不動産投資のマンション経営で成功する8つの秘訣
不動産投資で利益を得るための主な方法は、収益物件の賃貸経営です。物件を入居者に貸して住んでもらうことで、毎月家賃を支払ってもらいます。
物件の所有者(大家さん)は、家賃収入で得た所得の中から経費や税金の支払いを行い、手元に残ったお金が純利益となる仕組みです。不動産投資は、いかに効率よくキャッシュフローを作れるかが重要。 キャッシュフローとは「現金の流れ」という意味で、収益物件を運用していく際に収支のバランスを取りながらキャッシュフローを円滑に回していくことが大切です。
不動産投資はアパートやマンションを収益物件として賃貸借するのが一般的。収益物件の種類は様々で、1棟アパートや区分所有マンションなど投資家の経済事情に合わせて物件の規模を選ぶことができます。
マンション経営をしていくにあたって、どんな人が成功して、失敗しやすい人の原因はどこにあるのか。これから不動産投資を始める方向けに、わかりやすくご説明していきます。
不動産投資のスタンダードはマンション購入から?
一般的な不動産投資と言えば、区分所有マンションの賃貸運用です。1棟アパートなどは物件価格が高いので自己資金の用意が多めに必要で、ローンの借入額も大きくなります。
区分所有マンションであれば不動産投資の初心者でも始めやすく、物件の収益性が良ければ不動産ローンの融資も受けやすくなるのがメリットです。
マンション投資には2つのタイプがある
区分所有マンションは大きく2つのタイプに分けられます。主に単身のサラリーマンや学生向けのワンルームタイプと、ファミリー層向けのタイプです。
ワンルームマンション
ワンルームタイプのマンションは、バス・トイレ・洗面台が3点ユニットとしてまとまっており、居住空間は1部屋です。キッチンは廊下部分に備え付けられている場合が多く、単身の方が暮らすのに便利な間取りになっています。
物件によっては洗濯機を置く場所が外のバルコニーになっているケースもあるので、内見の際に確認しておきましょう。ワンルームタイプは転勤や大学の卒業などで入居者の入れ替わりが激しい場合もあり、常に空室対策をしておく必要があります。
「駅が近い」など物件の立地が良ければ客付け(入居者を探して賃貸借契約をすること)がしやすいです。
ファミリー向け区分所有マンション
複数の部屋とユニットバスなどで構成されているのがファミリー向けの区分所有マンション。2LDKや3LDKなどの間取りが主流で、分譲マンションのタイプによって4LDKもあります。
ファミリー向けなので、入居者は数人の家族で住んでいる場合が多く、一度入居すれば長く住み続けてもらえるのが特徴です。法人が社員の寮として、まとめて借り上げているケースもあります。
ワンルームタイプに比べると、物件価格はやや高め。そのためローンの借入も多くなってくるので予算と相談しながら物件を選びましょう。
不動産投資は初心者がほとんど
近年では、サラリーマン向けに書かれた不動産投資の書籍が多く出版されています。「投資家」というと、投資のプロのようなイメージが強いのですが、不動産投資の場合はプロばかりではありません。むしろ、投資初心者のほうが多いくらいです。
不動産投資のプロになるためには、不動産売買業や賃貸業についての経験や深い知識が必要です。実際に不動産取引業を生業としている方であれば、プロと言わざるを得ません。しかし、ほとんどの投資家は不動産の経験や知識がないまま不動産投資をスタートしています。
特に「サラリーマン大家さん」と呼ばれる方々は、不動産に関して初心者の状態から投資を始めているのです。そのため、収益物件を賃貸経営している方は初心者が多く、プロの投資家ばかりではありません。 自分にまだ不動産の知識がないからといって尻込みせずに、積極的に不動産投資の知識を取り入れて始めてみるのが良いのではないでしょうか。
マンションへの不動産投資で「失敗」する人
マンション経営など不動産投資で失敗する原因は、いったいどういう部分にあるのでしょうか? 不動産投資をスタートするときは、投資家の誰もが家賃収入で儲けることを期待しています。それなのに、失敗してしまうのはなぜでしょうか。
不動産投資で失敗する要因となる部分についてまとめてみました。
自分で調べずに不動産営業マンの言うがまま
前述の通り、不動産についてよくわからずに投資を始める方がほとんどです。収益物件を買う際には、まず物件について自分で調べることが大切です。
不動産会社へ行き「収益物件を買いたい」と相談をもちかけたらあとは営業マンの勧めるがまま、というのはかなり危険。物件の収益性や特徴がわからないまま、「不動産会社が売りたい物件」を買わされる結果になってしまいます。
たとえば「利回りが18%以上」などとよく見えても実際には家賃の設定が相場よりも高かったり、建物の状態が悪くて物件価格が安いだけ、といった可能性もあるのです。相場よりも家賃が高ければ入居者が付きにくく、いつまでたっても空室が埋まらない、とうことにもなりかねません。
自分できちんと高利回りの根拠や物件の現況をチェックしておくことで、リスクの軽減や回避につなげられるのです。
自己資金を作るつもりがない
これまではフルローンを組んで不動産投資を行う投資家がいました。しかし、投資の初めの段階からフルローンの融資を受けることは困難になってきています。いまは借入金額の10%~20%程度を自己資金として作っておくのが一般的。
また、ワンルームタイプは物件価格が安いものが多く投資を始めやすいのですが、1棟アパートなどに比べると収益力が弱いというデメリットがあります。不動産ローンの審査は投資物件の「収益性」も評価されるため、物件によっては自己資金が多めに必要な場合もあるのです。
きちんと自己資金を作っていなければ金融機関の融資の承認がおりず、いつまでたっても不動産投資をスタートできない状況になりかねません。
サラリーマン向けのワンルームマンション投資
ワンルームタイプの物件は売却に出ている数が多く、利回りが高いものもよく見かけます。少ない自己資金で投資をするには適した収益物件と言えるでしょう。 サラリーマン大家さんが初めに投資対象として選ぶのもワンルームタイプの物件です。
しかし、最初の不動産投資として購入するのは良いのですが、前述したように収益性の点でやや弱いため銀行の評価が低いというデメリットがあります。1軒目は購入できたとしても、2軒目、3軒目と投資規模を拡大していくのには難しい物件です。2軒目以降は融資の承認がおりにくくなるからです。
また、1棟アパートとは違い貸室が1部屋だけなので家賃収入の額も少なく、空室になってしまうとローンの返済や経費だけが掛かることに。ワンルームマンションに投資をする場合は、「将来的に売却して次の投資に移行する」ことも予め計画しておくことをおすすめします。
家賃収入が不労所得だと誤解している
不動産の賃貸経営による家賃収入は「不動所得」だとよく言われています。しかし、収益物件を運用するには、事務的な業務が欠かせません。 たとえば、物件を管理してくれている管理会社とのやり取りをメールや電話で行ったり、入金される家賃の管理もしなければなりません。管理費や修繕積立金などの支払いや、管理会社へ支払う管理手数料も経費として計上する必要があります。
年度末になれば確定申告をして所得税を納税しなければなりません。 不動産を経営する大家さんは、実はいろんな業務をこなしているのです。けっして「不労」ではないことをしっかりと理解しておきましょう。
ローンの返済は家賃収入をあてにしている
賃貸経営計画をきちんと作りこんでおかないと、経済情勢の変化などによって収益が下がるとたちまちローンの返済が困難になってしまいます。建物は築年数が古くなるにつれて管理費や修繕費などが増加していく傾向にあるため、空室の長期化や家賃相場の低下などで収支バランスが崩れてしまう可能性も。
また、ローンの返済にそのまま家賃収入を充てるのは危険です。賃貸経営は、常に満室状態が維持できるわけではありません。空室率の上昇リスクや、支払い家賃の遅延・滞納のリスクもあります。 想定の範囲を超えて家賃収入が減ってしまうと、ローンの返済に直接的なダメージを負うことにつながる可能性も。満室経営など期待値の高い家賃収入はあてにせず、無理のないローン返済計画を立てておきましょう。
収益物件の運用が他人任せ
基本的に収益物件の管理・運用は、不動産管理会社に委託することで、サラリーマン大家さんは安心して本業に専念できます。ただし、すべてを人任せにするよりも、空室対策や入居者の管理、家賃の管理などは自分で考えて行動するように心がけておきましょう。
もしトラブルがあった場合でも、物件のオーナーが貸室の入居者を把握しておけば素早く対応できます。また、賃貸事業の収支バランスについても重要です。もし入居者による家賃の滞納が発生すると諸経費の支払いに直接影響するため、自分で管理しておく必要があります。
売却のことを考えていない
建物の耐久性には限界があり、いつかは使用できなくなります。少しずつ建物の資産価値が減少していくため、将来的には手放すことも視野に入れておかなければなりません。
たとえば、建物の原価償却が終わるまでは賃貸経営をして10年後に売却する。といったように、投資をスタートする段階で、売却の期間を決めておくことが投資で成功するためのコツです。
マンションへの不動産投資で成功する人
ここでは、マンション投資で「どんな人が成功するのか」についてのポイントをご紹介します。基本的には上記の「失敗するポイント」とは逆のことをイメージしておくと良いでしょう。
マンションを買う前から出口戦略を練っている
不動産投資で重要なポイントは、賃貸経営の出口です。上でもご紹介したように、建物の耐久性には限りがあるため、確実に資産価値は下がっていきます。いつまで収益物件の賃貸を続けるのかを考えておかなければなりません。 とくに区分所有マンションの場合、物件価額の中に占める割合は土地よりも建物のほうが大きいため、資産価値の減少スピードが速くなっていきます。
完全に建物がダメになってしまってからでは対応が遅すぎるのです。また、建物が損傷していくにつれてその中の設備も不具合や故障などが多くなってきます。修繕費がどんどん増えるのに家賃は値下げをしないと入居者がつかない、という悲惨な状況になることも予測しておかなければなりません。
不動産投資は家賃収入だけではなく、売却することで差益を稼ぐこともできます。売却益が得られるタイミングをつかんでおくことも、投資を続けていく上では重要です。
不動産投資の目的が明確
不動産投資を始めることで「どうしたいか」という目的を明確にしておきましょう。投資家によって目標としている着地点は異なります。
- 自己資金や借入金の額
- 収益物件の保有数
- 賃料収入の多さ
- 売却益で稼ぐ
など投資家の状況や目的に応じて投資スタイルも様々です。物件の保有数を増やして賃料収入を大きく稼いでいきたいのなら、複数の区分所有マンションを購入したり1棟アパート経営を目指して進めていく必要があります。
「少ない資金で手軽に賃料収入が欲しい」という場合や「サラリーマンが所得税の節税をしたい」というのであれば、投資対象の物件はワンルームマンションになるでしょう。
それぞれの目的に応じて投資対象となる物件が違ってくるので、不動産投資を始める前から最終目標を決めておくことが大切です。
不動産仲介業者の営業マンに惑わされない
不動産投資の最終目標が明確になっていれば、不動産仲介業者に投資の相談をする際にも自分の目的が伝えやすくなります。また、不動産会社の営業マンに自社が売りたい物件を勧められても、「自分の目標とは合わない物件」だと早い段階で判断できるでしょう。
自分の投資目的や条件をしっかりと伝えておけば、営業マンも迂闊な提案はできなくなります。
ワンルームマンションへの投資は慎重
サラリーマンの方が不動産投資を始めるときは、区分所有マンションへの投資を勧められる場合が多いです。とくに不動産投資セミナーなどではワンルームマンションを軸にして投資話をされることも。
ワンルームマンションは、投資額が少ないので金融機関の融資を受けやすいとうメリットがありますが、何度も同じように融資を受けることはできません。金融機関は融資希望者がサラリーマンだからこそ、属性(年収や勤務先など)の信用力に対して融資をしています。 ワンルームマンションの収益性としての評価は低いので、1軒目は良いとしても、同じサラリーマンに何回も融資できるほどの信用力は無いのです。
2軒目の物件に投資を進めたくても、銀行のローンが組めないのであれば物件を購入することができません。物件を買える金額まで現金を貯めるしか方法がなくなってしまいます。
将来的に不動産投資の規模を拡大しながら、家賃収入をどんどん増やしてサラリーマンをリタイアすることが目的なのであれば、1軒目にワンルームマンションを選ぶときは慎重に判断しましょう。
不動産の転売によって資金を作る
不動産の転売はプロが参入していることが多いのですが、いずれは賃貸物件を売却するときが来るのではないでしょうか。 また、短期間ではなくても、5年後などのスパンで売却する計画を立てておくのも効果的。賃料収入と売却益の両方を稼いで、さらに投資規模を大きくしていく、という投資スタイルが成功できるコツです。
たとえば初めから売却することを目的にして、売れやすそうな物件を狙って購入するのも良いでしょう。転売による売却益で次の投資物件の資金を稼いでいくことができます。
ただし、転売を何回も繰り返すと「業」としてみなされてしまうので注意が必要です。宅建業者として登録をしないと、宅建業法違反に抵触する可能性があります。
出口を考えて減価償却を設定する
マンション投資で成功するためには、将来的に賃貸物件を売却する出口戦略が重要です。マンションの場合は土地よりも建物のほうが資産の割合が大きいため、減価償却を友好的に利用できます。
減価償却は、物件購入に使った費用を毎年小分けにして経費として計上できる、というものです。たとえば区分所有マンションを1,000万円で買った場合、10年で減価償却するのであれば毎年100万円ずつ経費にすることができます。
減価償却費は帳簿上の経費として計上するだけなので、毎年100万円の現金が減っていくわけではありません。確定申告をする際に所得税の負担を大きく減らすことができるので、減価償却費は必ず設定しておきましょう。
また、減価償却する期間を決めておくことで、区分所有マンションを売却するタイミングも計りやすくなります。10年間は減価償却をしながら賃貸経営を行い、減価償却が終わったタイミングで売却するのです。
区分所有マンションを賃貸経営した後に売却する一例
物件購入時 | |
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物件購入価格 | 1,000万円 |
減価償却期間 | 10年 |
年間家賃収入 | 84万円 |
▲年間諸経費等 | ▲25万2,000円(年間家賃収入に対して30%で算出) |
年間キャッシュフロー | 58万8,000円 |
▲減価償却費 | ▲100万円 |
帳簿上の所得 | ▲41万2,000円 |
10年後に売却 | |
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物件売却価格 | 800万円 |
減価償却期間 | 10年 |
累計家賃収入 | 840万円 |
▲累計諸経費等 | ▲336万円(年間家賃収入に対して40%で算出) |
累計キャッシュフロー | 504万円 |
▲減価償却費0円 | (減価償却終了) |
▲売却損 | ▲200万円 |
売却損を含むキャッシュフロー | 304万円 |
毎年58万8,000円のキャッシュフローを手元に残しながら、帳簿上は減価償却費によって▲41万2,000円にすることができます。不動産所得が赤字になっている分は、サラリーマンの方でしたら給与所得に課税されている所得税から還付を受けることが可能です。
10年後の減価償却が終わったタイミングで売却をした場合。購入したときよりも200万円値下がりしたと想定しても、手元には304万円の現金が残ることになります。 もし区分所有マンションを買ったときよりもあまり変わらない価格で売ることができれば、504万円がそのまま現金として残ることに。所得税を節税しながら、次の投資への資金を作ることができるのです。
マンション経営に掛かるリスクをよく理解している
マンションを賃貸経営する際には、諸経費などの支出や空室リスクなどがあります。それぞれのリスクを予め想定しておけば、家賃相場の低下などネガティブな要素にも慌てずに対応することが可能です。
マンション経営のリスクにはどんなものがある?
賃貸経営で起こりうるリスクを確認しておきましょう。区分所有マンションだけではなく、収益物件のすべてに当てはまります。
- 空室リスク
- 家賃滞納・遅滞のリスク
- 建物の老朽化リスク
- 金利上昇リスク
- 災害リスク
- 売却リスク
空室リスク
区分所有マンションの場合は貸室が1つだけなので、入居者が退去してしまうと収入がゼロになってしまいます。しかし、物件の管理費や修繕積立金などは毎月支出することになり、ローンの返済も待ってはくれません。
家賃滞納・遅滞のリスク
また、家賃を滞納されたときも収入が入ってこなくなるため、不動産ローンの返済に家賃収入を充てている場合は要注意です。入居者によっては、支払い家賃の催促をしても「払う払う」と言いながらいつまでも放置する人がいます。 こうした入居者によるリスクについても考慮しておきましょう。
建物の老朽化リスク
建物が古くなってくると、入居者は同じ家賃条件でもっと綺麗な物件に住もうと考えます。建物の老朽化は修繕費用が増えるだけでなく、空室までも誘発してしまうのです。 築年数が古い物件の場合は、建物と設備の管理・修繕には細心の注意を払っておきましょう。
金利上昇リスク
区分所有マンションを買うときはローン金利が低くても、全国の経済情勢の変化によって金利が上昇する可能性もあります。 もし投資計画の収支が初めからギリギリの場合、少しでも金利が上がるとたちまちローンの返済が困難になってしまうため無理のない投資計画を立てておきましょう。
災害リスク
火災や地震により、建物が倒壊または滅失してしまうリスクがあります。不動産を購入する際には、不動産仲介業者に火災保険への加入を勧められるのが一般的です。 地震保険は単独で加入することができません。必要であれば、火災保険のオプションとして一緒に加入することになります。
売却リスク
不動産はすぐに現金化することができません。売却してから実際に代金が決済されるまで早くても2ヶ月ほどは掛かります。区分所有マンションを買ったものの、「急に現金が必要になった!」と慌ててもすぐに売却できないので注意しておきましょう。
また、必ずしも物件を買ったときよりも高く売れるとはかぎりません。売却損になるケースもよくあるので、予め想定しておいてくださいね。
売却のタイミングを把握している
減価償却の部分でも触れましたが、不動産投資で成功している人は、投資をスタートさせる段階からいつ売却をするのか考えています。いくらでも銀行から資金を借り入れることができれば良いのですが、相応の担保がないかぎりまず無理でしょう。 投資規模を拡大していくのであれば、いま所有している収益物件をいつかは売却して資金を作り、より大きく稼げる物件に乗り換えていったほうが確実です。 売却のタイミングは投資スタイルによって異なるので、売却後のキャッシュフローを予測しながら計画しておきましょう。
不動産投資のマンション経営を計画的に行うコツ
不動産投資を始めるときに最も重要なのは金融機関の融資です。ローンを組むことができなければ収益物件を買うことができません。 銀行が融資を行うときは、融資希望者の属性と、投資対象である物件を審査します。賃貸事業の収益性や物件の担保価値をチェックして、融資をしてもきちんとローン返済が可能かどうかを判断するのです。
マンション経営をスタートさせるためには、投資家が賃貸事業や収益物件について詳しく知っておかなければなりません。銀行に評価されるような物件かどうかをまず自分で判断しておく必要があるのです。
ここでは、収益物件のチェックの仕方や、安定した賃貸経営を行うためのコツをご紹介します。
賃貸事業の収益性
賃貸事業の収益性は、投資対象の物件がきちんと収益を上げてローンの返済をしていけるかどうかを判断すること。投資計画通りに家賃収入が入金されれば問題ありません。しかし、「マンション経営のリスク」で挙げたように、空室の長期化や家賃滞納などによって計画通りにはいかない場合もあるのです。
予定通りの収入がなければローンの返済が困難になるため、銀行は賃貸事業の計画が適切かどうかをしっかりとチェックします。
銀行が事業の収益性についてチェックする部分は主に以下の通りです。
- 家賃の設定は相場よりも高すぎないか
- 空室率の予測は適切か
- 物件の種別
- 物件が所在するエリア
上記の項目に加えて、もし金利が上昇した場合の収支もシミュレーションします。 購入したい物件が見つかったときは、銀行がチェックする賃貸事業の収益性を意識して事業計画を立てておくことが大切です。
物件の資産性
物件の資産性とは、ローンの返済が困難になったときに、「担保としての価値があるか」どうかです。銀行は融資をしたお金を返してもらわないと、貸し倒れとなり大きな損失になってしまいます。貸し倒れリスクを回避するために、投資対象の物件に抵当権を設定して担保にしているのです。
もしローン契約者が返済不能に陥ってしまったときは、銀行は抵当権を実行して担保として押さえている物件を売却します。その売却代金から貸したお金を返してもらう、という仕組みです。
投資する物件の価値が、銀行から借入する金額に見合っているかどうかをチェックしておかなければなりません。
中古収益物件の建物価格を計算してみよう
区分所有マンションの建物価格は自分でざっくり算出することができます。
建物価格の計算式 |
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建物価格=(再調達価格)×[(耐用年数-経過年数)÷耐用年数] |
再調達価格とは、同じ建物をもう一度建築するときに必要な費用のこと。 国土交通省が発表している標準的な再調達価格を見てみましょう。 (参照:建物の標準的な建築価額表)
区分所有マンションのような鉄骨鉄筋コンクリート造であれば、1平方メートルあたりの再調達価格は約26万円(平成27年の価格)です。この26万円に建物の延べ床面積を乗じることで、収益物件の再調達価格がわかります。
鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年です。 (参照:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数)
例として見てみましょう。
築20年の区分所有マンションで、延べ床面積が70㎡の場合 |
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(再調達価格1,820万円)×[(耐用年数47年-経過年数20年)÷耐用年数47年]=建物価格1,045万5,319円 |
築20年の区分所有マンションの建物価格は、約1,046万円であることがわかります。
物件を買う前に机上調査と現地調査しよう
物件情報を見ていて良さそうな物件があれば、自分で調査しておきましょう。物件を調べるには2つの方法があります。
机上調査
机上調査は、過去の不動産取引事例などのデータベースを基に物件価格を求める調査法です。不動産会社が物件を「机上査定」する際にも同様の方法がとられています。 土地総合情報システムのサイトから、過去の取引された不動産価格の確認が可能です。
また、不動産ポータルサイトから、投資対象物件と同じエリアにある類似物件を探して売却価格を比較することもできます。 代表的な不動産ポータルサイトは以下の通りです。
利回り計算
不動産投資に利回り計算は欠かせません。利回りとは、年間家賃収入に対して物件価格を割って算出した利益率のこと。 利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。
一般的に呼ばれている利回りは「表面利回り」のことで、収益物件の賃貸経営に掛かる諸費用などが計算に入っていません。 「実質利回り」には賃貸物件に掛かる管理費や修繕積立金などの諸経費が含まれており、より具体的な利回りとして利用できます。
表面利回りの計算式 |
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表面利回り=年間賃料収入÷物件購入価格×100 |
実質利回りの計算式 |
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実質利回り=(年間賃料収入-諸経費)÷(物件購入価格+購入諸経費)×100 |
現地調査
実際に投資対象の物件がある現地まで行って、建物の管理状態や周辺環境をチェックしておきましょう。建物や敷地内がきちんと清掃されているか、適切に修繕が行われているかなどを目視で確認。物件の土地に面した道路の幅が狭すぎないか、なども確認します。
建築基準法には接道義務というものがあり、建物が建っている土地に道路が2メートル以上接していなければなりません。接道条件を満たしていなければ、建物を再建築することができないのです。 再建築不可の物件は売却する際に不利なので注意しておきましょう。 また、物件から徒歩10分圏内に駅やスーパーなどの商業施設があるかどうかチェックしておくことも大切です。
収益物件を賃貸経営するコツ
収益物件の運用は不動産管理会社に委託できますが、安定した賃貸経営を続けていくためには運用方法について理解しておく必要があります。
BM・PM・リーシングを考えておく
BMとは、ビルメンテナンスのこと。不動産管理会社の担当者が建物内を見回ったり、設備の点検や清掃など物件の維持管理を行います。
PMとは、プロパティマネジメントのこと。業務としては、入居希望者を審査したり、賃貸借契約の手続きなどを行います。また、入居者に対して保証会社のあっせんを行い、トラブルがあったときはクレーム対応などもしています。
リーシングとは賃借のことで、ここでは不動産仲介業者を指します。アパマンショップなどがその代表です。広告を出して入居者を募集し、入居希望者がいれば内見対応をしてくれます。 入居者に対する賃貸物件の仲介業務が主な役割です。
BM・PM・リーシングは三位一体の業務です。賃貸物件の運用にとって、どれか1つが欠けてしまうと賃貸事業が成立しません。 賃貸物件の管理・運用・客付けが最も重要なポイントなのです。
BM・PM・リーシングがうまく連携できれば、賃貸事業としては高いパフォーマンスを発揮できます。ただし、不動産管理会社によっては、BMとPMだけの業務を行っている場合があり、リーシングを担う仲介業者とは分離してしまうことも。
管理会社と仲介業者は、同じ「不動産」というカテゴリーであっても基本となる収益モデルが異なります。 管理会社は賃貸物件を管理することでオーナーから管理手数料を得ていますが、仲介業者は入居者を探して賃貸借契約を成約させなければ仲介手数料が入ってきません。それぞれ会社によって思惑が異なるため、うまく連携できない場合もあるのです。
物件の管理・運用・客付けを依頼するときは、こうした業務の違いを理解したうえで相談しましょう。
まとめ
収益物件は様々なタイプがありますが、サラリーマンや不動産投資の初心者は、区分所有マンションから投資を始めるケースが多いですね。 区分所有マンションはワンルームタイプとファミリー向けのタイプに分かれており、サラリーマン投資家の場合はワンルームタイプを投資対象として選ぶ傾向にあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションであっても、経年劣化により資産価値は減少していくため、計画的に売却を検討しておきましょう。また、家賃収入を得ながらいつまで物件を保有するのか、などを物件を購入する前からしっかりと考えておかなければなりません。
マンションだけに限らず、収益物件の賃貸経営には様々なリスクが伴います。予めリスクの許容範囲を設定し、空室や金利上昇が発生しても大きな損失が出ないように損益分岐点を把握しておくことが大切です。
マンション経営で「成功するポイント」と「失敗するポイント」をご紹介しましたが、成功と失敗に起因する投資の行動は真逆であることがわかります。 失敗をするような行動をとらなければ賃貸事業が安定し、不動産投資の成功へとつながるのではないでしょうか。