財形住宅貯蓄のすべて~貯金ゼロからマイホームの頭金を貯める方法~
By Oh!Ya編集部
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マイホームが欲しいとお考えの方にとって、まず考えなければならないのは住宅ローンの審査にいかにパスするかです。そのためには頭金としてまとまったお金が必要になりますし、そもそも住宅ローンにパスするだけの環境が必要です。
しかし、自分は貯金が苦手で頭金にできるだけの貯金を持っておらず、これからも貯金をする自信がなく、そんなことを言っていたらいつまで経ってもマイホームは実現しないとお悩みではないでしょうか。
そんな方におすすめしたいのが、「財形住宅貯蓄」です。財形貯蓄のことは聞いたことあるという方は多いかも知れませんが、これはその住宅資金貯蓄版だと考えればわかりやすいと思います。
財形住宅貯蓄とはどんなもので、マイホームを実現するためにどんなメリットを発揮してくれるのか?そんな疑問にお答えしつつ、財形住宅貯蓄のすべてを解説していきたいと思います。
マイホームは欲しいけれどお金が貯まらない方の特効薬「財形住宅貯蓄」
最初に、財形貯蓄という制度について知っていただき、その一種である財形住宅貯蓄についての概要を知っていただきたいと思います。この制度を知れば、これまでマイホームの頭金がなかなか貯まらなかった方であっても貯金ができそうだというイメージをつかんでいただけると思います。
財形住宅貯蓄とは?
住宅財形貯蓄は、財形貯蓄という制度の中にあるひとつの仕組みです。財形貯蓄制度については次項で解説しますが、財形貯蓄は会社に勤めている人が会社を通じて貯金をする制度であり、その住宅購入資金版が財形住宅貯蓄です。
半ば強制的に貯金をするため貯金がなかなか続かない人であっても成功しやすいことで知られる財形貯蓄ですが、その中でも財形住宅貯蓄は住宅購入やリフォームといった資金以外ではお金を引き出すことができないので、この強制力がより貯金を成功させやすくしてくれると言えます。
そもそも財形とは何か
財形住宅貯蓄は住宅購入やリフォームの資金に限定した財形貯蓄であると述べましたが、それでは財形貯蓄とはどのような制度なのでしょうか。
会社に勤めているサラリーマンやOLといった方々のために用意されている制度で、会社が給料から天引きの形でお金を預かり、それを金融機関に貯蓄していくのが財形貯蓄です。
本来、会社が支払ったあとの給料が何に使われているかを関知することはありません。貯金をしたいのであれば社員が自らすれば良いだけのことなのですが、それだとどうしてもお金が残らず、貯金が続かないという人はたくさんいます。そんな人のために会社が給料からお金を天引きして金融機関の口座に入れてくれるので、会社にとって財形貯蓄は福利厚生の一環として位置づけられています。
なお、財形貯蓄には一般財形貯蓄と財形年金貯蓄、そしてこの記事で詳しく解説する財形住宅貯蓄があります。一般財形貯蓄は特に用途の制限を設けていませんが、住宅はマイホーム購入、年金は老後資金といったように使途が限られています。
財形住宅貯蓄の資金使途
マイホーム購入のための有効な貯金方法と思われる財形住宅貯蓄では、貯めたお金を以下のような使途に使うことができます。
- 住宅の新築費用
- 中古住宅の購入費用
- リフォーム費用(ただし工事費が75万円を超えるリフォーム工事)
ここでいう住宅とは戸建て住宅だけではなく、マンションにも適用されます。マイホームが欲しいとお考えの方で頭金すらまだないという方は、今からすぐに始められる貯金術です。
財形住宅貯蓄を利用できる人
財形住宅貯蓄には、利用できる人の要件があります。以下の要件を満たしているかどうかを、まずはチェックしてみましょう。
- 満55歳未満
- 他の住宅財形契約がない人(一般、年金の財形貯蓄とは併用可能)
- 勤務先に財形貯蓄の制度がある
先ほども述べたように財形貯蓄は企業の福利厚生です。そのため会社によっては制度そのものを導入していないことがあるため、財形住宅貯蓄を利用したい場合は勤務先がこの制度を導入しているかどうかの確認が必要になります。
財形住宅貯蓄の利用に向いている人
財形住宅貯蓄の制度が勤務先にある人にとってはマイホーム購入資金を用意する有効な選択肢となりうる財形住宅貯蓄ですが、特に以下のような人に向いている制度です。これらのひとつでも多く該当する方は、ぜひ財形住宅貯蓄を検討してみてください。
- 勤務先に財形貯蓄の制度がある
- 自分で貯金するのが苦手でこれまで成功しなかった人
- 所得が高くなく貯金に回すだけのお金がない人
- 住宅ローンの審査に通るか自信がない人
4つ目の要件について、少々不思議に感じた方もおられるでしょう。これについては、次章の財形住宅貯蓄のメリットで詳しく解説します。
財形住宅貯蓄のメリット
給料天引きなので半ば強制的に貯金ができるというのは住宅財形貯蓄のメリットとして知られていますが、実はメリットはそれだけではありません。意外に多いメリットも含めて、住宅財形貯蓄の魅力をご紹介します。
半ば強制的に頭金が貯まる
住宅財形だけに限らず、財形貯蓄はすべて勤務先の給料から天引きされ、それが契約をしている金融機関に回されます。もちろん同じことを自分でやっても効果は同じですが、一度でも自分の手元にお金が入ると使ってしまうという人にとって、この強制力はお金を貯めるという強い意志を形にするのに最適だと思います。
お金を引き出しにくいため手を付けてしまうリスクが低い
いくら財形貯蓄といっても自分のお金なので、お金の入用があるということで引き出してしまってはせっかくの貯蓄も意味がなくなってしまいます。一般財形貯蓄だと自由に引き出せてしまうので貯金を守る効果はあまり発揮されませんが、住宅財形の場合はマイホームの購入やリフォームという本来の使途でしか引き出すことができないため、この「引き出しにくい」ということが逆にメリットになります。
財形住宅融資による有利な住宅ローンが利用できる
上記の2つはどちらも貯金に対する意志が弱い人、貯金の習慣に自信が持てない人向けのメリットですが、財形住宅貯蓄にはこれ以外のメリットもあります。特にマイホームを購入したいとお考えの方にとって大きな意味を持つのが、「財形住宅融資」です。
頭金を貯めてマイホームを購入しようとしている人にとって、頭金が貯まった次は住宅ローンの審査という関門があります。この関門が意外に手ごわく、せっかくお金を貯めたのに住宅ローンの審査に通らないばかりにマイホームの夢を実現できないでいる人もたくさんいます。そんな時に頼りになるのが、財形住宅融資です。
財形住宅融資とは財形貯蓄をしている人だけが利用できる住宅ローンで、「1年以上継続」「2年以内に財形貯蓄の預入をしている」「残高50万円以上」という条件を満たせば利用が可能です。市中銀行よりもローン金利が安いというメリットもあるため、マイホーム購入を目的に財形住宅貯蓄をしている人は利用しない手はないでしょう。
元本550万円までの運用益が非課税
財形貯蓄には非課税優遇制度があります。上限は550万円までとなっており、その金額をはみ出したとしてもはみ出した分にだけ課税されます。ここでいう課税とは運用益に対する課税のことで、550万円分までは運用益が丸々自分のものになります。
ただし、財形貯蓄で利用することができる金融商品はいずれも低金利なので、運用益といってもそれほど大きな金額にはならず、メリットしては「無いよりまし」という程度なのかもしれません。
勤務先の制度によっては奨励金が出ることも
財形貯蓄を導入しているすべての企業に当てはまることではありませんが、財形貯蓄を続けている人に対して奨励金を出している企業があります。財形貯蓄はふくりこうせいの一環であるとのべましたが、その性格上福利厚生に力を入れている企業ほど手厚い奨励金を出している傾向があります。
奨励金はおおむね年利1%~5%程度で、これが積立運用にプラスされます。仮に最も低い1%だったとしても、この低金利時代に1%の利回りを出せて、しかも550万円までは非課税という投資環境はかなり恵まれていると言えます。
財形住宅貯蓄のデメリット
住宅財形貯蓄のメリットとして5つの項目をご紹介しましたが、次はデメリットにも触れておきましょう。いずれも住宅財形貯蓄そのもののデメリットというわけではありませんが、デメリットとして考慮しておくべき項目をまとめました。
資金の使い道が限定されている
貯めている資金の使途が限られていることは、むしろ引き出しにくくなるのでメリットであると前章で述べましたが、ストレートに考えるとこれは自分のお金なのに自由にならないのですから、デメリットにもなり得ます。
そのため、使い道が決まっているお金まで財形に回してしまうと、無理に引き出してしまうことにもなりかねません。住宅財形貯蓄のお金を無理に引き出すと非課税になっていた運用益への税金をさかのぼって課税されることになるため、本末転倒です。生活に必要なお金はしっかりと確保した上で、貯金に回したい分だけを財形で貯蓄しましょう。
お世辞にも高金利とは言えない
運用益に対する非課税のメリットがあるとは言え、財形貯蓄で利用できる金融商品のほとんどはきわめて低金利です。2019年9月現在の数値を見てみると、大手メガバンクで0.01%、中央労働金庫で0.015%となっています。
100万円を積み立てたとしても、0.015%だと利息は150円です。さすがにこれだとお世辞にも高金利とは言えません。財形貯蓄でなければここからさらに約20%の税金が引かれるので、それがないだけでもマシと言えるのかもしれませんが。
この金利水準は、ネット銀行の定期預金に劣る場合があります。どちらも元本保証であることに違いはないので、ネット銀行で積立をしたほうが有利になることもあるわけです。
ただし、企業によっては財形貯蓄に奨励金を出していることがあるので、それがある場合は実質金利がかなり高くなるので、金利面だけでメリットを求めるのであれば奨励金のある企業以外は難しいでしょう。
「お金を増やす」ことには不向き
財形住宅貯蓄を利用する人の目的は、マイホームを購入するための頭金づくりです。半ば強制的にお金が貯まるので貯金習慣がない人にとってはそこもメリットになりますが、あまりにも低金利なので「お金を増やす」という意味においては不向きです。
同じように運用益に対して非課税メリットがある制度として、つみたてNISAがあります。毎年40万円を上限に向こう20年間、積立運用による運用益が非課税になる制度なのですが、つみたてNISAは主に投資信託で運用するため、元本保証ではありませんが高い利回りを出せる可能性があります。
筆者はこの制度を利用して東証REIT指数と連動するインデックスファンドの積み立てをしていますが、すでに10%以上の運用益が出ており、これが非課税になるため財形貯蓄よりもはるかに有利な資産形成ができています。
長期的にお金を増やしたいという目的の場合は、住宅に限らず財形貯蓄そのものがあまり適していないと思います。
インフレリスクがある
財形住宅貯蓄の場合はマイホーム購入がゴールになるため、あまり長期間の積立を前提にしていない方が大半です。そのためあまり意識する必要はないかもしれませんが、引き出しにくい上に低金利、そして現金資産として運用される財形貯蓄はインフレに弱いというデメリットがあります。
インフレになると現金の価値が目減りするため、ただでさえ低金利の財形著得だとその目減り分を運用益でカバーすることができません。
ただしこれは数十年というスパンでお金を積み立てていく場合に考慮するべきリスクなので、10年以内にマイホームというような時間軸で計画を立てている方にはあまり関係はないと思います。
財形住宅貯蓄の利用方法
ここまでの解説をお読みになり、住宅財形貯蓄を始めてみようとお考えの方に、実際に貯蓄を始める方法を解説します。
勤務先に財形の制度があるか確認する
住宅財形貯蓄は人によってはメリットの大きな制度ですが、「勤務先に住宅財形の制度があること」が最大の関門です。福利厚生の一環として設けられている制度だけに業績が思わしくない企業や、その分を給料で還元しているという企業などではあまり導入されておらず、導入されているのは社歴の長い大企業などです。
企業の福利厚生なので、もちろん自営業の方は対象になりません。対象となるのは勤労者と定義されており、この勤労者には公務員も含まれます。それに対して自営業や自由業など、事業主に雇用されていない人は対象になっておらず、住宅財形貯蓄を利用することはできません。
勤労者として働いている方はまず、勤務先に財形貯蓄の制度があるかどうかを確認してください。
勤務先の規則にのっとって手続きする
財形貯蓄は給料の天引きによって金融機関にお金を積み立てる制度です。そのため勤務先の経理部門がそのお金のやり取りをしてくれるため、財形貯蓄を始めるための手続きは勤務先に行います。勤務先によって手続きの方法や運用対象が異なるため、勤務先にお問い合わせください。
資金の引き出しは5年後から
財形住宅貯蓄の最低積立期間は、5年です。つまり引き出すことができるのは5年後以降ということになります。マイホーム購入の頭金を想定した積立なので、仮に毎月5万円ずつ積み立てをしたとすると1年で60万円、それが5年で300万円です。この金額レベルになると頭金として現実味を帯びてくるので、制度的に5年以上の積み立てが必要となっていますが、仮にこの制約がなくても実質的に5年程度の時間がなければ頭金を用意するのは難しいと考えられます。
マイホーム購入時には要件を確認する
財形住宅貯蓄はマイホーム購入もしくはリフォームのためでなければお金の引き出しができません。また、住宅の購入やリフォームであれば何でも良いというわけではないので、要件を確認しておきましょう。
- 床面積50平米以上
- 中古物件は築20年以内(耐火構造なら25年以内)
- 自己居住用であること
- リフォーム費用の場合は75万円以上
さらに細かい要件については、公式サイトでご確認ください。
財形住宅貯蓄を利用する際の注意点
財形住宅貯蓄を利用する際には、いくつかの注意点があります。この注意点をしっかりと押さえて、この制度が持つメリットをしっかり享受しましょう。
資金使途が限られているので余裕を持った積み立てを
積み立てているお金の使途が決まっている財形住宅貯蓄では、それがメリットにもなり、デメリットにもなります。またお金を引き出せるのは積み立てを始めてから5年後以降なので、それまではたとえマイホーム購入資金であってもお金を引き出すことはできません。いえ、厳密に言うと引き出すことはできても非課税メリットがなくなるため、さかのぼって課税されるため不利になります。
少しでも早く、そして多くのお金を貯めたいという気持ちから無理をして財形にお金を回すと、そのせいで生活に支障が出てしまい、結局財形貯蓄を取り崩してしまうことにもなりかねません。それだとマイホーム購入の計画も狂ってしまうので、くれぐれも財形貯蓄をする場合は無理のない金額を心がけましょう。
金利が低いので他の金融商品とも比較しよう
すでに述べてきた通り、財形貯蓄は金利がとても低いというデメリットがあります。これでは貯金こそできても資産運用というレベルではないので、お金を増やすという概念も取り入れたいところです。そこでご提案したいのは、財形貯蓄だけに依存するのではなく他の方法でもお金を積み立てていく資金計画です。
その際に最も有効なのはつみたてNISAでしょう。老後資金が目的なのであればiDeCoも有望ですが、財形住宅貯蓄を検討している方の目的はマイホーム購入だと思いますので、もし5年以内に頭金を貯める計画なのであれば通常のNISA、それより長い期間を使って貯めていきたいのであれば、つみたてNISAを推奨します。
いずれも運用益に対する非課税メリットがあり、有望な投資信託で積み立てをしていけば5%、10%といった運用益を得ることも十分可能です。これだけの利回りになると非課税メリットの意味が大きくなってくるので、財形貯蓄だけではなく広い視野で資金計画を立てるようにしましょう。
強制貯金術は他にもある
財形貯蓄だけに依存しない資金計画について、さらに補足します。半ば強制的に貯金ができることも財形貯蓄のメリットですが、同様の方法は他にもたくさんあります。給料が振り込まれる銀行口座から引き落とされるように設定をして積立預金をするのも良いですし、給料が入ったら一定額を自分で貯金または投資に回してしまう方法も有効です。
当メディア「Oh!Ya」では不動産投資の自己資金などあらゆる用途のために貯金習慣を身につけるためのノウハウを解説しています。以下の記事では貯金のコツを7つに集約して解説していますので、こちらもぜひご参考にしてください。
・貯金のコツ7選、貯金の成否を決めるのは才能と性格ではなかった
ここで重要なのは、マイホーム購入の頭金を貯めるという目的に向かう方法は財形住宅貯蓄だけでなく、他にも選択肢があることを知っていただきたいということです。幅広い選択肢で最適なものを選び、その中のひとつとして財形住宅貯蓄を活用するのが最も有効です。
非課税メリットが事実上無価値になっている
財形貯蓄の金利が高くても0.015%程度であるという事実は、「お金を増やす」という目的には遠く及ばないことを意味しています。せっかく運用益に非課税メリットがあるといっても、雀の涙ほどしかない利息だけに非課税メリットの価値がほとんどないのが実情です。
それでもないよりはマシだと言えますが、この記事では他にもつみたてNISAなどの選択肢もご提案しています。これらの制度は併用することも可能なので、財形貯蓄ありきではなくそれぞれの良いところ取りをするという感覚を持ちましょう。この感覚はマイホーム購入資金だけでなく、お金に強い体質を身につけることにもつながります。
絶対にマイホームを持つ!という強い意志が必要
そもそも財形貯蓄は貯金習慣を自分で持つことが苦手な人であってもお金が貯まるというメリットを持った制度です。そのため財形住宅貯蓄を利用する人の多くは、マイホームを持つことに対して強い意志をお持ちだと思います。
実はこれはとても大切なことで、マイホームというほとんどの方にとって人生最大の買い物を実現するには、強い意志が必要です。いくら財形貯蓄で強制貯金ができるとはいっても非課税メリットを捨てるのであれば手続きひとつでお金を引き出せてしまいますし、意志が弱ければそのお金を守ることはできません。
そんなに強い意志を持っている人であれば財形貯蓄がなくてもお金を貯められるかもしれませんが、人間の意志は弱いものです。財形貯蓄を始めた時は強かった意志を、少なくとも5年間は維持しなければなりません。5年間もあれば事情が変わることもあるでしょうし、お金を引き出す誘惑もあることでしょう。
少々大げさな言い方になりますが、そんな数々の試練を乗り越えて貯金目標を達成するには、「マイホームを持つ!」という強い意志が大切なのです。
まとめ
貯金ゼロという状態の人が、勤務先にある財形住宅貯蓄の制度を使って、マイホーム購入の頭金を貯めるという目的を達成する方法について解説してきました。お金を貯めるというのは口で言うほど簡単ではないので、勤務先に財形貯蓄の制度があるのであれば、せっかくの制度を大いに活用して夢を夢で終わらせない第一歩を踏み出しましょう。