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年金受給は確定申告が必要?誤解しがちな不動産所得についても解説

年金受給は確定申告が必要?誤解しがちな不動産所得についても解説

年金受給者と確定申告はあまり関係ないように思う人も多いでしょう。しかし、結論からいうと年金受給者でも確定申告が必要なときはあります。

ただし、確定申告が必要なケースはそう多くはないです。とはいえ、確定申告することで税金が還付されるケースもあるので、年金と確定申告については誰しも知っておくべきでしょう。

この記事を読めば、どのようなときに確定申告が必要か?どのようなケースで税金が還付されるか?が理解できます。そして、勘違いしやすい不動産所得と年金についても解説するので、興味のある方は確認ください。

年金受給者で確定申告が必要になるケース

冒頭のとおり、年金受給者で確定申告が必要になるケースもあります。その点に関しては以下を知っておきましょう。

  • そもそも年金は雑所得扱い
  • 確定申告が必要かどうかは控除が決め手
  • 確定申告が必要になる具体的な事例

結論からいうと、「公的年金の収入金額>公的年金等控除+基礎控除」、かつ次項で解説する確定申告不要制度を利用できないときに確定申告が必要です。

つまり、年金受給額が高くて税金が発生する人は、確定申告が必要になるということです。

そもそも年金は雑所得扱い

自営業者や会社員などが受給する「老齢基礎年金(年金の1階部分)」や、会社員や公務員が受給する「老齢厚生年金(年金の2階部分)」、そして「企業年金」などの年金は全て「雑所得」になります。

そして、年金には公的年金控除と基礎控除があるので、受給する年金額がその控除合計額を上回れば、確定申告をして納税する必要があるということです。

確定申告が必要かどうかは控除が決め手

上記のような理由から、確定申告が必要かどうかを知るため、以下2つの控除について詳しく知っておく必要があります。

  • 公的年金の所得計算方法
  • 基礎控除

公的年金の雑所得計算方法

公的年金の雑所得額の計算方法は、国税庁により以下のように定められています。

  • 65歳未満の方
公的年金等の収入金額公的年金等に係る雑所得の金額
70万円以下0円
70万円超130万円未満収入金額-70万円
130万円以上410万円未満収入金額×0.75-37万5千円
410万円以上770万円未満収入金額×0.85-78万5千円
770万円以上収入金額×0.95-155万5千円
  • 65歳以上の方
公的年金等の収入金額公的年金等に係る雑所得の金額
120万円以下0円
120万円超330万円未満収入金額-120万円
330万円以上410万円未満収入金額×0.75-37万5千円
410万円以上770万円未満収入金額×0.85-78万5千円
770万円以上収入金額×0.95-155万5千円

総じて、通常の給与所得などよりは、所得が低く計算される仕組みです。

基礎控除

基礎控除も公的年金控除と同じく国税庁にて定められています。基礎控除は一律で「38万円」です。

つまり、前項で計算した所得額に、基礎控除額である38万円をマイナスした金額がプラスであれば、税金が発生するので確定申告が必要というわけです。

確定申告が必要になる具体的な事例

では、具体的に確定申告が必要になる事例を以下に沿って解説します。

  • 雑所得税率とは?
  • 実際に税金が発生する場合

雑所得税率とは?

雑所得は総合課税になるので、ほかの所得と合算した所得金額に応じて、以下のように税率と控除額が異なります。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超~330万円以下10%97,500円
330万円を超~695万円以下20%427,500円
695万円を超~900万円以下23%636,000円
900万円を超~1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超~4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

実際に税金が発生する場合

たとえば、63歳で公的年金が年間250万円あった場合、まずは上述の計算式で「収入金額250万円×0.75-37万5千円-基礎控除38万円=雑所得112万円」を算出します。

そして、前項の税率に当てはめると、「112万円×5%=5.6万円」が確定申告して納税しなければいけない金額になります。

知っておきたい確定申告不要制度

確定申告
前項のような流れで計算をして、所得がプラスの場合は確定申告して納税しますが、確定申告不要制度を適用すれば確定申告しなくても問題ありません。

そんな確定申告不要制度について以下の点を知っておきましょう。

  • 確定申告不要制度とは?
  • 制度が利用できる2つの条件
  • チェック方法は源泉徴収票を見ること

確定申告不要制度とは?

確定申告不要制度とは、年金を受給する高齢者の負担を減らすために、一定条件を満たせば確定申告が不要になる制度です。

この制度は年金受給者にしか該当せずに、年金受給対象外(65歳未満)の自営業者などには全く関係ないので注意しましょう。

制度が利用できる2つの条件

確定申告不要制度が利用できるのは、以下2つの条件を両方満たす場合のみです。

  • 条件1:公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下かつこれらの公的年金等のすべてが源泉徴収の対象になっている
  • 条件2:公的年金等以外の所得金額の合計額が20万円以下

条件1の詳細

まず、条件1は公的年金等…つまり老齢基礎年金・老齢厚生年金・企業年金などが合計400万円以下の方が対象なので、条件を満たす人は多くないでしょう。

というのも、国民年金(老齢基礎年金)は満額で780,100円(年間)の受給、そして厚生年金の平均受給額は厚生労働省によると、以下だからです。

  • 全体平均:年額1,764,612円、月額147,051円
  • 男性平均:年額2,000,016円、月額166,668円
  • 女性平均:年額1,236,312円、月額103,026円

このように、全体平均だと2つの年金を合わせても約254万円ほどなので、400万円以上になるケースは多くないのです。

条件2の詳細

一方、条件2の「公的年金等以外の所得金額」とは、給与所得・一時所得・不動産所得・株式などの譲渡所得・その他の雑所得などが該当します。

そのため、投資をしていたり、アルバイトの収入があったりすると簡単に上限である20万円を超えてしまうので気を付けましょう。

もし、20万円を超えていた場合は、条件1を満たしていても確定申告不要制度は利用できません。

チェック方法は源泉徴収票を見ること

自分自身が確定申告不要制度の対象者かどうかを調べるためには、公的年金の源泉徴収票をチェックすると分かります。

毎年1~2月に日本年金機構などから源泉徴収票が送られてきますので、その源泉徴収票の「支払金額欄」をチェックしましょう。この金額が400万円以下であれば条件1はクリアしています。

ただし、条件に2に関しては、各自投資をしている収益などを確認しなければいけません。

知っておきたい所得税の還付ルール6つ

前項までで、確定申告しなければいけないケース、および確定申告が不要になるケースが分かったと思います。次に、所得税が還付される以下6つのケースを確認しておきましょう。

1.医療費控除
2.社会保険料控除
3.住宅ローン控除
4.寄付金控除
5.雑損控除
6.人的控除

源泉徴収票の「源泉徴収額」がプラスであれば、年金をもらう前に税金が天引きされているということです。そのケースは、以下によって支払い過ぎた税金が返還されることがあります。

1.医療費控除

医療費控除は、年金受給者に限った話ではなく該当者は全員適用を受けられます。一般的に医療費控除が受けられるのは、医療費に関して自己負担額が10万円以上発生したときです。

厳密にいうと、所得が200万円以下の場合は所得の5%以上が対象なので、年金所得が150万円の場合は医療費が7.5万円以上であれば対象になります。

その際は医療費が所得から控除されるので、控除された分が還付されるということです。仮に、控除対象になりそうであれば、支払った領収書を保存しておきましょう。

2.社会保険料控除

会社員の場合は、社会保険料控除・生命保険料控除などで税金が還付される場合は、会社が年末調整をしてくれます。

ただし、年金を受給者している場合には自ら確定申告をして、還付請求しなければいけません。

そのため、年金から特別徴収されている以下保険料以外に控除できる保険料(生命保険や地震保険など)があれば、確定申告することで支払い過ぎた税金があれば還付されます。

  • 国民健康保険料
  • 介護保険料
  • 後期高齢者医療保険料

3.住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、新築住宅の購入をするときなど、住宅ローンを組んだときに利用できる制度です。簡単にいうと、「年末残高×1%」が所得税・住民税から還付されます。

こちらも、会社員であれば初年度手続きし、それ以降は必要書類(ローン償還表など)を提出するだけで会社で年末調整してくれます。

しかし、年金受給者になると自ら確定申告しないと還付されないので、その点は認識しておきましょう。住宅ローン控除の詳細は国土交通省のホームページで確認ください。

4.寄付金控除

以下のような寄付金については確定申告することで寄付金控除を受けることが可能です。

  • 国への寄付金
  • 都道府県や市区町村への寄付金(ふるさと納税)
  • 社団法人などへの寄付金
  • 特定の政治献金

また、寄付金控除できる金額は、以下2つの金額のどちらか低い方から2千円を引いた金額です。

  • その年に支出した特定寄附金の額の合計額
  • その年の総所得金額(年金や株の売買益なども含む)等の40%相当額

5.雑損控除

雑損控除とは、災害や盗難などによって、損害を受けた金額になります。控除できる金額は、以下2つの多い方の金額です。

  • 差引損失額-総所得金額等×10%
  • 差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円

6.人的控除

人的控除とは、以下のような控除に該当する場合です。

  • 障害者控除
  • 寡婦・寡夫控除
  • 配偶者控除
  • 扶養者控除

源泉徴収に記載がある「本人」や「控除対象配偶者の有無」「控除対象不用親族数の数」など、追加や変更がある場合は確定申告をして控除額をきちんと申告しましょう。

不動産投資で年金が減額されるのは嘘

不動産投資
さいごに、不動産投資と年金について解説していきます。もしかしたら、不動産投資をすると年金が減額される…と聞いたことがある人もいるかもしれません。

しかし、結論からいうとその情報は間違った情報であり、不動産投資と年金は何の関係もありません。その点に関しては以下を知っておきましょう。

  • 不動産投資の所得とは?
  • 不動産所得と年金が関係ない理由
  • 不動産投資が節税につながる理由

不動産投資の所得とは?

そもそも不動産投資の所得(不動産所得)は、「年間家賃収入-年間経費」で算出されます。そして、不動産所得は総合課税なので、雑所得などと合算されます。

年金は雑所得となるので、年金受給者で不動産投資をしている人は、「不動産所得+雑所得(年金受給額)」を合算して考えるというわけです。

不動産所得と年金が関係ない理由

ただ、年金(雑所得)と不動産所得は合算しますが、上述のように年金受給額と不動産所得は関係ありません。

というのも、そもそも、「不動産投資をすると年金が減額される…」という勘違いは、老齢厚生年金が関係します。

老齢厚生年金の受給額は一律ではなく、「標準報酬額」の増減によって変わります。

しかし、不動産所得は「標準報酬額」に含まれないため、不動産所得が高くなっても年金受給額に変化はないということです。

不動産所得が高ければ税金は上がる

不動産所得をいくらもらおうが年金受給額に変わりはありませんが、所得が高いほど税金は高くなります。というのも、上述したように不動産所得は総合課税だからです。

つまり、「年金(雑所得)+不動産所得」がその年の所得になるため、その金額に応じて所得税率が適用されます。

不動産投資が節税につながる理由

このように、不動産投資は年金受給額に影響はしない…しかし所得税額が上昇する可能性はあります。ただし、そもそも不動産投資は以下の理由で節税効果が高い投資です。

  • 経費項目が多い
  • 減価償却費用が高額になる

経費項目が多い

不動産投資には以下を経費計上することができます。

  • ローン利息
  • 固定資産税・都市計画税
  • 退去時の原状回復費用
  • 管理委託手数料
  • 火災保険料や地震保険料
  • 管理費・修繕積立金(区分所有)
  • 減価償却費用
  • 共用部の修繕費用(一棟投資)
  • 税理士への報酬(確定申告への依頼時)
  • その他経費(物件運営のための交通費など)

上述したように、不動産所得の計算式は「年間家賃収入-年間経費」なので、経費額が高額なほど所得額も下げることができ節税につながります。

減価償却費用が高額になる

前項で紹介した経費のうち、特に減価償却費用は高額になりやすいです。減価償却費用は、「建物購入代金×償却率」で計算され、償却率は以下の通りです。

  • RC(鉄筋コンクリート造):償却率0.022(耐用年数47年)
  • 重量鉄骨:償却率0.030(耐用年数34年)
  • 木造:償却率0.046(耐用年数22年)

たとえば、建物価格2,000万円のマンションを取得すれば、「2,000万円×0.046=92万円」もの減価償却費用になります。

このように、不動産投資は年金受給額に影響しない上に、そもそも節税効果の高い投資なのです。

納める税金がゼロになることもある

仮に、基礎控除を加味した「年金受給による所得」が50万円だったとします。通常は、この50万円(雑所得)に税金がかかるので、確定申告をして納税しなければいけません。

しかし、仮に減価償却費用が高額になり、不動産所得がマイナス50万円になったとします。その場合、雑所得と減価償却費用は相殺され、所得がゼロになり非課税になります。

節税効果の高い不動産投資だと、このようなメリットもあるのです。

まとめ

上述したように、年金受給者でも所得金額によっては確定申告が必要になります。ただし、確定申告不要制度に該当するかどうかは確認しておきましょう。

また、不動産所得があると老齢厚生年金が減額になる…と勘違いされる方もいますが、その情報は間違った情報なので気にしなくて良いです。

さらに、不動産投資は節税効果が高く、年金(雑所得)と合算するときにはメリットもあるので、その点も知っておくと良いでしょう。

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