勤続年数が長くても安心は禁物!減少する退職金に備える3つの方法
各企業が短命になりつつある昨今、「勤続年数が長いから十分な退職金をもらえる」という考え方は禁物です。
民間企業の社員に対する退職金の給付率は減少し、それに伴って公務員における退職金の平均も下がってきました。そのため、私たちは従来よりも「将来的な金銭問題」に対してシビアになる必要があるのです。
今回は、減少する退職金に対処するための「3つの方法」をご紹介します。
目次
退職給付の導入率は少しずつ低下してきた
勤続年数が長ければ多くの退職金を受け取れたのは過去の話。そういった不安を思い起こさせるデータが出ています。
厚生労働省が発表する「就労条件総合調査:結果の概要」では、定期的に民間企業の退職金給付について調査結果が記載されています。
以下の表は、平成9年以降の退職給付率をまとめたもの。
調査年度 | 退職給付を導入する企業の割合 |
---|---|
平成9年 | 88.9% |
平成15年 | 86.7% |
平成20年 | 83.9% |
平成25年 | 75.5% |
平成30年 | 77.8% |
90%近くあった給付率はみるみる低下し、平成9~25年までは右肩下がりを続けてきました。その後、平成30年には数字を持ち直しているものの、ニュースや経済誌で取り上げられる「低迷する国内企業」を見れば、平成初期の勢いを取り戻すことは難しいと考えられます。
つまり、誰しもが「退職金を受け取れない」もしくは「退職金が少ない」という問題に直面する恐れがあるのです。そのため、会社から受け取れる退職金に頼っていた「ひと昔前の将来設計」は、今後通用しないと覚悟しなければなりません。
なお、現状の勤続年数による退職金の違いは、当メディアの「退職金は勤続年数でどう変わる?5年~20年までの違いを具体的に解説」にて詳しく解説しています。
会社員は「会社の退職金に頼らない人生設計」が求められる
先ほど紹介した厚生労働省の資料からは、退職金の給付率が下がりつつあることを読み取れました。しかし、統計調査を眺めているだけでは、どのような対策を取るべきか具体案を考えることは難しいです。
この項では、現状の日本社会に起こっている傾向を解説し、なぜ私たちが「会社の退職金に頼らない人生設計」を求められているのかご説明します。
副業解禁の裏側に潜む「正社員神話」の崩壊
2018年は「副業解禁」というワードが取り上げられ、いくつかの大手企業が副業を認めたことで話題になりました。これを、働き方改革やダイバーシティの影響として、ポジティブに捉える声は多いです。
しかし、「一つの企業に勤め通す」ことを美徳とする日本社会に、副業解禁が素早く広まったことに違和感を覚えませんか?
近年、副業解禁が目立ち始める前後には、相次いで国内企業の人員削減が報道されました。誰もが名前を知る企業でさえも、早期退職者を募り新卒採用を抑え始めたのです。
これは、一個人の生涯を企業が支えきれなくなり、終身雇用制度が破たんに向かっていることあらわしています。副業解禁は、いわば「自社だけでは社員全ての生計を保証できない」といった企業側の本音が潜んでいると考えられるのです。
非正規社員に就けば仕事面は不安定で、正規社員であれば安定だといった「正社員神話」は、崩壊しつつあると覚悟するのが賢明だといえます。
伝統を重んじる企業ほど将来的な懸念は多い
現代の日本では労働者が強力に守られており、経営者の一存で社員をクビにすることは困難。そのため、いわゆる「働かないオジサン」や「窓際族」といった、勤続年数のわりにスキルの乏しい社員が増えていくのです。
こういった社員が入れ替わらないことには、年功序列を完全に廃することは難しく、大企業ほど成果主義への切り替えは容易ではありません。
しかし、時代に合わせた方向転換が遅れるほど、企業の資本はスキルの乏しい社員にガリガリと削られることになります。こうして失われた資本力に対するツケを払うのは、紛れもなく私たち現役世代です。
副業禁止である公務員はより計画的な人生設計が必要
会社員の立場であれば、たとえ勤務先の退職金に希望が持てなくても、副業をしつつ貯蓄を進められます。しかし、副業を禁じられている公務員は、どうしても貯蓄が勤務先の給与に依存しがちです。
世間からは「公務員は高給で退職金も多い」と思われているものの、総務省の資料を見ればわずか数年で金額が激減していると分かります。
調査年度 | 地方公務員の退職金(25年以上勤続後の定年退職・その他) |
---|---|
平成25年 | 2,607.1万円 |
平成26年 | 2,443.7万円 |
平成27年 | 2,333.0万円 |
平成28年 | 2,273.5万円 |
平成29年 | 2,262.0万円 |
出典:(総務省「地方公務員給与実態調査」より「調査の結果」各項目を抜粋・改編)
公務員は、民間企業の社員と違い失業することはないですが、下がりつつある退職金データを見て「将来への不安」が大きくなった人は多いはず。むしろ、民間企業の社員に比べて収入確保の自由度が低いため、より慎重なライフプランニングが重要だといえます。
老後資金の確保は退職金+資産運用で
副業解禁の盛り上がりから、本業以外の収入源としてバイトやサイドビジネスに関心が集まるものの、これらは時間・労力を切り売りする「労働集約型」の働き方です。
確かに休日を削り副業に注力すれば、老後資金は確保できるかもしれません。しかし、そのような生活を定年まで続けることが「充実した人生」に繋がるでしょうか?
お金に働いてもらう方法を知り、本業と並行して資産運用で老後資金を築く。 企業が自分の将来を保証してくれない現代こそ、このような意識を持ち「豊かな人生」を手にすべく投資を始めるのが賢明だといえます。
働きながら取り組める資産運用は限られている
いざ投資を始めようと考えても、働きながら取り組める投資は限られています。たとえば、おすすめの投資手段として取り上げられる「株式投資」や「FX」は、継続して利益を得るために高度な分析能力と情報収集が欠かせません。
くわえて、近年流行している「デイトレード」は、価格変動が激しい投資先を選んで売買するので、トレード中は画面から目を離せないというデメリットもあるのです。
この項では、こういった問題点をクリアできる資産運用の方法をご紹介します。
不動産投資で「サラリーマン大家」を目指す
入居者から賃料収入を得る不動産投資は、投資家の労力に関係なく利益を得られる「資本集約型」の投資手段です。金銭面でハードルの高さを感じるケースは多いものの、融資を駆使しつつ「経済状況にあった物件選び」をすればスタートは難しくありません。
さらに、週末を利用して活動を行う「サラリーマン大家」が多数いることから、会社員と並行して取り組みやすいことは実証されています。
「投資額に比例してリターンは大きくなる」という投資の法則があるため、多額の融資を利用できる不動産投資は大きな資産を築きやすいといえるでしょう。
なぜ不動産投資はおすすめなのか
- 入居者を見つければ物件が利益を生み出してくれる
- 融資を利用して自己資金を超える規模で投資できる
- 家賃は相場価格に影響されづらく、長期的に安定収入が期待できる
投資信託でスキマ時間に「ほったらかし投資」
専門家に資金を預けて、金融市場への投資を一任できる投資信託は、分析や情報収集の時間が取れない会社員に適しています。
数百円から購入可能で、口座開設のとき「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すれば確定申告を自動で行ってもらえるため、投資のハードルが極めて低い点もメリットです。
相場価格の推移は小さく低リスクであるため、できる限り小規模から投資を始めたいというニーズに適しています。
なぜ投資信託はおすすめなのか
- 常に金融市場を分析している専門家に投資を一任できる
- わずか数百円から数多くの投資先を選べる
- 値動きが小さく安心して運用できる
REITで少額から不動産オーナーになる
投資を一任できる投資信託の仕組みを、不動産市場に適応させたものがREITです。
不動産投資は融資が使えるとはいえ、初期費用が大きくなることをネックだと捉える人は少なくありません。その点、REITは数万円の投資額を用意すれば、複数のオフィスビルや商業施設に投資できます。
REITは投資信託と同様に、不動産売買や運用を全て専門家に任せられるので、最も手軽に不動産オーナーになる方法だといえる投資手段です。こちらも、口座開設のときに「特定口座(源泉徴収あり)」を選べば確定申告を必要としないため、わずかなスキマ時間で資産運用を行いたい人に適しています。
なぜREITはおすすめなのか
- 通常の不動産投資に欠かせない管理の手間・コストが不要
- 個人投資家には手が出ない大型不動産を扱える
- 数万円から不動産市場に投資できる
いま資産運用を始めるべき2つの理由
退職金が減少傾向にあるなか、この先10年,20年と時代が進むにつれて「老後資産は自分で用意するもの」という考え方は一般的になると予想されます。
しかし、現状の義務教育では経済について教える機会が乏しく、大多数の人々がどのように資産運用を行えば良いのか分かっていません。そのため、このままでは「資産状況を勤務先に100%依存」したまま、貧しい老後生活を迎える可能性が高いのです。
また、将来的に豊かな生活を手に入れるためには、以下のような2つの法則を知っておく必要があります。
- 日本経済が成長すれば「円」の価値は下がる
- 資産運用を早く始めるほど「複利」の効果が高まる
これらを順に解説していきます。
日本経済が成長すれば「円」の価値が下がる?
いま、大卒初任給は20万円前後といわれていますが、半世紀前にあたる1968年の初任給は「月収3万円ほど」であったことをご存知でしょうか?
厚生労働省の資料をもとに、大卒初任給をグラフ化した「年次統計(大卒初任給)」を見ると、2000年にかけて急上昇している様子は一目瞭然。1968年ごろは、円の価値がいまの7分の1程度であったのです。
これは経済成長により「貯金している資産が目減りする」ことをあらわしています。つまり、手持ちの資産を現金のまま保有しておくことは、長期的に見れば高確率で損失になるのです。
当時に取るべきであった行動は、預金ではなく「金融市場や不動産市場への投資」であったといえるでしょう。そして、1968年における大卒初任給のように、いつしか「2019年の大卒初任給はこんなに低かったのか」といわれる時代が来るはずです。
だからこそ数十年先の未来を見据えつつ、いま資産運用を始めるべきなのです。
資産運用を早く始めるほど「複利」の効果が高まる
資産運用の結果を最大化させる方法として「複利」という考え方があります。これは、決して難しい考え方ではなく「投資で得た利益を再投資し続ける」という簡単なもの。
複利はシンプルな方法で実践できるものの、その効果は絶大です。以下に、毎回1,000万円を元手に単利運用を行った場合と、利益を再投資して複利運用を続けた場合の違いを用意しました。
1,000万円を利回り5%で「単利」で運用
単利運用では毎回1,000万円を投資に充てるため、年間利益はいつも50万円。利益総額は10年後に500万円、20年後には1,000万円と一定に増えていきます。
経過年数 | 投資する金額 | 年間利益 | 利益総額 |
---|---|---|---|
運用1年目 | 1,000万円 | 50万円 | 50万円 |
運用2年目 | 1,000万円 | 50万円 | 100万円 |
運用3年目 | 1,000万円 | 50万円 | 150万円 |
運用10年目 | 1,000万円 | 50万円 | 500万円 |
運用20年目 | 1,000万円 | 50万円 | 1,000万円 |
1,000万円を利回り5%で「複利」で運用
複利運用では1,000万円を元手に投資を始めて、獲得した利益を全て再投資に充てます。その結果、運用年数が経過するにつれて、年間利益が徐々に増えていることが分かります。
経過年数 | 投資する金額 | 年間利益 | 利益総額 |
---|---|---|---|
運用1年目 | 1,000万円 | 50万円 | 50万円 |
運用2年目 | 1,050万円 | 52.5万円 | 102.5万円 |
運用3年目 | 1,102.5万円 | 55.1万円 | 157.6万円 |
運用10年目 | 約1,551.3万円 | 約77.6万円 | 約628.9万円 |
運用20年目 | 約2,526.9万円 | 約126.4万円 | 約1653.3万円 |
同じ条件でスタートしても、単利運用に比べて大差が生まれました。運用30年目,40年目と経過するたび、さらに利益総額には違いがあらわれるため、長期運用に対する複利の効果は絶大だと分かるはずです。
このように、複利効果は運用年数に比例して効果を発揮するため、いち早く複利を取り入れた資産運用を始めるのが望ましいといえます。
まとめ
勤続年数が長くても、十分な退職金を受け取れる時代は終わりつつあります。そのため、老後を不自由なく生活するには「勤務先の給与」だけに頼るのではなく、いまから自身で収入源を持ち資産を増やしておくことが大切なのです。
しかし、サラリーマンは捻出できる時間が限られているので、今回ご紹介した3つの投資手段が最初の資産運用としておすすめ。定年退職をまえに焦ることがないよう、早々に対処法を考えることが望ましいです。