2020年問題とは?不動産市場と雇用環境はどのように変化する?
By Oh!Ya編集部
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皆さんは、2020年問題をご存知でしょうか?
あらゆる分野におけるネガティブな問題が、2020年ごろから発現することを懸念して、2020年問題は各所で話題となっています。特に、2020年問題がもたらす不動産業界と雇用環境への影響は、当メディアをご覧になっている皆さんにとって重要なニュースです。
そこで今回は、2020年問題がもたらす影響をご説明します。
目次
2020年問題とは?
2020年問題は、あらゆる分野におけるネガティブな問題が、2020年ごろから発現することを指して使われます。ここで指摘されている分野は不動産や雇用関連、医療や教育など多岐にわたり、日本における大きな転換点として考えられてきました。
このうち、本記事では不動産と雇用の2020年問題について触れていきます。
問題が起こる分野 | 2020年以降に起こる問題 |
---|---|
不動産 | 空き家増加・マンションのスラム化・市場の冷え込み |
雇用 | ITやAI技術の発展による雇用減少・社員の高齢化 |
それぞれ、順番に解説していきます。
不動産業界における2020年問題とは?
不動産業界における2020年問題は、要約すると「2020年を機に不動産市場が下落基調になる」というものです。とはいっても、確実に不動産市場が下落するとは断言できず、各所で賛否両論に意見が分かれています。
いま世間で問題視されている2020年問題が、不動産市場にどのような影響をもたらすのか。問題を回避する方法があるか否かについて、順番に解説していきます。
東京オリンピック後の地価暴落・空き家増加
「東京オリンピック」は、不動産業界における2020年問題を語るとき中核となる要素です。東京オリンピックの開催が決まってから、首都圏を中心にインフラ整備や再開発が進んできました。
より多くの外国人を迎え入れるために、商業施設や宿泊施設の建設を急いでいるのです。また、世界の首都に比べて東京の不動産価格は安く、東京のマンションは海外投資家の投資対象になっていました。
これらの要因から、投資家目線では東京オリンピック開催が「不動産価格のピーク」だと危惧する意見は多く、商業施設やマンションの実需と投資熱の低下により、不動産市場の低迷が懸念されています。そして、この問題こそが、不動産投資における2020年問題です。
このほか、訪日外国人に活用されていた民泊の需要も減少し、使い道のない空き家が増える可能性も不安視されています。
マンションが管理不足によりスラム化
「マンションのスラム化」というトピックは、東京オリンピックによる影響に影を潜めていますが、不動産市場が懸念すべき問題の1つです。2020年代の半ばに突入し、東京都の生産年齢人口は一度ピークを迎えて、その後に減少していきます。
出所:東京都「東京都男女年齢(5歳階級)別人口の予測」
人口減少によって「空室率の上昇」という、不動産投資家が頭を悩ませる問題が起こります。同時に、入居者の減少により管理費の回収が難しくなり、十分な修繕費を積み立てられないマンションからスラム化することが心配されているのです。
プレジデントオンラインの記事「タワマンが積立金不足でスラム化の可能性」では、もともとタワマンの修繕積立金が低く設定されている問題を言及しており、これに前述した空室率の上昇が加われば状況は悪化の一途をたどります。
消費増税による売買市場の冷え込み
2019年に施行された消費増税の反動も、2020年問題にネガティブな影響を与える一因だと考えられています。以下は、消費税が8%に引き上げられた際、マンション市場が冷え込んだことを示すデータです。
出所:(株)不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」
こうした消費増税の影響が、東京オリンピック開催後の冷え込みに被さることで、マイナスのインパクトがより大きくなる可能性が心配されています。
実際、不動産業界における2020年問題は起こるのでしょうか?
不動産業界はチャンスと不安が入り混じる時代へ
現状、2020年問題を不安視して、不動産市場には弱気な意見が増えつつあります。しかし、2020年問題はネガティブな問題のみを抱えているわけではなく、過去の資料を参照することでチャンスを見出すことが可能です。
まず、以下のデータを参照することで、東京オリンピック後の反動を過剰に懸念する必要はないことが分かります。 出所:日本銀行調査統計局「2020 年東京オリンピックの経済効果」
過去のオリンピックを振り返ったとき、確かに投資の勢いはオリンピック開催をピークにして、数年にわたり下がり続けました。しかし、オリンピック開催後も景気の指標となるGDPは上がっており、経済の基盤は底が固いことが見て取れます。
また、各国のデータを見る限り、オリンピック開催後もインバウンド需要は伸び続ける傾向にあり、訪日外国人はそこまで減少しない可能性が高いです。
出所:観光庁「過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況」
各国のデータが物語っているように、インバウンド需要そのものはオリンピック開催後も衰えないほか、日本はすでに在留外国人を多数呼び込むことに成功しています。
以下は、在留外国人の推移を示した資料です。
出所:法務局「国籍・地域別在留外国人数の推移」
これらのデータを参照すれば、徐々に答えを導くための材料が浮かび上がってきます。
2020年問題は投資家たちの意識改革で乗り切れる?
不動産業界における2020年問題は、人口減少が進むなかで東京オリンピックのために施設を建てたことと、加熱したマンション売買の反動で市場が低迷することでした。これら一連の「需給バランス崩壊」という問題は、全て人口減少を原因に引き起こされるものです。
確かに、国内の人口減少は顕著であり、不動産業界が悲観的になるのも無理はありません。しかし、訪日・在留外国人を取り込み、グローバル化を意識して立ち回れば、2020年問題を打開することは現実的なものとなるはずです。
不動産投資家は、これまで外国人入居者を避ける傾向がありました。家賃の未払いがあったり、文化の違いが近隣住民のクレームを招いたり、何らかのトラブルの原因となるケースが多かったからです。
しかし、国内だけでパイを取り合っていては、本当に2020年問題が懸念していた通りの結果になってしまいます。だからこそ投資家側はいま変革を目指し、グローバル化というトレンドにあわせて自ら業界内を変えていく姿勢が必要なのです。
雇用環境における2020年問題とは?
雇用環境における2020年問題は、ほぼ全ての社会人に関係があるトピックです。
この項では、具体的にどのような影響があるのか、雇用環境における2020年問題についてご説明します。
IT・AI技術の発展による雇用減少
2020年以降、IT・AI技術の発展による業務効率化によって、会社にとって必要な人材と必要ではない人材が分かれ始めました。成果主義が浸透しつつあり、付加価値を持たない成長余地に欠ける人員から順に、会社が「あなたは必要ない」と厳しい判断を下すのです。
年功序列が根付いていた日本の大手企業たちが、早期退職を促して人員整理を始めていることが何よりの証拠です。この傾向が今後も続く可能性は高く、野村総合研究所の資料によれば、将来的に「日本の労働人口の半分」はAI技術で代替できると予想されています。
出所:野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
どれだけ実績を重ねていても、どれだけ勤続年数が長くても、終身雇用制度が崩壊に向かう今後の日本では、AIに代替できる人員がどんどん削減される流れは止められません。
こうして各業界でリストラが進む一方、IT・AI技術を導入する側にいる人材は圧倒的に不足しています。
各業界が人員削減を進めるなか「IT・AI人材」は不足
広義での「IT人材」というカテゴライズであれば、2020年には約30万人の人材不足が発生し、前年の2019年をピークに人材供給は落ち込む見込みです。
出所:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」
多くの企業では人員削減が進むかたわら、IT・AI業界は深刻な人材不足が発生しており、日本国内の雇用環境は転換点に差し掛かっているのです。私たち雇用者は、以下のような選択を迫られています。
- 人員削減が進んでいない業界・企業を転々とする
- IT・AIに関係するスキルを身に付けて市場価値を高める
2016年に出版された人生戦略を扱うヒット書籍「LIFE SHIFT」でも、今後訪れる人生100年時代において教育は一度だけでは足りないと言及されています。経済学の権威である著者が、時代にあわせてスキルを身に付ける姿勢が必要になると主張しているのです。
2020年問題が引き起こす雇用関係の諸問題は、著者が提唱する「複数の転機がある人生(マルチステージ)」の始まりを示唆しているといえます。
社員の高齢化による柔軟性の低下
2020年は、雇用者の割合のうち多くを占める「団塊ジュニア世代」が、50代にさしかかり始めます。50代といえば、社内で重要なポジションを任せられ、昇進に伴って賃金アップを期待できる年齢です。
しかし、あまりに団塊ジュニアが多いため、それぞれを管理職に任命することは難しく、給与が高い管理職の増加は財務圧迫の原因にもなります。また、高齢化した社員には柔軟性に欠ける人材も多く、流れが速い昨今のビジネスシーンにそぐわないケースもあるのです。
すでに、平成後期の時点でコカ・コーラやエーザイ、日本ハムなどの国内大手企業が、45歳以上を対象にリストラを進めています。2020年以降は、前述したIT・AI技術の問題もあり、人員削減が一層加速することが懸念されます。
雇用の場面では「市場価値」がより重視される
2020年問題によって、雇用にも全く新しい価値観がもたらされます。これまで、日本では「長く勤続するほど地位・給与が上がる」という、年功序列の考え方が一般的でした。
この価値観はすでに崩壊しつつあり、トレンドは年功序列から成果主義へ移行し、終身雇用制度を廃止する方向に向かっています。これは、日本の経済成長が鈍化しており、決められたルーチンをこなすだけの人材を集めても、企業業績が伸びないことは明らかだからです。
つまり、企業は従業員に「どれほど長く勤務するか」ではなく、よりシビアに「どれほど成果を出せるか」を求める時代になります。より良い条件、より良い環境で働くことを望むうえで、私たちは「企業が必要とするスキル」を身に付ける努力が必要となるでしょう。
副業・資産運用でお金を増やす意識の重要性
雇用環境がシビアになり、いつリストラ対象になるのか分からない状況は、収入の安定感に不安をもたらします。会社員としての収入しかなければ、退職をした瞬間から無収入となるため、実は給与一本で家計を支える状況はリスキーなのです。
こういった不安定さを解消するため、今後は副業・資産運用を始めて収入源を複数作ることが重要となります。まずは「サラリーマンでもバレずに始められる副業5選」で解説しているような、会社員と両立しやすい副業からスタートし、収入源拡大を目指しましょう。
その後に必要となる資産運用の方法は、「【2019年最新版】資産運用のキホン!10種類の運用方法を徹底解説」を始め、当メディアの記事で多数解説しています。ぜひ、本記事とあわせてご参照ください。
まとめ
今回は、不動産業界と雇用環境における2020年問題についてご説明しました。いずれも、当メディアをご覧になっている皆さんにとって、大きな影響をもたらす要因だったはずです。
すでに不動産投資を行っている場合も、不動産投資を始められるよう準備している場合も、2020年問題は注目すべきトレンドの転換点。今回ご説明したように、グローバル化の波は高確率でやってくるため、今後の不動産投資はより柔軟性を求められます。
そして、雇用環境の激動は、全社会人を巻き込むビッグウェーブとなる可能性が高いです。会社が個人を守る時代は終わり、各々が社会で必要とされるスキルを身に付けるよう迫られているため、2020年問題をきっかけに働き方を見直してみてください。