不動産投資で損をするのは誰?リスクは災害や人口減少だけじゃない!
ミドルリスク・ミドルリターンでありながら、融資を利用することで抜群の収益性を誇る不動産投資。一般的にリスクとして取り上げられるのは、地震・火事や日本国内の人口減少といった内容が多いものの、これらは懸念すべき事態の一部でしかありません。
最も危険かつ悪質なリスクは、利害関係における「騙し合い」なのです。
今回は、本当に注意すべき不動産投資のリスクについてご説明します。
目次
不動産投資のリスクは災害や人口減少だけじゃない
不動産投資のリスクと聞いて、初めに思い浮かぶ災害や人口減少、金利変動といった要素は確かに大きなリスクです。しかし、こういった自然現象や市場全体の意向は、全ての投資家へ平等に訪れます。
これらは、誰しもマニュアル通りの対策を取ることで、リスクに対して最大限の対処を取れるのです。たとえば、災害リスクを対策するなら損害保険に加入、人口減少リスクを避けるなら東京の不動産を購入する。こういった対処方法の定石が知れ渡っていますよね?
ただ、実際の現場では、悪徳業者やライバル投資家を交えた「人対人の騙し合い」が横行しています。これらにマニュアル通りの対策はないため、安易に他人を信用しないマインドが大切なのです。
なお、不動産投資の一般的なリスクについては、当メディアの「不動産投資で想定し得るリスクの全てとその対策」で解説しています。
不正融資は「うまい話」ではなく破産リスク大
近年、不正融資の実態が続々と発覚しており、これらの事件を理由に破産を招くケースが増えつつあります。ここ数年で特に話題となった不正融資の事例は、以下のようなもの。
不正をした企業 | 不正融資の内容 |
---|---|
スマートデイズ | 粗悪なシェアハウスを販売し、返済をできない投資家が続出 |
TATERU | 預金残高23万円の男性に1億円超の不動産を契約させた |
ケリーバックス | 満室でも赤字運営になる不動産を不正融資で購入させた |
スマートデイズは、シェアハウス「かぼちゃの馬車」で一躍有名となった企業です。同社は有名人をもちいたPRに成功して、多数の投資家にシェアハウスを販売したものの、赤字運営が続き当初設定していたサブリースを破棄。
投資家たちの手元には収益性の乏しい不動産が残り、融資を行ったスルガ銀行に対しては集団訴訟が起きています。
TATERUやケリーバックスのケースは、その後に明らかとなった類似の事例です。TATERUに関しては、投資家自身が早々にアクションを起こしたため契約に至りませんでしたが、ケリーバックスは実際に騙された投資家がメディアに取り上げられました。
その内容は「毎月30万円の赤字が出ている」という酷いもの。融資返済はまだまだ続くため、トータルマイナスはどれほど膨らむか計り知れません。
正しい知識があれば不正融資は避けられる
本来、融資審査は投資家の返済能力に応じて可否が決まります。これを騙して返済能力以上の融資を取り付けるのは、決して「うまい話」ではなくリスキーなこと。それとなく不正融資を持ちかけられたとしても、きっぱりと断る意志を示すべきです。
そもそも、不動産投資を始めたとき、初年度には登録免許税や不動産取得税を支払う必要があります。これらの納税額は不動産価格の数%に相当するため、数百万円の出費がかかるはず。
TATERUのケースで紹介したように、預金残高がほとんどない状態で大型不動産を購入すれば、一瞬で破たんすることは容易に想像できます。つまり、不正融資に気付かないまま巻き込まれるのは、投資家自身の勉強不足でもあるのです。
もちろん非があるのは悪徳業者ですが、最低限の知識すらないまま不動産投資をスタートすることがないよう、投資家側も注意が必要だといえます。
最近決まった入居者がいる物件は要注意
不動産売買の現場では一部の不正者によって、入居偽装と呼ばれる行為がもちいられます。
これは、入居率や利回りを高く見せるために使われる手法で、偽の入居者は売買が成立したのちに退去。新たな不動産所有者は、実際には入居率の低い不動産を掴まされることになるのです。
たとえば、先ほど紹介したケリーバックスの不正問題。この事例では、18部屋のうち15部屋が埋まっていたにもかかわらず、契約直後に7部屋も空室になるという事態が起こりました。
明確な証拠こそないものの、一度にこれほど空室が増えるのは不自然であり、入居偽装の可能性は高いです。公表される件数が少ないだけで、実際には本件のような事例は多くあると予想されており、売り手側の不動産情報を安易に信用するのは危険だといえます。
入居偽装の疑いがある不動産の特徴とは?
入居偽装は最も避けたいリスクの1つ。しかし、売り手側の開示情報から不審な点を見つけるのは難しいように思えますよね?
そこで、入居偽装をチェックする際にヒントとなる項目を、以下にご紹介しました。
レントロール(貸借条件一覧表)のチェックポイント
仲介業者から受け取るレントロールには、入居人との契約条件が記載されています。この資料を見たうえで、3つのポイントに当てはまらないかを確認しましょう。
- 売り手と同じ苗字の入居者がいる
- 数ヶ月以内に契約した入居者が多い
- 賃料相場より割高な家賃の入居者がいる
これらを満たしていても入居偽装だと断言はできませんが、疑う意識は強めた方が良いです。この段階で不審な点を見つけたときは、さらに現地視察で見極めを進めます。
現地視察のチェックポイント
レントロールから怪しさを感じつつも購入意欲がある場合は、現地視察でつぎのようなポイントを確認しましょう。
- ガス・電気メーターは動いているか
- 夕方~夜間に電気が付いているのか
- 郵便ポストの中身が散乱していないか
カーテンや洗濯物の有無も有効な判断基準の1つですが、これらは簡単に偽装されてしまいます。
その点、上記3つは偽装に手間がかかり、こまめな不正行為を継続するのが困難。現地視察のときに入居偽装を判断するうえで、機能しやすい目印なのです。
リスク軽減のため業者の相見積もりは必須
リフォーム工事や設備交換など、築年数が経過するにつれて専門業者へ依頼する回数は増えてきます。このとき、信頼できる知人に依頼する場合でないなら、基本的に複数の業者から見積もりを出してもらいましょう。
これは、依頼内容に対する相場価格を知らないまま、割高な請求を受け入れないようにするためです。初心者が通常の数倍にあたる工事費用を取られたケースは、書籍やネットでも取り上げられているため、緊急事態でなければ相見積もりは必須だといえます。
長期融資のリスクを知らなければ成功は無理
融資期間を延ばすほど1ヶ月あたりの返済金額は減るため、賃料収入の多くが手元に残ります。しかし、こうした長期融資によるキャッシュフローの確保は、トータルリターンをマイナスに追いやる原因であるとご存知でしょうか?
仮に5,000万円の融資を受ける場合、利息総額は融資期間によって以下のように推移します。
5,000万円を金利3%で借り入れた場合
借入金5,000万円(固定金利3%) | 毎月の返済額 | 返済総額 | 利息総額 |
---|---|---|---|
融資期間35年 | 19万円 | 8,081万円 | 3,081万円 |
融資期間30年 | 21万円 | 7,588万円 | 2,588万円 |
融資期間25年 | 23万円 | 7,113万円 | 2,113万円 |
融資期間20年 | 27万円 | 6,651万円 | 1,651万円 |
融資期間15年 | 34万円 | 6,215万円 | 1,215万円 |
融資期間10年 | 48万円 | 5,793万円 | 793万円 |
※1万円以下は切捨てています。
たとえば、毎月の賃料収入が50万円だった場合、融資期間が10年であれば手残りは2万円ですが、融資期間が35年の場合の手残りは31万円。融資期間を延ばすにつれて、毎月の負担額は大幅に小さくなると分かります。
ただし、これをキャッシュフローの改善だと思ってはいけません。融資期間を10年から35年に延ばしたとき、利息総額はとてつもない金額に膨れ上がっているのです。
また、2件目以降の不動産を買い進めるとき、最初に購入した不動産の残債が大きいほど融資審査で不利に働きます。手残りが多いに越したことはありませんが、不用意に融資期間を延長してキャッシュフローを確保する行為は、後々に投資家の首を絞めると忘れてはいけません。
長期融資をしなければ手残りのない不動産は候補から外し、キャッシュ面に負担のない最低限の範囲で融資を利用しつつ「利回りの優れた不動産」を購入するのが理想的です。
安価だからと「ボロ物件」を選ぶのはハイリスク
安価で不動産投資を始める方法として、ボロ戸建やボロアパートの運用に関心が強まっています。ボロ物件を購入する手法自体はひと昔前からあったものの、融資の引き締めやノウハウ発信者の増加により、ますます参入者が増えているのです。
しかし、初期費用ばかりに目を向けて、リスクを考慮しないままボロ物件を選ぶのはリスキーです。たとえば、ボロ物件には以下のような問題があります。
- 初心者には修繕費の予測が難しい
- 自力で修繕するには専門知識が必須
- シロアリの有無を見極める必要がある
- 間取り・設備が古いと客付けが難しい
当然、ボロ物件をいくら安く買ったとしても、修繕費が高くなれば意味はありません。そこで自力での修繕を試みる初心者も多いのですが、専門知識がないためにスムーズに改装が進まず、クオリティの低い施工によって見栄えの悪い物件が出来上がるケースも多々。
また、費用をかけて直すべき場所と、手を加える必要のない場所が分からず、潜在顧客が求めるニーズとかけ離れた住居になる可能性は高いのです。こういった問題点は、ボロ物件投資におけるリスクのほんの一部です。
ボロ物件の運用を始めるとき意識すべきポイント
資産拡大の基盤にするために始めるボロ物件運用が、資産拡大の足かせになっては元も子もありません。少額だからと安易な意識で臨むことなく、成功させるため真剣に取り組むべきでしょう。
まず、ボロ物件の状態はケースバイケースであり、再現性の高い教科書のようなノウハウは手軽に手に入らないと考えるのが賢明です。そこで、初心者は事前準備の時間を設けて、つぎのようなプロセスを踏むのがおすすめです。
1.ボロ物件関連の書籍を複数冊読む
2.動画コンテンツで目から情報収集を行う
3.ボロ物件を運用する投資家に内見同行を依頼する
断片的なノウハウばかりを扱うネット検索は、ボロ物件に関する情報収集に不向き。
一件まるごとの解説を閲覧できる動画コンテンツでなければ、実際の現場に活かせる知識は身に付きません。動画教材としては、楽待のYouTubeチャンネルにおける人気コンテンツ「空き家再生人」などがおすすめです。
そして、基礎知識を学んだあとは「大家の会」のようなコミュニティに参加し、ボロ物件を運用する投資家と繋がりを作れたら理想的。クレクレ精神のまま依頼をするのは失礼にあたるため、事前に基礎知識を身に付けて、依頼料や有益な情報提供をお礼として相談に乗ってもらいましょう。
信用して良いのは利害関係と無縁な「客観的意見」
不動産売買の場所では買い手と売り手、仲介業者の三者が直接的な利害関係にあります。そして、このうちの全員がより多くの利益を獲得したいと考えているのです。
そのため、利害関係のうえで対立している相手の言葉は、利益を増やすための駆け引きである可能性を考慮しなければなりません。こういった状況のなか信用して良い情報こそ、以下のような利害関係とは無縁な「客観的意見」です。
- 専門家や投資家が執筆した書籍の意見
- 利害関係にない不動産投資家の意見
- 家族や友人のアドバイス
なぜ客観的意見は信用して良いの?
まず、専門家・投資家が公に向けて執筆した書籍は、信用できるケースが多いです。
内容が正しく有益でなければ評価されず、商品として好評を集めることができません。そのため、基本的に「売上が欲しい」と考える著者は、内容に偏りこそあっても悪評に繋がるような行動は取らないのです。
また、専門知識がないからと、家族や友人アドバイスを全て無視するのは危険。不動産投資を始めるとなれば、誰しも高揚して冷静な判断が難しくなるものです。
こういったときは都合の良い営業トークや、多少無理のある投資プランを気にすることなく契約を進めがち。たとえば、老人が振り込め詐欺に騙されるケースには、周囲の人間から見れば明らかに危険だと分かる事例が多くあります。
「人間はいとも簡単に冷静さを失う」と忘れず、いつでも周囲の冷静な人たちに意見を仰ぐ姿勢が大切です。
まとめ
本記事で紹介したように、不動産投資の利害関係における駆け引きは、ときに災害や人口減少より大きなリスクとなって立ちはだかります。そして、これらはマニュアル化された対策が通用しないので、投資家自身が常に騙されないよう意識し続ける必要があるのです。
また、目先の利益を優先させたために将来的に不利益を被る、長期融資の利用にも気を付けなければなりません。多額の資金が動く不動産投資では、たった一度の安易な判断が命取りになるため、どんな場面でも慎重に判断する意識が大切です。