公務員の退職金はいくら?平均相場と計算方法・推移状況まとめ
公務員の退職金が年々減額されていることをご存知でしょうか?
年金破たんへの懸念も相まって、老後資金に対する不安は高まりつつあります。副業が禁止されており、給与額が民間企業の動向に依存する公務員は、従来よりシビアな将来設計が求められているのです。
まずは、現状の公務員における「退職金の平均額」を再確認し、将来に向けた資産運用の必要性をご説明します。
※この記事は2019年10月に内容を加筆・修正しました。
公務員の退職金の平均額
安定した職種として人気があり、多額の退職金がもらえると思われがちな公務員。公務員に就けば生涯安泰とまでいわれますが、実際はどれほどの退職金を受け取れるのでしょうか?
地方公務員の退職金と国家公務員の退職金をピックアップし、それぞれの平均額や直近5年の価格推移をご紹介します。
地方公務員の退職金
調査対象部門 | 自主退職 | 11~25年勤続後の退職 | 25年以上勤続後の退職 |
---|---|---|---|
一般行政職員 | 299.9万円 | 1,227.4万円 | 2,281.7万円 |
技能労務職員 | 225.7万円 | 1,063.0万円 | 1,686.9万円 |
教育公務員 | 47.1万円 | 1,350.4万円 | 2,316.6万円 |
警察官 | 317.4万円 | 993.9万円 | 2,274.7万円 |
特定地方独立行政法人職員 | 99.4万円 | 1,413.0万円 | 3,404.3万円 |
全職員平均 | 106.2万円 | 1,202.8万円 | 2,263.4万円 |
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出典:(総務省「平成29年4月1日地方公務員給与実態調査結果」を抜粋・改編)
ばらつきはあるものの、ほとんどの部門で定年退職時に2,200万円以上が支給されており、これは民間の大手企業に相当する給付額です。しかし、この数字を将来設計に組み込むのは禁物。
つぎのデータで解説する「退職金の減額」を考慮すれば、今後はより入念に老後生活の準備をしなければいけないと分かります。
平成25~29年における定年退職時の退職金
対象年度 | 地方公務員の退職金(25年以上勤続後の定年退職・その他) |
---|---|
平成25年 | 2,607.1万円 |
平成26年 | 2,443.7万円 |
平成27年 | 2,333.0万円 |
平成28年 | 2,273.5万円 |
平成29年 | 2,262.0万円 |
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出典:(総務省「地方公務員給与実態調査」より「調査の結果」各項目を抜粋・改編)
退職金の計算方法(地方公務員の場合)
地方公務員の退職金は、以下の計算式にて算出されます。
退職手当額=基本額(退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率 )+調整額(調整月額のうち その額が多いものから60月分の額を合計した額)
公表データから直近5年間の退職金を見ただけでも「平均345.1万円」が減額されています。これは、公務員と民間企業に格差が生まれないよう、「人事院」が公務員の給与や退職金を調節するため。
公務員の退職金は「退職時点の給与額」に左右されるので、民間企業の給与低下がまわりまわって公務員の退職金減額に反映されているのです。
国家公務員の平均額
人事院が作成した「国家公務員給与の実態」によると、全公務員のうち国家公務員の割合は約5分の1。そのなかで、55.4%は「行政職俸給表(一)適用者(一般行政職員)」に当てはまります。
そのため、下記の退職金に関する平均値は、行政職俸給表(一)適用者のデータに絞って作成。地方公務員の図表とフォーマットは異なるものの、一般的な国家公務員を対象にしている資料として参照してください。
行政職俸給表・適用者の退職金 | 自主退職 | 応募認定 | 定年退職 |
---|---|---|---|
5年未満勤続 | 22.6万円 | - | 150.4万円 |
5~9年勤続 | 86.7万円 | - | 398.2万円 |
10~14年勤続 | 270.2万円 | - | 766.2万円 |
15~19年勤続 | 499.6万円 | - | 1,016.7万円 |
20~24年勤続 | 871.5万円 | 1,695.6万円 | 1,268.3万円 |
25~29年勤続 | 1,294.4万円 | 2,072.4万円 | 1,769.8万円 |
30~34年勤続 | 1,646.6万円 | 2,472.7万円 | 2,160.9万円 |
35~39年勤続 | 1,920.8万円 | 2,465.1万円 | 2,281.2万円 |
40年以上勤続 | 2,150.2万円 | 2,408.3万円 | 2,234.4万円 |
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出典:(内閣官房「退職手当の支給状況」を抜粋・改編)
定年退職にフォーカスすれば退職金は約2,200万円で、平均値は地方公務員と近いことが分かりました。
平成24~28年における退職金推移
対象年度 | 行政職俸給表・適用者の退職金(定年退職) |
---|---|
平成24年 | 2,528.3万円 |
平成25年 | 2,370.9万円 |
平成26年 | 2,225.9万円 |
平成27年 | 2,239.8万円 |
平成28年 | 2,223.1万円 |
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出典:(内閣官房「退職手当の支給状況」より各項目を抜粋・改編)
退職金の計算方法(国家公務員の場合)
国家公務員の退職金は、以下の計算式にて算出されます。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額
国家公務員の退職金も地方公務員と同様に減少しつつあり、公表データによれば5年間で「平均305.2万円」低下しています。民間企業の給与事情とシンクロするのは仕方ないものの、これから10年後,15年後にどのような状況が訪れるのか不安は大きくなるばかりです。
公務員の退職金はこれからも減少する?
厚生労働省の「就労条件総合調査」では、民間企業における現状の退職金給付率は2割弱。給付率が約9割を超えていた平成初期に比べて下降気味であり、人口減少による経済不況の訪れを考慮すれば回復はしばらく見込めません。
このまま民間企業の弱体化・短命化が進めば、公務員の退職金は低下を続けると予想できます。
老後資産は退職金で足りるの?
総務省が高齢者世帯を調査した「家計調査報告(家計収支編)平成29年」によれば、1ヶ月の老後生活に求められる費用は約23.5万円。
このほか、生命保険文化センターは最低費用として約22万円、厚生労働省も平均的な老後生活に約27万円が必要だと発表しました。これらから、高齢者世帯は「1ヶ月あたり25万円前後」の支出があると予想できます。
また、簡易生命表によれば、60歳の男性がもつ平均余命は19.57年。60歳の女性がもつ平均余命は24.43年であることから、平均余命の中央値は22年であると算出できました。
これらをもとに高齢者世帯の出費を「25万円/月」、定年退職となる60歳以降の老後生活を「22年間」としたとき、老後生活に向けて準備すべき金額はつぎの計算で求められます。
22年間の老後生活に必要な費用 |
---|
25万円×12ヶ月×22年間=6,600万円 |
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上記の計算であれば、老後資産として約6,600万円が必要だと分かります。公務員の退職金を約2,200万円だと見積もれば、現役時代からの貯蓄で用意すべき金額は4,400万円ほど。退職金だけでは、老後生活の必要生活費に到底足りないのです。
公務員も資産運用が必要不可欠
仮に20歳から60歳までのあいだに老後資産の不足分4,400万円を貯める場合、毎年110万円をコンスタントに貯める必要があります。公務員であれば安定した昇給が期待できるものの、結婚やマイホームの購入を考慮すれば容易に貯められる金額ではありません。
しかし、公務員は副業が禁じられているため、効率良く保有資産を増やしていく方法はただ1つ。将来に向けた「堅実な資産運用」が求められるのです。
公務員におすすめの資産運用
公務員は収入が安定しており失業の懸念がないため、安心して給与の一部を投資に充てることができます。十分な老後資金を用意するためには、堅実でありつつも積極的な資産運用が不可欠。
この項では余暇時間で取り組める、公務員におすすめの運用方法をご紹介します。
不動産投資:安定収入のある公務員と相性抜群!
金融機関から融資を受けられる不動産投資は、自己資金以上の投資額を扱えるため「投資効率の最大化」を実現できます。投資効率の具体例としては、以下の比較を参照してください。
融資の有無 | 運用条件 | 1年間運用したときの利益額 |
---|---|---|
自己資金500万円のみ | 年利10%で500万円を運用 | 50万円 |
500万円+融資額4,500万円 | 年利10%で5,000万円を運用 | 500万円 |
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同じ利回りの運用先であれば、融資を利用して多額の資金を用意できる方が利益は大きくなります。そして、融資を受けるときに重要視される「収入の安定性」という部分で、公務員はトップレベルの評価を与えられるため、好条件で多額の借入をおこなうことが可能。
金利面や借入限度額で優遇されるため、有利に運用を進められます。慣れないうちはタイムマネジメントが難しいものの、事業が軌道に乗れば心強い副収入・年金補助として機能することがメリットです。
株式投資:長期保有で配当金や株主優待を獲得!
大手企業や成長分野へ出資をする株式投資では、売買益や配当金による利益をねらいます。
ネット証券の普及により、パソコンやスマートフォンで売買を完結させられる手軽さが魅力。いまテレビメディアやSNSで注目を集めている、AI(人工知能)やVR市場にもワンアクションで投資できます。
一時期「デイトレード」といった短期売買を繰り返す手法が流行したものの、堅実な資産運用を望むのであれば長期投資がおすすめ。短期売買は価格推移の大きな銘柄でなければ利益を獲得できず、激しい値動きのなかで売買するには画面を注視し続ける必要があります。
これは余暇時間の浪費や精神的な消耗につながり、結果として「お金に働いてもらう」という投資の目的から外れてしまうのです。
まずは、配当金や株主優待を目的に長期運用を実践し、市場動向について理解が深まり始めた段階で「成長分野」への投資に切り替えるのが理想的です。
投資信託:投資運用の専門家に資産管理を一任!
投資信託は、投資資金を預けて専門家に資産運用を任せる金融商品です。余暇時間の捻出が難しく、厳しいタイムスケジュールのなかで投資をする場合におすすめ。投資先は国内外の株式・債券で、専門家が判断した最適なバランスで分散投資されます。
不動産投資や株式投資に比べて利益率は低いものの、大きな損失を生む可能性はわずか。低リスク・低リターンな投資手段の代名詞ともいえます。
少額から運用できるメリットもあり、安い銘柄であれば数百円から投資が可能。指定口座から定額を積み立てることもできるため、極力手間をかけずにコツコツと資産運用を続けるなら投資信託が最適です。
非課税制度「NISA」で大きく節税
通常、投資で獲得した利益には約20%の税金が課せられるため、運用利益が100万円であれば約20万円を納税しなければなりません。しかし、年間120万の控除枠を利用できる非課税制度「NISA」を利用することで、株式投資や投資信託の運用利益は課税対象外となります。
この「年間120万円」という数字は購入時点での金額を指しており、運用利益がどれほど大きくなっても利益はすべて非課税です。ただし、非課税となるのは「保有期間5年以下」であるため要注意。非課税期間満了後は課税口座への移行、または新たなNISAの非課税枠へ移す「ロールオーバー」から資産の移動先を選ぶこととなります。
投資信託の長期運用は「つみたてNISA」がお得
つみたてNISAは、投資で獲得した運用利益を非課税にする制度。NISAとの違いは年間控除枠と非課税期間、利用できる金融商品の種類です。
つみたてNISAは、控除枠が年間40万円に下げられている反面、非課税期間が20年間に延ばされています。そして、つみたてNISAを利用できる金融商品は「金融庁の基準を満たした投資信託」のみ。株式や指定外の投資信託は扱えないため注意が必要です。
基準が設けられることで銘柄数は絞られているものの、値動きの安定した投資信託が厳選されているため安心。少額を長期的に運用する用途であれば、NISAをおさえて有力候補となります。
REIT:訪日客増加で大注目の不動産市場へ投資!
2020年の「東京オリンピック」や2025年に誘致が決まった「大阪万博」など、今後しばらくは訪日観光客の増加が見込めるため、不動産市場には注目が集まっています。とはいえ、まとまった投資資金がない状態で不動産投資を始めるのは、金銭面で不安が残るものです。
そこで、おすすめできる運用先が、少額から不動産市場に投資できる「REIT(不動産投資信託)」。REITは投資信託と似たような仕組みをもち、専門家に資金を預けることで間接的に不動産運用をおこなえる金融商品です。
通常であれば個人投資家が投資できない、数億~数十億円の購入資金を要する施設へのアプローチが可能。訪日観光客の増加による恩恵が大きな、商業ビルやホテルなどに数万~数十万円から投資できます。
まとめ
データを見れば分かるように、地方公務員や国家公務員の退職金は少しずつ減額されています。
民間企業の経営不振や短命化が目立つなか、公務員の退職金が回復する可能性は高くありません。むしろ、今後ますます平均額が低下する恐れもあるため、各人による資産運用が一層重要になるのです。
これまで老後を保証してくれた国・政府は資金力を失いつつあるので、将来を楽観視せず資産管理に注意を払う姿勢が求められます。