投資信託の利回りの仕組みとは?株式・不動産投資と徹底比較!
「初心者向けの投資」を調べていくと、投資信託を紹介している雑誌や書籍、ネットの記事は多いです。確かに、投資信託はプロに自分のお金の運用を任せるので、初心者でもハードルの低い投資といえます。
ただ、ほかの代表的な投資である株式投資や不動産投資と比べて、利回りはどのくらい違うのか?収益はどのくらい差があるのか?がイマイチ分からないという方も多いでしょう。
そこで今回は、投資信託・株式投資・不動産投資の利回りを比較します。また、その利回りから計算する収益額も比較します。そのため、この記事を読めば各投資の利回りが分かり、実際に投資したときの収益がどのくらいかも理解できるはずです。
投資信託・株式・不動産投資の仕組み
まずは投資信託・株式投資・不動産投資の仕組みを解説していきます。つまり、それぞれどのような方法で収益を上げるか?ということです。
投資信託の仕組み
投資信託は、資産運用をプロ集団に任せる投資です。要は、自分のお金を運用してくれる機関(ファンドなど)を選定し、その機関にお金を預けて運用を任せます。
そして、投資先の機関がその資金を利用して金融商品を取得し、その収益の一部を分配金として受け取ることで投資家は収益を得るという仕組みです。
投資信託の種類とは?
投資信託は多くの種類がありますが、たとえば以下のような商品があります。
- 明治安田米中小型成長株ファンド
- 三菱UFJNASDQオープンB
- 損保JPNグローバルリート毎月
上記はそれぞれ、明治安田生命、三菱UFJ、損保ジャパングループが信託先となっています。これらの投資信託を選び、1口単位で資金を投下することで自分の資金の運用を任せます。
そして、それぞれが株や債券、REITなどで資産運用して、その運用状況によって変わる分配金を投資家は定期的に受け取ることで収益を上げます。また、投資信託を解約することで、それまでの運用成績に応じて投資金額が返金されます。ただし、投資成績によって元本割れするケースもあるので注意が必要です。
投資信託を取得する方法
投資信託を取得する方法は、大きく分けて以下2通りあります。
- 証券会社を通じて取得する
- 個別に運用元から取得する
証券会社を通じて取得できる投資信託の場合、証券会社に口座を持っていれば取得することは可能です。証券会社を通じて取得できない場合は、運用元に口座を作成し取得するという流れになります。
株式投資の仕組み
株式投資は短期・中期・長期と、投資期間によって特徴が異なります。前項で解説した投資信託は、基本的に分配金をもらうことで収益を得る投資なので、株式投資でいえば長期の株式投資が近いでしょう。
また、長期といっても期間に定義はありませんが、ここでいう長期は1年以上~数年程度の期間を指しています。
基本的には配当益がメイン
長期の株式投資の場合は、基本的な収益は配当益になります。配当益とは、保有している株を発行している企業が、自社の利益を株主へ還元することです。年に2回配当にしている企業が多いですが、配当金額・配当頻度は企業によっても異なりますし、業績によっても異なります。
また、株式投資は株価が安いときに株を取得して、株価が上昇したときに株を売却することで利益を得ることも可能です。長期の場合はメインを配当収入に置きますが、株の売買益もサブ的な収益としては考えます。
株式投資の始め方
株式投資を始める流れは以下の通りです。
- 証券会社で口座を開設
- 口座に現金を入金
- 証券口座を通じて株を取得
上記のように非常に簡単に始めることが可能です。上述した「証券会社を通して購入できる投資信託」も同じ流れで取得することができます。
不動産投資の仕組み
不動産投資の仕組みは、賃貸物件を購入し、そこに客付けをして家賃収入を得るという流れです。賃貸物件には以下のような種類があります。
- 区分(一室)マンション
- 区分アパート
- 一棟アパート
- 一棟マンション
- 戸建
メジャーな不動産投資は区分マンション投資とアパート一棟投資でしょう。いずれにしろ、不動産投資は家賃収入がメインになります。不動産を売買することで利益を得ることもできますが、不動産の売買は時間と費用がかかるので、基本的に売買益は見込みません。
利回りについて正しい知識を得る
前項で、投資信託・株式投資・不動産投資の概要と収益の上げ方が分かったと思います。次に、そもそも利回りとは何か?ついて解説します。
実は、利回りは1種類ではない上に、投資の種類によって考え方が少々違います。この点をしっかり理解しないと、正確に利回りを比較することができません。
投資信託の利回り計算方法
投資信託の利回りは、「(分配金-経費)÷投資金額」で計算されます。要は、投資信託に投下した資金を何年で回収できるのか?という指標です。投資信託の経費とは以下の2つがあります。
- 手数料
- 信託報酬
投資信託は、「利回り」が商品ごとに提示されています。もちろん、その利回りは予想であり確定ではありません。ただ、実績に応じた利回りではあるので、投資家はその数値を見てどの投資信託に資金を投下するか判断します。
手数料
投資信託は、取得時に手数料がかかってきます。手数料率は0.01%~3%になり、かなりの金額差があります。基本的には、証券会社を通じて取得するケースの方が安価です。信託先から直接取得する場合だと、信託先が口座管理などをする必要があるので手数料が高くなりがちです。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託を保有している間、信託先に「運用してもらっている」報酬として支払うお金です。信託報酬の金額は投資信託によって異なりますが、一般的には総資産に対して0.5%~2%が毎年かかってきます。
株式投資の利回り計算方法
株式投資の利回りの計算は「(配当収入-経費)÷株価」になります。株式投資の経費は以下です。
- 手数料
- 金利
株式投資の配当は、過去の配当金額の実績、もしくは企業が発表している場合は予想配当金額で考えます。
手数料
株式投資の手数料は、安い証券会社だと売買金額の0.01%ほどです。手数料は証券会社によって異なりますが、どこの証券会社もそれほど高い手数料ではありません。ただし、買うときも売るときも手数料がかかるので、売買回数が多くなるほど手数料が積み重なっていきます。
とはいえ、長期の株式投資は保有するのが前提なので、売買をする機会は少なく、手数料はあまり気にしなくて良いでしょう。
金利
金利とは、証券会社にお金を借りて取引をする「信用取引」という手法を利用したときにかかる費用です。金利は証券会社によって異なりますが、仮に3%の金利設定をしている証券会社で信用取引を行うと、投下した資金に年利3%の費用が発生します。
ただ、信用取引は長期の株式投資では金利がかかる上、配当金の受け取り方が異なるので利用することはほぼないです。そのため、金利については参考程度に理解しておきましょう。
不動産投資の利回り計算方法
不動産投資の利回りは以下3種類あります。
- 表面利回り:年間家賃収入÷物件取得価格
- 実質利回り:(年間家賃収入-年間経費)÷物件取得価格
- 返済後利回り:(年間家賃収入-年間経費-年間ローン支払い額)÷物件取得価格
年間家賃収入額は、不動産会社が提示する予想家賃から算出します。その予想家賃は、周辺の家賃相場から独自に算出するケースが多いです。また、不動産投資は経費がほかの投資よりも多いので、計算式は少々複雑になります。
表面利回りについて
表面利回りは、投資物件を探すときの広告に記載されている利回りです。ネットなどで投資物件を検索したときに提示されている利回りは、この表面利回りになります。
ただ、表面利回りは経費(支出)を加味していないため、上述した投資信託・株式投資の利回りとは異なります。そのため、今回の比較では表面利回りは採用しませんので、実際に投資商品を比べるときも、表面利回りをピックアップしないように気を付けましょう。
実質利回りについて
実質利回りは、表面利回りに以下のような物件運営に関する経費を加味します。
- 固定資産税・都市計画税
- 管理会社への手数料
- 管理費用・修繕費用
- 賃借人が退去するときの補修費用
上記の費用を加味するのでは、表面利回りよりは現実的な数値になるといえます。しかし、経費にはローン支払い額が含まれていないので、上述した投資信託・株式投資の利回りとは違う定義になってしまいます。
ただ、投資ごとの利回りを比較するときは、実質利回りで比較しがちですので気を付けましょう。不動産投資の場合はローン支払い額を含めないと、上述した投資信託・株式投資の利回りと同じ条件にはなりません。
返済後利回りについて
返済後利回りはローン支払い額も含めるので、ほかの2つの投資の利回りと条件は同じです。要は、「年間を通じて実際に手元に残る利益」をベースに利回りを考えているということです。そのため、次項の利回り比較は返済後利回りを比較しています。
不動産投資における表面利回り・実質利回り・返済後利回りの概要を知らないと、別の指標で比較することになり、本来の収益性が見えてこないので注意しましょう。
投資信託・株式・不動産投資の利回り比較
投資信託・株式投資・不動産投資の利回りを比較すると以下の通りです。
投資信託 | 株式投資 | 不動産投資 |
---|---|---|
2%~16% | 2%前後 | 2.5%~3% |
投資信託の利回りは、マネックス証券で取引可能な投資信託が基になっています。株式投資は、不動産証券化協会※を基に、東証一部企業に限定した利回り平均です。
不動産投資に関してはデータがないので、一般的な不動産投資の利回りを提示しています。上述したように、上記は返済後利回りです。返済後利回りが上記であれば、表面利回りは10%程度、実質利回りは5%~7%程度でしょう。
投資信託は商品によって利回りが大きく異なる
投資信託は、商品によって利回りが全然違います。これは、投資信託の商品ごとにリスクとリターンが異なるからです。つまり、信託先が集めた資金をどのような金融商品に投下するかで、リスクとリターンが変わります。以下がリスクの高い順番に並べた投資信託の運用例です。
- 新興国の債券や新興国の為替をメインに運用
- 先進国の株式投資や為替をメインに運用
- 日本の変動の大きい株式投資と債券を組み合わせて運用
- 日経平均などに概ね連動している商品をメインに運用
あとは、中小規模の成長産業の株式投資だったり、アメリカのバイオ系の株だったりもハイリスク・ハイリターンの代表格といえます。
株式投資は企業業績と方針による
株式投資の配当益は、前項で提示したようにあまり高いものではありません。さらに、企業が利益を出したとしても、以下のような状況であれば配当益は下がります。
- 企業が内部留保(≒貯金)する
- 利益を設備投資などに回す
特に、設備投資を繰り返す企業や、積極的にM&Aを仕掛ける企業は利回り水準は低いです。一方、5%以上の配当を出している企業もあるので、長期の株式投資ではそのような銘柄が中心になるでしょう。
不動産投資は物件によって異なる
不動産投資の利回りも物件やエリアによって異なります。一般的に都心の方が利回りは低くなり、地方の方が利回りは高くなる傾向があります。なぜなら、都心の方が物件価格は高く、その物件価格の差ほどは家賃の差がないからです。
しかし、都心の方が人口も多く賃貸需要も高いので、空室になりにくく、家賃下落もしにくいというメリットがあります。いずれにしろ、表面利回りに惑わされず、自分なりに返済後利回りを算出して比較することが重要です。
実際に収益のシミュレーションをしてみる
では、前項を基にして、実際の収益をシミュレーションしてみます。ただ、不動産投資だけはレバレッジ効果をかけられるので、まずレバレッジ効果を解説した後に、それを踏まえた収益額を見ていきましょう。
レバレッジ効果について知る
レバレッジ効果とは、小さい資金で大きな資産を取得することであり、不動産投資でいうと融資を利用することです。融資を利用できれば、自己資金の10倍ほどの資産を取得することも可能です。
上述した信用取引も自己資金の3倍程度まで取引できるので、レバレッジ効果を利用した投資ということができます。
投資信託も「上場投資信託」といわれる一部の投資信託では、信用取引を利用することは可能です。しかし、大半の投資信託は信用取引が利用できないので、レバレッジ効果は利用できないと考えて良いでしょう。
レバレッジ効果を加味した収益額の違い
仮に、500万円の資金で投資信託・株式投資・不動産投資の収益額を比較してみます。利回りは、上述した表を参考に、投資信託は8%、株式投資は2%、不動産投資は2.7%とします。また、不動産投資はレバレッジ効果を利用して、5,000万円の物件を取得した前提です。
- 投資信託:500万円×8%=40万円
- 株式投資:500万円×2%=10万円
- 不動産投資:5,000万円×2.7%=135万円
このように不動産投資の収益は断トツで高額になります。投資信託の利回りは投資の中では高い部類ですが、やはりレバレッジ効果の力が大きいです。
まとめ
このように、投資信託・株式投資・不動産投資の利回りはそれぞれ異なります。まずは、それぞれの投資における利回りの概要や計算式を理解しておきましょう。その上で、上述した内容を参考に、それぞれの利回りを比較することが大切です。
資産を作るという観点からは、レバレッジ効果を利用できる不動産投資が向いているでしょう。ただ、融資を受けたくない場合や、運用を全て任せたい場合は投資信託が良いです。