ソーシャルレンディングにおける税金の全て!課税方式や確定申告を解説
「確定申告は複雑で面倒。いっそのこと黙っていれば良いんじゃないかな?」
このような考えは禁物。ソーシャルレンディングで一定以上の利益を得ている投資家は、確定申告を怠るとペナルティが課せられるのです。
今回は、ソーシャルレンディングの税金について解説し、初めての確定申告を無事に終えるための方法をご説明します。
目次
ソーシャルレンディングの課税方式は「総合課税」
ソーシャルレンディングの分配金は、株式配当金などと異なり「総合課税」に分類されます。そのため、累進税率をもとにして所得に応じた税額を納めなければなりません。
まずは、どれくらいの税率が課せられるのか確認してみましょう。
分配金には「所得税」が課せられる
ソーシャルレンディングの利益は「雑所得」に区分されるため所得税が課せられ、以下のような累進税率により納税額が決まります。
所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 控除なし |
330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,001万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
※横スクロールできます。
出典:(国税庁「所得税の税率」を抜粋・改編)
しかし、実のところソーシャルレンディングで受け取る分配金は、すでに「所得税+復興特別所得税」として一律20.42%が引かれています。
つまり、所得額が330万円以下の人は「税金を払い過ぎている状態」、所得額が696万円以上の人は「追加で納税が必要な状態」といえます。
このとき、払い過ぎた税金を還付してもらう、または追加で税金を納めるときに確定申告が必要になるのです。
なお、以下の場合に限って確定申告が不要となります。
確定申告が不要になるケース
確定申告が不要なケースは以下のパターンです。なお、ソーシャルレンディングの分配金は「その他の所得」に当てはまります。
1.本業の給与が2,000万円以下、かつ「その他の所得が合計20万円以下」の場合 2.年金の支給額が400万円以下、かつ「その他の所得が合計20万円以下」の場合 3.合計所得額が控除により全額相殺される場合
上記のような場合には、運用利益が発生しても確定申告の義務がありません。
ソーシャルレンディングの確定申告方法
確定申告と聞けば難しい手続きを思い浮かべがちですが、いまはネットの普及により手軽に準備を整えられます。
この項では、確定申告の必要書類と「確定申告書」の作成方法についてご説明します。
確定申告の必要書類
確定申告時には「確定申告書」を作成するために、以下のような書類が必要になります。
- ソーシャルレンディングの年間取引報告書(利用業者の数だけ必要)
- 給与所得の源泉徴収票
- 保険に関連する控除証明書
- マイナンバーカード
なお、ソーシャルレンディング以外にも確定申告が必要な所得があれば、それらの書類も揃えておきましょう。
これらが用意できれば、つぎに確定申告書を作成します。
国税庁ホームページから「確定申告書」を作成する方法
まず、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」にアクセスして、「申告書・決算書・収支内訳書等 作成開始」から書類作成をスタート。
つぎに「e-TAX」と「書面提出」のうち、どちらで確定申告書を作成するか選択肢があらわれます。
e-TAXは電子証明書と専用のICカードリーダーが必要になるため、初めての確定申告時は一般的な作成方法である「書面提出」がおすすめです。
本業の給与所得とソーシャルレンディングの利益を申告するなら、「所得税の確定申告書作成コーナー」を選択してください。
入力方法は「左記以外の所得のある方(全ての所得対応)」です。
「生年月日等入力」へ必要情報を記入して進めると、「所得・所得控除等入力」という画面があらわれます。
ソーシャルレンディングは雑所得に分類されるため、収入金額等のカテゴリーから「雑→その他」を選択。
つぎに「雑(その他)所得の入力」と表記されるページにて、所得の内容を尋ねられるため「上記以外(報酬等)」の入力ボタンをクリックします。
表示されたページの種目には「分配金」と記入して、「報酬などの支払者の氏名・名称、所得の生ずる場所」にはソーシャルレンディング業者の事業者名と所在地を書き入れてください。
運用利益や事業者名・所在地など全て打ち込めば、ソーシャルレンディングに関連する入力操作は完了です。
あとは「給与」の項目から入力欄を開き、支払金額や源泉徴収税額などを記入して入力終了を選択します。
その後「住所・氏名等入力」と「マイナンバーの入力」に必要情報を記入して、「帳票表示・印刷」から印刷を進めれば確定申告書の準備は終わりです。
なお、これら一連の作成が難しい場合は、必要書類を持って税務署の相談員に教えてもらうことも可能です。
ソーシャルレンディングの節税対策とは?
ソーシャルレンディングに関する節税対策は主に2種類。
この項では、所得額の圧縮と法人化による節税についてご紹介します。
経費計上をして所得額を圧縮する
ソーシャルレンディングの運用利益には、累進税率に基づいた所得税の納付義務が発生します。このとき、必要経費を申告することで、ソーシャルレンディングに関する所得額を小さくすることが可能です。
たとえば、以下のような出費は、必要経費として考えて良いでしょう。
- ソーシャルレンディングの関連書籍
- ソーシャルレンディングのセミナー参加費・交通費
- ソーシャルレンディングの売買や運用にかかる手数料
実際のところ、ソーシャルレンディングはいまだ認知度が低く、必要経費となる支出は明確になっていません。
しかし、原則として「事業利益の向上に関わる出費」が経費になると定められている以上、上記は必要経費として認められる可能性が高いといえます。
なお、ソーシャルレンディングの経費にまつわる一部サイトの記事では、インターネット料金やパソコン購入費も必要経費だと解説されていますが、これら全てが確実に経費として認められるわけではありません。
あくまで「事業利益の向上に関わる出費」だと、税務署が判断した場合に限るため注意しましょう。
高所得者は法人化による節税も有効
ソーシャルレンディングは総合課税となり、累進税率によって納税額が決まると解説しました。
しかし、中小法人を設立して法人口座で運用を行えば、下記のような「法人税率」が適用されます。
中小法人の法人税率 | |
---|---|
所得額が年間800万円以下の場合 | 15%(19%) |
所得額が年間800万円超の場合 | 23.2% |
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出典:(国税庁「法人税の税率」を抜粋・改編) ※2019年3月31日以降に開始した事業については、括弧内の税率が適用されます。
このように所得額が800万円を超えたとき「税率は一律23.2%」となり、運用利益が増えるほど法人化による恩恵は大きくなるのです。
法人事業税や地方法人特別税など、法人特有の税金は発生するものの、所得税率が33%を超えるなら法人化による節税対策も選択肢として有力です。
確定申告しなかった場合のペナルティ
確定申告をしなかった場合や、意図して納税額を偽装・隠ぺいした場合には、規定に則ってペナルティが課せられます。
悪質な行為が続く場合は「重加算税」という重い罰則が与えられるため、納税には細心の注意を払いましょう。
過少申告加算税
納税額を適正値より少なく申告してしまった場合に、罰則として課せられるのが「過少申告加算税」です。このとき、ペナルティの大きさは下記の通り「更生の予知」を境に変動します。
更生の予知とは、申告者が「税務署に指導を受けること」を察知している状態。つまり、罰則を課せられることに勘付いてから修正申告を行った場合は、更生の予知後として判断されます。
過少申告加算税の適用基準 | ペナルティの内容 |
---|---|
更生の予知前 | ペナルティとして5%の増税 |
更生の予知後 | ペナルティとして10%の増税 |
※横スクロールできます。
無申告加算税
申告期限までに確定申告を行わなかった場合に、罰則として課せられるのが「無申告加算税」です。
本来の納税額が50万円未満か、そうでないかによってペナルティの大きさが変動。税務署が「無申告の存在」を気付く前に限り、自己申告を行うことでペナルティは軽減します。
そのため、申告期限までに確定申告を忘れていた場合、速やかに自己申告することをおすすめします。
無申告加算税の適用基準 | ペナルティの内容 |
---|---|
納税額が50万円未満である場合 | ペナルティとして15%の増税 |
納税額が50万円以上である場合 | ペナルティとして20%の増税 |
無申告の発覚前に自己申告を行った場合 | ペナルティとして5%の増税 |
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延滞税
過少申告加算税や無申告加算税と同時に、納付期限を過ぎた日数分だけ課せられるのが「延滞税」です。
税額は延滞期間によって変わるため、国税庁ホームページにある「延滞税の計算方法」の利用がおすすめ。複数ある選択肢を誤ってしまい、再び過少申告とならないよう注意しましょう。
重加算税
脱税行為にあたる「悪意のある過少申告・無申告」には、重加算税が課せられます。
重加算税には以下のような税率が適用され、ペナルティとしての負担は最も大きいです。
重加算税の適用基準 | ペナルティの内容 |
---|---|
意図的な過少申告 | ペナルティとして35%の増税 |
意図的な無申告 | ペナルティとして40%の増税 |
※横スクロールできます。
通常であれば上記の罰則が課せられますが、直近5年以内に同様の悪質行為をしている場合は、さらに負担の大きい以下のペナルティが適用されます。
重加算税(直近5年以内に悪質行為あり) | ペナルティの内容 |
---|---|
意図的な過少申告 | ペナルティとして45%の増税 |
意図的な無申告 | ペナルティとして50%の増税 |
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それぞれ増税額が45%と50%に引き上げられ、非常に大きな罰則が与えられます。
ソーシャルレンディングの確定申告をサポートするサービス
ここまでの解説で確定申告に不安が残っている場合は、会計処理を支援するサービスの利用も検討してみてください。
この項では、確定申告をサポートする「確定申告ソフト」と「税理士」についてご説明します。
確定申告ソフト
「確定申告ソフト」は投資家や個人事業主の確定申告をサポートする、パソコンやスマートフォン専用のサービス。確定申告ソフトが「カードの決済履歴」や「金融機関の入出金」を読み取り、半自動的に最適な区分へと振り分けられます。
これにより、運用利益や経費を簡単に処理できるため、確定申告書の作成プロセスが大幅に短縮できるのです。
もちろん、ソーシャルレンディング以外に副業・投資をしている場合にも対応可能。給与以外の支出が増えるほど確定申告は複雑になるため、帳簿付けに不安がある場合は確定申告ソフトの利用をおすすめします。
利用者数の多い定番の確定申告ソフト
現在は最新の税制に随時対応している、月額制のクラウドタイプが主流。国内利用者の多い、以下の3つは評価が高くサポートも手厚いです。
どれも同等の機能が備わっていますが、操作画面のビジュアルや使い勝手がやや異なります。そのため、無料制限版や試用期間を活用して、比較してみることをおすすめします。
税理士
確定申告の手間を極力減らしたい場合、会計処理を一任できる「税理士」への依頼がおすすめです。
税金に関する専門家であるため、自身で確定申告を行うより確実。あくまでサポート止まりの確定申告ソフトとは異なり、運用利益や必要経費の計算を完全に自動化できるため、収入源が多い投資家ほど費用対効果は高いです。
まとめ
確定申告は下記のプロセスで完了するため、それほど難しいものではありません。
- ソーシャルレンディングの関連書籍・セミナー代の領収書を保管
- 必要に応じて確定申告ソフトや税理士を利用
- 必要書類を用意して「確定申告書等作成コーナー」から確定申告書を作成
- 税務署へ持ち込み、もしくは郵送する
ただし、ソーシャルレンディング以外に「確定申告を必要とする副収入」がある場合、それに関連した支出・経費の処理も必要です。前述したように、過少申告や無申告はペナルティが発生するため、直前に焦らないよう早い段階から準備しておくことをおすすめします。