株式や債券へ投資する金融商品を「投資信託」と呼びます。通常、株式投資には知識や経験を必要とし、こまめなトレードが要求されることも多々。片手間で取り組む投資としては、ハードルの高さを感じます。
しかし、投資信託は資産運用の専門家であるファンドマネージャーが、その時々にあわせてより良い投資先を選定。投資家に代わって分析やトレードをおこない、資産を堅実に運用してくれるのです。そして、投資家はファンドマネージャーが獲得した利益に応じて分配金を受けとり、投資信託の購入時と売却時の差額を譲渡益として得られます。
ファンドマネージャーは、リスク管理のために複数の投資先へ資金を分散するため、投資家は1つの投資信託を保有するだけで分散投資をしている状態となることもメリット。少額費用かつ数千円単位で金額を変更できる定期積立がおこなえるため、定期預金しか利用したことのない人が「投資の第一歩」として選ぶ投資先としても最適です。
投資信託が抱えるリスクとは?
ファンドマネージャーが投資先として選ぶ株式や債券は、景気変動や企業業績により価格が変動するものです。ファンドマネージャーは専門家ではあるものの、確実に利益をあげる保証はなく、投資家は投資信託の運用によって損失を生む可能性があります。
その他、為替変動や金利変動など多くの金融情勢が関わるため、必ずしも元本が保証されるものでがありません。
ETF(上場投資信託)
投資信託はリアルタイムに売買できないため、ニュースやネットで投資家に不利な情報が流れてもすぐに対応できません。一方で、リアルタイムでの売買に対応している「ETF」は、証券取引所が開いていれば即時にトレードが可能。投資家が買いたい・売りたいと思ったときに取引できるため、スピーディな売買を重視する人に適しています。
取引手数料や信託報酬と呼ばれる「運用管理費」が投資信託より低コストなことが多いため、定期積立の必要性を感じない投資家はETFがおすすめです。
一方で、投資信託をベースとしつつ複数の魅力をそなえるETFは、投資できる銘柄数や投資費用の自由度で投資信託に劣ります。またリアルタイムに売買できることから、相場価格に気を取られがちです。1日スパンで価格が決まる投資信託と異なり、安値を見定めようと買い時に迷いやすいといえるでしょう。
ETFが抱えるリスクとは?
ETFは投資信託とほとんど同じリスクをもちますが、価格変動のスピードは投資信託よりも数段早いです。リアルタイムに売買できることはメリットではあるものの、それだけ流動性は高くなり、投資信託よりも相場価格は上下しやすいといえます。
また、ETFでは証券会社の審査を受けることで、自己資金の約3倍にあたる金額を運用できる「信用取引」が利用可能です。これは、証券口座に預けた資産を担保に、証券会社から資金を借りられる制度。運用資金が増えることで利益をあげやすくなるものの、損失が大きくなる可能性もあると覚えておきましょう。
REIT(上場投資信託)
REITは証券取引所を通じて、不動産市場に投資できる金融商品です。
イメージとしてはETFに近く、証券取引所が開いていればリアルタイムな売買が可能。投資家たちから集めた資金を資産運用会社が運用し、不動産売買や運用で得た利益を「分配金」として投資家へ還元します。
初期費用は数万~数十万円で売買できるものが多く、売買価格の高い不動産へ少額から投資できることが魅力です。
REITが抱えるリスクとは?
売買のシステムこそETFに似ているものの、投資先はまったくの別物。REITを運用するのであれば、なによりも不動産市場の需要や将来性に注目すべきでしょう。
現状、東京オリンピックや訪日観光客の影響から期待を集めつつも、人口減少や少子高齢化による影響が懸念されています。景気や金利変動に影響を受けるのはもちろんですが、直接のリスクは不動産市場から読み取らなければなりません。
複数の不動産へ分散投資しているとはいえ、不動産市場への一点投資であることからETFよりもリスクはやや高いといえます。
中リスク・中リターンな投資
投資信託やREITは、専門家が投資家の資金を利用して分散投資する金融商品でした。
しかし、株式投資や不動産投資は投資家の判断が利益・損失を左右します。投資家自身が将来性を見極めるという、本当の意味での投資といえる運用方法であるため、リスクとリターンは知識と分析力に左右されます。
株式投資
株式投資は企業の将来性を期待して投資をおこない、売買益や配当金などのリターンを獲得するメジャーな資産運用の1つです。
こまめなトレードで売買益をねらう「デイトレード」や、中長期的な視点で株式を保有し続ける「ポジショントレード」など、投資家によって運用方法はさまざま。ただ、ネット証券で手軽にトレードできるものの、おすすめの運用方法は企業の将来性に期待したポジショントレードです。
株式投資をギャンブルだと認識する意見は少なくありませんが、「企業の事業モデル」に出資するという視点をもてば堅実な投資先であると分かります。経営者が語る事業内容に目を通し、次世代の楽天やソフトバンクを見つけることこそ、株式投資の醍醐味だといえるでしょう。
株式投資が抱えるリスクとは?
株式投資がギャンブルだといわれる理由の1つは、価格変動の激しい銘柄を扱うデイトレードの存在です。
どの銘柄も景気変動や企業業績により価格が推移しますが、特に低位株と呼ばれる取引価格の安い銘柄はマネーゲームの対象になりがちです。一瞬のあいだに株価が数%変動することもあり、値動きの差額で利益をあげようとするデイトレーダーは多々。企業価値に関係なく激しい価格変動が続くため、投資資金がみるみる減少することもあります。
そのような高リターンを狙った、ギャンブルに近い運用方法にもなりえることこそ、初心者が気をつけるべき最大の注意点。もちろん景気や金利変動も注意すべきリスクですが、株式投資は運用次第で危ない投資手段になることを意識しましょう。
不動産投資
不動産投資の利益は賃料収入がメインであるため、収入がマーケットの価格推移に影響されにくいという特徴をもちます。
最大のメリットは、金融機関からの融資を利用して投資ができることです。融資内容は購入する不動産や投資家自身の経済力に左右されるものの、年収の5~10倍に相当する借入が可能。自己資金に対する投資効率を、必要に応じて高めることが可能です。
もちろん無計画な借入は闇雲にリスクを高めるため、目標とするリターンに応じて投資する不動産と融資額を決定しましょう。
また、相場価格によりリターンが左右される他の投資手段と異なり、投資家自身の努力で利益率が変わることも特徴です。設備交換で住居としての魅力を高めたり、築古戸建を投資家自身がリノベーションして高値で貸し出したり、独自の運用方法で利回りを高める事例も多くあります。
不動産投資が抱えるリスクとは?
実態のある不動産を扱うため、入居率の低下や被災のリスクがあります。
特に空室は利益を生まず維持費だけが必要となり、入居者のいない状態が長引くほど投資家に損失を与えます。そのため、投資家はリフォーム工事や改装を駆使しつつ、魅力のある不動産を提供し続けなければなりません。
また、災害保険に加入していても、被災による不動産の損壊は投資家にとって大ダメージです。不測の事態がいつ訪れるのか分からないため、投資家はいつでも不動産の修繕ができるよう手元にキャッシュを残す必要があります。
そして、もっとも懸念されているリスクは、人口減少や少子高齢化問題です。衣食住の需要がなくなることはないものの、人口減少により魅力のない賃貸物件から入居率の維持が困難になると予想されます。今後は都市部の不動産を購入したり、周囲との差別化をはかったり一層の工夫が求められるでしょう。
高リスク・高リターンな投資
高リスクな金融商品には、高リターンな運用結果を求める投資家たちが集まり、相場価格が激しく上下する傾向にあります。本来の投資は「将来性への期待」という動機のもと実施されるものですが、高リスクな金融商品は局所的にマネーゲーム化していることも事実。
つぎのような投資手段は大きなリターンが期待できる反面、損失を生む可能性もはらんでいると忘れてはいけません。
FX(外国為替証拠金取引)
FXは、各国の通貨を売買することで利益を獲得する投資手段です。
FXが他の金融商品よりもリスクが高いとされる理由には、経済学における「ゼロサムゲーム」であることが関係しています。ゼロサムゲームは、利益の裏に必ず損失があり、市場に流通している資産の総量が常に一定であることをあらわす用語です。
つまり、投資家Aが100万円の利益をあげれば、投資家Bが100万円の損失を計上するといった、利益と損失の合計がゼロから変動しないことをあらわしています。
一方で、FXと比較されることの多い株式投資などは、市場全体が成長してプラスになる可能性があります。そのため、理論上はすべての投資家が利益を得られる「非ゼロサムゲーム」といえるのです。
このような仕組みの違いから、FXはあくまで「通貨の交換」に過ぎず、本質的な投資ではないと認識すべきでしょう。
FXが抱えるリスクとは?
FXは「レバレッジ」と呼ばれる仕組みを利用して、自己資金以上の投資額を運用できることが特徴です。
レバレッジを利用した場合、最大で自己資金の25倍に相当する金額の運用が可能。これにより利益や損失が本来の25倍まで膨れ上がるため、まさに高リスク・高リターンな投資だといえるでしょう。
なお、レバレッジ倍率は調節が可能であるため、初心者は低レバレッジで運用することが推奨されています。株式投資のデイトレードと同様に、ギャンブル性の高い運用が手軽におこなえるため、投資資金の扱いに注意が必要です。
仮想通貨
2017年から2018年にかけて認知度を高めた仮想通貨は、名前があらわす通り実態のない通貨です。ビットコインやイーサリアムなどさまざまな銘柄が存在し、市場価格の急騰により日本国内でも「億り人」と呼ばれる多数の成功投資家たちが取り上げられました。
ブロックチェーンと呼ばれる暗号化技術により、理論上では不正行為が起こる確率はごくわずか。いずれ法定通貨に代わると予想されることから、世界中の投資家や技術者が将来性を期待しています。
仮想通貨が抱えるリスクとは?
ブロックチェーンと呼ばれる高度な暗号化技術がもちいられているものの、通貨取引所がハッキングされることで被害が続出。また、発生の可能性は低いと想定されていた「51%攻撃」と呼ばれる不正が、過去数件いくつかの仮想通貨で確認されています。
どの不正行為も数千万~数億円規模で発生しており、いまだ仮想通貨は安全な投資先とはいえません。さらに、まだ歴史が浅く世間の信頼を獲得できていないため、安心して自己資金を運用できる投資先とはいえないでしょう。
運用方法によるリスクコントロール
ここまで、投資手段ごとにリスクをご説明しました。しかし、リスクを決める要因は「投資先がもつリスク」だけではなく、実際には「運用方法がもつリスク」も関係しています。
運用方法によるリスクコントロールを知らなければ、低リスクだと思っていた金融商品で大損失を生んだり、高リスクな金融商品であるにもかかわらず利益が軽微であったり、思うようなリターンを得られません。
この項では、投資先のリスクとあわせて考慮すべき、運用方法によるリスクコントロールの考え方をご紹介します。
さまざまな金融商品を運用する
投資手段や金融商品が違えば、当然それぞれ価格推移は異なります。
たとえば「投資先A」という金融商品と、投資先Aと真逆の値動きをする「投資先B」という金融商品を両方保有していれば、投資先Aで損失が発生しても投資先Bの利益でカバーできるはずです。
このようなリスク管理の方法を「分散投資」と呼び、分散先を増やすほど一部の損失を他でカバーしやすくなります。分散方法にはいくつか方法があり、以下のような手法が一般的です。
投資地域の分散
投資地域の分散は、日本国内の株式だけでなく、米国や中国など他国の株式を購入する運用方法。投資信託やETFでも他国の株式を扱う銘柄があるため、投資地域の分散は難しいものではありません。
運用期間の分散
運用期間の分散では、同時に購入した金融商品を時期をずらしつつ売却します。これは「1度目の売却値」と「2度目の売却値」を合算すれば、極端な結果にならず平均化されやすいという考えにもとづいた手法です。
売買タイミングの分散
運用期間の分散では購入時期をあわせて売却をずらしましたが、売買タイミングの分散では購入のタイミングをずらします。
この手法には「購入価格を平均化する」という意図があり、割高な金融商品を投資するミスを軽減。1度目は割高で購入してしまっても、相場価格が下がった2度目の購入時に平均購入価格がおさえられます。
少額運用で投資をおこなう
リスクをおさえつつ高リスク・高リターンな金融商品を運用したいとき、少額運用は有効な手段の1つです。
投資額が小さいほど利益額も小さくなり、より小さなスケールでの運用が可能。高リスクといわれる金融商品に初めて投資するとき、まずは少額運用から始めることをおすすめします。
まとめ
今回は、あらゆる投資手段のリスクやリターンについてご説明しました。
リスクというのは必ずしも悪いものではなく、利益・損失の大きさを決定する要素に過ぎません。そして、最終的には「投資先がもつリスク×運用方法がもつリスク」によって、運用結果の振れ幅が決まることを覚えておいてください。
リスクとリターンの関係が破たんした「必ず儲かる」や「リスクゼロ」という誘い文句を利用した詐欺事件は、ニュースで毎年のように取り上げられています。投資の世界には「絶対」などという考え方はなく、投資家自身のリスクコントロール能力により成功・失敗が分かれると忘れてはいけません。