こんなに高いの!?知っておくべき相続対策の「3つの基本」
By Oh!Ya編集部
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「相続税が高い」というイメージは、相続税に直接の関わりがないという方にも浸透しているのではないでしょうか。最高税率は55%なので、相続財産が6億円を超える人は税額が半分以上になってしまうというのは、やはり「高い」と感じる人が多いのも理解できます。
どんな対策ができて、どの程度の効果があるのでしょうか。この記事では相続対策の概要と具体的なスキームを解説していきたいと思います。
目次
相続税は高い!何とかして節税できないものかとお考えの方へ
相続税は税率の高さゆえに、「金持ち三代続かず」という言葉で揶揄されることもあります。税金との関わりが生じるほどの資産をお持ちの方にとって、相続対策は生前から悩ましい問題だと思います。そこでまずは、相続対策の概要と節税の基本的な考え方からお話を始めたいと思います。
なぜ、相続税は高いのか
そもそも、相続税はなぜ税率が高いのでしょうか。あまり良い表現ではありませんが、相続財産というのは汗水流して稼いだお金ではなく、「棚から牡丹餅」のように降ってくる財産です。親などの尊属にそれだけの財産がある人だけの特権であり、不労所得です。
こうした財産への課税である相続税には、「富の再分配」という思想があります。特定の人たちに富(つまり財産)が集中してしまい、それが何代も続くようなことがないよう、相続税率を高くして国がそれを吸い上げるという考え方です。国が税金として吸い上げたら、それを社会に投資することでさまざまな層の人たちに富が再分配されるというわけです。実際に税金の使い方がそうなっているかどうかは別として、相続税率の高さにはこのような建前があります。
もうひとつは、不労所得に対する課税強化です。頑張った人が報われる社会にするべきだというのは誰もが思うことですが、相続税の制度はそれを税制で実現しようとしているわけです。
もうひとつ考えられるのは、国の本音です。消費税率の引き上げが取り沙汰されるほど国の財政はひっ迫しているので、お金持ちなど「取りやすいところから取る」という思考がないとは言い切れないでしょう。その意味では、今後も相続税が課税強化される流れにあることは間違いありません。
相続税は知らない者だけが損をする税金である
相続税には、他の税金とは大きく異なる点があります。それは、納税者が自ら税額を決めるという点です。所得税や法人税も申告をした課税所得額に応じて税額が決まるので、納税者が税額決めるという意味合いを含んでいます。しかし相続税はそれにも増して、遺産がどれだけあってどの控除を適用するのかといった選択も納税者がするため、納税者がいかに制度を知っているかによって税額が大きく変わります。
これを言い換えると、相続税は「知らない者だけが損をする」という性質の税金だということです。相続税の税率は高いですが、その一方で評価額を低くする方法や各種の控除など、相続税対策と呼べる方法論はたくさんあります。これらをいかに知っていて、有効に活用するかが相続対策の成否を大きく分けるのです。
相続対策の基本的な考え方
知らない者だけが損をする税金である、相続税。では、相続対策ではどのような方向性を持っておけば良いのでしょうか。相続対策として意識したいのは、以下の3点です。
①できるだけ生前に資産移転をしておく
②各種の控除、特例を知っておく
③相続財産の評価という概念を理解しておく
①の資産移転はつまり、いざ相続が発生したという時までに相続予定の人に資産をできるだけ多く移転しておくという考え方です。これをすることによって相続財産の規模が小さくなり、相続税額も少なくて済むようになります。
相続税には基礎控除といって3,000万円と法定相続人1人あたり600万円という非課税枠があります。生前の資産移転がうまくいってこの相続財産がこの金額を下回るようであれば、そもそも相続税の申告義務から解放されます。相続財産が基礎控除と際どい水準の方は特に、この①を意識しておきたいところです。
相続税対策の基本的な考え方
相続税をいかに低く抑えるかという視点で考えられる相続対策は、以下の3つが柱となります。
①いかに相続財産を少なくするか
②いかに評価額を抑えるか
③いかに控除額を大きくするか
相続財産はトータルした遺産の規模ですが、それがどんな財産で相続されるかによって評価額が異なります。具体的に言うと不動産だと評価を低くすることができるため、同じ金額の相続財産であっても不動産を活用することによって評価を低くすることで相続税を圧縮するというスキームがあります。
また、相続税は税率が高い一方でさまざまな救済策として控除や特例があります。こうした制度を熟知した上で、自分に当てはまるものはすべて適用して相続税を圧縮するのも重要な工程です。
税金以外の相続問題にも注目しよう
相続問題というと相続税の問題だけに注目してしまいがちですが、それは相続問題のすべてではありません。遺産を誰に相続させるか、法定相続人同士でどう分割するかといった遺産相続争いは、ドラマや映画の世界だけのものではありません。
最ももめやすいのは遺産分割協議ですが、これが長引いてしまうと相続税の申告期限である10ヶ月を過ぎてしまい、結局相続人の全員が損をしてしまうといった事態も考えられます。
税金だけでなく、スムーズかつ円満に遺産相続を進めることも、相続対策の中でしっかり意識しておきたいポイントです。
いかに相続財産を少なくするかという視点の相続対策
相続対策で意識するべき3つの柱のうち、1つ目は「いかに相続財産を少なくするか」という視点の相続対策について解説します。
贈与税の基礎控除を活用した生前贈与
相続財産を少なくしたいからといって、被相続人が財産を隠したりするのは違法行為です。あくまでも合法的に被相続人から相続予定の人に財産を移転することが肝要です。
しかし、生前に親から子へ財産を移転すると生前贈与と見なされ、相続税よりも税率の高い贈与税が課税されることになります。贈与税がこのような仕組みになっているのは言うまでもなく、相続税逃れを防ぐためです。
それでは、どうするか?
ここで注目したいのは、贈与税の基礎控除です。年間110万円までであれば贈与税が非課税になる110万円の枠を使って、生前のうちに親から子へコツコツと資産を移転する方法があります。
ただしこれも毎年110万円ずつ贈与し続けると、何年もかけて贈与をした総額を一度に贈与したと見なされてしまい、課税される恐れがあります。それを防ぐ方法としては毎年時期や金額を変えて贈与をして、その都度契約書を作成して贈与の記録をしっかりと残すことがポイントになります。
また、敢えて110万円を少し超える金額を贈与して申告し、その分の贈与税を納税することで税務署に贈与の記録を残すという方法も広く用いられています。
収益不動産を持っている人は相続時精算課税制度を活用
生前贈与には、相続時精算課税制度という仕組みがあります。これは相続税の課税時に精算(つまり課税される)という条件で、2,500万円までの生前贈与が非課税になるという制度です。
相続発生時に結局課税されるのなら先送りをしているだけで意味がないのでは?と思ってしまうかも知れませんが、この相続時精算課税制度を利用すると値上がりが見込まれる不動産や、その不動産で収入が発生している場合は早期に不動産を移転してしまって被相続人の資産増大を防ぐことができます。
ただし、この相続時精算課税制度を利用すると前項で解説した毎年110万円の基礎控除は使えなくなるので、そこは注意が必要です。
配偶者への生前贈与で2,110万円分を圧縮
20年以上の婚姻が続いている夫婦間で、不動産もしくは不動産を購入するための費用として贈与をしても最大2,000万円までが控除されるという制度があります。配偶者控除と呼ばれる制度ですが、婚姻20年以上という条件がついているため、「おしどり贈与」とも呼ばれています。
例えば、財産を持っている夫から妻に不動産を生前贈与する場合、おしどり贈与の2,000万円と毎年110万円まで使える基礎控除をプラスして、最大2,110万円分までの生前贈与が無税になります。
この方法を使うと、実質上2,110万円分までをコストゼロで移転しておくことができるため、その分相続財産が少なくなります。
子や孫の教育資金を贈与して1,500万円分を圧縮
財産を持っている人が子や孫の教育費として生前贈与をする場合、1,500万円分までが非課税になります。財産を持っている祖父母から教育資金の贈与をすることは、実質上の相続先渡しです。その先渡しを1,500万円までコストゼロでおこなうことができるので、該当する方は使うべき制度と言えます。
ただし、この制度は2019年3月までが有効期間でした。そこから2年間の延長が決まったものの、習い事など正規の学校以外の教育費は認められないといったように厳格化されており、適用を希望する場合は注意が必要です。
結婚・子育て資金の贈与で1,000万円分を圧縮
教育費の贈与に続いては、結婚と子育ての費用に関する贈与のお話です。「結婚・子育て資金の一括贈与」という制度で、この制度を活用すると結婚や子育ての費用として子や孫に1,000万円までの生前贈与が非課税になります。
受贈側(贈与を受ける人)の年齢が20歳から49歳までであるという条件を満たせば、最大で1,000万円まで贈与をしても非課税です。これも実質上の相続先渡しとして活用することができる制度です。
住宅取得資金贈与で3,000万円分を圧縮
親から子へ、祖父母から孫へといった関係で住宅取得資金に限って贈与をする場合、最大で3,000万円まで非課税になるというのが、住宅取得資金贈与の特例です。
ここでいう「最大」というのは、省エネ基準を満たしているなど国が定めている基準に合致した家であれば最大3,000万円まで控除されるという意味です。該当しないような従来型の住宅だと最大控除額が500万円少なくなりますが、それでも数千万円規模で相続の先渡しができるのですから、利用価値の高い制度です。
この制度は2021年末までなので、適用を希望する方は有効期限に注意してください。
生前にお墓、仏壇を購入して100万円分程度を圧縮
生前に自分のためのお墓や仏壇を購入するというのも、相続対策になります。これは特に控除や特例があるというわけではありませんが、お墓や仏壇の購入は本来、子孫がすることです。それを生前に購入しておくことで、実質的にその費用を先渡ししたのと同じことになります。
相続財産の規模によっては微々たる金額かも知れませんが、課税か非課税か、基礎控除と比べて際どいラインの方は少しでも相続財産を圧縮しておくためにも活用したい方法です。
いかに評価額を抑えるかという視点の相続対策
前章では相続財産そのものをいかに少なくするか(つまり相続予定の人に渡してしまうか)という視点の相続対策でした。ここでは、相続財産を先渡しするのではなく、いかに評価額を少なくするかという視点の相続対策を解説します。
評価減の基本は不動産の活用
同じ額の財産であっても、「何で持っているか」によって評価が異なるのは相続対策の基本です。では何で持っているのは最も有利なのかと言いますと、ずばり不動産です。
不動産の活用は、相続税の評価減の基本です。さらに言うと、不動産は相続対策の基本であるという認識でも問題ないと思います。
なぜ不動産は相続対策になるのか
現金と比べて不動産の評価が低くなるのは、流動性が低いからです。1億円分の財産を持っている人が2人いたとします。1人は全額を現金で、もう1人は全額を不動産で所有しているとしましょう。
この人たちが数千万円クラスのものを買いたいと思った場合、すぐに買えるのは現金で1億円を持っている人だけです。もう1人は不動産を現金化(つまり売却)しないことには欲しいものを買うことができません。もしこの商品が1つしかなく、この時間差で買うことができなかったとしたら、不動産の流動性の低さが原因ということになります。
このように不動産は現金と比べて流動性が低い、使い勝手が悪いので、その分だけ相続財産としても評価を減じても良いというのが基本的な考え方です。
元から相続財産の大半が不動産であるという方は多いと思いますが、もし大半の財産が現金であるという方は、それを不動産に替えてでも相続対策をする価値があるほど、不動産の評価減には大きな効果があります。
土地の評価は約2割減
細かい計算方法となるとケース・バイ・ケースになってしまいますが、ほとんどの事例で土地は実勢価格の2割減だと考えていただいて問題ありません。
つまり、1億円の価値がある土地であれば相続時の評価は8,000万円程度になるということです。これだけでもかなりの評価減になることが、早くもお分かりいただけるのではないでしょうか。
さらに土地の形がいびつであったり、間口が狭小であるなどの場合は、これよりもさらに評価減になることがあります。
それでは次に建物や、その不動産が賃貸だと評価はどうなるのかという解説に進んでいきましょう。
建物の評価は3~4割減
次に、建物です。建物は建築費用に対しての評価で算出されますが、こちらも細かい計算方法は置いておいて、おおむね3割から4割程度の評価減になるとお考えください。
建築費用が2,000万円だったという場合、その建物は相続時に1,200万円から1,400万円程度で評価されるということになります。
賃貸住宅にすると約6割減
さらに、相続財産となっている不動産が賃貸住宅である場合、土地からは借地権が、建物からは借家権というそれぞれ権利分が差し引かれるため、トータルで6割程度の評価減になるとお考えください。
不動産投資をしている方が所有している不動産は、このケースに該当します。貸主である所有者の意向どおりにいつでも売却したりできないため、この借主の権利がある分だけ評価減になるというのが基本的な考え方です。
小規模宅地等の特例を活用すると8割減
親などから相続した宅地が自己居住用であり、さらに条件に該当する小規模宅地である場合は、評価額が8割も減ずることができるのが、小規模宅地等の特例です。
親など被相続人と、その土地と家を相続する予定の子が同じ家に住んでいるとします。この場合、相続する家は自分たちで住むためのものであり、これを相続税で奪ってしまうことは法律の精神にそぐわないということで、330平方メートルまでの宅地については評価額を8割減にして、実質上ほとんど相続税がかからないようになります。
なお、この制度は貸付事業用宅地、つまり不動産投資に供されていた賃貸向けの土地にも適用されます。ただし上限の面積が200平方メートルまでであり、減額も最大5割です。自己居住用と比べると評価減になる分が少なくはなりますが、該当する方は活用するべき制度です。
いかに控除額を大きくするかという視点の相続対策
相続対策の3つ目は、いかに控除額を大きくするかという視点です。先ほどおしどり贈与や教育資金贈与などについて控除の解説をしましたが、これらは生前贈与に対する控除です。ここで解説するのは、実際に相続が発生した時に使える控除です。
相続税の控除の基本
相続税には、基礎控除があります。すでに解説した通り、3,000万円に法定相続人1人あたり600万円というのが基礎控除額です。
例えば夫が亡くなり、妻と2人の子供が相続人となる場合、法定相続人は3人なので3,000万円+1,800万円の合計で4,800万円が基礎控除額となります。
これが基礎控除と呼ばれている通り、基礎的な控除です。相続税にはこれ以外にもさまざまな控除があるので、次項からそれを解説していきます。該当する方は、この基礎控除に加えてそれぞれの控除額を加算して相続財産から減額することができます。
養子縁組で相続人を増やすと控除額が増える
先ほど基礎控除について解説しましたが、これをご覧になって「それなら法定相続人が増えればトータルの控除額が増えるのでは?」とお感じになった方がおられるのではないでしょうか。
何せ1人あたり600万円が基礎控除額として加算されていくのですから、養子縁組で「子供」を増やし、仮に法定相続人を10人増やせば6,000万円も控除額が増えます。果たしてこれが通用するのかというと、一部通用します。
その夫婦に実子がいない場合は養子縁組で「子供」を増やせるのは2人までで、実子がいる場合は1人までです。
ただし節税の目的だけで法定相続人を増やすというのは、感心しません。なぜなら新たに相続人となった人にも相続権が発生し、既存の相続人の取り分が減ることで相続トラブルが起きやすくなるからです。あくまでも制度上は可能であっても、安易な利用は控えたほうが良いと思います。
生命保険を活用した相続対策
被相続人を被保険者として、その人が亡くなった時に支払われる死亡保険金を実質上の相続財産とする相続スキームがあります。死亡保険金という形で支払われる実質上の相続財産には、法定相続人1人あたり500万円という控除があります。
この制度のポイントは、法定相続人としてリストアップされている人の中で相続放棄の手続きをした人がいたとしても、その人もカウントされるという点です。本人の意思の如何に関わらず、生命保険スキームを活用すると1人あたり控除は500万円です。
しかも、生命保険を活用した相続対策には、節税以外にも多大なメリットがあります。そのメリットを挙げてみましょう。
①保険受取人を指定することで相続相手を指定できる
②保険金はすぐに支払われるため遺族が活用しやすい
③生前贈与と絡めると節税効果が高くなる
それでは、ひとつずつ解説していきましょう。
①保険受取人を指定することで相続相手を指定できる
生命保険には必ず、保険金の受取人がいます。法にのっとった相続では亡くなった被相続人の意向通りの相続になるかどうかは分かりませんが、生命保険の形を使うと最も財産を受け取ってほしいと思っている人を受取人にすることで、事実上財産の相続相手を指定することができます。
法にのっとった相続だと遺留分といって、それぞれの相続人の権利割合が定められています。それを侵害するような相続比率になると無効になってしまう可能性がありますが、保険金というのは受取人の財産なので、他の相続人が何を言おうとそれを変えることはできません。
②保険金はすぐに支払われるため遺族が活用しやすい
生命保険の死亡保険金は、被保険者が亡くなったことが確認できてから1週間程度で入金されます。被相続人の預貯金を遺族が使えるようにするには相当な時間がかかりますが、保険金だと約1週間後には現金が入るため、遺族がお金に困る心配がありません。
人が亡くなった直後というのは葬儀代などまとまった出費を伴うことが多いため、そのために保険に加入している人もいるほどです。
③生前贈与と絡めると節税効果が高くなる
生命保険に加入すると保険料の支払いが必要になりますが、この保険料を一括で払うのではなく、毎年110万円という贈与税の基礎控除内で被相続人になる人が保険料を支払うと、節税効果が高くなります。
保険料の支払いは親など被相続人が行い、保険金の受け取りは子など相続人が行うという形にすることで、それまで支払ってきた保険料も相続の先渡しとなり、生命保険を活用することで得られる控除と合わせてダブルの節税効果が生まれます。
配偶者控除で1億6,000万円分までを非課税にする
夫から妻、妻から夫というように配偶者への相続では、最大1億6,000万円という巨額の配偶者控除があります。配偶者への相続だとなぜこんなに大きな控除があるのか、その理由は3つです。
①配偶者もすでに高齢である可能性が高く、その後の生活安定のため
②同じ世代の人への相続だけに、その財産を保有する期間が短いため
③相続財産を形成するのにあたり、配偶者の協力もあったと見なされるため
相続発生から10ヶ月という申告期限までに遺産分割協議が完了し、申告をしていることなど条件はありますが、この条件をクリアすれば大半の方が無税で相続をすることができるため、ぜひ活用したい控除です。
相続対策は税務署との戦いである
相続税は他の税金と異なる点が多いのはすでに解説してきた通りですが、おそらく最大の違いは税務署との戦いや駆け引きが必要になる部分がとても大きいことではないでしょうか。相続対策として税務署との関わりについても知っておく必要があります。
相続税が他の税金と違うこと
相続財産の総額を知っているのは、相続税の申告をする相続人だけです。もしかすると相続人ですら知らなかったような財産が後から出てくるかも知れないということも含めて、税務署が課税対象額の全額を知ることが難しいのは相続税の特徴です。
そのため、「これだけ相続財産があったので、この控除や特例を適用して申告します」という主旨で申告をすることになります。これはつまり、相続税額を申告者自らが決めているようなものです。
このように税務署にとっては分からないことがあるだけでなく、解釈が分かれる部分も多くなります。それでいて納税額が大きくなりがちで、解釈によって納税額も大きく変化するため、税務調査が入りやすい税金の代表格となっています。
相続に強い税理士に依頼しよう
解釈の分かれる部分が多いということは、納税側、徴収側のそれぞれで思惑が働きやすくなります。突っ込みを入れられるような余地があると税務調査の糸口になってしまうので、ここは相続に強い税理士にしっかり入ってもらうことが重要です。
税金の申告は自分ですることも可能ですが、こと相続税に関しては上記の理由でプロに関与してもらう必要性が高いと言えます。自分でやると税理士の報酬分だけオトクではありますが、それで税務調査が入ってしまい、修正申告で納税額が大幅に増えてしまったら本末転倒です。
相続対策は早め早めの行動を
この記事では、生前贈与を活用した相続対策についても解説しています。年間110万円という贈与税の基礎控除を使った相続対策はその筆頭ですが、こうした相続対策は早くから手を打ったほうがより節税効果が大きくなります。
生命保険を活用した相続対策であっても、保険に加入できる年齢ということを考えると少しでも年齢が若いうちに手を打っておくことが有効なのは間違いありません。
相続対策は早め早めに行動することがより効果を高め、その効果を確実にするという基本を押さえておいてください。
節税の結果相続税がなくなっても必ず申告を
基礎控除や各種の控除を活用したことにより、相続財産がそれらの控除額合計を下回ったら、相続税が無税になります。無税になるからといって申告しなくても良いわけではなく、申告することによって相続税が無税になることを確定させてください。
先ほども述べましたが、相続税額がいくらになるのか、控除などを適用したことによって無税になるのか否かというのは、あくまでも申告者の判断に過ぎません。それを勝手に判断して無税だから申告不要として放置していると、税務調査が入る糸口を作ってしまいます。
相続が発生したこと自体は税務署も把握しているので、それで申告がないと不審に思われてしまう可能性もあります。
突っ込まれる「穴」をなくせば相続対策は怖くない
相続税は税務署との戦いであり、税務調査が入るケースも多いと聞くと、相続税自体に怖い印象を持ってしまうかも知れません。しかし、この記事で解説しているような知識をしっかりと持ち、プロが関与することによってどこから見ても非の打ち所がない申告をすれば、何も怖いことはありません。
仮に税務調査が入っても申告内容が変わることはありませんが、そもそも税務署も突っ込みたくなるような「穴」がないような事案に対しては、税務調査をすることはありません。申告内容に不審な点があったり、何らかのほころびがあるような場合にそれを詳しく調べるのが税務調査です。
必要以上に身構えることはありませんし、受けられる控除や優遇措置はしっかりと受けるという考え方で臨めば、適切に処理することができます。
まとめ
相続対策の概要を、比較的広く浅くという形で解説してきました。それぞれの項目に対する深い解説については調べていただく必要があるかと思いますが、相続対策とはどういうものか、どうすれば相続税を少しでも低く抑えることができるかといった指針をお伝えできたのではないかと思います。
最終的には税理士に委ねることが多いと思いますが、その前提としてこの記事の知識を持っておくとスムーズに相続を進められるようになります。