日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りる!知っておくべき6項目
不動産投資を本格検討している人の中には、融資に関する情報を集めている人もいるでしょう。しかし、そのような人の中にも「日本政策金融公庫」の存在を知らない人もいるかもしれません。
ただ、日本政策金融公庫でローンを組むことは人によって大きなメリットがあるので、不動産投資をするなら必ず知っておいた方が良い金融機関です。
この記事では、日本政策金融公庫の不動産投資ローン(融資)にフォーカスを当て、概要やメリット・注意点を解説します。それらを知った上で、自分にとってベストな金融機関を選びましょう。
目次
1.日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき1つ目は、日本政策金融公庫の概要である以下の点です。
- 日本政策金融公庫は政府系の金融機関
- 民間金融機関との違いを解説
- 融資を受ける条件
日本政策金融公庫は政府系の金融機関
そもそも日本政策金融公庫とは、民間ではなく政府系の金融機関であり、不動産投資を含めた色々な事業に融資をしてくれる金融機関です。
日本政策金融公庫が設立された目的は以下の通りです。
- 中小企業を支援する
- 社会的に弱い立場の人を支援する
要は、大手金融機関などから融資を受けにくい人に融資することを目的としている金融機関です。
民間金融機関との違い
前項のように、日本政策金融公庫は民間の金融機関ではないので、あまり馴染みがない方も多いでしょう。そんな日本政策金融公庫と民間金融機関との大きな違いは以下の点です。
- 利益を追及していない
- 確実に返済できる証明は必要
- 比較的低金利である
- 固定金利のみ提供
- 保証人は不要である
利益を追及していない
日本政策金融公庫は利益を追及しているわけではないので、民間金融機関のように商業的な視点はありません。
そのため、属性(年収や自己資金率、勤務先など)に捉われずに融資をしてくれます。
民間金融機関の中には、「自営業はNG」「年収○○万円以下はNG」など、制限を設けることがありますが、これは商業的な視点からの制限です。
むしろ、日本政策金融公庫は大手金融機関がNGとしている属性の人を支援するのが特徴であり、それは利益を追及していないからこそできることです。
確実に返済できる証明は必要
ただし、いくら「社会的に弱い立場の人を支援する」といっても、当然ながら返済の見込みがなければ融資することはできません。
つまり、商業的な視点で借入者を判断することはないものの、返済計画はしっかりとチェックするということです。
低金利&固定金利&保証人不要
上述したように、日本政策金融公庫は中小企業の応援する金融機関であり、かつ社会的に弱い立場の人を守る金融機関です。
そのため、比較的低金利で貸し出ししており、金利タイプも変動リスクがない固定金利です。また、保証人も原則不要になります。
融資を受ける条件
日本政策金融公庫で融資を受ける条件は以下の通りです。
- 不動産事業である
- 担保がある
- 未納がないこと
不動産事業である
前提として、日本政策金融公庫は前項で解説した目的があるので、投資目的に対して融資は行いません。そのため、不動産投資で融資を受けるときは「不動産賃貸業」として融資を受けます。
「不動産賃貸業」といっても法人である必要はなく、個人でも不動産賃貸業とみなされます。注意点は、不動産の「売却益」が目的の場合には、投資と見なされるという点です。
つまり、日本政策金融公庫に示す事業計画は、不動産投資の本質である「賃貸収入」を柱にした計画でないといけません。
担保がある
日本政策金融公庫で借入をするときは「担保不要」のケースもあります。しかし、これは特別なケースであり、基本的には担保は必須であると思っておきましょう。
担保物件の評価は物件にもよりますが、目安として「東京の物件で購入価格の1/2~1/3程度」と思っておきましょう。これは、民間金融機関よりもやや厳しい評価といえます。
不動産投資(賃貸業)で融資を受けるときは、取得する不動産を担保に入れることになります。
未納がないこと
日本政策金融公庫は政府系の金融機関です。そのため、公共料金や税金に関する未払いや未納を嫌がります。
民間金融機関は、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターなどの「信用情報機関」を利用し、個人のカード延滞歴などは追えますが、税金の未納などは追えません。
しかし、政府系の金融機関である日本政策金融公庫は、税金の未納を追うことができるので、未納があると融資は非常に厳しくなるでしょう。
2.日本政策金融公庫で融資を受ける流れ
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき2つ目は、日本政策金融公庫で不動産投資ローンを組む流れである以下に関することです。
- 日本政策金融公庫にアポを取る
- 面談のあとに申込書類を作成する
- 審査開始
- 融資決定の通知が届く
- 各契約を締結
- 融資の実行
アポ~審査開始
まずは、日本政策金融公庫に申し出をして、担当者とアポイントを取らなければいけません。
アポイントの取り方は、日本政策金融公庫の受付窓口へ連絡をして、申込みに必要な書類や資料をヒアリングします。
その上で、面談をした後に正式な申込書類を作成して、審査スタートです。
融資決定の通知~融資実行
そして、審査開始から7日~10日ほどで審査結果が通知されます。そして、その後は以下3つの手続きをするために日程調整を行うという流れです。
- 金銭消費貸借契約
- 抵当権設定契約
- 団体信用生命保険への加入
そして、対面で上記の手続きが終われば、後は融資実行を待つだけです。
3.金利や金利種類について
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき3つ目は、金利や金利種類に関する以下のことです。
- 金利種類とは?
- 日本政策金融公庫は固定金利
- 種類ごとの金利と返済額の差
金利種類とは?
一般的なローンには以下3種類あります。
- 変動金利
- 固定金利選択型
- 全期間固定金利
政策金融公庫は全期間固定金利のみ利用可能ですが、変動金利と固定金利選択型に関しても理解しておかなければいけません。
なぜなら、仮に変動金利や固定金利選択型の方が自分に合っていれば、「日本政策金融公庫以外でローンを組む」という判断が必要だからです。
変動金利
変動金利は定期的に金利が変動するタイプです。そもそも、ローン返済額の内訳は「元金+利息(≒金利)」になります。
つまり、金利が変動するということは返済額が変動するリスクがあるということです。ただし、そのリスクがあるからこそ、一般的には変動金利が最も低金利になります。
固定金利選択型
固定金利選択型とは、たとえば3年固定・5年固定・10年固定などのような金利プランです。
このプランは、一定期間は金利が変わらなく(固定され)、期間満了後にまた新たに金利タイプを選びます。
通常は、何もしなければ変動金利に切り替わりますが、再度固定金利選択型を選ぶことも可能です。金利は変動金利より高くなりやすく、全期間固定金利よりは低くなりやすいです。
ただし、固定期間が短いほど金利が低いので、たとえば2年固定と変動金利だと、2年固定の方が金利は低い…という状況はあり得ます。
全期間固定金利
全期間固定金利とは、借入期間中ずっと金利が変わらないタイプです。仮に、金利がどれだけ上がっても、ローンを組んだ当初から金利は変わりません。
つまり、返済額が変動するリスクがないということです。一方で、全期間固定金利は最も高金利になりやすい金利タイプでもあります。
日本政策金融公庫は固定金利
日本政策金融公庫が提供する不動産賃貸業向けの融資は、正式には「企業活力強化資金」といいます。
2019年7月時点の金利は、0.3%~2.05%になっています。
不動産賃貸業の金利
日本政策金融の金利は前項の通りですが、企業活力強化資金は不動産賃貸業以外も対象にしているので、不動産賃貸業に限定していうと金利は1%半ばから2%ほどになるようです。
ただ、仮に2%になったとしても、不動産投資ローンの全期間固定金利で2%なら、比較的低金利であるといえるでしょう。
金利の優遇がある
上述したように日本政策金融は社会的に弱い立場の方…具体的には女性や若者、高齢者の味方となる金融機関です。そのため、融資希望者によって以下のように金利の優遇があります。
- 女性の場合:最大0.4%優遇
- 29歳以下or55歳以上の男性:最大0.4%優遇
逆にいうと、29歳超~55歳未満の男性には優遇はありません。
金利による返済額の差
この章の最後に、金利による返済額の差を解説します。以下は、借入期間25年、借入金額3,000万円、元利均等返済でローンを組んだときの、総返済額と月々返済額です。
金利 | 総返済額 | 月々返済額 |
---|---|---|
1.5% | 35,994,148円 | 119,980円 |
2.0% | 38,146,723円 | 127,156円 |
2.5% | 40,375,309円 | 134,585円 |
3.0% | 42,678,858円 | 142,263円 |
このように、金利差による返済額の差は大きいので、金融機関選びは金利を最重要項目の1つと認識しておく必要があります。
4.融資期間と融資額について
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき4つ目は、融資期間と融資額に関する以下のことです。
- 融資金額について
- 融資期間と融資額
- 期間と金額による返済額の違い
融資金額について
日本政策金融公庫の不動産投資ローンを利用した場合、融資金額の上限は4,800万円になります。
民間の金融機関であれば億単位の融資を受けられる中、4,800万円が上限というのは比較的少額といえるでしょう。
融資期間は借入者によって異なる
日本政策金融機関の不動産投資ローンの借入期間は以下の通りです。
- 最大で20年間の借入
- 79歳までに完済する
ただし、上述した金利と同じように、社会的に弱い立場の方には以下の通り優遇があります。
借入者 | 借入可能期間 |
---|---|
女性(年齢問わず) | 15年(相談によっては20年も可能) |
男性(29歳までor55歳以上) | 15年 |
男性(上記以外) | 10年 |
期間と金額による返済額の違い
借入期間による、総返済額・月々返済額の違いは以下の通りです。
借入期間 | 総返済額 | 月々返済額 |
---|---|---|
30年 | 39,918,769円 | 110,885円 |
25年 | 38,146,723円 | 127,156円 |
20年 | 36,423,456円 | 151,765円 |
15年 | 34,749,375円 | 193,052円 |
10年 | 33,124,784円 | 276,040円 |
上記は、金利2%、借入期間3,000万円、元利均等返済のシミュレーションです。借入期間が短ければ総返済額は少額ですが、月々返済額が上がり、キャッシュフローが悪化します。
他行であれば借入期間は35年でも組むことが可能な金融機関もあるので、日本政策金融公庫は借入期間が短期間です。
そのため、キャッシュフローが悪化しやすいリスクがあるので、その点を加味して日本政策金融公庫でローンを組むか検討しなければいけません。
5.日本政策金融公庫でローンを組むポイント
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき5つ目は、日本政策金融公庫でローンを組む際のポイントである以下です。
- 借入期間の目安を知る
- その他概要については要確認
借入期間の目安を知る
借入期間の上限は、上述したように性別や年齢によって異なります。ただし、上述したのは上限であり借入期間は人によって異なる上に、女性は相談次第で20年の借入期間も可能です。
その際目安になるのが、以下の法定耐用年数から築年数を差し引いた期間になります。
- 木造:22年
- 軽量鉄骨(厚さ3mm以下):19年
- 軽量鉄骨(厚さ4mm以下):27年
- 重量鉄骨:34年
- 鉄筋コンクリート造:47年
しかし、これはあくまで目安になるので、借入者が安定して返済できるか?など、別の要素を含めた総合判断になります。
その他概要については要確認
上述したように、金利面や借入期間面については、ホームページなどで記述があります。しかし、以下のような要素を決める基準は属人的なので、都度確認が必要になります。
- 返済条件
- 諸費用額
- 繰り上げ返済の可否と手数料
- 団体信用生命保険
- 担保
- 保証人の必要可否
上記に関しては、最初の担当者との面談のときに確認すると良いでしょう。
6.日本政策金融公庫を利用するときの注意点
日本政策金融公庫で不動産投資ローンを借りるときに知っておくべき6つ目は、日本政策金融公庫を利用するときの注意点である以下に関することです。
- 時間帯に注意
- 代理受領は不可能
- 一戸からの融資
- 不動産投資という言葉を使わない
時間帯に注意
日本政策金融公庫は政府系の金融機関なので、役所と同じく以下の点に注意です。
- 平日の日中しか利用できない
- 融資を受ける前に最低2回面談がある
平日の日中しか利用できない
まず、日本政策金融公庫は土日祝日が休みで、9時~17時まで利用できません。面談で最も遅い時間は16時からなので、特に時間の融通が利きにくい会社員の方は日程調整が大変でしょう。
また、ローンを申し込むには、支店まで行かなくてはいけない点も注意が必要です。
融資を受ける前に最低2回面談がある
また、融資を受けるまでには少なくとも以下2回の面談があります。
- 1回目:融資審査
- 2回目:金銭消費貸借契約
民間の金融機関でも同じような対応のところもありますが、ネットや郵送だけで対応してくれたり、土曜は対応可能だったりという金融機関もあります。
代理受領は不可能
そもそも代理受領とは、不動産会社が借入者に代わって金融機関から融資金を受け取ることを指します。
つまり、A社から不動産を購入するときに、借入者(購入者)の口座を通さず、金融機関がA社に直接融資金を振り込むということです。
しかし、日本政策金融公庫では代理受領できないので、借入者の口座に入金され、そこから借入者は売主に直接振り込むという流れになります。
そのため、融資実行の際に「手間がかかる」という点を頭に入れておきましょう。
一戸からの融資
上述したように、日本政策金融公庫の不動産投資ローンの上限は4,800万円ですが、この上限内だとしても複数のローンを組むことはできません。
基本的には、1回融資を受けてから再度融資を受けるとなると、半年程度の運用実績を経てからの判断となります。
つまり、短期間で規模拡大(物件を増やす)を予定していたり、一度に複数戸の購入を検討していたりする人は、日本政策金融公庫のローンは合わないということです。
不動産投資という言葉を使わない
日本政策金融公庫が不動産投資に対して融資をするのは、あくまで「不動産賃貸業」に対して融資をするという前提です。
つまり、日本政策金融公庫の目的である「中小企業の応援」という意味合いで不動産投資に融資をするので、「不動産投資」という言葉はNGになります。
あくまで、不動産賃貸業であることを認識し、担当者との面談に臨みましょう。
まとめ
このように、日本政策金融公庫の不動産投資ローンは、正確にいうと中小企業を応援するための「融資」になります。そのため、民間の金融機関と違う点も多いので、特にその点を理解しておきましょう。
また、女性や若者、高齢者など、借入者によって条件が異なるので、自分がどのような条件で借入できるかを確認してから、日本政策金融公庫でローンを組むか判断することが重要です。
その際は、ほかの民間金融機関とも比較し、本当に自分に合ったローンかどうかを確認してから判断しましょう。