【いちから解説!】不動産投資信託(REIT)の5つのメリットとは
不動産投資信託とは「REIT」のことであり、投資信託の一種です。通常の投資信託は株や債券など色々な投資商品を取得しますが、REITの場合は現物不動産を取得します。
投資を検討している人の中には、REITに興味を持っている人もいますが、メリット・デメリットが何か分かっていない人もいるでしょう。今回はそんな方に向けて、REITのメリット・デメリットを解説し、多くの人が気になる「不動産投資との比較」についても解説していきます。
REITについて知りたい人はもちろん、不動産投資に興味がある方も確認してみてください。
REITの5のメリット
まず、REITのメリットである以下5つを解説していきます。
- メリット1:REITの利回りは高い
- メリット2:REITは信用取引が可能
- メリット3:REITは流動性が高い
- メリット4:REITは始めやすい
- メリット5:REITは選びやすい※種類が分かれている
メリット1:REITの利回りは高い
まず、REITの利回りはほかの投資商品と比べても高いです。不動産証券化協会によると、REITの利回りは4%前後であり、これは東証一部上場の株式配当利回り(2%前後)の2倍ほどの数値です。
仮に、利回り4%のREITを300万円取得して、利回り4%のまま推移したら年間で12万円(300万円×4%)の収益になります。REITがほかの投資と比べても利回りが高い理由は以下の通りです。
- 収益が賃貸収入で安定している
- 条件をクリアすると法人税が免除
- 低金利よる融資金利が低い
収益が賃貸収入で安定している
最も大きな理由は、REITの収益が「賃貸収入」という安定した収益源だからです。REITを運用する投資法人は、オフィスビルやマンション、商業施設などを取得します。そこからの賃料収入が収益となり、その収益の一部を投資家(REIT保有者)に分配金として与えるのがREITの仕組みです。
たとえば、株式投資の配当金は企業の利益によって左右するので、「企業業績」という変動しやすい要素で左右されます。また、投資信託は株や債券などの売買収益がメインなので、こちらも変動しやすい要素です。
このように、REITは現物不動産からの賃料収入を投資家に分配するので、収入源が安定しており、利回りが高くなるというメリットがあります。
条件をクリアすると法人税が免除
REITを運営している投資法人は、上述したように現物不動産の賃料が収入源です。そこから、物件運営費用などを差し引いた当期利益の「90%を投資家に分配する」という条件を守ることで、REITは法人税が免除されます。
たとえば、株式の配当金は、企業が得る収入から費用や税金などを差し引いた純利益をベースに配当金額が決まります。一方、REITの場合は法人税がかからない上に、当期利益の90%という高い割合を投資家に分配する点が、ほかの投資よりも利回りが高くなる理由です。
低金利よる融資金利が低い
投資法人は、投資家から集めた資金だけでなく、投資法人自体も融資を受けます。その融資金額を加えた資金で現物不動産を購入し、賃貸運営するという流れです。現在は、マイナス金利政策の影響で銀行からの融資金利は低い水準です。
つまり、投資法人が負担するローン支払い額も安く抑えられるので、物件の「支出」が抑えられます。そのため、物件運営の収支が安定し、その点もREITの利回りが高くなる理由です。
メリット2:REITは信用取引が可能
2つ目のメリットは、REITは信用取引が可能という点です。信用取引とは、証券会社にお金を借りて投資することで、自己資金以上の投資ができるということです。
そもそもREITは上場しているので、株式と同じように証券会社を通じて売買することが可能です。信用取引によってレバレッジ効果が高い投資になりますが、信用取引することで「金利がかかる」「分配金率が下がる」というデメリットがある点は覚えておきましょう。
レバレッジ効果とは?
レバレッジ効果とは「てこの原理」のことで、この場合は小さい資金で大きな資産(REIT)を取得できるとうことです。信用取引によって「自己資金の何倍の取引ができるか?」は証券会社によって違いますが、たとえば、楽天証券では自己資金の3.3倍までの取引が可能です。
つまり、楽天証券の口座に200万円預けておけば、3.3倍の660万円までのREITが取得できるということです。これは株式にもいえるメリットですが、上場していない投資信託や国債などでは、信用取引は利用できません。
信用取引のデメリット
ただし、信用取引には以下のデメリットがあります。
- 金利がかかる
- 分配金率がかかる
まず年利3%前後の金利がかかる点、そして証券会社からお金を借りている状態なので、厳密にいうと証券会社がREITを保有しています。そのため、分配金も証券会社が受け取り、投資家はそこから税引きされた分配金を受け取るので、満額の分配金を受け取ることができない点もデメリットです。
このようなデメリットがあるとはいえ、そもそも信用取引をするかどうかは自分で選べます。また、レバレッジ効果が高いというメリットの方が、上記のデメリットを上回っているといえるでしょう。
メリット3:REITは流動性が高い
3つ目のメリットは、REITは流動性が高いという点です。上述したように、REITは上場しているので、市場が開いている平日の日中であればいつでも売買できます。もちろん、その時点でのREIT価額での売買になりますが、価額さえ合えば一瞬で売買できる点は大きなメリットです。
流動性が高いということは資産の組み替えもすぐにできますし、突発的に現金が必要になったときも対応できます。
メリット4:REITは始めやすい
4つ目のメリットは、REITは始めやすいという点です。この「始めやすい」というのは、以下2つの意味があります。
- REITの売買を始める準備が楽
- 少額から始めることができる
REITの売買を始める準備が楽
REITを始めるには、以下のステップだけになります。
- 証券会社に口座を開く
- 証券会社の口座に入金
- REITの銘柄を選んで「買い注文」を出す
この3ステップだけでREITを取得できます。今は、証券会社で口座を開くときは、ネット上で身分証明書の画像を送付するだけで口座開設できるので、手間はほとんどかからないと言って良いです。
少額から始めることができる
REITは「1口」という単位になり、銘柄ごとに1口から始めることができます。2019年1月時点では、「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」というREITが1口15,720円なので、1万円台から始めることが可能です。
株式投資なども少額から始めることが可能ですが、REITは間接的ではありますが現物不動産を保有しているようなイメージです。つまり、本来は取得するのに100万円単位の費用がかかる現物不動産を、わずか1万円台から取得できる点がREITのメリットになります。
メリット5:REITは選びやすい
5つ目のメリットは、REITは銘柄を選びやすいという点です。そもそもREITは61銘柄のみなので、3,600社を超える銘柄がある株式などと比べると選ぶのは楽です。さらに、REITは以下のように種類が分かれているため、どの銘柄を選ぶべきか初心者でも判断しやすいです。
- 総合型
- 商業施設主体型
- 事務所主体型
- 物流施設主体型
- 住居主体型
- ホテル主体型
- ヘルスケア主体型
たとえば、商業施設主体型は、商業施設を保有することをメインにしています。総合型は色々な種類の不動産を組み合わせているREITです。
インバウンド需要を見込んで「ホテル主体型」を選ぶのも良いですし、今後の需要を見込んで「ヘルスケア主体型」を選ぶのも良いでしょう。とにかく、保有する不動産の種類が分かりやすいので、銘柄が選びやすい点はメリットです。
REITの3つのデメリット
REITには前項のようなメリットがありますが、一方で以下のようなデメリットもあります。
- デメリット1:価格変動リスク
- デメリット2:上場廃止リスク
- デメリット3:運用会社の倒産リスク
デメリット1:価格変動リスク
1つ目のデメリットは、REITには価格変動リスクがある点です。REITから得る収益は、上述した分配金のほかに、株式投資と同じようにREITの売買益もあります。
REIT価額も全ての投資商品と同じく需給バランスで決まるので、保有しているREITの人気が下がり、需要が落ち込めば価額が下がってしまいます。
たとえば、保有しているREITの投資法人の不動産運用が上手くいっていなかったり、予想していた分配金を下回ったりしたときにREITは売られ価額は下がりやすいです。その点は、株式投資と同じで読めない要素なので、価格変動する点はデメリットといえます。
デメリット2:上場廃止リスク
2つ目のデメリットは上場廃止リスクがある点です。REITは上場しているので、上場規定に抵触すれば上場廃止になります。そんな「上場廃止」に関しては以下の点を理解しておきましょう。
- どんなときに上場廃止になるのか?
- 実際に上場廃止になる事例
どんなときに上場廃止になるのか?
日本取引所グループの中でも色々種類がありますし、上場廃止の規定については細かく覚えておく必要はありません。ただ、一例として以下のようなときに上場廃止になります。
- 上場受益権口数又は上場投資口口数が4,000口未満
- 純資産総額が5億円未満となった場合
- 上記の状態で1カ年以内に5億円以上とならないとき
- 資産総額が25億円未満となり、1か年以内に25億円以上とならないとき
- 最近1年間の売買高が20口未満である場合
すごく簡単にいうと、REITに魅力がなくなり需要が落ち込んだときや、REITの運用状況が悪いときです。
上場廃止になるまでの経緯
仮に、上場廃止の事由に該当する恐れがある場合には、不動産投資信託は証券取引所の整理ポストに割り当てられます。そして、整理ポストに入り一定期間経過後に上場廃止という流れです。
投資家は上場廃止までの間にREITの売却を余儀なくされ、上場廃止のニュースが出ればほぼ確実にREIT価格は暴落します。
実際に上場廃止になった事例
たとえば、2008年10月9日にニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続開始の申し立てを行ったことで、東京証券取引所はこの投資法人を2008年11月10日に上場廃止にしています。その際、REIT価格は以下のように推移しました。
- 2008/10/9:民事再生法申請を発表:発表前の終値71,000円
- 2008/11/7:上場廃止:終値14,200円
このように、投資法人が民事再生を発表して、わずか1か月弱で1/5まで価格が落ち込みました。結局は、ダイワハウスリート投資法人と合併してREIT価格は回復するものの、上場廃止による暴落リスクは理解しておかなければいけません。
デメリット3:運用会社の倒産リスク
3つ目のデメリットも、前項の「上場廃止リスク」とほぼ同じです。前項のように民事再生をすれば、その投資法人のREIT保有者は売りに出るのでREIT価格は暴落します。そして、いずれ上場廃止になってしまいます。
そのため、REITを選ぶときには、上述した「どのような不動産を運用するか?」という点以外に、投資法人の財務状況などもチェックしましょう。
気になる「現物不動産投資」との比較
ここまででREITのメリット・デメリットが分かったと思います。さいごの章では、REITと良く比較されがちな現物不動産投資との違いを、以下の項目でしていきます。
項目 | REIT | 現物不動産投資 |
---|---|---|
収益性 | △ | ◎ |
流動性 | ◎ | △ |
初期費用 | ○ | △ |
収益性
収益性は現物不動産投資の方が高いです。現物不動産投資の利回りは物件によりますが、少なくとも現物不動産の実質利回りがREITと同じ4%なら、利回りは低い部類に入ります。また、現物不動産投資の場合は融資を利用できるので、REITの信用取引以上にレバレッジ効果の高い投資になります。
融資を利用することで自己資金の10倍ほどの資産を取得することもできるため、上手く運用できたときの収益は現物不動産投資の方が上でしょう。
流動性
一方、流動性はREITの方が上です。上述したように、REITは証券会社を通じて売買できますが、現物不動産を売るときには以下の手順になります。
- 不動産の査定
- 不動産会社の媒介契約を締結
- 売却活動
- 検討者との交渉
- 申込・契約
- 引渡し
売却期間は物件にもよりますが、上記の査定~引渡しで半年程度の時間がかかることは少なくありません。
初期費用
初期費用に関してもREITの方が安く抑えられます。上述したように、REITは1万円台から取得できるのに対し、現物不動産投資は100万円単位の初期費用がかかります。不動産を取得するときにかかる費用は、具体的には以下の項目です。
- 仲介手数料
- 登記関係費用
- ローン関係費用
- 不動産取得税
上記は、だいたい不動産の購入金額の5%~7%程度はかかるので、2,000万円の物件でも100万円以上の初期費用が必要です。さらに、融資の際に頭金が必要なケースもあるので、頭金を加えると初期費用はもっと高くなります。
それぞれの投資に適している人は?
前項までの比較を踏まえ、それぞれの投資に向いている人は以下のような人です。
- 資産をつくりたいなら現物不動産投資
- ポートフォリオの一部ならREIT
資産をつくりたいなら現物不動産投資
「資産をつくりたい」と思っている人は現物不動産投資が向いています。やはり、現物不動産投資は融資を利用できるので、収益が高くなりやすいからです。たとえば、ローンの返済額も加味した「返済後利回り」は、不動産投資では2.5%~3%ほどは欲しいといわれています。
仮に、自己資金300万円で、融資を利用して3,000万円の物件を購入したとしましょう。その場合、「3,000万円×返済後利回り3%=年間90万円」の収益になるという計算です。
一方、REITの場合は「300万円×信用取引3.3×4%=年間39.6万円」という計算です。しかも、これに金利分の支出も入りますし、信用取引の場合には分配金は減額になるので、ざっと計算して30万円は切るでしょう。
そのため、資産をつくりたいのであれば、収益が高く安定している不動産投資が良いです。
ポートフォリオの一部ならREIT
ただし、不動産投資の場合は、融資を受けることで毎月ローン支払い額が発生するのも事実です。そのため、ローン支払いという支出が毎月固定費になり、日々の収支を圧迫する場合があります。
もちろん、不動産投資が上手くいっていれば問題ありませんが、空室や家賃下落リスクもあるので、手持ち資金を捻出しなければいけないリスクもあります。一方、REITはほかの投資と比べて比較的利回りも高いですし、流動性も高いです。
そのため、収益額は不動産投資に劣るものの、コツコツと分配金を積み立て、色々な投資商品のポートフォリオの一部なら非常に費用対効果の高い投資といえるでしょう。
まとめ
このように、REITは利回りが高いという不動産投資の側面も持ちつつ、流動性が高いという株式投資の側面も併せ持ちます。また、利回りが高いことで中長期投資として見られやすく、日々売買することができない会社員の方にも向いているでしょう。
ただ、将来的に資産をつくっていきたいのであれば、やはり融資を利用できる不動産投資の方が良いです。上述したメリット・デメリットを理解した上で、どの投資をするかしっかりと判断することをおすすめします。