表面利回りだけ見ていませんか?不動産の利益率を求める正しい計算方法
不動産会社が提示する利回り、そのままの利益率で運用できると信じていませんか?
不動産投資や株式投資など、あらゆる投資において「受け取った数字」を疑いなく信用するのは禁物。投資とは不確実性の強いものであり、断定できる要素の方が少ないのです。
たとえば、表面利回りは運用経費を度外視した数値であるため、利益率を計算する手段として頼れるものではありません。そもそも、表面利回りの数字自体が「かさ増し」されているケースもあるほど。
外部から受け取る情報は参考程度に、必ず自分自身で再計算する習慣を身に付けるべきなのです。今回、そのために必要な「利回りの正しい計算方法」をご紹介します。
その前に、不動産投資を始める前には、情報収集が重要です。Oh!Yaの一括資料請求なら、手軽かつ効率的に不動産投資の情報が集められます!
目次
表面利回りを信じて不動産投資を始めるのは禁物!
不動産会社の営業マンが用いる「利回り」という言葉は、満室想定時の利益率である「表面利回り」を指す場合がほとんど。実際の利益率ではなく、表面的な数値だけで簡易計算した答えであるため、現実的に達成可能な収入だと思ってはいけません。
なお、不動産情報サイトに掲載されている利回りも、表面利回りであるため注意しましょう。
運用経費を組み込んだ「実質利回り」を活用すべし
あくまで表面利回りは簡易的な指標であるため、現実的な収益モデルを調べるには「実質利回り」と呼ばれる利益率を求めなければなりません。
この項では、実質利回りの計算方法と算出に用いる諸経費の内容。くわえて、融資返済まで考慮した「返済後利回り」について解説していきます。
実質利回りの計算方法と簡易シミュレーション
満室想定時の収入額をもとに算出する表面利回りと違い、実質利回りの計算には以下のような公式を使用します。
実質利回りの算出方法 |
---|
(空室を想定した年間利益-運用経費)÷(物件価格+購入経費)× 100%=実質利回り(%) |
※横スクロールできます。
まず、満室を想定して計算を始めるのは楽観的であるため、実質利回りでは空室があると仮定した年間利益を求めます。賃貸需要の少ない地方であれば80%前後、都市部など高い入居率が期待できるエリアは90%前後で計算するなど、不動産を運用する地域特性を加味した計算が重要です。
なお、手作業での計算はやや手間がかかるため、「簡易収支シミュレーション」の利用をおすすめします。
購入・運用経費に含まれる出費とは?
実質利回りが決定的に表面利回りと異なるのは、「購入・運用経費」を組み込んでいる点。それぞれ、次のような支出が経費となります。
不動産の購入経費
出費の種類 | 課税額(仲介手数料のみ業者への支払額) |
---|---|
不動産取得税 | 固定資産税評価額に対して3~4%の課税 |
登録免許税 | 土地:固定資産税評価額に対して2%の課税(2019年3月末まで1.5%) |
建物:固定資産税評価額に対して2%の課税 | |
仲介手数料 | 不動産の購入価格に対して約3~5%(売主負担の場合は無料) |
印紙税 | 不動産の価格、状況により変動するため国税庁ホームページの確認が必須 |
※横スクロールできます。
どれも数十万円規模の出費になり、特に不動産取得税は購入から半年後以降に届くため、忘れないよう注意が必要です。
また上記のほかにも、中古不動産の購入時は「修繕費・改装費」が必要となるケースもあります。スタート直後の出費を見誤れば痛手となるため、築年数や経年劣化の程度から予想できる支出額は用意しておきましょう。
固定資産税評価額とは?
税額の計算に用いられる「固定資産税評価額」は、固定資産課税台帳に登録されている不動産の価値(評価額)です。これは、不動産取得税や登録免許税のほか、固定資産税や都市計画税の算出にも利用されます。
不動産の運用経費
出費の種類 | 課税額 |
---|---|
固定資産税 | 固定資産税評価額に対して1.4%の課税 |
都市計画税 | 固定資産税評価額に対して最大3%の課税 |
※横スクロールできます。
固定資産税は、投資家が持つ土地や不動産に対して課せられる地方税。固定資産税評価額をもとに、毎年1月1日に納税額・納税義務者が決定します。
一方、都市計画税は全ての投資家に、必ず納税義務が発生するものではありません。都市化が進められる「都市計画区域」だけが納税の対象となり、税率も地域によって様々。これは、都市計画税を徴収する理由が「都市機能の発展」を目指すものだからです。
なお、他にも運用経費として所得税や個人事業税、修繕費や損害保険料が発生するものの、これらは事前に予測することが困難。購入・運用経費にくわえ、プラス数%の上乗せで対処することをおすすめします。
掲載されている賃料が適正なのかチェック
空室を想定した年間利益と諸経費を使えば、実質利回りの計算が可能となります。ただし、このとき「資料に記載されている賃料設定」が信頼できるものか十分に確認しましょう。
なぜなら、不動産会社や情報サイトが提示する一部の資料には、賃料を高くして利回りを大きく見せる手段が使われるからです。このような不正は、様々な不動産会社や情報サイトをあたり、同一地域の類似する不動産を確認することで回避できます。
購入候補となる優れた不動産を見つけたとき、その情報が偽装されていないか確認すること。こういった疑り深い姿勢でプランを進めるほど、不動産投資における失敗は少なくなります。
購入候補は具体性のある「返済後利回り」を利用する
実質利回りによって選出された購入候補は、最終的に「返済後利回り」を算出して具体的な運用イメージを固めていきます。
先ほど紹介した「簡易収支シミュレーション」にて、「資金計画」の項目を全て入力すれば返済後利回りを求めることが可能です。このとき、1パターンだけ算出して満足するのではなく、以下のように異なる条件を試して「返済後利回りがプラスになる水準」を把握しておきましょう。
- 購入費用の何割を融資で補えば収支がマイナスになるのか
- どの程度の借入期間であれば余裕を持って返済できるのか
- メガバンクと地銀・信金の金利差で返済総額はどれほど違うのか
メガバンクは金利1%前後での融資が期待できる一方、地銀や信金では金利3%以上になるケースも珍しくありません。希望した融資条件が通るのかも分からないため、いくつかの条件で計算して「最低限死守すべき水準」を求めておけば、融資審査時の面談がスムーズに進みます。
返済後利回りの算出は融資審査時の武器になる
- なぜ、融資希望額はこの金額なのか
- このプランは金利上昇にも耐えられるのか
- 人口減少が進むなか入居率はどのように確保するのか
金融機関は「返済の見込みがある投資家」だけに貸付を行うため、上記のような質問に明確な答えを持っているほど好印象。具体的な運用イメージを持つことで、融資審査時の担当者から信頼を得られる可能性が高くなります。
融資額にかかわらず「不動産賃貸業の経営者」として、どれほどの責任感や素質があるのか見極められると意識しなければなりません。
返済後利回りを高くするための長期借入はNG
返済期間を長くするほど返済後利回りは高くなるため、一見するとキャッシュフローが潤沢になったように感じます。しかし、これは典型的な「失敗事例に繋がる行為」であるため、無計画に長期借入を申請することは禁物。
融資において重要なポイントは、できる限り低金利な金融機関を選び、必要最低限の返済期間を設けることです。これら「金利」と「返済期間」が持つ影響の大きさは、以下の表を見れば一目で分かります。
5,000万円を金利3%で借り入れた場合(返済期間35年・20年)
借入金額 | 金利 | 返済期間 | 返済額/月 | 返済総額 | 利息総額 | 返済後利回り |
---|---|---|---|---|---|---|
5,000万円 | 3% | 35年 | 19万円 | 8,081万円 | 3,081万円 | 2.9% |
5,000万円 | 3% | 20年 | 27万円 | 6,655万円 | 1,655万円 | 0.9% |
※横スクロールできます。
5,000万円を金利1%で借り入れた場合(返済期間35年・20年)
借入金額 | 金利 | 返済期間 | 返済額/月 | 返済総額 | 利息総額 | 返済後利回り |
---|---|---|---|---|---|---|
5,000万円 | 1% | 35年 | 14万円 | 5,927万円 | 927万円 | 4.2% |
5,000万円 | 1% | 20年 | 22万円 | 5,518万円 | 518万円 | 2.0% |
※横スクロールできます。
※1万円未満は切捨てています。
借入金額はそれぞれ同様であるにもかかわらず、返済総額や利息分の合計は異なります。
「融資が簡単に通る」といった理由で、審査が緩く高金利な金融機関を利用すること。および、目先の返済利回りを重視した長期借入は、これほど大きな負担をもたらすのです。
特にキャッシュフロー向上のための長期借入は、多くのベテラン投資家が注意を喚起しています。
利回りとリスクのバランスに注意しよう
地方の不動産や事故物件は買い手が付きづらいため、物件価格を低く設定するケースが多々あります。
このような不動産は、計算式の都合により表面利回りが高くなりがち。さらに、賃貸需要にも期待が持てないため、空室率が想像以上に膨らむ可能性を考慮すれば、実質利回りの算出も不確実性が強いです。
このような、需要が低いために物件価格が下げられた不動産は、満室にすれば高利回りになるものの投資先としてはハイリスク。入居率の想定、空室への対策に関する経験値の少ない初心者が、安易に手を出しても良い不動産ではないと覚えておいてください。
投資家自身の知識や経験で対応できる不動産。これを選び取ることこそ、不用意な失敗を回避するカギです。
不動産選びで参考にすべき利回り以外の情報
不動産投資で成功を収めようと考えたとき、利回りは重要なポイントとなります。
しかし、いま分かる利回りだけを重視するのは危険。単純な利回りの計算には「将来性」や「予測不能な事態」という、不動産投資において重要な視点が欠けているからです。
この項では、中長期的な不動産運用に不可欠な、利回り以外の情報をご紹介します。
投資エリアの将来性を「立地適正化計画」から予測
人口減少や少子高齢化により過疎化が進む昨今、現状では優れた利益率を誇るエリアでも、5年,10年と経過すれば街の様子は変わるはずです。
そのため、購入する不動産の目星が付いた段階で、付近の将来性を予測するために「立地適正化計画」の参照をおすすめします。これは、数十年後を見越した都市開発のプランニングシート。
その地域における商業施設や医療施設の建設、住宅地の誘導など具体的な構想が記載されており、賃貸需要の集中や過疎を予測する際に役立ちます。各自治体の意向であるため、そのまま実現する可能性は高く、参考資料としては随一の信頼性を誇るのです。
なお、自治体によっては、立地適正化計画を発表していない場合もあります。不動産の購入を検討する自治体のホームページにて、資料の有無を確認してみてください。
災害時の想定被害レベルを「ハザードマップ」で確認
日本は災害が多く、どこであっても地震や台風などの被災リスクが付きまといます。これらを完全に回避するのは不可能ですが、国土交通省が発表する「ハザードマップ」を利用すれば被害レベルを予想することが可能です。
災害の場所や規模は不規則だからと、これらの調査を怠るのは禁物。多額の資金を投入する実物資産だからこそ、使えるデータは全て活用して、損失の可能性を1%でも下げることが大切なのです。
利回りを大きく低下させる「修繕費」に注意
不動産の購入経費でも紹介した「修繕費」は、特に投資初心者が見落としやすいポイント。経験が浅い初心者にとって経年劣化の判断は難しく、たとえ修繕箇所の目星は付いても相場価格や予算感を把握できていません。
そのため、購入する不動産が新築ではないなら、事前に専門家や経験のある投資家に相談できれば理想的です。劣化状況によりケースバイケースではあるものの、修繕は数十万単位で出費が発生するため、真っ当に調査をしないまま購入に踏み切るのは危険。
リフォーム会社のなかには、初心者と知って高額な工事費用を請求する業者もいるため、最初の1件,2件目は頼れるアドバイザーを付けたいところです。これが困難であれば「中古物件を扱う書籍」を数冊手に取り、おおよその相場価格や修繕にまつわる失敗談を学び、問題の回避に向けて対策すべきです。
まとめ
今回は、利回りにまつわる注意点、および長期運用に不可欠な将来性と災害についてご説明しました。
様々な数字を扱う不動産投資は、計算が狂ったまま運用を続ければ破たんしてしまいます。また、情報の信ぴょう性は自身で確かめるほかなく、目先の利益だけ重視すれば将来の負担は大きくなる一方。
不動産投資は計画に計画を重ねた「慎重な投資家」だけが成功するのです。
計画を立てるには、情報収集が欠かせません。たった1分の申し込みで複数社の比較ができるOh!Yaの一括資料請求を是非活用しましょう。