不動産投資でローンが重要項目である5つの理由
不動産投資を検討している人の中で、漠然とローンを組むことに不安がある人もいるのではないでしょうか?ローンの仕組みを理解しても、漠然とした不安を持つ方は多いです。しかし、不動産投資においてローンは非常に重要であり、メリットにもなり得る要素です。
そこで今回は、不動産投資でローンが重要事項である5つの理由を解説します。この理由を理解すれば、不動産投資ローンについて不安は払しょくしており、逆にメリットを理解できているでしょう。
目次
理由1:不動産投資ローンは承認が難しいから
不動産投資でローンが重要な1つ目の理由は、承認が難しいので審査の仕組みを理解しておく必要があるからです。審査項目については以下の点を理解しておきましょう。
- 住宅ローンとは根本的に違う
- 不動産投資ローンは収益性を見られる
- 不動産投資ローンは担保価値を見られる
不動産投資ローンの審査に通らないと物件の取得は難しいので、そもそも不動産投資をはじめることができません。だからこそ、ローンの審査項目を理解しておく必要があります。
住宅ローンとは根本的に違う
不動産投資は経営的な視点で見られるので、住宅ローンとは根本的に以下の点が異なります。
- 審査ハードル
- 審査項目
審査のハードルは不動産投資ローンの方が高いです。というのも、住宅ローンは自宅という必需品を購入するためのローンであるのに対し、投資用物件は必需品ではないです。投資用物件を保有するということは、単純に自宅のほかにもう1つ不動産に対しての支出が発生します。
そして、その返済原資は「物件からの収益」になり、その人の年収だけで判断するわけではありません。つまり、住宅ローンより支出が増えている上に返済原資も不安定なので、自ずと審査ハードルも高くなるのです。
不動産投資ローンは収益性を見られる
前項のように、不動産投資ローンは物件からの家賃収入が返済原資です。そのため、住宅ローンと共通する以下の項目以外に、物件の収益性も見られます。
- 借入者の年収や会社規模
- 借入者の雇用形態や勤続年数
- 信用情報(過去の延滞歴など)
物件の収益性とは、その物件による家賃収入はいくらか?継続して収入を得られるか?という点です。そのため、たとえば現在空室であり、その空室が過去に何か月もつづいている場合には、なぜ空室か?が重要になります。
それが「リフォームをしていた」などの理由であれば良いですが、仮に理由もなく空室がつづくようであれば収益性は低いと判断される可能性が高いです。もしそうなれば、いくら年収が高く、会社規模が大きくても不動産投資ローンの審査は厳しくなります。
不動産投資ローンは担保価値を見られる
住宅ローンでも同じですが、不動産の担保価値も審査項目です。担保価値を審査で重視する理由は、万が一借入者がローン返済不能の状態になれば、その物件を処分して返済原資に充てるからです。
そのため、担保価値が低いと、金融機関というよりは滞納時にローンを補填する保証会社の審査が通らないでしょう。担保価値の算出方法は金融機関によって異なりますし、各金融機関で公表しているわけではありませんが、一般的な算出方法である以下を覚えておきましょう。
- 積算価格とは?
- 再調達価格とは?
積算価格とは?
積算価格は、土地の建物で以下のように計算方法が異なります。
- 土地:相続税評価額×土地面積
- 建物:再調達原価×建物延べ床面積×(残存年数÷耐用年数)
相続税評価額は路線価マップで調べることができるので、該当するエリアの相続税評価額はチェックしておきましょう。また、耐用年数は国税庁の耐用年数表でチェックできます。
再調達価格とは?
前項の再調達価格は、以下のように構造によって異なります。
- RC:19万円/㎡
- 重量鉄骨造:16万円/㎡
- 軽量鉄骨・木造:13万円/㎡
このように、相続税評価額・再調達価格(構造)・築年数・耐用年数が担保価値には重要なので、物件選びのときに意識しておくことで、担保価値の高い…つまりローン審査に通りやすい物件を見極められます。
理由2:借入者によって条件が違うから
不動産投資でローンが重要な2つ目の理由は、借入者によって以下の条件が異なるからです。
- 金利
- 借入期間
前項のように、そもそも不動産投資ローンの審査に通るか?という点も重要ですが、通ったとしても条件によって返済額が異なります。ローン返済額は不動産投資における支出なので、不動産投資で収益を上げられるかどうかの鍵を握ります。
金利や借入期間などが異なる
住宅ローンの場合、金融機関のホームページなどで住宅ローン金利は公表されています。そのため、その金利や諸条件などを基に金融機関を選定しますが、不動産投資ローン金利は公表されていないケースもあり、公表していても金利幅が非常に大きいです。
それは、不動産投資ローンの場合には金利が借入者によって異なるからです。つまり、審査してみないと適用金利が何%かは分からないということです。また、借入期間は住宅ローンでも希望通りの期間にならないこともありますが、不動産投資ローンはさらに厳しい条件になります。
審査に通ったとしても、金利が高く、借入期間も短く指定される場合があります。
金利が違うことによる返済額の違い
では、金利が違うことでどのくらい返済額に違いがあるのかをチェックしましょう。仮に、借入額3,000万円、借入期間25年、元利均等返済で組んだ場合の、金利による返済額の違いは以下の通りです。
金利 | 総返済額 | 月々返済額 |
---|---|---|
1.5% | 35,994,148円 | 119,980円 |
2.0% | 38,146,723円 | 127,156円 |
2.5% | 40,375,309円 | 134,585円 |
3.0% | 42,678,858円 | 142,263円 |
一般的には、2%台~3%前後の金利になる場合が多いですが、プロフィールが良く、過去にローンを順調に返済した実績があれば1%台の金利も可能です。上記の返済額は、そのまま不動産投資の支出になるので、収益は返済額分だけ悪化します。
借入期間が違うことによる収益の違い
次に、返済期間による返済額の違いです。前項と同じく、借入額3,000万円、元利均等返済で金利2.5%のとき、借入期間による返済額の違いは以下の通りです。
借入期間 | 総返済額 | 月々返済額 |
---|---|---|
15年 | 36,006,544円 | 200,036円 |
20年 | 38,152,907円 | 158,970円 |
25年 | 40,375,309円 | 134,585円 |
30年 | 42,672,839円 | 118,536円 |
35年 | 45,044,198円 | 107,248円 |
借入期間が短いと総返済額は下がりますが月々返済額が上がるので、キャッシュフロー(収支バランス)は厳しくなります。そのため、借入期間を借入者がある程度選べると、自分のキャッシュフローを加味した上で、毎月どのくらいの返済額にしたいか?を調整することが可能です。
不動産投資ローンについて詳細
なお、不動産投資ローンは都市銀行や地方銀行、信託銀行など色々な金融機関が取り扱っています。大きく分けて、提携ローンと金融機関ローンの2つに分かれ、それぞれ金利タイプごとの特徴もありますので、それらを知りたい人はこちらの記事を確認しましょう。
具体的にどのような金融機関で借入可能か?借入する際はどのような流れになるのか?という詳細も記載されていますので、不動産投資ローンについては詳細を知りたい方は必見です。
理由3:ローンを組めることが大きなメリットだから
不動産投資でローンが重要な3つ目の理由は、不動産投資においてローンを組めることは大きなメリットになるからです。ローンを借金と捉えている人も多いと思いますが、ローンを組めることで得られるレバレッジ効果は非常に大きなメリットになります。
レバレッジ効果が高くなる
投資におけるレバレッジ効果とは、「小さな資金で大きな資産を取得する」という意味です。上述のように、不動産投資ローンは審査が厳しいので、借入者によってどのくらいのレバレッジ効果を得られるかは異なります。
ただ、「自己資金400万円で4,000万円の物件を取得する」ということは珍しいことではないので、レバレッジ効果が10倍(4,000万円÷400万円)という状況も珍しくないのです。
ほかの投資ではないメリット
ここまで高いレバレッジ効果はほかの投資では中々ありません。たとえば、証券会社を通して売買する株式投資や上場投資信託は、レバレッジ効果は3倍程度です。これらの投資は、証券会社にお金を借りて取引する「信用取引」を利用できます。
信用取引のレバレッジ効果と金利
信用取引のレバレッジ効果は証券会社によって異なります、概ね3倍程度のレバレッジになります。また、証券会社にお金を借りるので金利もかかりますが、その金利も概ね3%強です。そのため、レバレッジ効果が不動産投資より低い上に、金利も少々高めということです。
不動産投資以上のレバレッジ効果もある
不動産投資以上のレバレッジ効果を得られる代表的な投資にFX(外貨取引)がありますが、FXは非常にリスクが高いです。というのも、不動産投資の場合は家賃収入という比較的安定した収益源ですが、FXの場合は「為替差益」だからです。
つまり、為替という変動が激しい、かつ上昇するか下落するか不透明な投資なので、そのような投資で高いレバレッジ効果を利用して取引すると、ハイリスク・ハイリターンの投資になってしまいます。
同じ自己資金での収益比較
レバレッジ効果が高いということは、大きな資産を取得できるので運用に成功すれば自ずと収益は上がります。たとえば、利回り4%、自己資金500万円で、10倍のレバレッジを効かせた不動産投資と、3倍のレバレッジを効かせた株式投資で収益を比較してみましょう。
- 不動産投資:自己資金500万円×レバレッジ10倍×利回り4%=200万円
- 株式投資:自己資金500万円×レバレッジ3倍×利回り4%=60万円
ただし、レバレッジ効果が高いということは借入額も高いということなので、その借入額に対して金利を含んだ「返済」が発生します。そのため、月々返済額をよく確認した上で、精度の高い収支シミュレーションをつくり借入額を決定しましょう。
理由4:規模を拡大するときの鍵だから
不動産投資でローンが重要な4つ目の理由は、不動産投資ローンは規模を拡大するときの鍵となるからです。その点について以下を解説します。
- 不動産投資は規模を拡大できる
- 規模を拡大するときに融資は不可欠
不動産投資は規模を拡大できる
不動産投資の規模拡大とは、不動産をどんどん増やしていき収益を積み重ねていくことです。「メガ大家」という言葉がありますが、メガ大家は個人投資家が多数の物件を運営しており、その収入だけで生計を立てられるくらいの収益をあげています。
不動産投資の目的は色々とありますが、特に「年金代わりにしたい」「不労所得をつくりサラリーマンを早期に引退したい」という人は、小規模な不動産投資では実現が難しいでしょう。そのため、不動産投資ローンを活用し、どんどん保有不動産を増やしていく必要があります。
規模を拡大するときに融資は不可欠
不動産投資で規模を増やすイメージは以下の通りです。
- A銀行でローンを組み区分マンションを保有
- 数年間実績を出してA銀行からの信頼を得る
- その間で貯めた資金を元にA銀行で新たにローンを組む
- 新たにアパートを取得し物件運営開始
このように、1つの金融機関から信頼を得て、繰り返しローンを組むのが基本です。もちろん、ずっと同じ金融機関でなく別の金融機関でも、ある程度不動産運用の実績があればローン審査は通りやすくなるでしょう。
また、上記の例では1軒目を区分マンションにしていますが、不動産種類に指定はありません。いずれにしろ、健全な物件運営をして金融機関からの信頼を勝ち取ることで、新たなローンを組みやすくなります。このように、規模拡大には不動産投資ローンを上手く活用することが必須なのです。
理由5:ローンは諦める人が多いから
不動産投資でローンが重要な5つ目の理由は、ローンについては諦める人が多いからです。不動産投資は「不動産経営」ともいわれるので、その経営の大事な支出である不動産投資ローンはこだわるべきです。
収益を最大化させるためには、実は「物件選び」と同じくらい「好条件で不動産投資ローンを組むこと」は重要といえるでしょう。
物件選びに時間をかける人は多い
不動産投資ローンで最も大事なことは何か?と質問されれば、恐らく「収益性の高い物件選び」と答える人は多いです。確かにそれは事実であり、時間をかけて物件は選ばなければいけません。
収益性の高い物件とは、需要が高く空室・家賃下落リスクの小さい物件です。仮に、そのような収益性の高い物件を取得したとしましょう。しかし、その物件から得る収益は「家賃収入-支出」であり、支出の中で最も高額なのはローン返済額です。
つまり、いくら収益性の高い物件を取得しても、ローン返済額が高額になれば一転して収益性の低い物件になりかねません。
ローンに時間をかけない人が多い
このように、不動産投資でローンは重要ですが、時間をかけない人は多い印象です。というのも、住宅ローンと違い、不動産投資ローンの場合は不動産会社が斡旋してくれないケースもあるからです。
不動産投資ローンは斡旋されないこともある
新築の投資用物件を購入するときは売主が斡旋することが多いですが、中古の場合は自力で金融機関を探すケースが多いです。ということは、金融機関に直接連絡をしてローン審査をしなければいけないので、手間がかかります。
手間を惜しむと結果的に損する
そのため、その手間を惜しんで「ちょっと金利が高かったけど1行目で審査に通ったからこの銀行でローンを組もう…」というケースも多くなります。しかし、もっとたくさんの金融機関に相談していれば、もしかしたら1行目よりも低い金利で借入できたかもしれません。
ローンを組むと簡単に借り換えできませんし、借り換えできたとしても都度諸費用がかかります。そのため、基本的には当初組んだローンを継続するので、金融機関は粘り強く時間をかけて交渉することが重要です。
まとめ
このように、不動産投資ローンで融資は非常に重要な要素であり、レバレッジ効果を高くしてくれるメリットがあります。
また、不動産投資ローンは比較的審査が厳しく、自力で見つけるという点でも投資家の手間はかかります。ただ、不動産投資で重要な「支出」を左右する要素なので、時間をかけてでもなるべく好条件の金融機関を探しましょう