資産をつくるならどっち?現物不動産投資VSクラウドファンディング
将来のために資産をつくりたいと思い、投資について色々と調べていくうちに、不動産投資に魅力を感じる人もいるでしょう。不動産投資は、比較的安定した収益を低リスクで得らえる点が、特に人気のある理由です。
不動産投資と言っても何種類かあり、それぞれ特徴が異なります。今回は、その中でも「現物不動産投資(以下、不動産投資)」と「不動産投資型クラウドファンディング」に注目してみました。
というのも、不動産投資は王道であるのに対して、不動産投資型クラウドファンディングは最近注目され始めた投資方法だからです。この記事を読めば、それぞれの投資で収益を上げる方法、それぞれの投資はどの点が異なるのか?どんな人に向いている投資なのか?を理解できるはずです。
目次
不動産投資型クラウドファンディングとは何か?
まずは耳慣れない「不動産投資型クラウドファンディング」について、以下の点を理解しておきましょう。
- クラウドファンディングとは?
- 不動産投資型クラウドファンディングの仕組み
- 間違えやすいソーシャルレンディングとの違いは?
- 間違えやすいREITとの違いは?
クラウドファンディングとは?
そもそもクラウドファンディングとは、ネットを介して不特定多数から資金を募ることです。言い換えると、新しい形の資金調達手段ともいえます。
クラウドファンディングには色々な種類があり、たとえば「絵本をつくるから出資してください。特典はサイン本です」などのパターンもあります。このような場合は、その絵本を作る人のファンが主に出資するパターンです。
一方、ファンド型クラウドファンディングと呼ばれるものは、ある事業にリターンを求めて出資します。リターンは、その事業で上げた利益の一部です。いずれにしろ、クラウドファンディングは投資家が「出資したい」と思ったら、そのプロジェクトに出資をするという仕組みになっています。
不動産投資型クラウドファンディングの仕組み
クラウドファンディングの仕組みは前項の通りですが、今回はその中でもの不動産投資型クラウドファンディングに注目しています。不動産投資型クラウドファンディングも、前項で解説したように投資家から出資を募ります。
その出資額とクラウドファンディング事業者の資金を合わせて不動産を取得し、その不動産で上げた収益を投資家に還元(分配金)するという仕組みです。投資家は、その「分配金」によって収益を上げます。
間違えやすいソーシャルレンディングとの違いは?
不動産投資型クラウドファンディングと似ている投資として、ソーシャレンディングが挙げられます。ソーシャレンディングは、ソーシャレンディン事業者を通じて事業や企業にお金を貸し付ける(投資する)という仕組みです。
ただ、不動産投資型クラウドファンディングとソーシャレンディングには以下の違いがあります。
- ソーシャレンディングは不動産事業以外もある
- ソーシャレンディングの収益は「元本+利息」
ソーシャレンディングは不動産事業に限りませんが、不動産投資型クラウドファンディングは不動産事業に限ります。また、ソーシャレンディングは貸し付けになるので「利息」がリターンですが、不動産投資型クラウドファンディングは家賃収入の一部がリターンになります。
間違えやすいREITとの違いは?
また、もう1つ間違えやすいREITとの違いは、以下の点になります。
- 投資額
- リスク分散
- 流動性
- 収益性
- レバレッジ効果
REITを簡単に説明すると、株のように上場されているREITを購入することで、REIT事業者に出資しているという扱いになります。その出資金と事業者の融資金を合わせて物件を購入し、その物件の賃料収入を分配金として受け取ることで投資家は収益を上げます。
投資額
投資額は、クラウドファンディングは1万円からで、REITは銘柄によって異なります。ただ、REITは一口単位になり、最低でも数万円は必要です。
リスク分散
REITの場合、購入する物件は複数です。そのため、1つの物件の運用が上手くいかなくても、ほかの物件でカバーできる可能性もあるのでリスク分散できているといえます。クラウドファンディングは、基本的に個別物件が対象になっているケースが大半なので、リスク分散できません。
ただし、複数の案件に出資(投資)することでリスク分散は可能です。とはいえ、REITは1つの銘柄でも勝手にリスク分散しているので、REITの方がリスク分散という意味では一枚上手でしょう。
流動性
クラウドファンディングは、基本的に満期まで現金化できません。期間は案件ごとに異なるので、よく確認する必要があります。一方、REITは株式と同じように上場されているので、市場が開いている平日の日中であれば売買は自由です。
収益性
収益性は、REITの利回りが4%ほど※なのに対して、クラウドファンディングは10%を超える案件あります。
※参考:不動産証券化協会
レバレッジ効果
レバレッジ効果とは、「小さい資金で大きな資産を得る」ことです。REITは信用取引という手法で、自己資金の3倍程度までの取引が可能です。一方、クラウドファンディングの場合は、レバレッジ効果がなく、自己資金のみの投資となります。
不動産投資の仕組み
不動産投資の仕組みも簡単に解説しておきます。まず、不動産投資には以下のような種類があります。
- 区分マンション
- 区分アパート投資
- アパート一棟投資
- マンション一棟投資
いずれにしろ、上記の物件を購入し、管理会社に物件の管理を委託します。そして、各部屋に客付けをして賃料収入を得るのが、不動産投資の基本です。
クラウドファンディングと不動産投資の違い
ここまでで、不動産投資型クラウドファンディングの仕組みが分かったと思います。次に、本題である不動産投資VSの不動産投資型クラウドファンディングを見ていきましょう。
項目 | 不動産投資型クラウドファンディング | 不動産投資 |
---|---|---|
初期費用 | ◎小さい | △大きい |
運用の手間 | ◎ほとんどない | ○多少ある |
流動性 | △満期まで売れない | △いつでも売れるが売りにくい |
キャピタルゲイン | △ない | ○メインではないがある |
収益性 | △高くない | ◎高い |
初期費用はクラウドファンディングの方が小さい
投資をはじめるときの初期費用はクラウドファンディングの方が小さく、不動産投資は投資の中でも比較的大きいといえます。上述したように、クラウドファンディングは1万円から出資可能です。
一方、不動産投資の場合には、以下のような費用がかかります。
- 頭金
- 仲介手数料
- 登記関係費用
- ローン関係費用
仮に、頭金ゼロ円で融資の審査に通ったとしても、そのほかの費用がかかります。上記は物件価格によって異なりますが、百万円単位で費用が必要なケースが多いです。この点は、少額から投資できる不動産投資型クラウドファンディングの方がメリットは大きいでしょう。
運用の手間はクラウドファンディングの方がかからない
運用に関する手間は、不動産投資型クラウドファンディングはほぼかからないと言って良いでしょう。一方、不動産投資も投資の中では手間はかからない方ですが、不動産投資型クラウドファンディングよりはかかります。
クラウドファンディングは事業者にお任せ
不動産投資型クラウドファンディングにかかる手間は、どの案件に出資するか?を決めるときくらいです。ただ、その案件(物件)の概要や収益の計算などは事業者が事前に行っており、それらのデータを見ながら案件を決めることが可能です。そのため、投資の初心者の方でも容易に案件は選べるでしょう。
また、不動産投資型クラウドファンディングの場合、出資をしたら事業者が運営してくれます。つまり、管理会社の選定も不要ですし、賃貸借契約を結ぶこともありません。案件を選んだら、事業者が勝手に物件運営をして家賃収入が分配されるのを待つだけです。
不動産投資の手間は物件選びが最も大きい
不動産投資の手間で最も大きいのは「物件選び」です。予算・エリア・広さ・間取りなど、あらゆる角度から物件を選びます。特に、不動産投資の場合は一千万円単位の高額な商品になるので、一度購入すると簡単に売買することはできません。
そのため、物件選びにかかる労力は相当なものです。ただ、物件選びの後は管理会社に運営は任せます。家賃を改定するか?賃貸借契約を結ぶか?や確定申告を作成するなどの手間はありますが、そこまで大きな手間ではないでしょう。
ただ、不動産投資型クラウドファンディングの手間が極端に小さいので、不動産投資の方が手間はかかるといえます。
流動性はどちらも良くないが種類が異なる
次に流動性に関してです。流動性とは「売りやすさ」や「現金化のしやすさ」のことであり、この点はクラウドファンディングも不動産投資も良くはありません。しかし、「良くない」種類が異なるので、以下より解説します。
クラウドファンディングは満期まで現金化できない
上述したように、クラウドファンディングの場合は満期まで現金化はできません。というのも、事業者は投資家からお金を集め、そのお金で物件を取得し運用します。仮に、投資家の都合で出資金を返金すると、事業が成り立たなくなってしまうからです。
そのため、満期までは現金化できずに、案件によって6か月が満期の案件もあれば、24カ月が満期の案件もあります。満期までの期間は投資金額を拘束され、自分の手元に戻ってくることはありません、
不動産投資は売却までに時間と費用がかかる
一方、不動産投資の場合には「売ってはいけない期間」はありません。自分の意志で、好きなときに売却することは可能です。ただし、売却するまでには時間がかかり、諸費用もかかるため、その点においては流動性が低いといえます。
売却までの時間
現物不動産を売却するときには以下の流れになります。
- 査定をする
- 仲介会社を決めて媒介契約を締結する
- 売却活動をする
- 検討者と交渉をする
- 申込および契約をする
- 物件の引き渡しをする
このように色々な手順を踏むため、査定~物件引き渡しまで半年程度かかることも少なくありません。
売却までの費用
また、売却にかかる諸費用は以下の通りです。
- 登記関係費用
- 仲介手数料
特に、仲介手数料は売却価格が400万円超なら「売却価格×3%+6万円」かかります。そのため、売却に関する諸費用だけで100万円を超えることも多いです。
このように、不動産投資はいつでも売却することはできますが、いつ・いくらで売れるか分からず、諸費費用もかかってきます。
キャピタルゲインが期待できる点は不動産投資が良い
次にキャピタルゲインについてです。不動産投資型クラウドファンディングはキャピタルゲインを期待できませんが、不動産投資は期待できます。
キャピタルゲインとは?
そもそもキャピタルゲインとは、保有している資産を売却して利益を得ることです。その反対に、インカムゲインとは、保有している資産から得る継続的な収益のことです。不動産投資型クラウドファンディングでいう分配金、不動産投資でいう家賃収入はインカムゲインに該当します。
不動産投資のキャピタルゲインは売却益
上述したように、不動産投資のメインは家賃収入というインカムゲインになります。そのため、キャピタルゲインである不動産の売却益は、基本的には収益としてカウントしません。
理由は、前項のように不動産は流動性が低い点と、売却に伴い諸費用が高額になるので売却益が出にくいからです。しかし、将来的に資産価値が上がることもあり、売却益が出るケースもあります。
基本的には、不動産を保有しておきインカムゲインをメイン収益と考えても良いですが、将来的にキャピタルゲインを狙える可能性があるのは不動産投資のメリットでしょう。一方、不動産投資型クラウドファンディングにはキャピタルゲインという考え自体ありません。
収益性は不動産投資の方が高い
最後に収益性に関しての比較です。収益性は、クラウドファンディングよりも不動産投資の方が高いといえるでしょう。
利回りはクラウドファンディングの方が良い
収益性は不動産投資の方が上ですが、利回りは不動産投資型クラウドファンディングの方が上でしょう。不動産投資型クラウドファンディングの利回りは4%~10%をゆうに超える案件もあります。これは、投資の中でも高い利回りといえます。
一方、不動産投資の利回りは物件によりますが、ここでは不動産投資型クラウドファンディングと比較するために「返済後利回り」という手元に残るお金ベースで考えます。そうすると利回りは2%中盤~3%台です。
不動産投資はレバレッジ効果が大きい
前項のように利回りは不動産投資型クラウドファンディングの方が高いですが、不動産投資はレバレッジ効果が大きいので結果的に収益は跳ね上がります。レバレッジ効果とは「小さい資金で大きな資産を取得すること」であり、不動産投資においては融資を指します。
融資を受けることで自己資金の10倍以上の資産を取得することも可能です。一方、上述したように不動産投資型クラウドファンディングはレバレッジ効果がありません。たとえば、クラウドファンディングの利回りが10%、不動産投資の返済後利回りが3%だとして、どうちらも300万円投資します。
その場合、不動産投資型クラウドファンディングの収益は30万円(300万円×10%)ですが、不動産投資の場合はレバレッジを効かせて、300万円の資金で3,000万円の物件を購入できます。そうすると、たとえ利回りが3%でも90万円(3,000万円×3%)の収益になるということです。
不動産投資に向いている人とクラウドファンディングに向いている人
ここまでで不動産投資と不動産投資型クラウドファンディングの違いが分かったと思います。これらの点を踏まえて、それぞれの投資に向いている人は以下です。
- 資産をつくりたいなら不動産投資
- 小さいリスクでコツコツ資産を増やすならクラウドファンディング
資産をつくりたいなら不動産投資
ここでいう「資産をつくる」とは、「副業」と呼べるくらいまで投資によって収益を得るということです。つまり、月数千円や1~2万円という収益ではなく、月10万円単位の収益を上げる投資を指します。
そこまでの投資を目指すのであれば、レバレッジ効果を利用して収益額を上げられる不動産投資が向いています。というよりは、レバレッジ効果がない投資では、そこまでの資産をつくるのは難しいでしょう。
また、不動産投資は家賃収入というある程度安定した収益なので、大きなリスクもありません。その点も、不動産投資が資産をつくりやすい理由の1つといえます。
小さいリスクでコツコツ資産を増やすならクラウドファンディング
一方、不動産投資のように初期費用を100万円単位で投下したくない場合や、自己資金以上の投資をしたくない場合は不動産投資型クラウドファンディングが向いているでしょう。
もちろん不動産投資型クラウドファンディングも事業者が不動産運営に失敗するリスクはありますが、少額のため分散投資できます。分散投資をすることで、1つの案件で失敗しても、ほかの案件でカバーできるというメリットがあります。
このように、収益額は決して大きくありませんが、コツコツと資産を増やしたいのであれば、不動産投資型クラウドファンディングが向いているでしょう。
まとめ
このように、不動産投資といっても現物不動産を購入し家賃収入を得るか、不動産投資型クラウドファンディングで分配金を得るかで上述した違いがあります。大事なのは、それぞれの特徴をつかみ、自分の投資スタイルにはどちらが合っているかを確認することです。
特に、レバレッジ効果による収益額と初期費用は大きな違いであり、その点がそれぞれの投資の特徴ともいえます。資産を作りたいのか?リスクを取らずに投資したいのか?など、投資の目的に沿って投資方法を選定しましょう。