【確定申告の小ワザ】投資信託の損失は損益通算で有効活用しよう!
投資信託の年間収支がマイナスだったとき、そのまま何もせず翌年度を迎えていませんか?
運用成績がマイナスであれば、確定申告をすることで支払う税金が減少します。たとえ数%の違いであっても、5年,10年と積み重なれば大きな差になるのは明白。
今回ご説明する「損益通算」を活用して、賢く納税することをおすすめします。
確定申告の義務に関係なく「損益通算」を活用すべし
投資信託などの「金融市場により価格が決まる商品」は、年間を通じてプラスになるときもあれば、大きくマイナスに傾く年度もあります。
このうち、年間を通じてマイナスだった場合は、確定申告が不要な投資家であっても「損益通算」のために税務署へ申告することをおすすめします。
この損益通算は「損失を利益と相殺する」ための方法です。具体的には、以下のようなケースで効果を発揮します。
損益通算で損失と利益を相殺したケース
口座Aで500万円プラス | 口座Aで500万円マイナス | |
---|---|---|
口座Bで500万円プラス | 1,000万円に対して課税 | プラマイゼロなので課税なし |
口座Bで500万円マイナス | プラマイゼロなので課税なし | 翌年以降に利益と相殺 |
証券会社の口座を2ヶ所以上利用するとき、一方で利益が発生しつつ、もう一方は損失が発生するケースが多々あるのです。このとき、確定申告により損益通算を行えば「プラマイゼロなので課税なし」になります。
また、両口座がマイナスだった場合は、確定申告をしておくことで「最大3年間」繰り越すことが可能です。仮に2019年度に相殺しきれない損失が発生すれば、2022年までは繰り越して損益通算ができます。
一方、確定申告を行わない場合は、どのような扱いになるのでしょう?
損益通算を行わなかったケース
口座Aで500万円プラス | 口座Aで500万円マイナス | |
---|---|---|
口座Bで500万円プラス | 1,000万円に対して課税 | 口座Bの50万円に課税 |
口座Bで500万円マイナス | 口座Aの500万円に課税 | 課税なし |
損益通算を行わない場合、このように利益に対しては課税されて、損失に対しては課税されません。そのため、損失と利益を相殺したケースと見比べたとき「プラマイゼロなので課税なし」になっていた部分が、利益500万円に対して課税されるよう変化しています。
つまり、損益通算をしていれば発生しない税金が、損益通算をしない場合は約100万円発生するのです。両口座がマイナスだった場合も、確定申告をしなければ翌年以降に繰り越せません。
あまりにも損失額が小さければ、労力に見合うリターンは得られないものの、基本的には損失を申告するのが望ましいといえます。
【注意】NISA口座を利用した投資信託は損益通算できません
優れた非課税制度として知られる「NISA(つみたてNISA)」は、先ほど解説した損益通算ができません。
そのため、NISA口座は「長期的に運用する銘柄」に利用して、数日~1年程度の「短中期でトレードする銘柄」は損益通算できるよう一般口座で運用するなど、使い分けることをおすすめします。
なお、この記事では損益通算についてフォーカスしていますが、投資信託の確定申告における全体的な解説は「投資信託の確定申告完全ガイド2019」でも取り扱っています。非課税制度であるNISAやiDeCoについて確認する場合は、こちらの記事をお読みください。
確定申告が必要な人・必要ではない人を再確認
証券口座を開設するとき「特定口座・一般口座」から利用口座を選択します。これらの種類により、確定申告が必要か不必要か分かれるものの、違いを知らないまま口座開設を完了しまうケースもあるはずです。
場合によっては「損益通算に関係なく確定申告が必要」であるため、不安な方は改めてどの口座を利用しているか確認することをおすすめします。
特定口座(源泉徴収あり)は確定申告が不要
特定口座を利用している場合、全ての取引履歴を記載する「年間取引報告書」が自動で作成されます。この報告書は確定申告のときに必須であるため、特定口座を選べば資料作成の労力削減につながります。
さらに、源泉徴収ありを選択した場合、証券会社は報告書の作成とあわせて確定申告を代行。投資家は何もすることなく、投資信託に関する一切の納税手続きが完了します。
こういった特徴があるので、基本的に確定申告を任せたい投資家は「特定口座(源泉徴収あり)」がおすすめです。そのうえで損益通算を行いたいタイミングのみ、自身で確定申告をすれば問題ありません。
特定口座(源泉徴収なし)は確定申告が必要
年間取引報告書の作成は代行してもらえるものの、確定申告は投資家が行わなければならないのが「特定口座(源泉徴収なし)」の特徴。この口座を選んでいる場合、損益通算の有無にかかわらず確定申告が必須だと覚えておきましょう。
ただし、申告対象から外れるつぎの条件を満たす場合は、確定申告が不要です。
- 給与以外の合計所得が年間20万円を下回ったとき
- 給与所得はなく運用利益が年間38万円を下回ったとき
一般口座は「年間取引報告書の作成」と確定申告が必要
一般口座を選択した場合、特定口座の魅力であった「年間取引報告書の自動作成」がなくなります。報告書の作成にくわえて、投資家が税務署への確定申告を行う必要があるため、最も労力が求められるケースです。 特定口座(源泉徴収なし)と同様に、以下のような場合は確定申告が必要ありません。
- 給与以外の合計所得が年間20万円を下回ったとき
- 給与所得はなく運用利益が年間38万円を下回ったとき
どちらの特定口座も無料で利用できることを考えれば、あえて一般口座を選ぶメリットはないため、概要を知らず選んでしまった場合は切り替えをおすすめします。
確定申告の義務を無視した場合はどうなるの?
確定申告の義務がない特定口座(源泉徴収あり)は、損益通算の申告を忘れていても罰則がありません。
しかし、特定口座(源泉徴収なし)と一般口座は、損益通算をする・しないに関係なく、確定申告が義務付けられています。これら2つの口座を利用していた場合、確定申告を忘れてしまえばどうなるのでしょうか?
この項では、確定申告の義務を無視したときに課せられる、4つのペナルティについて解説していきます。
申告義務を忘れて申告しなかった場合
申告義務を忘れて申告しなかった場合、罰則として「無申告加算税」が課せられます。納めるべき税額により、下記のようにペナルティの重さが変動します。
無申告加算税の適用基準 | |
---|---|
納付すべき税額が50万円未満 | ペナルティとして税額が15%増加 |
納付すべき税額が50万円以上 | ペナルティとして税額が20%増加 |
本来納めるべき税額より少なく申告した場合
申告内容が本来納めるべき税額より少なかった場合、罰則として「過少申告加算税」が課せられます。
過少申告加算税の適用基準 | |
---|---|
更生の予知前 | ペナルティとして税額が5%増加 |
更生の予知後 | ペナルティとして税額が10%増加 |
このとき無申告時とは異なり、ペナルティに「更生の予知」という独自の基準がもちいられます。
更生の予知とは?
「過少申告により罰則が与えられること」を知ったタイミングを起点に、更生の予知前・予知後は判断されます。
つまり、申告者が何らかの方法で「過少申告を疑われて税務調査が入る」という事態を察して、慌てて修正申告を行った場合は更生の予知後として扱われるのです。
ただし、税務署が過少申告を発見するまえに修正申告をした場合、ペナルティは免除となります。そのため申告後に誤りが分かれば、できる限り早く修正申告を行いましょう。
無申告時と過少申告時は「延滞税」が課せられる
無申告・過少申告により期限を過ぎてから修正申告を行うとき、罰則として「延滞税」が課せられます。
延滞税に明確な基準はなく「どれほど期限を超えたのか」、「西暦何年度の修正申告なのか」によりペナルティが変動することに注意。他の加算税より算出手順は複雑であるため、国税庁が用意している「延滞税の計算方法」のページからシミュレーションすることをおすすめします。
悪意を持って無申告・過少申告を行った場合
意図的な無申告・虚偽申告は脱税に分類され、罰則として「重加算税」が課せられます。
重加算税の適用基準 | |
---|---|
意図的な無申告 | ペナルティとして税額が40%増加 |
5年以内に連続した場合 | ペナルティとして税額が50%増加 |
意図的な過少申告 | ペナルティとして税額が35%増加 |
5年以内に連続した場合 | ペナルティとして税額が45%増加 |
同様の不正行為を過去5年以内に行っていたとき、上記のように10%の追加罰則が課せられます。
確定申告のペナルティとして最も重く、投資家にとっては大きな痛手となります。そのため、不正行為を疑われるような行為は避け、確定申告は慎重に収支をチェックしつつ行うのが望ましいです。
税金の仕組みを知ることが「経済的成功」への近道
今回ご紹介した損益通算のように、世の中には「知っていれば得をする情報」が数多くあります。たとえば冒頭で登場したNISA口座は、損益通算こそできないものの「投資利益が全て非課税になる」というメリットを持っています。
投資信託の運用利益は約20%課税されるので、NISAに対する知識の有無で「20%ほど得をする人」と「20%ほど損をする人」が生まれてしまうのです。
- NISAを知っている:100万円の利益を得たとき、100万円をそのまま受け取れる
- NISAを知らない:100万円の利益を得たとき、約80万円しか受け取れない
上記と同様の条件が10年間続いたとすれば、その差は200万円ほどに膨れ上がります。たった1つの知識だけで、「経済的に豊かな人」と「そうではない人」に差が生まれていくのです。
【上級編】経済の仕組みをもっと活用したい場合
損益通算やNISAのような優れた制度があっても、これらの存在を世間一般の大多数は知りません。しかし、富裕層や資産家と呼ばれる上位数%の人たちは、経済的な優位性をもたらす仕組みを当然のように知っています。
つまり、日本という豊かな国のなかで、これほど格差があるのは「持っている情報の量」に違いがあるからなのです。ただし、損益通算やNISAは有用な情報に分類されるものの、経済的成功への決定打としては力不足。
そこで最後に、税制や投資効率を味方に付けて、より経済的成功に近づく方法の1つ「不動産投資」をご紹介します。
不動産投資が経済的成功への近道である理由とは?
大家業として知られている「不動産投資」は、堅実かつ高効率な資産運用の代表格。利益がマーケットに左右される投資信託や株式投資と異なり、賃料収入という景気に影響されづらい収入基盤を手にできるため、資産拡大のプランを立てやすいのです。
また、金融機関から融資を受けることで、自己資金だけでは叶わない大規模な投資を行えます。これは、いわゆる「レバレッジ効果」というもの。レバレッジ効果により、以下のように本業収入と同等、または本業収入を超える金額を得られるのです。
- 自己資金1,000万円を年間利回り10%で運用:利益は100万円/年
- 上記に融資資金を加えて3,000万円を運用:利益は300万円/年
金利を加味しない単純計算であれば、両者には年間200万円の差が生まれます。
自己資金のみの運用では、10年経過したときに利益総額は1,000万円。一方で、融資資金を加えた運用では、10年経過した時点で利益総額が3,000万円になるので、効率良く収益物件を増やしていけるのです。
また、不動産投資は実物資産であるため、確定申告時に減価償却という仕組みによって「売上から減価償却費を差し引き」できます。さらに、事業の売上向上に使用した出費は「必要経費」として処理できるため、納める税金を抑えつつ事業に使う消耗品・資産を増やしていけるのです。
まとめ
投資信託で年間収入がマイナスになったとき、残念だったと悔やんで終わらせず「損益通算」で損失を軽減する方法をご紹介しました。
特定口座(源泉徴収あり)の利用者は、つい「確定申告は縁のないもの」と思いがちですが、資産形成を有利にする制度は全て活用できるのが望ましいです。投資家として成功を収めるためにも、誤申告にだけ注意して損益通算を行ってみてください。