【失敗しない不動産投資】利回りの最低ラインは何パーセント?
不動産投資を検討していると「利回り」という言葉を目にすると思います。しかし、投資の経験がない人は、そもそも利回りとは何か?どのくらいの数値が適正なのか?と疑問に思う人は多いのではないでしょうか。また、結局いくら儲かるのかが分かりにくいと思っている人もいると思います。
そこで今回は、不動産投資に関する利回りについて徹底的に解説します。この記事を読めば、利回りとは何か?結局どのくらい儲かるのか?利回りの最低ラインは何パーセントか?が分かるはずです。
そもそも利回りには3種類ある
利回りには以下3種類があります。
- 表面利回りとは?
- 実質利回りとは?
- 返済後利回りとは?
それぞれどのような計算式か、どんな状況で利用するのかを解説していきます。また、いずれの利回りも「物件の取得費用を何年間で回収できるか?」という指標です。
表面利回りとは?
表面利回りの計算式は以下の通りです。
- 表面利回り=年間家賃収入÷物件取得価格
仮に、年130万円の家賃収入がある物件を1,400万円で取得すれば、「130万円÷1,400万円=約9.3%」が表面利回りになります。表面利回りの役割は、まず数多くある物件を絞り込むための、第一段階のボーダーになることです。
ネットや広告などで投資物件を探すと「利回り」という項目がありますが、その利回りは表面利回りを表記しています。
実質利回りとは?
実質利回りの計算式は以下の通りです。
- 実質利回り=(年間家賃収入-年間経費)÷物件取得価格
年間経費とは、固定資産税や管理費、補修費用など物件運用に関するランニングコストのことです。仮に、前項と同じ物件で年間経費が30万円あれば、「(130万円-30万円)÷1,400万円=約7.1%」が実質利回りです。
実質利回りは表面利回りに経費を加味しているので、表面利回りよりも確からしい数値になります。表面利回りで絞り込んだ物件を、さらに厳選するのが実質利回りの役割です。
返済後利回りとは?
返済後利回りとは、以下のように実質利回りにローン返済額を加味します。
- 返済後利回り=(年間家賃収入-年間経費-ローン返済額)÷物件取得価格
返済後利回りの事例
前項と同じく、年間家賃収入130万円、年間経費30万円、物件取得価格1,400万円で考えます。この物件を、借入金額1,200万円、借入期間25年、金利2.5%でローンを組むと、年間返済額は約65万円になります。
そのため、このケースでの返済後利回りは「(130万円-30万円-65万円)÷1,400万円=2.5%」となるのです。
それぞれの利回りの役割
表面利回りで数ある物件を絞り込み、実質利回りでさらに物件を厳選します。そして、厳選した物件の真の利回りを計算するのが返済後利回りの役割です。本来であれば、最初から返済後利回りで計算して比較すれば良い話です。
しかし、年間経費額もローン支払い額は物件によって異なりますし、特にローン支払い額は買主によっても異なります。そのため、最初から返済後利回りを算出することはできず、一旦は全員が共通している表面利回りで物件を比較するところから始まります。
利回り以外にCFを考える
前項までで利回りの仕組みは理解できたと思います。しかし、利回りはあくまで「物件取得費用をどのくらいの期間で回収できるか?」の指標であり、結局のところいくら儲かるかは分かりません。そのため、並行してCF(キャッシュフロー)を考える必要があります。
CFとは?
CFとは、簡単にいうと「その年いくら手元に残る(儲かるか)か?」を算出するための指標であり、計算式は以下の通りです。
- CF=年間家賃収入-年間経費-年間ローン支払い額
返済後利回りと似ている部分はありますが、返済後利回りのように物件取得費用を割り戻すのではなく、単純に年間家賃収入から年間支出を差し引きます。そうすることで、その年の収益が明確になります。
CFのシミュレーション
CFのシミュレーションは以下の通りです。これは前項と同じ物件を例にしたCFシミュレーションです。
年数 | CF | 家賃収入 | 臨時収入 | ローン支払い | 経費 | 特別経費 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1年目 | 10万円 | 125万円 | - | 65万円 | 30万円 | 20万円 | 不動産取得税 |
2年目 | 29万円 | 124万円 | - | 65万円 | 30万円 | - | - |
3年目 | 18万円 | 123万円 | 15万円 | 65万円 | 30万円 | 10万円 | 退去時の補修費 |
4年目 | 28万円 | 123万円 | - | 65万円 | 30万円 | - | - |
5年目 | 27万円 | 122万円 | - | 65万円 | 30万円 | - | - |
6年目 | 16万円 | 121万円 | 15万円 | 65万円 | 30万円 | 10万円 | 退去時の補修費 |
7年目 | 26万円 | 121万円 | - | 65万円 | 30万円 | - | - |
8年目 | 25万円 | 120万円 | - | 65万円 | 30万円 | - | - |
9年目 | 15万円 | 120万円 | 15万円 | 65万円 | 30万円 | 10万円 | 退去時の補修費 |
10年目 | -6万円 | 119万円 | - | 65万円 | 30万円 | 30万円 | リフォーム |
※横スクロールできます。
空室は1年間で0.5カ月、家賃下落は1年間で1%を想定します。また、特別経費は備考欄の通りで、臨時収入は更新料や礼金の収入を加味しています。
CFと利回りの使い分け
CFと返済後利回りは似ていますが、あくまで利回りは物件を絞り込むためのものであり、CFは物件の収支をシミュレーションするものと認識ください。つまり、CFをシミュレーションするのは、表面利回り・実質利回り・返済後利回りでピックアップした物件のみに行うということです。
もちろん、時間があるなら検討しそうな全物件でシミュレーションしても良いですが、CFのシミュレーションをするにはかなりの時間がかかります。そのため、全物件でシミュレーションするのは非効率的であり、利回りで物件を絞り込んだ方が、結局は数多くの物件をチェックすることができます。
いずれにしろ、CFのシミュレーションこそが収益を明示する指標になるので、利回りと合わせて利用するようにしましょう。
利回りの最低ラインは一旦10%で考える
ここまで利回りとCFの違い、および重要性が理解できたと思います。ここで利回りの話に戻りますが、利回りはどのくらいを基準にすれば良いのでしょうか?
結論からいうと、エリアや物件によってケースバイケースなので、一概に「○%が基準」とはいえません。ただ、一般的には利回りは10%といわれており、それを最低ラインと考えても良いでしょう。この章ではその理由を解説していきます。
利回り10%は表面利回り
そもそも「利回り10%」の利回りは表面利回りを指しています。そのため、ネットなどで検索をしたときに表示された利回りが10%であれば、一般的な「利回り10%」の最低ラインをクリアしているということです。
返済後利回りで利益が出る最低ライン
上述した物件(年間家賃収入130万円、経費30万円、物件取得価格1,400万円)は、それぞれの利回りが以下の通りでした。
- 表面利回り:9.3%
- 実質利回り:7.1%
- 返済後利回り:2.5%
これを表面利回りが10%になるように、物件価格を1,300万円に下げて考えてみると、利回りは以下の通りです。
- 表面利回り:9.3%→10%
- 実質利回り:7.1%→7.7%
- 返済後利回り:2.5%→2.7%
返済後利回りの数値は2%台中盤~3%程度はないと、CFシミュレーションで収益が極端に小さくなります。つまり、表面利回りが10%以上ないと、ローン支払いを加味した収益が極端に小さくなるので、「利回り10%」が最低ラインとなっているのです。
利回り10%以下でも物件による
上述したように、利回りの基準はエリアによっても物件によっても異なります。というのも、今は低金利時代であり、ローン返済額も昔より安いため、表面利回りが多少高くても返済後利回りが高くなりやすいからです。
大事なのは、返済後利回りの数値、およびCFシミュレーションの収益額であり表面利回りではありません。そのため、利回りの基準は自分の中で持っている必要があり、その「自分の基準」をつくる材料として、以下よりエリアや物件による利回りの違いについて解説していきます。
エリアによる利回りの特徴
まずは、エリアによる利回りの特徴を見ていきましょう。利回り差が最も顕著に出るのは「エリア」です。
都心の利回りは低く地方の利回りは高い
一般的に、都心の利回りは低く、地方の利回りは高くなりやすいです。その理由は物件価格にあります。というのも、都心の物件は地方の物件よりも価格が高いのですが、その価格ほど賃料は高くならないです。そのため、「年間家賃収入÷物件取得価格」で算出される表面利回りは、都心の方が低くなります。
都心物件のメリットは空室率と家賃下落率
前項までで「利回りが高い地方の物件の方が良いのでは?」と思った人もいるでしょう。しかし、そう単純な話ではなく、都心の方が地方よりも人口が多く、賃貸ニーズが高いので、空室率や家賃下落率が低いというメリットがあるのです。
空室率と家賃下落率が低くなれば、上述したCFで算出する収益額は大きくなります。一方、確かに地方は利回りが高くなりやすいですが、結局空室率と家賃下落率が高くなればCFシミュレーションで収益は小さくなります。
このように、利回りの表面的な数値ではなく、空室リスクや家賃下落リスクも加味して考えなければいけません。
エリアごとの利回りを見てみる
次に、実際のエリアごとの利回りを比較してみましょう。今回は東京都と地方都市で比較してみます。まず、東京都の都心代表として港区、城南地区代表として目黒区、城北地区代表として荒川区をピックアップしました。
そして、地方都市の代表として大阪府堺市と福岡県北九州市をピックアップし、利回りを比較した表が以下の通りです。
港区 | 目黒区 | 荒川区 | 大阪府堺市 | 福岡県北九州市 |
---|---|---|---|---|
4.64% | 5.61% | 5.19% | 11.31% | 13.87% |
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上記はHOME’S 投資物件で「区分マンション」物件を絞り込み、エリアごとの平均値を算出した利回りです。そのため、時期によって平均利回りは異なるので、あくまで参考程度に認識ください。
低利回りの物件
前項のように、東京都と地方都市で利回りに大きな違いあることが分かります。仮に4.64%の表面利回りだと、返済後利回り、およびCFシミュレーションが赤字になる可能性があるのは事実です。しかし、そのような低利回り物件の場合、以下のような前提で購入されます。
- 物件価格を値引く
- 賃料を高く見積もる
- 経費を抑える
- 相続対策として購入
値引き前提の価格
いくらでローンを組むかにもよりますが、表面利回りが5%以下の物件で返済後利回りをプラスにするのは難しいでしょう。そのため、仮に港区の平均である「表面利回り4.64%」の物件を額面通りで購入する人は少なく、基本的には物件価格は値引かれる前提です。
経費を抑える
後は、何物件も所有していることで、管理会社への手数料や補修費用を抑えることで利回りを上げるという方もあります。また、多い事例ではないと思いますが、収益はあまり求めずに相続対策として購入する場合もあります。利回りが低かったとしても、相続後に売却しやすい立地が良いというわけです。
新築と中古の利回り比較
次に新築と中古の利回りを比較してみます。新築の利回りはデータではないので、一般論として認識ください。基本的に新築の利回りは低く、中古物件の利回りは高く、その理由は以下の通りです
- 新築物件にはプレミアム価格が上乗せされている
- 新築のアドバンテージはすぐに終わる
- そもそも新築の需要は高くない
新築物件にはプレミアム価格が上乗せされている
まず新築物件には、以下の理由によりプレミアム価格が上乗せされています。
- 売主が利益を得る必要がある
- 内覧やアフターフォローなどの費用が含まれる
- 販売経費がかかる
ただ、新築のアパートは話が別です。なぜなら、新築のアパートの場合は売主がいないので、上記が当てはまらないからです。そのため、新築の利回りが低いという点は主に区分マンション投資であり、区分マンション投資の場合は中古物件が基本と考えた方が良いでしょう。
売主が利益を得る必要がある
新築物件の場合には、売主は不動産会社になります。そのため、不動産会社として利益を出す必要があるので、その価格が上乗せされています。中古物件を売却する場合も、売主である個人が利益を求めるケースはあるでしょう。
しかし、その個人が求める利益と不動産会社が求める利益は比ではなく、圧倒的に不動産会社が求める利益の方が大きいです。つまり、物件価格に上乗せされる金額は新築物件の方が大きいということです。
内覧やアフターフォローなどの費用が含まれる
新築物件を売却するときは、売買契約から引渡しまでに内覧を行い、不備があれば補修作業があります。また、不動産会社が独自に「給湯器の故障は5年間保証する」というようなアフターフォローを設定します。
つまり、新築物件の場合はこのような経費も販売価格に上乗せされているのであり、これがプレミアム価格となります。
販売経費がかかる
利益と同じく、販売経費も新築は中古の比ではありません。もちろん、中古物件を売却するときも、チラシをはじめとした広告費用がかかります。
しかし、新築物件の場合はモデルルームを構えることも多いですし、広告量も中古物件の桁違いです。新築物件の場合には、その販売経費もプレミアム価格として上乗せされています。
新築のアドバンテージはすぐに終わる
仮に、新築物件を投資用物件として購入した場合、賃借人は「新築」という点をメリットに感じるでしょう。しかし、その「新築」というメリットもたったの1年で終わってしまいます。
そのため、新築物件を購入したとしても賃貸需要が上がる期間は短いため、新築物件は不動産投資において費用対効果の悪い物件といえます。
そもそも新築の需要は高くない
賃貸を探している人の中で、「絶対に新築物件が良い!」と思っている人は極めて少ないでしょう。「築5年以内」や「築10年以内」の築浅が良いという人はいると思いますが、新築をピンポイントで指定する人は少ないです。
つまり、新築は割高な上に「新築である」というアドバンテージもすぐ終わり、そのアドバンテージがある期間も大きな需要増とはならないです。そのため、プレミアム価格が上乗せされた分の賃料アップは期待できず、結果的に利回りが低くなりがちです。
構造による利回り比較
最後に構造による利回りを比較していきます。こちらも前項と同様、明確なデータはありませんので一般論として認識ください。
不動産投資の構造は基本3種類
そもそも不動産投資の物件には以下3種類の構造があります。
- 木造
- 鉄骨造
- RC構造
結論からいうと、木造が最も利回りが高く、鉄骨構造、RC構造とつづきます。木造と鉄骨造は主にアパート経営、RC構造はマンションに利用されている構造のため、区分マンション投資よりもアパート投資の方が利回りは高くなりやすいということです。
利回りが木造>鉄骨造>RC造の理由と注意点
利回りが木造>鉄骨造>RC造になる最も大きな理由は、物件の取得価格にあります。やはり、鉄筋コンクリート造であるRC造の方が建築費は高くなるので、中古で買うときも物件取得価格が高くなりやすいです。
しかし、その取得価格ほどの賃料上昇は望めないため、木造や鉄骨造と比べると利回りは低くなります。ただ、以下2つの注意点は頭に入れておきましょう。
注意点1:構造によって耐用年数は異なる
耐用年数は、木造:20年、鉄骨造:22年~38年(概ね30年)、鉄筋コンクリート造:47年というように構造によって異なります。耐用年数が長いほど「減価償却費用」というものを経費として計上できる期間が長いので、節税効果は高いといえます。
この点は、利回りは木造よりも低くなりがちなRC造のメリットです。また、耐用年数を超えるとその物件の売却査定額はゼロに近くなります。
不動産投資の基本は家賃収入であり売却益ではありませんが、将来的には売却することもあるかもしれません。その点において、耐用年数が長いRC造の方が有利です。
※参考:国税庁 耐用年数
注意点2:構造によって劣化具合は異なる
耐用年数から分かるように、RC造の方が木造・鉄骨造と比べると建物の劣化が緩やかです。やはり、鉄筋をコンクリートで囲っている構造なので、単純に木や鉄骨よりも耐久性が高いからです。
仮に、広さ・間取りや駅距離が同じ物件で、RC造マンションと木造アパートともに築20年だったとします。その場合、どちらの物件の方が賃料の下落率が緩下だと想像するでしょうか?大半の人がRC造を想像すると思います。
つまり、RC造の方が劣化具合は緩やかなので、家賃下落率も緩く、空室率が低くなりにくい点にもつながっていきます。
まとめ
まずは、利回りには3種類あり、それぞれの計算式と役割を理解しましょう。決して表面利回りだけで物件を判断してはいけません。また、利回りだけでなくCFをきちんとシミュレーションすることで、実際の収益が分かってきます。
これらの点を理解せずに物件選びをすると、収益性の低い物件を取得してしまうかもしれません。上述した点をしっかりと理解し、投資物件選びに役立てることが重要です。