J-REITにおける東京オリンピック開催前後の見通し
2020年の東京オリンピック、そしてその5年後の2025年に開催が決まった大阪万博。いずれも世界的なビッグイベントなので、当然ながら経済効果は数千億円、もしくは兆単位の規模に及びます。
これだけの経済規模が見込めるビッグイベントが日本で開催される機会というのはそうそう何度もあるものではありません。そうなるとやはり、このチャンスをいかして株や不動産などの値上がりにうまく乗って大儲けができないか?と考えてしまうのが投資家心理というものです。
万博はまだ先の話ですが、この記事を執筆している2018年現在では直近のイベントとして、やはりオリンピックの影響や見通しが気になるところです。すでに不動産価格には変化が見られますが、その不動産を運用対象としているjリート(J-REIT)の見通しはどうなのでしょうか。
この記事では、オリンピックが与える不動産市場への影響を、jリートへの影響や今後の見通しという切り口で解説したいと思います。オリンピック開催までの見通しも重要ですが、オリンピック後の見通しも同じだけ重要です。あまり語られることのない「オリンピック後」の見通しについても展望していきますので、気になる方はぜひ参考にしてください。
目次
オリンピックに関連するjリートの動きと今後の見通し
最初に、東京オリンピックの開催に関連してjリートはどう動いたのか、そしてオリンピックまでjリートはどうなっていくのか、その見通しについて分析します。
オリンピック開催決定で起きたこと
東京でオリンピック開催が決まってからの不動産市場は、首都圏の地価上昇とうい形で敏感に反応しました。もとより不動産需要の旺盛なエリアなので地価の上昇地点が多くなっていたのですが、そこに来てオリンピック開催が決まったのですから、ご祝儀相場的な地価上昇があったのも当然でしょう。
この傾向は、不動産に投資をしているjリートでも顕著に見られました。何せjリートの多くは東京をはじめ首都圏の不動産を運用対象としているため、首都圏の地価上昇はそのままjリート各銘柄が所有している不動産価値の上昇をもたらしました。その結果、jリートの基準価額も上昇を見せました。
なぜオリンピック開催でjリートが上昇するのか
ところで、なぜ東京でオリンピック開催が決まったら、jリートが上昇するのか不思議に思ったことはありませんでしょうか?「風が吹けば桶屋が儲かる」という古い逸話がありますが、そこまで因果関係が遠くはないものの、東京オリンピックの会場や選手村に対する投資をしているわけでもないのに、なぜjリート全体の価格が上昇したのでしょうか。
そこにはもちろん、首都圏の地価上昇が深く関わっています。首都圏に多くの不動産を持つjリートだけに地価の上昇はそのまま資産価値の向上につながり、投資家からの買いを呼んで価格が上昇したというのは、多くの方々のご想像の通りです。
それだけでなく、不動産価格の上昇がjリートの上昇にもつながるという多くの投資家の思惑を呼び、それを材料視した買いが相当数入ったこともjリート上昇の理由であると考えられます。
jリート人気が過熱気味になっている
先ほど首都圏の不動産価格上昇を材料視した投資家からの買いが入ってjリートにも価格上昇が起きたという解説をしました。ここで鋭い方は、お気づきのことがあると思います。
それあ、不動産価格の上昇を材料視した投資家からの買いでjリートが上昇したということは、銘柄によっては実力以上の上昇をしている可能性があるということです。さすがに実力以上の価格になっても長続きはしないので調整が入って本来の実力通りの価格になるのが相場の原理ですが、jリートが過熱気味になったことは間違いありません。
今後、jリートの見通しは?
実力以上のレベルも含む価格上昇が見られたjリートですが、今後の見通しとしてよく聞かれるのは、「オリンピックまでは総じて強い」という声です。やはりオリンピック開催というビッグイベントを控えて投資家心理も強気になっているので、それがjリートの価格にも反映されると見ている向きが多いようです。
しかし、そもそもjリートは値上がり期待というよりは分配金収入というインカムゲインを狙っていく投資商品なので、その基本通りに保有し続けて分配金を稼ぐという投資スタイルであれば引き続き投資妙味が削がれることはないでしょう。
値上がり期待でjリートを検討している方へ
大都市圏の不動産市況は、好調が続いています。2018年12月には東京のオフィス空室率が1%台になり、大阪では何と0%台というデータ出るほどオフィスビルの稼働率が高くなっています。ここにオリンピックの影響が直接出ているとは言い切れませんが、こうした不動産の活況によってjリートが高止まりしているのは事実です。
もちろん稼働率の高さを背景にjリートの賃料収入も好調で、安定した分配金が出ています。すでに高止まりしているのは事実なのでさらなる値上がり期待でjリートを購入するのはうま味が少ないかも知れませんが、分配金の利回りは引き続き安定すると見られているので、買うことに対する魅力自体は衰えていません。
オリンピックの恩恵を受ける見通しのjリート銘柄群
東京でオリンピックが開催されるのにあたって、最も恩恵を受けるjリートについての解説をしたいと思います。
オリンピック効果はjリート全種類に及んでいる
jリートは不動産市況によって価値が上下するため、すでにオリンピック効果によって不動産価格が上昇していることに伴ってjリートも価格が上昇しています。それは特定の種類というわけではなく、影響は全種類に及びました。
不動産は景況感の影響を強く受けるので、不動産市場に表れているオリンピック効果がそのままjリートにも表れているというわけです。
特に注目はホテル型には恩恵
数あるjリートの種類の中でも、やはり注目なのはホテル型でしょう。2014年頃には27万円くらいだった「星野リゾート・リート投資法人(3287)」が、2018年12月には51万円になっているなど、ホテル型のjリートは値上がりが顕著です。
オリンピック効果とかねてからのインバウンド景気の拡大によってホテル業界は空前の好調が続いており、その影響がホテル型jリートにそのまま出ていると見て良いでしょう。今後もホテルの好調は続く見通しなので、ホテル型jリートには一段の値上がり余地があるかも知れません。
首都圏に保有不動産が集中している銘柄
オリンピック効果が直接表れるのは、首都圏の不動産です。つまり、jリートの中でも首都圏の不動産に集中投資している銘柄が最もオリンピック効果の恩恵を受けるものと思われます。
jリートの投資状況を調べて、保有不動産の所在地が東京や首都圏に集中しているような銘柄であれば、オリンピック効果も手伝って今後も堅調に推移すると見て良いと思われます。
オリンピック効果を狙うなら株にも妙味がある
ところで、この記事ではオリンピック効果に絡めてjリート投資にいかす方法を解説していますが、本当にオリンピック効果を直接的に得たいと思うのであれば、株のほうが魅力的だと思います。
すでにオリンピック関連株と呼ばれる銘柄群はオリンピック誘致が決まった直後から株価が上昇しているのでこれからエントリーしても利幅は薄いと思いますが、何度も利益確定の調整が入っているので、そういった調整が入っているオリンピック関連株であれば、まだまだ投資妙味はあると思います。
具体的にはjリートと同じく不動産、建設、交通、スポーツ関連などがオリンピック関連株と言われており、jリートと同様に狙ってみる価値はあるでしょう。
オリンピック前だけでなく、オリンピック後も見通しておこう
東京オリンピックは2020年の開催です。この2020年までは不動産をはじめ各業界の好調が続くと言われていますが、むしろ気になるのはオリンピックの後です。オリンピック後のjリートを含む景況感の見通しはどうなのでしょうか。
オリンピック後の不動産市況の見通し
未来のことであり、オリンピックという非常にレアな要素が絡んでいるだけに簡単に見通しを立てることはできないのですが、東京オリンピックが終わった後の不動産市況は調整が入り、これ以上の過熱感はでないという見通しが大勢です。
すでに首都圏の不動産は過熱感が否めず、jリートも高止まりしているため、これ以上の上昇相場になるような「燃料」はなかなか見当たりません。そうなると上を目指すよりも下を目指す可能性のほうが高いでしょう。
しかし、オリンピックが終わったからといってインバウンド景気が終焉するわけではありませんし、その5年後には大阪万博が控えているので、日本に人の流れが起きている状況に大きな変化ないと思います。そうなるとjリートが暴落するという可能性は低く、一時的な調整は入るものの堅調に推移すると見るのが妥当です。
オリンピック後の調整はjリートにも及ぶ見通し
株や不動産などの金融資産に調整が入るということは、もちろんjリートにも調整が入る見通しです。ここでいう調整とは暴落という意味ではなく一時的な下落という範疇のもので、調整という言葉の意味通り過熱感が収束して本来の実力通りの価格水準になるという見通しが一般的な認識です。
オリンピック後のjリート下落に備えておこう
調整が一時的なものなのか、それとも本格的な下落トレンドに転ずるのかは、オリンピックが終わってみないことには分かりません。現段階で本格的な下落トレンドに転ずるという見通しは少なく、やはり過熱感が抑えられた後は堅調さを維持するのではないでしょうか。
しかしながら、保有しているjリートが下落するということは価格差による含み損が発生することには他なりません。投資家が取るべきスタンスは、あまり一時的な調整に一喜一憂することなくjリート本来の投資スタンスである長期保有を貫くのが無難だと思います。
オリンピック後も強いと見られるjリート銘柄群
現在もすでに高くなっているjリートの銘柄群で、しかもオリンピック後も堅調さが最も維持される見通しなのが、物流型のjリート銘柄群です。
- 日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)
- GLP投資法人(3281)
- 日本プロロジスリート投資法人(3283)
- 三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(3471)
これらは代表的な物流型jリートですが、いずれも上場来の価格を維持しており、一時的に上場来の価格を下回ったことはありますが、いずれも現在は上場時よりも高いか、もしくは同水準を維持しています。ネット通販をはじめとする通販ビジネスの拡大によって物流センターの需要が高まっており、そういった施設に集中投資をしているこれらのjリートが堅調なのは当然と言えます。
そしてこの堅調さはオリンピックとは直接の関係がないため、オリンピック後も特に堅調ではないかとみられています。
オリンピック効果を最大化したい方のためのjリート投資戦略
すでに今から参入するとなると若干遅いかも知れませんが、今からでも間に合うオリンピック効果狙いのjリート投資を考えてみました。
ホテル型を中心に早期購入
オリンピック開催やインバウンド景気の影響を最も強く受けるのは、やはりホテル型のjリートです。オリンピックというテーマでjリート銘柄を物色するのであれば、ホテル型に注目をするのが基本戦術です。
それ以外の銘柄群としては、外資系企業の入居が増加することで稼働率が高くなっているオフィスビル型のjリートも魅力的です。
これらのjリート銘柄を、できるだけ早く購入しておくのが第一段階の戦略です。
オシレーターチャートに注視しながら売り時を探す
証券会社の管理画面やネット上のサービスを利用して、jリート銘柄のオシレーターチャートをチェックします。「株マップ」というサイトでは無料でjリートのオシレーターチャートを見ることができるので、こちらを使ってチェックしてみましょう。
こちらは、「日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)」のローソク足とRSIのチャートです。注目していただきたいのは、赤い丸囲みをつけた部分です。オシレーターチャートとは相場の過熱感を知るためのチャートで、このRSIはその代表格です。RSIが高ければ買われすぎ、低ければ売られすぎとみることができます。
出典:8967 日本ロジスティクスファンド投資法人 投資 チャート < 銘柄分析 | 株マップ.com
日足では5日連続で下げており、特に3日前からの下げが強くなっています。これだけ急激に売られると、当然ながらRSIも売られすぎを示しています。RSIは10を下回っており、これだけを見ると売られすぎなので買い時と判断できるレベルです。
このようにjリートのオシレーターをチェックして、保有しているjリートに含み益が発生していてRSIが買われすぎ(80以上)のレベルになっていたら、売り時を検討しても良いと思います。
オリンピック開催までに勝負を終える
オリンピックというテーマでjリート投資をするのであれば、勝負はオリンピック開催までに終えるべきです。何度か述べてきているように、オリンピック閉幕後は調整が入る可能性が高く、それが一時的なものであっても含み損が発生するのは投資家として面白くないはずだからです。
当然ながら同じことを考えている投資家は多いと思うので、先に下落が始まる可能性もあります。逃げ遅れたと感じた場合は、慌てて損失確定売りをするより長期保有に転じたほうが得策だと思います。
オリンピック後の調整下落があれば再び買いに回る
オリンピック後に調整が入り、明らかな下落があれば、そこから買いに回るのも一考の価値があります。あくまでも予想ですが、オリンピックが終わったからといって不動産市場が急に悪化するとは考えにくく、jリートの分配金もそこまで影響を受けて少なくなるとも考えにくいので、大幅な調整下落があったとしても相場はある程度回復する見通しです。
つまり、オリンピック直後の調整下落は一時的なものであり、調整前の水準まで回復しないかもしれないながらも、ある程度の回復はするという見通しを立ててもそれは無謀ではないというわけです。
オシレーターチャートの売りシグナルで売り
調整後の下落で買ったjリートは、どうすれば良いのでしょうか。バイ・アンド・ホールドで長期保有モードに入るのも価値があると思いますが、すでにjリートの価格が上昇して先ほどご紹介したRSIが日足ベースで80以上を維持しているようであれば、そこが売り時かも知れません。
おそらくRSIが80以上で推移していると他の投資家も同じことを考えるので、ある程度まとまった売りが出てくる可能性があります。それが出てからだと調整後の上昇分の利益を取ることができないので、先手必勝の精神で臨みましょう。
オリンピックに振り回されたくない方のためのjリート投資戦略
不動産の好調?オリンピック?そんな浮き沈みのあるような話に振り回されることなく、安定した長期投資をしたいだけだとお考えの方も多いでしょう。特にjリートはそういった投資スタイルに適した投資商品なので、最後にこうしたお考えの方のための投資戦略を解説したいと思います。
オリンピック効果に左右されない銘柄群を選ぶ
オリンピック効果との関わりが強い銘柄群(ホテル型など)ではなく、ここは敢えて景気変動の影響を受けず成長力を維持できそうな銘柄群を選ぶのが良いでしょう。
そうなると有力な候補なるのは、物流型、オフィスビル型、住宅型などです。これらのjリートはいずれも人間が生きていく上で、もしくは経済活動をする上で必要になるものばかりなので、オリンピック効果など一時的なテーマからの影響も限定的です。
徹底したバイ・アンド・ホールド
オリンピックに限らず、一時的なホットワードに振り回されたくない方の基本戦略は、徹底したバイ・アンド・ホールドです。買ったらそのまま長期間にわたって持ち続けるだけなので簡単ですし、日々の値動きで一喜一憂することもありません。
人によってはjリートを持っていることをほとんど意識しなくなり、何年か経って久しぶりに口座をチェックしたらずいぶん資産が増えていた、なんて話もあります。日々の値動きで心が揺れるのはバイ・アンド・ホールド戦略の大敵なので、むしろjリートのことを忘れるくらいでちょうど良いのかも知れません。
オリンピック後の調整が入ったら買い増す
いくらオリンピック効果などに振り回されたくないからといって、オリンピック後の調整下落があったらそれを逃すのはもったいないと思います。すでに保有しているjリートはそのまま持ち続けて、一時的に価格が下落するようなことがあったら、買い増しを検討してみてください。
安い時に仕込んだjリートを長期保有することで、より資産を大きく増やせる可能性が高まります。
まとめ
東京オリンピックの影響でjリートはどうなるのかという見通しについて、さまざまな角度から考察してみました。本来、こうした材料はjリートというより株式投資の世界で話題に上がることなのですが、それをあえてjリートに落とし込んだので、jリート投資とオリンピックを絡めたい方には参考になったのではないでしょか。
最後にはjリート投資らしく「いちいちイベントに振り回されたくない」という方のための戦略も解説しましたので、お好きな方向性でjリート投資を成功に導いてください。