配分のベストバランスは?貯金と投資の理想的な割合ガイド
将来のための資産運用を考えたときに、まず気になるのが、貯金と投資の割合です。
手持ちの現金をすべて投資に回してしまうと万が一の時に困ってしまいますし、少なすぎると得られるリターンが小さくなってしまいます。
生活の質を損なわない範囲で将来的な資産形成を成し遂げるには、相応の知識が必要。そこでこのページでは、投資と貯金の割合についての基本的な情報をまとめてみました。
日本は投資より貯金の割合の方が高い
投資と貯金の割合を考えたとき、まず参考にしたくなるのが、周囲の人の意見です。
しかしこれには落とし穴があるため、要注意。
じつは、日本人の投資比率は、欧米の先進諸国と比べても低い水準にあります。社会制度が違うため一概には言えませんが、貯蓄額の推移にも明らかな差があり、資産運用の普及度がそこに影響を及ぼしている可能性は無視できません。
日本の平均で投資割合を考えてしまうと、***本来得られたはずのリターンが得られない***かもしれないのです。
貯蓄と投資の割合を決めるには、自身のライフプランとしっかり向き合い、どの商材にいくら投資して何年運用すればいいのか、複数のシミュレーションを検討する必要があります。
投資比率が低いことの影響
投資比率が低いとどのような影響があるのか、金融庁が発表している金融レポートから見ていきましょう。
<各国の金融資産資産構成比>
- | 米国 | 英国 | 日本 |
---|---|---|---|
株式・投信 | 29.8%(45.4%) | 11.6%(35.7%) | 14.9%(18.8%) |
保険・年金 | 31.4% | 53.8% | 29.3% |
現金・預金 | 13.7% | 24.4% | 51.9% |
その他 | 25.8% | 5.2% | 3.9% |
※15年12月末の為替レートで換算 ※株式・投信のカッコ内は、保険等の間接保有を含んだ場合の割合
<1995年から2015年までの家計金融資産の推移>
- | 米国 | 英国 | 日本 |
---|---|---|---|
家計金融資産の推移 | 2.32倍 | 1.63倍 | 1.15倍 |
運用リターンによる家計金融資産の推移 | 3.11倍 | 2.27倍 | 1.47倍 |
上記は、平成27年に金融庁が発表したレポートのデータです。米国、英国と比べて、貯金の割合が明らかに高いことがわかります。
また、1995年から2015年までの家計金融資産の伸び率を見てみると、日本は英米に比べて低い数値となっています。
金融庁はこの結果から、「家計金融資産の構成の違いが、過去における我が国の家計金融資産の伸びが英米に比べて低いことの一因である」と分析。
日本の資本市場を活性化し、***世界経済の成長の恩恵を受けることが急務***であると論じています。
金融庁も投資促進を課題としている
平成29年10月にまとめられた、「平成28事務年度 金融レポート」には、以下のような記述があります。
・米国家計もかつては今の我が国の家計と同程度しか株式・投資信託を保有していなかったが、401(k)やIRAの普及が資産の分散 を後押し (注)401(k)は企業型確定拠出年金、IRAは個人向け確定拠出年金
・ 我が国においても、家計の安定的な資産形成に向け、長期・積立・分散投資の普及・定着を促していく必要
日本では「投資=リスクの高いもの」というようなイメージが先行しています。
また、前述の金融レポートには、日本国民の7割が投資に関する教育を受けておらず、さらにその内の過半数が「投資にかんする教育は不要」と考えているという統計データも紹介されています。
確かに、短期的な投資はギャンブルとほとんど変わりません。しかし中・長期的な目線で実践すれば、***決してリスクの高いものではない***のです。むしろ、先行き不透明な社会保障制度を補う、有効な手段となり得ます。
もちろん、持てる資産すべてを投じるのはリスクがありますが、適切な割合で投資をしていけば、将来的には高い確率で資産を増やすことができるでしょう。
投資が普及した場合どうなるか
投資が普及した場合、社会にどのような影響があるのでしょうか。
投資商材にはさまざまな種類がありますが、ほとんどの場合、最終的には何かしらの事業にお金が流れていきます。
貯金で眠っていたお金を元手に、国や地方自治体、企業が事業を行い、そこで得たリターンが投資家に還元される、という流れが期待できます。
企業が業績を上げれば、給料も上がり、日本経済にも活気が出てくるでしょう。
現実はそこまで単純ではありませんが、多くの場合、中・長期的な投資は個人にも社会にもポジティブな影響を与えます。
見落としがちな貯金と投資の違い
資産運用を考える前に、貯金と投資のメリット・デメリットについて理解しておきましょう。
貯金
貯金とは、その名の通りお金を貯めること。サービスや労働の対価として受け取った賃金を、自宅の然るべき場所に保管したり、金融機関などに預けておくことを指します。
貯金のメリットは、お金が減らないことです。自宅で保管するとなると紛失のリスクや管理の手間が発生しますが、預金であればそうした心配も不要。
また、もし預金している金融機関が倒産しても、1,000万円までならお金は返ってきます。
一方のデメリットは、貯めた金額以上にお金が増えないということ。預金の場合は金利が得られますが、低金利時代の現代においては、ゼロに等しい金額です。
注意したいのは、物価が上昇した場合に、相対的にお金の価値が減ってしまうという点です。
たとえばそれまで10円だった物の価値が100円になったら、お金の価値は10分の1に下がってしまいます。これは極端な例ですが、物やお金の価値が一定ではない、というのは間違いのないことです。
10年、20年と預金している内に、相対的に損をしてしまう可能性も十分考えられます。
投資
投資とは、将来的にリターンの見込める何かに対して、手持ちの資産を投じることです。
投資のメリットは、お金が増えること。
もちろん、短期的かつ劇的に資産を増やすことは、ほとんどの場合不可能です。しかし、中・長期的に、手持ちのお金をコツコツ金融商材と交換していけば、貯金しておくよりもずっと多くの資産を築ける可能性があります。
前述の通り、物やお金の価値は、経済に連動して上下します。投資商材も例外ではありません。
価値が上がるか下がるかは投資商材ごとに違いますが、そうした特性を利用して分散投資すれば、ある時はAで利益を出し、またある時はBで利益を出す、ということができます。
価値の上下を見越して、中・長期目線で運用することで、リスクを抑えながら資産を増やすことができるわけです。
もちろん、デメリットもあります。
投資した分を失う可能性がゼロではないこと。また、緊急でお金が欲しくなった場合に、手持ちの金融資産の価値が上昇しているとは限らないことです。
どちらがいい、ではなくバランスが大切
投資と貯金、どちらを重視すべきかという問題には答えがありません。
現在のところ、貯金するより投資をする方が、統計的にはリターンが大きいという結果が出ています。
しかし、それが今後も通じるかどうかは誰にもわかりません。
大切なのは、幅広い可能性を吟味し、自身の***人生を最大限豊かにできる選択肢を選ぶ***ことです。
極論に走らず、まずライフプランを組み立てたうえで、貯金と投資の最適な割合を決定されることをおすすめします。
資産配分の基本知識
いくらを貯金し、いくらを投資に回すのか。答えは人により違います。
ここでは、そうした答えを探すための一助となる考え方を紹介してみたいと思います。
資産配分とは
資産配分とは、手持ちのお金を現金と投資に回す分に分け、さらにどの投資商材にいくらの資産を割り振るかを決定することです。
将来的な贅沢のために今の生活を犠牲にする、という考え方はもちろんあっていいと思いますが、できれば一貫して豊かな生活を送りたいですよね。
そのためには、実際に投資を始める前に資産配分についてしっかり考えておき、定期的に調整を行うという方法が効果的です。
ポートフォリオについて
資産配分をする上でのキーワードに、ポートフォリオというものがあります。
ポートフォリオとは、紙入れを意味するイタリア語。投資では、金融資産をどういう割合で持っているのか、というニュアンスで使われます。
ポートフォリオの構成要素としては、主に以下のような金融資産が挙げられます。
現金
投資商材は、いくら高い価値があってもすぐには現金にできません。そのため、何らかの非常事態が発生した場合の備えとして、一定額の現金を手元に残しておくのがセオリーです。
いくらを備えとするかはケースバイケースですが、「家族が半年間、無収入で暮らせる分」というのが大まかな目安とされています。
ちなみに、何らかの金融危機が起こった際、目ぼしい金融商品が値下がったところで購入するために、戦略的に多めに現金を蓄えるケースもあります。
債券
債券とは、一定期間換金できない代わりに、利息を受け取ることができる証券。国や地方自治体、一般企業などが発行しています。
特徴は、元本が保証されている(支払った分は必ず返ってくる)という点。社会的に信用のある組織が資金集めを目的に発行するため、投資した分が無駄になる心配がありません。
このことから、金融市場の先行きが不透明な場合に、資金の避難先としても活用されています。
ただ、リスクが低い分、金利も相応。また、個人で購入できる債券が多くない、というのが難点です。
株式
株式は、株式会社が発行する証券。単に株式という場合は、株式市場に上場している銘柄を指すことがほとんどです。
株式市場は平日の午前9時~11時半、午後12時半~15時まで開場しており、その間に証券会社を通して株の売買を行い、差益を得ます。
株主への配当(持ち株数に応じた現金)や優待特典が付帯している銘柄であれば、単に保有し続けるだけで一定のリターンが見込めます。
購入した株式を即日~数日で売買して利ザヤを稼ぐスタイルが有名ですが、中・長期的な資産形成を目的とするなら、成長が見込める大手企業の株式を、複数回に分けて定期的に購入していくのがおすすめです。
投資信託
投資信託は、投資のプロフェッショナルが一般の投資家からお金を集め、それを運用することで得た利益を再び投資家に還元する、という仕組みの投資商材です。
細々した手数料が掛かる反面、ほとんど手間なく、預金するよりも多くのリターンが見込めるのがメリット。
積立タイプの案件も多く、資産運用の初心者に向いた投資商材として知られています。
不動産投資
文字通り、不動産を貸し出すことで長期的に収入を得ていく投資です。
相応の元手が必要、と思われがちですが、500万円前後の貯蓄と社会的信用(相応の地位や職業)があれば、全額ローンで始めることも可能。
家賃の一部を返済に充てながら、残った元手で別の資産運用を行うことで、効率的に資産を増やすことができます。
また、ローンを組む際は団体信用生命保険へ加入する義務があるため、もしもの時に家族への資産を残せる、というのもメリット。
物件や信頼できる不動産会社を見つけるのに相応の手間は掛かりますが、ある程度資産に余裕があるなら、ポートフォリオを下支えする上でぜひ活用したい投資先と言えます。
不動産投資信託
投資信託の不動産版です。REIT(リート)とも呼ばれます。
投資信託会社が投資家からお金を集め、不動産を購入。その不動産を運用して得た家賃や売却益などが、投資家に還元されます。
不動産投資を行う場合、仮に全額ローンを組むつもりであっても、審査に通るためのまとまった資産が必要です。
その点、不動産投資信託であれば、小口から投資をすることが可能。証券取引所で売買できるため、現金化の手間もほとんど掛かりません。
生命保険
生命保険は、住宅の次に高価な買い物とよく言われます。
万が一の備えとはいえ、長期的に支払っていくものですから、定期的に見直しをして無駄な保障はとことんカットしたいところです。
また、中には掛け捨てではなく、貯蓄型の、投資商材に近い性質を持った保険商品も存在します。掛け捨て型を契約している場合は、自身が許容できるリスクを鑑みつつ、貯蓄型への切り替えを検討されてみるのもよいでしょう。
貯金と投資の兼ね合い
繰り返しになりますが、貯金と投資の理想的な割合は、ケースバイケースによって違います。
ただ、どのケースでも重要なのは、負担のない範囲で長く続けられる形に割り振る、ということ。資産運用で得られるリターンは、「元手×利回り×時間」です。
ローリスクであることを重視して投資商材を選ぶ場合、期待できる利回りに大きく差は出ません。元手に関しては努力次第で大きくできますが、現在の生活を犠牲にしてしまうのは本末転倒です。
それよりも負担のない範囲の元手に留めて、時間を掛けて運用していった方が、最終的なリターンは大きくなるでしょう。
また、運用する時間が長くなればなるほど、複利(運用で得た利益を使わず、さらに運用することで得られる利益)のメリットも大きくなります。
貯金と投資の割合を考えるときは、自身の状況を振り返って、***無理なく長く続けられる配分***を検討されてみることをおすすめします。
年齢による資産配分の変化
繰り返しになりますが、投資成功のカギは、時間にあります。なぜなら、時間が損失を補ってくれる側面があるからです。
たとえば株式投資。仮に大きく株価が下落しても、コツコツ買い増していけば、株単位の損失は小さくなっていきます。また、長期的に見れば、よほどの銘柄でない限り上昇するタイミングはやってきます。
そうした機を逃さず売却できれば、下落したタイミングで買い増していた分、期待できる利益も大きくなるでしょう。
無理のない範囲で、という前提ですが、若いうちにはリスク覚悟でリターンの見込める商材に投資し、年齢を追うごとに築いた資産を守る方向に配分を調整していく、という形が、長期的な資産運用の目的に適っています。
あくまで目安ですが、年齢別の資産配分のポイントを以下にまとめてみました。
20・30代
金融商材には無数の種類がありますが、大きく分ければ以下の3系統に分類できます。
- リスクは大きいが、相応のリターンが見込めるもの。
- 時間を掛けて長期的に利益を得ていくもの。
- リターンは小さいが、資産を減らすリスクが小さいもの。
現役期間の長い20代・30代であれば、リスク覚悟で株式投資等に多めに資産を割り振るのがおすすめです。
より多くのリターンを望み、経済や金融に関して勉強する覚悟があるなら、外国株式を中心に資産配分を考えるのも手。
また、資産に余裕があるなら、不動産投資もぜひ検討しておきたいところ。ローンが組みやすいうちに運用を始め、退職するタイミングで返済が終われば、老後資金の強力な元手になります。
ただ、不動産投資でローンを組んでしまうと、住宅ローンが受けづらくなります。住宅購入の予定があるなら、賃貸併用住宅を考えるか、別の選択肢を慎重に検討されてみるとよいでしょう。
お子さんがいる場合は、積極的にリスクを取らず、貯蓄型の保険や債券、投資信託など、堅実な運用方法をベースにポートフォリオを組まれることをおすすめします。
40代・50代
40代・50代は、高リスクの投資商材に手を出すのは控え、ある程度まとまったお金をローリスク、ミドルリスクの商材で運用していくのがよいでしょう。
利回りが小さくなっても、その分動かすお金が大きくなれば、リターンはさほど変わりません。
10年先、20年先を見越して、安定的に収益が見込める商材に投資されることをおすすめします。
もちろん、長年にわたり投資を続けていて、自身の腕に自信があれば、積極的にリスクを取るのもよいでしょう。
60代以上
築いた資産を減らさない、守りの投資がおすすめです。
たとえば債券や定期預金などをベースに資産配分を検討されてみるとよいでしょう。
もしまとまった資産があるなら、高配当や優待が充実した株式銘柄を購入してみるのも手。うまく組み合わせれば、優待だけで生活を賄うことができるかもしれませんし、場合によっては株価が上昇して、さらに資産が増える可能性もあります。
ほか、不動産投資を検討されてみるのもよいでしょう。継続的に家賃収入を得られるだけでなく、相続税対策として活用することもできます。
投資と貯金のバランスの取り方
投資と貯金をどう配分するか、具体的な考え方を解説します。
現状把握と未来予測
まず大切なのが、現状を把握すること。
手持ちの資産はいくらで、毎月入ってくるお金、出ていくお金はいくらなのか。少なくともこの3つの金額は押さえておきましょう。
次に、月単位を年単位に拡大します。もちろん、大雑把な目安で構いません。
何歳のときにどんなイベントがあり、いくらの出費をするのかを書き出していきます。要は、***ライフプランを組み立てる***わけです。
その際、出ていくお金だけでなく、入ってくるお金についても予測してみてください。
この歳にはどういう役職についていて、いくらの給料をもらっているのか。ボーナスも含めて数字に起こしましょう。
いつ死ぬのか、までは考えなくてもよいですか、早いうちから見通しを立てておいた方が、将来的に資産配分を見直す上で役に立ちます。
目標の設定
手持ちのお金と出ていくお金、入ってくるお金を把握したら、次は資産運用の目標金額と、目標達成までの期間を考えます。
大きな目標を1つ定めるのもよいですが、できればライフイベントごとに細かく目標を立てていき、そこから最終的な目標を導くのがおすすめです。
資産配分
目標を定めたら、次は手持ちの資産と今後得られる収入を、どういう割合で資産運用に回していくのか検討してみましょう。
継続的な出費と、万が一に備えた現金(生活費の半年分が目安)を別に配分を考えると、投資に回す分をスムーズに割り出せると思います。
その上で、各投資商材のリスク・リターンのバランスと目標金額を照らし合わせてみてください。
ある程度投資に関する知識が必要ですが、昨今は資産運用の入門書が溢れていますから、ローリスク・ミドルリスクで始められる投資の概要を把握するのはさほど難しくないはずです。
無理のない範囲で目標を達成できる目途が立ったら、順次手持ちの現金を投資商材に換えていきましょう。
番外・振り返りの大切さ
資産配分は、一度行ったらそれでおしまい、というものではありません。
定期的に見直しを行い、得られている利益と目標値との差を見比べましょう。もし損失が発生していて、目標達成までにその損失が回復しない見込みであるなら、早めに損失を確定して***別の投資商材に資産を割り振る***必要があります。
放置しているだけでお金が増える投資商材もありますが、ほとんどの投資商材は、利益を出すのに相応の手間が掛かります。
将来的の豊かな生活のためにも、そうした手間を厭わず、丁寧に資産運用を行う心構えが大切です。
初心者のための投資ガイド
続いて、投資についての基本的な知識について解説します。
投資の定義
投資とは、将来的に何らかの利益を期待して、手持ちの現金を商品やサービスと交換することです。
ギャンブルのようなイメージを持っている人も少なくありませんし、実際、一部の投資商材にはそうした側面もあります。
しかし、投資の本質はギャンブルではありません。投資は、世の中に溢れてるさまざまな事業と個人を繋ぐ架け橋のようなものです。
現在、世の中で当たり前に利用されているさまざまな商品・サービスは、最初にそれらの価値を見出し、投資した人がいたからこそ生まれたものです。
ギャンブルのように、元締めが得をするような仕組みにはなっていませんし、相応の知識を身に付ければ、事業の先行きを見定めながら複数の投資商材に分散投資をするのは難しいことではありません。
また、不動産投資のように、自身が賃貸事業のオーナーになって運用を行うタイプの投資もあります。
投資は、自分のノウハウでリスクをコントロールしながら資産を増やせる、***労働とは違った資産形成の手段***なのです。
利益を得る仕組み
投資商材には無数の種類がありますが、利益を得る仕組みは多くありません。
代表的なのが、現金を一時的に金融商品と交換し、一定期間お金に換えない代わりに少額の利回りを貰うというもの。たとえば定期預金や債券で得られる利息、株式の配当や賃貸経営の家賃などが該当します。
ちなみに、このように継続的に得る収入はインカムゲインとも表現されます。
一度に得られる利回りは少額ですが、コツコツ回収することで、長期的には元本以上の収入を得ることも可能です。
投資で利益を得るもう1つの形は、現金を一時的に金融商品と交換し、その価値が上昇したタイミングで売却をするというもの。このように金融商品そのものを売買して得る収入は、キャピタルゲインとも表現されます。
株式や収益不動産の売却で得られる利益が、その代表格です。
投資商材の多くは、このインカムゲインとキャピタルゲインの2つの収益構造を持っており、投資家はこれらを上手に組み合わせて、より効率的に資産運用ができる方法を模索していきます。
メリットとデメリット
投資につきまとうメリットとデメリットを簡単に見ていきましょう。
メリット
メリットは、お金が増えることです。
10~30年スパンで資産運用を行っていけば、高確率で金融市場が好調な時と不調な時を両方経験することになります。
機械的に投資をするだけではお金は増えないかもしれませんが、安い時に買って高い時に売る、という原則を徹底していれば、プラスにこそなれ、***マイナスになる可能性は低い***はずです。
また、10年も投資をやっていれば、相応のノウハウはもちろん、市場に対する勘も身に付くことでしょう。
デメリット
デメリットは、投資の勉強をしなければならいこと。また、投資したお金が必ず返ってくる保証がないということです。
「投資は自己責任」、とよく言われます。リスクを回避するためには、投資判断の根拠となる知識や経験が不可欠です。
昨今は資産運用に関するサービスが多数登場していて、専門家から助言を受けるという選択肢もあるでしょう。
しかし、最終的に判断をするのは自分自身です。万が一損失が発生した場合に助言者に責任を求めても、投資したお金が返ってくることはありません。
手放しで運用できる投資商材もありますが、その段階まで持っていくにも、やはり勉強は不可欠です。
知っておきたい非課税制度
投資で得た利益には、20.315%の税金が掛かります。たとえば100万円の利益を出した場合、手元に残せるのはおよそ80万円となります。
儲けの2割は、決して小さい数字ではありません。そこで知っておきたいのが、国が用意する非課税制度です。
現在の日本では、以下のような非課税制度が用意されています。
- NISA…少額投資非課税制度の略。1年間に120万円までの投資を限度に、その後5年間で得た利益は課税されないという仕組み。
- iDeCo…個人型確定拠出年金の略。利益が非課税であるほか、掛け金や年金給付額の一定額が所得から控除される仕組み。
税金は、小さいように見えて大きい負担です。投資商材の種類によっては、所得税以外の税金について考えなければならないものも。利益を出すだけでなく、出ていくお金を小さくする工夫も、資産運用においては大切なことです。
投資するときの心構え
多くの心理実験で、人間は得られるはずの利益を失うより、すでにある利益を失うことに恐怖を覚えるという結果が出ています。
投資で言えば、手持ちの資産の価値が上がっているときに売りたくなり、下がっているときに売りたくなくなる、ということです。
当たり前のことに思えるかもしれませんが、「上昇しはじめたらすぐに売りたくなる」「下降し始めたら売りたくなくなる」というのは危険なことです。
利益は小さくなり、損失は大きくなる、ということだからです。
投資で一番大切なのは、生き残ること。仮に損失が出ても、またチャレンジできるだけの***余力を残しておく***ことが非常に重要となってきます。
投資で損失を出さないことはほとんど不可能ですから、小さな損失はあらかじめ覚悟して、一部の利益を大きく育てることを意識されてみてください。
初心者が手を出してはいけない投資
一部の投資商材、たとえば商品先物やFXは、値動きが激しい上に信用取引(借金しての取引)ができるため、短期間に大きな利益を出すことができます。
しかし初心者が継続的に成果を出せる可能性は、ほとんどゼロに近いでしょう。最初は数百~数万円をコツコツ稼げていたのに、1回の失敗で一気に収益がマイナスになる、というケースもよく見られます。
簡単にお金を儲けられるということは、それと同じくらい簡単に損をする可能性があるということです。
金融に関する基本的なノウハウを身に着けない内は、そうしたハイリスク・ハイリターンの商材には手を出さないようにしましょう。
まとめ
投資は、20年後、30年後を見据えた資産形成のための有効な手段です。
もちろんリスクも付きまといますが、***点ではなく線で投資を実践していく***ことで、経済状況の変化による損失リスクは平均化できます。
少しずつでも時間を掛けて自分なりの運用ノウハウを身に着けていけば、長期的に利益を出すのはさほど難しいことではありません。
貯金と投資の割合を判断するのは難しいかもしれませんが、少なくとも半年以内に使う予定のないお金は、少額ずつでも投資に回されることをおすすめします。