【株式&不動産投資】投資にかかる「税金」を1から徹底解説!
税金に対する難しいイメージを理由に、投資のスタートを躊躇っていませんか?
確かに会社に会計処理を任せるサラリーマンにとって、税金は馴染み深いものではありません。しかし、投資や副業が一般化し始めた昨今、税金の知識は一社会人として必要な知識になりつつあります。
そして、近年は確定申告をサポートする制度が整ってきました。これまで税金の勉強とは無縁だった人は、いまこそ勉強をスタートするチャンスなのです。
今回は、サラリーマンから人気のある投資をテーマに、運用で発生する税金についてご説明します。
目次
税金の種類や税率は投資によって異なる
株式投資と不動産投資は、初心者から見ればどちらも「投資」に変わりありません。しかし、株式投資は利益額にかかわらず税率が20.315%である一方、不動産投資の所得税は5~45%と税率の幅が広いのです。
そのため、税金の勉強をするときには「投資」という大きな括りではなく、どの投資に対する知識なのか明確にしたうえで覚えましょう。情報の取捨選択を正しく行い、まずは「興味がある投資の税金」だけを覚えることがマスターへの近道です。
税金が発生する株式投資の利益は3種類!
ネット証券の普及により、株式投資は手軽に始められる資産運用として人気を集めてきました。株式投資のスタートにあたり証券口座を開設することになりますが、このとき選択を誤ると確定申告の手間が増えてしまうので要注意。
この項では株式投資に関する税金や、証券口座の種類についてご紹介します。
売却益:株式を売却したときの利益
証券取引所にて株式を購入し、評価額が上昇したタイミングで売却すれば、その差額が売却益として手に入ります。
このとき、株式投資では利益に対して20.315%の「譲渡益課税」が課せられます。課税額の内訳は、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%。どれほど大きな利益をあげても、この税率を超えることはありません。
配当金:企業が株主に配当する利益
投資先の企業によっては、運用成績に応じて株主に配当金を還元するケースがあります。
このとき、配当金に課せられる税金を「配当課税」と呼び、譲渡益課税と同じく20.315%の納税義務が発生します。名称が異なるだけで税率は変わらないため、譲渡益課税と配当課税はセットで覚えておいて問題ありません。
株主優待:企業が株主に提供する商品
株主優待は非課税だという認識が広まっていますが、実際には雑所得に分類される課税対象の1つ。確定申告の規定として設けられている「給与以外の所得金額が20万円を超える場合」は納税義務が発生します。
ただし、税務署が株主優待の受取状況を把握する方法は無く、内容に値段をつけることも困難であるため、雑所得として申告しない投資家は放置状態であるのが実情。制度上では申告が必要であるものの、現状ではペナルティがありません。
保有口座の種類による納税方法の違い
株式投資を始めるときに開設する証券口座は、特定口座と一般口座の2つに分類されており、さらに特定口座には源泉徴収あり・なしが存在します。
それぞれ、求められる確定申告の手間が大きく変わるため、株式投資を始めるときに必ず確認しておくべきポイントです。
特定口座
特定口座を選べば、株式売買にまつわる費用を集計した「年間取引報告書」を証券会社が作成してくれます。これは、株式投資で発生した納税義務の手間を簡易的にするもの。
個人で用意するのは大変な労力が必要であるため、納税の負担を小さくしたい場合は特定口座を選びましょう。
源泉徴収あり(特定口座)
特定口座の「源泉徴収あり」を選べば、証券会社が利益から納税義務のある税額を源泉徴収。年間取引報告書とあわせて、自動的に税務署へ必要額を納めてくれます。
確定申告にかかる手間を全て省略できるため、投資初心者は源泉徴収ありがおすすめです。ただし、以下の場合には年間取引報告書をもちいて、自身で確定申告を行う必要があります。
1.複数の証券会社で株式投資を行い、その全ての損益を合算して申告したい場合 2.過去3年間に計上した譲渡損失を、繰越控除により相殺したい場合
他の証券会社を利用した際の損失、または過去の損失額を当年度の利益と合算する場合など、利益圧縮で納税額を小さくする場合は投資家による確定申告が必要です。
源泉徴収なし(特定口座)
「源泉徴収なし」を選択した場合、証券会社が進めてくれるのは年間取引報告書の作成まで。確定申告の手続きは、投資家自身が行わなければなりません。
ただし、株式投資での利益が「給与以外の所得金額が20万円を超える場合」を満たさない場合は納税が免除されます。この特例は「源泉徴収あり」を選択すれば適用されないため、株式投資に投じる金額に応じて使い分けることをおすすめします。
一般口座
「一般口座」を選択した場合、年間取引報告書の作成から確定申告まで、納税に関する全ての作業を投資家が行います。
「年間利益が20万円以下なら納税義務が無い」というメリットはあるものの、これは特定口座の「源泉徴収なし」と同様。一般口座だけの利点は無いため、基本的には特定口座の利用をおすすめします。
株式投資で節税するなら「NISA」は必須!
原則として株式投資で得た利益には、一律20.315%の税率が課せられます。
しかし、2014年にスタートした非課税制度「NISA」を利用することで、年間120万円までの購入株式は売却益・配当金ともに税金が免除。非課税期間として設けられた5年のあいだは、いつどれほどの価格で売却しても税金が課せられないのです。
これほど大きな恩恵があるにもかかわらず、NISAのデメリットは「損益通算」ができないという1点のみ。NISA口座の開設や維持は無料であるため、株式投資のスタートとともに利用申請することをおすすめします。
なお、NISAを利用した株式を5年以上保有した場合は、新たに120万円の非課税枠を利用して再登録する「ロールオーバー」。もしくは、通常の課税口座に移行することとなります。
税金が発生する投資信託・ETFやREITの利益は2種類!
投資信託やETF、REITは低リスクな運用方法として人気を集める金融商品。売買注文さえ出しておけば、投資先の選定・運用は専門家に一任できるため、わずかなスキマ時間で取り組める投資として優秀です。
この項では、これら3つの投資に関する利益、税金の種類についてご紹介します。
売却益:投資信託を売却・解約したときの利益
買値より売値が大きい場合は「売買差益」が課税対象になります。税率は20.315%であるため、株式投資と全く同じだと考えて問題ありません。
なお、投資信託が満期に達した時点で受け取る「償還差益」も、売却益と同様の税率がもちいられます。
分配金:投資信託から投資家に分配される利益
運用利益に応じて投資家に還元される分配金は、原則として株式投資の配当金と同様に20.315%の税金が課せられます。ただし、投資信託に限り分配金は2種類に分かれており、それぞれ以下のような特徴を持ちます。
投資信託の分配金 | 分配金の内容 |
---|---|
普通分配金 | 運用利益の一部を投資家に還元したもの |
特別分配金 | 利益が少ないため運用資金を削って分配したもの |
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純粋に利益が分配されている「普通分配金」には、20.315%の課税が行われますが、運用元本が返却されているに過ぎない「特別分配金」は税金がかかりません。
納税方法の仕組みは株式投資と同じ
償還差益や分配金など特有の呼び名があるものの、基本的には株式投資と同じだと考えて良いです。
納税方法も保有口座により決定するため、確定申告にできる限り手間をかけたくなければ「特定口座(源泉徴収あり)」がおすすめ。投資額が小さく、年間利益が20万円を下回りそうであれば「特定口座(源泉徴収なし)」の利用が適しています。
非課税制度NISAと「つみたてNISA」が利用可能!
投資信託やETF、REITでもNISA口座が利用可能です。くわえて、金融庁の審査をクリアした投資信託に限り、より少額での長期運用に特化した「つみたてNISA」が利用できます。
これは、非課税枠を年間40万円に抑えて、非課税期間を20年間に引き延ばした新制度。中期間しか保有できないNISAでは短く、より長期的な時間軸で投資をしたいというニーズに最適な選択肢です。
なお、NISAとつみたてNISAは片方しか利用できず、非課税口座は1人につき1つしか開設できないため注意してください。
税金が発生する不動産投資の利益は2種類!
不動産投資には証券会社における特定口座のような制度が無いため、投資家自身が確定申告を行わなければなりません。そのため、数ある投資のなかで特に税金への理解が求められます。
この項では不動産投資に関する利益と、税金の種類についてご紹介します。
売却益:不動産を売却したときの利益
不動産の売値が買値を上回ったとき、利益に対して「譲渡所得税」が課せられます。このとき注意すべき点は、不動産の保有期間によって適用される税率が変わるということ。
不動産の保有期間が5年以上であった場合は「長期譲渡所得」に分類され、利益額に対して15%の税率が適用されます。一方、保有期間が5年未満であった場合は「短期譲渡所得」に分類され、適用される税率は利益に対して30%です。
このような規定により、短期売買は納税額が倍近く必要になるため、一般的な個人投資家は長期運用を前提として不動産投資を行っています。
運用益:賃料収入などで得た年間利益
長期運用を行う不動産投資では、売却益よりも賃料収入による運用益がメインです。運用益に対する課税は売却益と異なり、譲渡所得税ではなく「所得税」の税率が適用されます。
なお、運用益の納税額には累進税率がもちいられており、所得額に応じて以下のように変動します。
所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 控除なし |
330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,001万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
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出典:(国税庁「所得税の税率」を抜粋・改編)
不動産投資は利益以外にも税金がかかる
不動産投資にまつわる税金は多岐にわたり、上記以外にさまざまな納税義務が発生します。
多くが固定資産税評価額(不動産の価額)を基準にしているため、税率は数%ながら数十万単位の出費になることがほとんどです。
税金の名称 | 発生時期 | 税額 |
---|---|---|
不動産取得税 | 購入から半年 | 固定資産税評価額に対して3~4% |
登録免許税 | 購入時 | 固定資産税評価額に対して2% |
印紙税 | 売買時 | 取引金額に応じて変動あり。最大3万円 |
固定資産税 | 運用中 | 固定資産税評価額に対して1.4% |
都市計画税 | 運用中 | 固定資産税評価額に対して最大3% |
個人事業税 | 運用中 | 控除や経費を引いた所得額に対して5% |
復興特別所得税 | 運用中 | 所得額に対して2.1% |
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上記のうち、個人事業税は事業規模が大きくなった場合にのみ、表に記載された税額の納税義務が発生します。このとき、もちいられる事業規模の判断基準は以下の通り。
個人事業税の納税義務が発生する基準 |
---|
独立家屋10棟以上を所有している |
独立室数10室以上を所有している |
貸付面積が2,000平方メートル以上ある |
貸付可能な住宅用の土地を10件以上所有している |
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出典:東京都主税局「個人事業税」を抜粋・改編
上記を満たしていれば事業規模が大きいと判断され、個人事業税の納税義務が発生するため覚えておいてください。
事業上の支出は経費計上して節税可能!
不動産投資にNISAのような非課税制度は無いですが、事業出費を経費として計上できるメリットがあります。
租税公課に分類される各種税金をはじめ、運用利益を高めるための書籍やセミナー代、データを管理するパソコンなどを所得額から差し引くことが可能。知識や資産を増やしつつ節税できることが魅力です。
税金を納めるときの注意点
誤った内容で確定申告を行ったとき、それが故意か過失かに関係なくペナルティが与えられます。
また、投資で得た利益を申告しない場合、経費を不当に多く見積もっていた場合は「脱税行為」と認識され、より重いペナルティや刑事罰の対象となるため注意が必要です。
過少申告加算税
納税額が本来納付すべき金額に足りなかった場合、「過少申告加算税」が課せられます。
過少申告加算税の適用基準 | |
---|---|
更生の予知前 | ペナルティとして5%の増税 |
更生の予知後 | ペナルティとして10%の増税 |
※横スクロールできます。
過少申告加算税は、上記のように「更生の予知」を境に増税の大きさが変わります。
ここで使用される更生の予知とは、過少申告によりペナルティが与えられることを勘付いている状態です。つまり、何らかの方法で「税務署が納税者に罰則を与えに来る」ことを知り、直接指導される前に修正申告を行ったとき、これは更生の予知後として判断されます。
無申告加算税
納付期限までに納税を行わなかった場合、「無申告加算税」が課せられます。
無申告加算税の適用基準 | |
---|---|
納税額が50万円未満である場合 | ペナルティとして15%の増税 |
納税額が50万円以上である場合 | ペナルティとして20%の増税 |
※横スクロールできます。
無申告加算税は、上記のように「納税額が50万円」を超えるか否かにより罰則が変わります。
なお、税務署が無申告を発見する前に確定申告を行えば、ペナルティは5%まで減額。期限後申告として処理されるため、納付期限に間に合わなかった場合でも速やかに自主申告をすべきです。
延滞税
納付期限を過ぎてから行った期限後申告、および修正申告には「延滞税」が課せられます。
なお、延滞税の算出のみ複雑な仕組みになっており、完納するまでの日数で税額が変動するため注意。再び誤申告をしてペナルティが重ならないよう、国税庁が用意している「延滞税の計算方法」からシミュレーションを利用して計算しましょう。
重加算税
悪意のある過少申告、もしくは無申告により脱税行為だと判断された場合、「重加算税」と呼ばれる最も重いペナルティが課せられます。
重加算税の適用基準 | |
---|---|
悪意のある過少申告 | ペナルティとして35%の増税 |
悪意のある無申告 | ペナルティとして40%の増税 |
過去5年以内に脱税履歴がある場合 | それぞれ上記にプラスして10%の増税 |
※横スクロールできます。
故意による偽造や隠蔽行為には、上記の罰則が与えられます。そして、過去5年以内にも脱税行為がある場合、さらに10%ものペナルティが課せられるのです。
これにより過少申告者は最大45%の増税、無申告者は最大50%の増税という、非常に重い負担を強いられます。
確定申告をサポートするサービス
故意ではない誤申告で、多くの税額を負担する事態は避けたいもの。税金に詳しくない人たちは確定申告の時期が来るたび、冷や汗をかきながら「これで間違っていないかな?」という不安に苛まれます。
この項では、確定申告への不安解消に役立つ「確定申告ソフト」や「税理士」についてご紹介します。
確定申告ソフト
パソコンやスマートフォンから扱える、帳簿付けのサポートに特化したソフトウェアが「確定申告ソフト」です。
各種銀行やクレジットカードと連携させることで、決済履歴から必要なデータをピックアップ。取得されたデータにカテゴリー情報を付与すれば、わずかな手間で支出の仕訳が完了します。
最終的には累積された支出データをまとめて、確定申告の必要書類を作成してくれる優れものです。利用プラン次第では電話やメッセージによる直接サポートにも対応しており、初めての確定申告でも安心して臨めます。
税理士への依頼
できる限り時間と労力をかけたくない場合は、確定申告ソフトよりも「税理士」への依頼がおすすめ。利用料金は高くなるものの、確定申告ソフトでは省略できない入力作業を一任することが可能です。
また、「これは経費になるのだろうか?」といった疑問にも答えてくれるため、書籍やネットを使った独学より確実な知識が身に付くこともメリット。専門家のバックアップがあれば、確定申告への不安はほとんど無くなるはずです。
まとめ
今回は、それぞれの投資における利益と、それに対する税金の種類について解説しました。
確定申告に不安は付きものですが、株式投資や投資信託など、証券口座を利用する投資は特定口座の「源泉徴収あり」を選択。不動産投資であれば、確定申告ソフトや税理士への依頼を活用することで、スムーズに納税できる場合がほとんどです。
大切なのは、自身が取り組む投資に必要な知識だけを覚えること。これさえ怠らなければ、スタートから確定申告につまずくことなく投資を始められます。