不動産投資のリスクが分かりにくい!他の投資と異なる4つのポイント
不動産投資は手間がかからない投資なので、会社員の方で検討している人もいるでしょう。ただ、色々と情報収集していくうちに、不動産投資のリスクはほかの投資と比べてどう違うのか?と疑問に思う人が多いと思います。
そこで今回は、意外と分かりにくい不動産投資のリスクを4項目に絞り、ほかの投資と比較していきます。この記事を読めば、不動産投資のリスクを理解でき、さらにほかの投資との違いも明確に分かっているはずです。
そもそも投資のリスクとは何か?
結論からいうと、一般的にいわれている投資のリスクである「収入の変動」「コスト」「予期せぬリスク」「手間」の4項目をピックアップし、不動産投資とほかの投資の違いを比較すると以下の通りです。
項目 | 株式投資(短期) | 株式投資(長期) | 国債 | 不動産投資 |
---|---|---|---|---|
収入の変動リスク | ××非常に大きい | △少しある | ◎ほぼゼロ | 〇小さい |
コストがかかるリスク | △少しある | ○小さい | ○小さい | ×大きい |
予期せぬリスク | ×大きい | ×大きい | ◎小さい | △小さくないコントロール可能 |
手間がかかるリスク | ×大きい | ◎小さい | ◎小さい | ◎小さい |
「投資」といってもたくさんの種類がありますが、今回は身近な投資として上記をピックアップしました。株式投資は長期スパンの投資と短期スパンの投資に分け、安全資産の代名詞である国債とも比較します。
では、次項以降で各項目について4つの投資を比較していきましょう。
項目1:収入の変動リスク
項目 | 株式投資(短期) | 株式投資(長期) | 国債 | 不動産投資 |
---|---|---|---|---|
収入の変動リスク | ××非常に大きい | △少しある | ◎ほぼゼロ | 〇小さい |
項目1は収入の変動リスクです。投資の目的は収入を上げることなので、収入が安定せずに変動しやすいのはリスクといえます。不動産投資は、ほかの投資と比べて収入が変動しにくく、この安定性が最大のメリットといっても良いでしょう。
株式投資(短期)は変動が激しい
株式投資(短期)は、株の売買益で収入を上げます。つまり、株価が安いときに取得し、株価が高くなったときに売却するということです。短期売買は、早くて1日で何度も取引をするデイトレード、1~2週間単位で売買するスイングトレードが有名です。
どちらにしろ、短期で収入を上げるためには株の売買を繰り返す必要があるので、株価の変動が激しい銘柄を選択しなければなりません。そうなると、株価が高騰すれば大きな収入をあげられますが、その逆に株価が暴落すれば大きな損失を被ることになります。
そのため、株式投資(短期)は収入の変動が激しい投資であり、ハイリスク・ハイリターンの投資といえます。
株式投資(長期)も実は変動する
株式投資(長期)は、株式を保有することでその会社からもらえる「配当金」をメインに置いている投資です。また、前項と同じく株の売買益もサブの収入になります。
株式投資(長期)は一般的に比較的安定しているといわれますし、株式投資(短期)よりは安定しているのは事実です。ただ、配当金はその会社の業績や方針によって変わるので、実は変動しやすい収入でもあります。
配当金とは?
そもそも配当金とは、会社が得た利益を株主に還元するというものです。配当金をもらえるタイミングは会社によって異なりますが、一般的には年2回のことが多いです。不動産証券化協会によると、東証一部の株式で配当利回りは2%前後です。
つまり、500万円分の株式を保有してれば、配当金として年間10万円(500万円×2%)の収入になります。
配当金が変動するとは?
配当金は会社が得た利益を株主に還元するので、会社の業績が悪ければ配当金は下がります。最悪の場合は「配当金無し」ということもあり得るので、景気によっては安定しているとは言い難いでしょう。
また、会社の業績が良くても、その会社が利益を内部留保(≒会社の貯金)したり、その利益を設備投資などに充てたりしても配当金は下がります。このように、配当金は株価の変動よりは安定していますが、変動リスクも小さくないのです。
国債は変動が小さいが収入も小さい
国債は日本国が発行している債券です。投資家は国債を保有することで規定の利回りをもらい、期限が来たら元本が返還されます。そのため、日本国が破綻でもしない限り元本保証なので、投資の中では最も安定している投資の1つといえるでしょう。
個人向け国債は以下3種類があります。
- 変動型10年
- 固定型5年
- 固定型3年
国債の分配金の変動
国債は株式の配当金のように、毎年もらえる分配金が収入になります。変動型は、そのときの金利によって利回りは変わりますが、固定型は規定の利回りから変わりません。ただし、3種類とも最低金利は0.05%なので、それ以上金利が下がることはありません。
現に、不動産証券化協会のデータのように、長期金利は0%で推移しておりマイナス圏に入ることもあります。そのため、2019年2月時点でいうと、固定型は最低金利の0.05%で回っています。つまり、500万円分の国債を取得しても、年間わずか2,500円の収入にしかなりません。
売却時も元本保証
前項のように、国債の分配金は最低基準があるので、変動はしますがマイナスになることはありません。また、国債は期間満了を待たずに途中で換金(≒売却)することも可能です。その際は、「中途換金調整額」が発生しますが、元本割れはしないので変動はしないといえます。
このように、国債は収益の変動リスクはゼロに近いですが、リスクが非常に小さい分、リターンも非常に小さい投資です。
不動産投資は変動が小さい
不動産投資は、国債ほどではありませんが比較的変動が小さい投資です。その理由は、以下の点になります。
- 家賃収入だから
- 不動産は現物資産だから
家賃収入だから
不動産投資のメイン収入は家賃収入です。家賃収入は、たとえば「1年で20%下がる」というケースは少ないですし、そもそも賃借人がいる限り基本的に賃料は変わりません。そのため、株価や配当金と比較すると収入として安定性は高いです。
また、不動産投資は個別に投資家が運用しているので、明確な利回りは分かりません。ただ、一般的には「表面利回りで10%は欲しい」といわれているくらいですし、何よりも融資を利用できるので少ない自己資金で高額な資産を取得できます。
つまり、不動産投資の収入は比較的安定していて、かつ収入額も高いというわけです。
不動産は現物資産だから
不動産は売却しても収入を得ることができますが、不動産投資では売却益はメインではありません。ただ、将来的に売却するとしても、現物資産なので変動は小さい資産です。
たとえば、株価であれば「1年間で半値になる」ということはあり得ます。しかし、3,000万円で購入したマンションが、1年間で半値の1,500万円に下落することはほぼあり得ないでしょう。さすがに家賃収入よりは変動リスクがありますが、それでも株式投資に比べると売却時も安定性は高いです。
このように、メインの家賃収入は安定している上に、融資を利用して高額な資産を取得できるというメリットがあります。また、売却する際も価格変動リスクは比較的小さいといえます。
項目2:コストがかかるリスク
項目 | 株式投資(短期) | 株式投資(長期) | 国債 | 不動産投資 |
---|---|---|---|---|
コストがかかるリスク | △少しある | ○小さい | ○小さい | ×大きい |
項目2はコストがかかるリスクです。不動産投資で発生するコストは比較的高いので、前項の収入と合わせた収支シミュレーションが重要になります。収入とコスト(支出)は、その投資の収益を作り出す要素なので、両方一緒に考えましょう。
株式投資(短期)は手数料と金利がかかる
株式投資(短期)のコストは手数料と金利です。手数料と金利は証券会社によっても異なりますし、証券会社の中でもプランがあります。不動産投資よりコストはかからない場合が多いですが、株式投資(短期)も比較的コストは高くなります。
手数料は売買回数による
たとえば、楽天証券の現物取引にかかる手数料は以下の通りです。
取引金額 | 新手数料(税込み) |
---|---|
5万円まで | 50円(54円) |
10万円まで | 90円(97円) |
20万円まで | 105円(113円) |
50万円まで | 250円(270円) |
100万円まで | 487円(525円) |
150万円まで | 582円(628円) |
3,000万円まで | 921円(994円) |
3,000万円超 | 973円(1,050円) |
上記は、株式取得時と売却時のどちらにも発生する手数料です。仮に、A銘柄を40万円取得し、その日のうちに41万円で売却したとします。その際、売却益で1万円の収入がありますが、手数料は540円(270円×取引2回)かかるということです。
もちろん、売却で損失が出ているときにも手数料は発生しています。株式投資(短期)は短期で何回も売買を繰り返すので、1回の取引手数料は安価ですが積み重なって大きなコストになることもあります。
金利の計算方法
株式投資では、信用取引という証券会社にお金を借りて株式を売買する取引があります。信用取引は証券会社にお金を借りているので金利がかかり、金利は証券会社によって異なりますが概ね3%台前半です。
仮に、40万円の株式を信用取引(金利3.3%)で取得した場合、「40万円×3.3%=13,200円」 が1年間にかかる金利です。仮に、1日で売却すれば約36円(13,200円÷365日)が金利分になります。
これも1回の取引では大した額ではありませんが、株式投資(短期)は短期間で何度も売買を繰り返すので、手数料と一緒で積み重なって高額になることがあります。
株式投資(長期)は手数料がかかる
株式投資(長期)も株式投資(短期)と同じく手数料がかかります。信用取引で株式を取得した場合は金利もかかりますが、株式投資(長期)は株式を長期保有して配当金がメイン収入になるので、信用取引を利用するケースは少ないです。
また、手数料がかかるとはいえ、株式投資(短期)のように短期間で売買を繰り返すわけではないので、手数料(コスト)は極めて低いといえます。
国債はコストなし
国債は手数料がかかりません。厳密にいうと、全ての債券に共通していますが、債券の場合は発行元が手数料を負担しています。個人向け国債は証券会社を通じて売買しますが、その際国債の発行元である日本国は、わずかですが証券会社に手数料を支払っているのです。
しかし、国債を取得する投資家が負担するわけではないので、証券会社を通じて取得するとはいえ取得コストはゼロになります。ただ、上述のように期間満了を待たずに換金(≒売却)すると「中途換金調整額」が発生するので、手数料ゼロというわけではありません。
不動産投資のコストは大きい
不動産投資のコストは高額になりやすく、大きく分けると以下のコストがかかります。
- 不動産取得時のコスト
- 不動産運営時のコスト
- 不動産売却時のコスト
不動産取得時のコスト
不動産取得時には以下のコストがかかります。
- 仲介手数料
- 登記関係費用
- ローン関係費用
- 不動産取得税
上記は物件評価額や金融機関によって異なりますが、平均して物件価格の5~8%はかかってきます。
不動産運営時のコスト
不動産は取得時も以下のコストがかかります。
- ローン支払い額
- 固定資産税、都市計画税
- 退去時の原状回復費用
- 管理委託手数料
- 火災保険料や地震保険料
- 管理費、修繕積立金(区分所有)
- 共用部の修繕費用(一棟投資)
- 税理士への報酬(確定申告への依頼時)
- その他経費(物件運営のための交通費など)
これらの費用は物件によって異なります。情報収集をして、上記の支出のシミュレーションを高めることが、不動産投資成功の鍵となるでしょう。
不動産売却時のコスト
不動産売却時にかかるコストは以下です。
- 仲介手数料
- 登記関係費用
不動産取得時よりコストはかかりませんが、それでも売却価格の5%ほどはかかるでしょう。このように、不動産投資はコストが高額になりがちなので、上述した収入と合わせて正確な収支シミュレーションが重要です。
項目3:予期せぬリスク
項目 | 株式投資(短期) | 株式投資(長期) | 国債 | 不動産投資 |
---|---|---|---|---|
予期せぬリスク | ×大きい | ×大きい | ◎小さい | △小さくないコントロール可能 |
項目3は予期せぬリスクです。予期せぬリスクとは自分でコントロールできないリスクであり、それによって収益が悪化する可能性があるリスクのことです。予期せぬリスクが大きいと、突発的な支出や、思いもよらずに収入が減ってしまうリスクがあります。
株式投資は外部リスクが多い
株式投資は以下のように外部リスクが多いです。
- 全体的な景気に左右される
- 天災リスク
- 企業トップの不祥事
- 海外の株式事情
株価も配当金も業績に左右されるので、日本や世界全体の景気に左右されやすいです。また、震災や台風などで企業がダメージを負っても株価は下がります。仮に、企業の業績が良くても、企業のトップや幹部が不祥事を起こしたときも株価は下落する可能性が高いでしょう。
また、特に株式投資(短期)の場合は企業業績に関係なく、たとえば「アメリカの証券市場でダウ平均が400ドル下落した」という状況であれば、日本市場もつられて株価が下落することは多いです。このように、株式取引は外部リスクが多いので、コントロールできないリスクは多いといえます。
国債は予期せぬリスクは小さいが収益も小さい
国債は予期せぬリスクは極めて小さいです。強いていえば、日本国家が破綻するのが予期せぬリスクではありますが、そのような状況になるのは極めて低い確率といえます。ただ、収益も小さいので、ローリスク・ローリターンの投資ではあります。
不動産投資は予期せぬリスクは対策できる
不動産投資における予期せぬリスクとは以下です。
- 空室リスク
- 家賃下落や滞納リスク
- 地政学的なリスク
不動産投資の場合はこのリスクは対策することができます。
空室リスク
空室になると家賃収入がゼロになりますが、以下のように対策することができます。
- リフォームすることで価値を上げる
- 需要の高い物件を取得する
- サブリース契約を結ぶ
部屋の価値が上がれば空室リスクは減りますし、そもそも需要の高い物件を取得することは空室リスクへの対策になります。また、サブリース契約を結ぶことで、空室時も賃料が保証されるのです。
家賃下落や滞納リスク
家賃下落や滞納もリスクと予期せぬリスクといえますが、こちらも以下で対策可能です。
- 保証会社を付ける
- 入居審査のハードルを上げる
保証会社を付ければ滞納時の家賃は保証されます。また、入居審査時の「年収に対する家賃の比率」などを厳しく設定することで、滞納リスクは小さくできます。
天災リスク
株式投資と同じように、地震や台風などの天災は、現物資産である不動産はダイレクトに影響があります。ただ、これも火災保険・地震保険に加入することで対策可能です。火災保険は「住まいの総合保険」と呼ばれており、火災以外の風災や人災などあらゆる災害に対して保障しています。
地震保険も、地震によって受けたダメージを保障するという仕組みです。火災保険は融資を受けると必須加入ですし、支払う保険料も比較的安いです。しかし、地震保険は保険料が高くなるので、ハザードマップなどでエリア的な地震リスクを見極めてから加入するか判断しましょう。
項目4:手間がかかるリスク
項目 | 株式投資(短期) | 株式投資(長期) | 国債 | 不動産投資 |
---|---|---|---|---|
手間がかかるリスク | ×大きい | ◎小さい | ◎小さい | ◎小さい |
さいごの項目は手間がかかるリスクです。投資によってかかる手間は違いますが、特に会社員など日中仕事をしている方は手間がかからない投資でないと継続できません。そのため、「手間がかかるか?」という点は投資において重要になります。
株式投資(短期)は日々売買を繰り返す
株式の売買は、基本的に市場が開いている9時~15時までしかできません。さらに、株式投資(短期)は売買を繰り返して利益を上げるので、平日日中も売買を繰り返すことになり非常に手間がかかる投資といえます。
株式投資(長期)は手間が小さい
同じ株式投資でも株式投資(長期)の場合は、年単位で株式を保有する投資方法です。もちろん、売却することもありますが、株式投資(短期)よりも圧倒的に売買する機会は少ないでしょう。
手間がかかるとしたら、年に数回ある程度の売却時と、同じくらいの頻度で銘柄入れ替え(購入)を行うときくらいです。そのため、株式投資(長期)の手間は小さいといえます。
国債は手間が小さい
国債は、基本的に保有しつづけて分配金をもらうことで収入を得ます。仮に途中換金するとしても、上述したように元本割れすることはないので、焦って換金することはありません。その点から考えると、手間が非常に小さいといえるでしょう。
不動産投資は物件運営に関する手間なし
不動産投資は物件運営に関する以下の業務は管理会社に委託できます。
- 入居者の募集や契約関係
- 入居者からの家賃徴収や滞納時の対応
- 入居者からのクレーム対応
- 退去時の立ち合いや補修手配
- 共用部の修繕計画の策定と修繕手配
これらを全て委託できるので、物件運営に関しては手間がありません。しかし、需要が高く収益を継続して得られる「物件を選定する」作業には、手間がかかる点は認識しておきましょう。
とはいえ、不動産投資は物件を取得してからの方が圧倒的に長いので、不動産投資トータルでみると手間は小さいといえます。
もっとリスクについて深く学びたい
今回の記事を読み、不動産投資のリスクについてもっと学びたい人は、こちらの記事をおすすめします。この記事では、金利・物件・運用という3つの項目について、本記事とはまた違う角度でリスクを紹介しています。興味のある人はぜひご一読ください。
まとめ
このように、不動産投資は収入の変動リスクは小さいですが、コストが高額になるリスクは高いです。また、予期せぬリスクは対策できますし、手間も比較的かからないといえます。
そのため、収支シミュレーションをきちんと行うこと、そして予期せぬリスクへの対策を講じておくことが不動産投資を成功させるカギといえるでしょう。