買い方で全てが決まる!投資信託の種類と選び方【入門編】
投資といえば、どんなものをイメージされますか?
これまでの代表的な投資は、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)、日経225先物取引、不動産投資などが一般的でした。近年ではFXから派生したバイナリーオプションや、ビットコインを代表とする仮想通貨への投資が盛んに行われています。
しかし、上記の投資を始めるためには多額の資金が必要だったり、レバレッジ(他人資本を使って)を効かせて投資効果を拡大させるものばかりです。 特に、なにかと話題になっているバイナリーオプションや仮想通貨などは、かなりのハイリスクと言われています。市場の変動が激しいため、得られるリターンは大きいですが、突然相場が急落して多額の損失が出てしまうことも。
そこで、ローリスク・ミドルリターンとして運用できる投資信託がいま注目を集めています。投資信託は、株式型やREITといった不動産投資信託などがあり、少額から始めることが可能です。
投資信託という言葉は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。「投資」というからには、当然ながら配当収入や売却益などを得ることができます。 具体的に投資信託がどんなもので、どうやって運用していくのかご存知でしょうか?
ここでは、投資信託の種類や運用の方法などについて解説していきます。
投資信託とはどんなもの?
投資信託は少ない資金で手軽に分散投資ができる商品です。たくさんの投資家から資金を集めて、その資金を使って株式や不動産などに投資をしていきます。
投資信託は株や債券・不動産などの詰め合わせ
たとえば自分一人で株式投資を始める場合は、一つの銘柄を購入して運用します。銘柄によって一度に購入できる株の単位が異なるため、場合によっては、投資資金が少ないと「お目当ての銘柄が買えない」なんてことも。 もし、とある企業の株価が1株あたり1,000円だったとしたら、購入できる最低単位が1,000株だと100万円の資金が必要になるのです。
投資信託は、自分一人だけではなく、みんなの資金を基に金融商品を購入します。そのため、一人一人の資金が少なくても、大企業の株が買えたり、複数の不動産を賃貸運用することができるのです。
株式投資は上場している企業の株を売買することで配当金や売却益を得ることができます。一人だけの資金では買えないような銘柄であっても、投資信託ならたくさんの銘柄をまとめて購入して運用することが可能です。
弁当箱をイメージしてみてください。弁当箱の中には、たまご焼きやウインナー、ミートボールなどいろんなおかずが詰め込まれていますよね。お弁当を作る人が、いろんなおかずをピックアップして入れているのです。 投資信託も同じように、専門家が複数の金融商品を詰め込んで運用していきます。
投資信託の種類
投資信託は大きく2つに分類されています。
- 株式投資信託
- 公社債投資信託
「株式投資信託」は、前述の通り、投資家達から集めた資金を基にして様々な企業の株を買って運用する形式。「公社債投資信託」は、株式をいっさい組み込むことなく国が発行している債券(国債)や企業が発行する社債などをメインにして運用する、というものです。
さらに、追加型と単位型に細かく分類されています。追加型は、金融商品を買いたいときにいつでも購入できます。逆に単位型は、決められた一定の期間しか購入できず、期間を過ぎてしまうと金融商品を買いたくなっても買うことができません。
投資信託は何に投資する?
投資信託の対象は株式や債券、不動産などさまざまです。
- 株式
- 債券
- 不動産
- その他(コモディティなど)
- 資産複合
株式と債券は前述した通りです。不動産は、J-REIT(リート)と呼ばれる不動産投資信託のこと。Jリートも、株式投資信託などと同様にたくさんの投資家から集めた資金によって収益物件などを運用して利益を得る仕組みです。
一般的な不動産投資は、個人が一人でアパートやマンションを購入して賃貸経営します。もし資金が足りない場合は、金融機関が取り扱う不動産ローンを利用しなければ物件を買うことができません。 また、不動産の管理を管理会社に依頼した場合は管理委託料などの支払いが発生することから、手間が掛からず気軽に投資が始められるJリートが注目されているのです。
「その他(コモディティ)」は、商品先物市場で取引されている原油・ガソリンなどのエネルギーをはじめとした商品です。金・プラチナなどの貴金属や、トウモロコシ・大豆などといった穀物も取り扱っています。
最後に「複合資産」は、投資対象が一つだけではなく、たとえば「株式と債券」、「株式と債券と不動産」というように複数の金融商品にまとめて投資することです。
投資信託はどこが運用しているの?
投資信託を運用しているのは「委託会社(運用会社)」です。 先ほどの弁当箱の例のように、弁当を作る人(委託会社)が、良いと思うおかず(金融商品)を吟味して選びお弁当(投資信託商品)を作り上げます。 委託会社では、ファンドマネージャーと呼ばれる投資信託のプロが商品を作っているので、投資初心者はプロに任せておくだけで良いのです。
委託会社が投資信託の運用を行い、投資家から集めた資金や利益、金融商品などは信託会社で保管します。信託会社は、個人や法人の財産を「管理・運用・継承」する機関で、投資信託の場合もここで管理されているのです。
投資信託の購入は販売会社
投資信託は販売会社から購入します。具体的には証券会社や銀行の窓口、ネット証券、ネット銀行などです。 いまではネット証券やネット銀行から投資信託の購入や解約、口座管理などを行うのが一般的になってきています。
このように、投資信託には3つの会社が関わって運用・管理されているのです。
投資信託で利益を得るには?
投資には2つのキャッシュポイント(利益を生む機会)が存在します。金融商品を売却することで得られるキャピタルゲインと、金融商品を持ち続けることで得られるインカムゲインです。
キャピタルゲインとインカムゲイン
キャピタルゲインとは売却益のことを言い、株式や債券・不動産などを売ったときに出た差益によって収入を得ます。
インカムゲインは定期的に得られる収入のこと。たとえば株式であれば、企業の株を持ち続けることで配当金が得られるし、不動産を賃貸経営している場合は家賃収入が利益となります。こうした権利収入がインカムゲインです。
投資信託を購入したら、買ったときの価格が「基準価額」となります。もし投資信託を解約した際に価格が「基準価額」よりも高ければ、その差額が利益になるのです。 投資信託は、一口あたり1万円などと、販売会社や銘柄によって価額が異なります。
投資信託の場合のインカムゲインは分配金です。分配金は投資信託の決算が行われる際に各投資家へ支払われます。 このとき、基準価額が下がることがあります。分配金が支払われる出どころは、投資信託の資産から。そのため、分配金を支払うことで投資信託の「純資産総額」が減り、基準価額が下がってしまうのです。
分配金をもらった後は、価格も一緒にチェックしておきましょう。
投資信託の基準価額はどうやって決まる?
投資信託は株や債券など、様々な企業の金融商品がいっしょくたになって運用されています。1日のうちにA社の株価が上がっていても、B社のほうは下がっているかもしれません。 株価の相場は日々変動しています。そのため、投資信託の中の株価や債券(A社やB社)の価格が動けば、基準価額も同様に上下していくのです。
ただし、株価は常に変動していますが、投資信託の基準価額はリアルタイムで反映されることはありません。 1日の終わりに、取引された株数や価格の集計をして最終決定が行われます。これは「終値(おわりね)」と呼ばれるもので、投資信託の基準価額はこの終値を反映して決定されているのです。
具体的には、まず投資信託が保有している株数と終値を集計。株の配当や債券の利息などをその時点の資産総額に加え、そこから投資信託の運用に掛かった手数料を差し引いて「純資産総額」を出します。 この純資産総額と受益権総口数を割ったものが1日の基準価額です。
投資信託の運用スタイル
投資信託は2つの運用スタイルがあります。
- パッシブ運用
- アクティブ運用
パッシブ運用(もしくはパッシブ型)は、運用目標をベンチマークと連動させて運用する方法です。ベンチマークとは、国内株式であればTOPIX(トピックス・東証株価指数)や日経平均株価のこと。こうしたベンチマークと同じように動くことで収益を狙います。 パッシブ運用を取り入れた代表的な投資信託が「インデックスファンド」です。
アクティブ運用(もしくはアクティブ型)は、ファンドマネージャーと呼ばれる人が運用目標に基づいて定めた運用指針によって、能動的に金融商品の入れ替えや売買を行います。料理人が、その日の献立に基づいて弁当箱に入れるおかずを決める、というようなイメージです。
投資信託におけるインデックスファンド(パッシブ)
インデックスファンドは、たくさんの株や債券から成り立っています。TOPIXに連動させるのであれば、TOPIXに近い値動きをしている銘柄を選び、TOPIXと同じ動きになるよう株数を調整します。
インデックスファンドの特徴
インデックスファンドの魅力は、分散投資の効果が高いことと、広い市場全体が投資対象ということです。たとえば日本のTOPIXに連動させる場合は、東京証券取引所第一部に上場している2,000社以上の企業の株が投資対象になります。
また、インデックスファンドは値動きがわかりやすいのも特徴です。インデックスファンドが投資対象にしている指数の構成比率と同じ比率での株を保有するため、値動きが常に目標の指数と連動しています。
投資信託の指数の意味を理解しておこう
投資信託が運用目標とする指数には、いろんな種類があります。どんな指数があるのか、代表的なものを見てみましょう。
日本の株式で運用する場合のベンチマーク
- TOPIX(東証株価指数) TOPIXは、東京証券取引所が株価指数を算出して公表しています。東京証券取引所第一部に上場している全ての企業が対象です。
外国株式で運用する場合のベンチマーク
MSCI(エムエスシーアイ)コクサイ・インデックス
MSCI社(Morgan Stanley Capital International社)が算出・公表している、日本を除いた先進国の株価指数です。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
MSCI ACWI(エムエスシーアイ・アクイ)と表記されています。MSCI ACWIは日本を含むものと、含まないものがあり、どちらも時価総額加重平均型の指数です。
FTSE(フッツィー)グローバル・オールキャップ・インデックス
全世界の株式市場へ投資することを目的とした指数です。日本を含んだ先進国と新興国市場の合計47カ国で構成されています。約8,000社の銘柄への分散投資が可能です。
投資信託に必要な手数料とは
投資信託を行っていく際には、必ず手数料というものが掛かります。投資信託の手数料は主に2つ。
- 購入時手数料
- 運用手管理費用
通常は、投資信託を購入する際に購入時手数料が掛かります。購入手数料は、証券会社や銀行など投資信託を販売する会社に支払うものです。
ノーロード型と呼ばれる、購入時手数料が掛からない投資信託もあります。たとえば2018年から始まった「つみたてNISA」などです。
運用管理費用(信託手数料)
投資信託を保有している間は、運用管理費用が掛かります。 運用管理費用は、「委託会社(運用会社)」・「販売会社」・「信託銀行」の3者に対して、保有している投資信託の資産から間接的に支払われます。
その他の手数料
さらに、投資信託を保有している間は、運用管理費用以外の手数料が必要です。たとえば株を売買する際の手数料や、外貨建て資産を保管するための費用などが掛かります。
投資信託は主に3つのリスクがある
投資をして利益を得るためには、必ずリスクが伴います。バイナリーオプションや仮想通貨などの投資はハイリスク・ハイリターンと言われており、これらの投資を始める際には相応の覚悟が必要です。
投資信託の場合はローリスク・ミドルリターンですが、やはり少なからずリスクがあります。では、投資信託にはどんなリスクがあるのでしょうか? 投資信託のリスクは主に3つ。
1. 価格変動リスク
株式や債券、不動産などは日々価格が変動しています。景気や経済情勢の影響が色濃く反映されるため、必ずしも投資した時より価格が上がるという保証はどこにもありません。 特に株式の場合は、短期的に売買する投資家が多く、株を「買いたい人」と「売りたい人」の需要と供給の関係によっても価格が変動します。
また、企業の業績が良ければ長期的に株価は上がっていきますが、何かトラブルが起きたときは急落することもあるのです。
2. 金利変動リスク
金利変動リスクは、特に債券に大きく影響します。金利が上がれば債券の価格は下がり、金利が下がればそれに連動して債券の価格が上がっていくことに。
不動産に関しても金利変動リスクは影響する場合があります。不動産を購入する個人や法人は、不動産ローンを利用していることが多いため、金利が上下することでローン金利にも響いてくるからです。もしローン金利が上がれば、毎月の借入れ返済額も上がってしまいますよね。 そのため、金利の変動が激しい場合は不動産の取引にも影響して、不動産価格が動いていく可能性があるのです。
3. 為替変動リスク
3つめは為替変動リスクです。為替とは、それぞれの異なる国の通貨を取引する際に利用される取引レートのこと。投資信託は、外国の株式や債券を購入する場合があります。 たとえば外国の株や債券を購入するときは、その国の通貨(米ドルやユーロなど)を通して投資を行うため、為替が変動すれば直接影響を受けるのです。
投資信託の選び方
投資信託を選ぶときは、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか?投資信託を始める前に知っておきたいポイントをご紹介します。
投資信託は3つのポイントで戦略を立てる
投資信託を始めるにあたって、まずはシンプルな戦略を立てておきましょう。 ポイントは3つ。
- 分散投資
- 長期的な投資
- 低コストを狙う
株式投資などでよく誤解されやすいのですが、「投資は短期で何度も売買してその差益を稼ぐ」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。株で言えば、デイトレードやスイングトレードを行い短期・中期的に売買を行う投資家もいます。しかし、それではリスクが大きすぎるのです。
投資信託は、分散投資をすることで、いろんな企業の株を保有して運用するという意識が大切です。また、企業が成長するためには長い時間が必要です。企業が成長していけば株価も上がっていくので、長期的なスパンで投資戦略を立てておきましょう。
また、投資信託は販売時手数料や運用管理費用などのコストが掛かります。販売会社や委託会社によってコストは異なるので、投資信託を始める前に確認しておくことが大切です。
投資は預貯金などとは違い元本割れのリスクがあります。確実に利益が得られるわけではないので、できるだけ手数料などのコストは低く抑えておきましょう。
投資信託の資産形成にはインデックスファンドを活用
投資信託で重要なのは大きな利益を出そうとするのではなく、できるだけリスクを低く抑えて「長期的」に「安定した」投資を行うことです。
インデックス投資信託であれば、低コストが実現できます。たとえば「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ)」などが取り扱う商品のほとんどはインデックスファンドです。 低コストかつ分散投資が行えるので、安定感のある投資対象として活用できます。
コア・サテライト戦略とは
コア・サテライト戦略は、金融のプロがよく取り入れている資産運用の手法の一つ。 インデックスファンドによる低コストの分散投資を行って安定した運用を目指すのが「コア」。そこからさらに分散投資の効果を高めたり、利益を求めるのが「サテライト」です。 サテライトの部分はアクティブ型の商品を活用することもあります。
「コア」と「サテライト」という2つを分けて運用するのがコア・サテライト戦略です。
インデックスファンドを選ぶときのポイント
インデックス型の投資信託は、低コストかつ分散投資を行えるというメリットがあります。インデックスファンドを取り扱っている投資信託はどこを選べば良いのでしょうか? ポイントは3つ。
- 手数料が安いところ
- 長く運用していけるか
- 投資目標の指数としっかり連動しているか
投資信託を保有していると手数料は常に掛かります。低コストを狙うためには、手数料が安いところ、もしくはノーロード(購入時手数料なし)を選びましょう。「つみたてNISA」であれば、対象商品はすべてノーロードです。
また、投資目標としている指数と同じ動きができているか、などについても注意しておく必要があります。インデックス型の投資信託はベンチマークに連動して投資することを目指しているので、指数とかけ離れていないかチェックしておくことが重要です。
投資信託が買えるところ
投資信託は販売会社(銀行や証券会社)から買うことができます。口座の種類はさまざまですが、税金が掛からない非課税口座の利用がおすすめです。
たとえばNISA口座(つみたてNISA・一般NISAなど)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などがあります。一般の口座は課税対象なので、投資信託を解約したときに利益が出ていれば所得税が課税されることになるのです。
投資信託は2通りの買い方ができる
投資信託を購入するときは、2つのパターンがあります。
- スポット買い
- 積み立て
「スポット買い」は一括で投資信託を購入する買い方で、自分で商品を決めてネット証券などの口座から購入します。 「積み立ては」、毎月一定の金額を設定して積み立てていく方法。自分が買いたい商品と積立額、買付金額を引き落とす口座を設定すれば、あとは自動的に投資信託を買い続けていきます。 特に「つみたてNISA」などは投資信託を自動で購入していく仕組みです。
楽天証券など、大手の証券会社であれば、100円から積み立てていくことができます。「100円投信」などを利用すれば、投資初心者でも安心して始められますね。
まとめ
投資信託は株式や債券、不動産などさまざまな金融商品に投資をすることができます。特定の銘柄だけではなく、国内外を問わずたくさんの企業の株を保有できたり、複数の不動産を運用していくことが可能です。
また、投資信託を保有している間は分配金といったインカムゲインが得られ、解約をした際に利益が出ていればそれがキャピタルゲインとして収入になります。 一般的な投資はミドルリスクやハイリスクのものが大多数ですが、投資信託の場合は分散投資が基本です。さらに手数料の安さや、そもそも手数料が掛からない口座などもあり、かなりローリスクな投資と言えます。
いまでは100円から積み立てられる投資信託も登場しているので、この機会に投資信託を始めてみてはいかがでしょうか。