「投資法人」とは?投資家を目指すなら理解しておきたい3つのポイント
By Oh!Ya編集部
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投資信託について調べていると「投資法人」という単語が頻出しますが、投資法人が何なのか皆さんはご存知でしょうか?
投資家としてレベルアップをする近道は、「知らない言葉がない状態」に近付けることです。ネット記事や書籍を読んでいるとき、意味を知らなかったばかりに重要な意図を見逃しているかも知れません。
今回は、投資法人の概要について解説していきますので、投資法人を知らない人は参考にしてみてください。
投資法人とは?
投資法人は、特定の資産を運用するために設立された法人を指す言葉です。設立した投資法人から投資口を発行し、投資家から集めた資金を「特定資産の運用」に充てることで利益を得ています。
投資法人は、大きく以下の3つに分けられます。
- 不動産投資法人:集めた資金で「不動産の運用」を行うタイプの投資法人
- 証券投資法人:集めた資金で「有価証券の運用」を行うタイプの投資法人
- インフラ投資法人:集めた資金で「インフラ資産への投資」を行うタイプの投資法人
日本にある投資法人のうち、大部分は不動産投資法人です。そのため、本記事では不動産投資法人にフォーカスして解説を進めていきます。
どのような仕組みで資産運用が行われているの?
まず、投資家たちが証券取引所を通じて投じた資金は、投資法人に集められます。しかし、投資法人は資金を集める「箱」のようなものであり、投資法人そのものが資産運用を行うわけではありません。
投資方針は投資法人が決めるものの、集めた資金の運用は資産運用会社と呼ばれる機関に委託されます。これは、投資法人による「実質的な運用業務」が、法律によって禁じられているからです。
どちらにせよ、預けた資金は資産運用のプロにより運用されるため、投資家自身が投資法人に資金を預けたあとに直接運用に携わることはありません。要約すると、投資法人に投資したお金は、以下のような仕組みによって運用されています。
- 投資家が投資法人に資金を預ける
- 集まった資金は資産運用会社により運用される
- 運用利益が「分配金」として投資家に還元される
こういった仕組みより、投資法人は投資家から集めた大資本をもちいて投資し、投資家は自動的に資産運用が最適化されるというWinWinな関係が構築されます。
不動産投資法人に投資をするメリット
不動産投資法人の仕組みは至ってシンプル。投資家が資金を預けて、それを専門家が運用することで利益を獲得し、利益に応じて投資家に分配金が支払われるのみです。
しかし、「手間をかけず資産運用を任せられる」というメリットはほんの一部、表面部分に過ぎません。不動産投資法人に関する税制や、資産運用会社の投資先にフォーカスすることで、さらに不動産投資法人に投資をするメリットが見えてきます。
不動産投資法人は運用利益の9割が投資家に還元される
不動産投資法人は、資産運用会社の運用成績に応じて「分配金」という形で、1年に1~2回投資家に利益を還元します。これは、株式投資でいう配当金に相当するものです。
ただし、不動産投資法人の分配金は、株式投資の配当金と決定的に違う点があります。それは「当期利益の9割を分配」すれば、不動産投資法人の法人税が免除されるという税制上のメリットです。
この税制があることで、不動産投資法人は毎年高還元率を維持し続けることとなり、投資家たちは大きな恩恵を受けられます。対する株式会社の配当金は、当期利益に対して法人税が課せられたうえで、内部留保を差し引いたものから還元されています。
当期利益の9割を還元する不動産投資法人と、当期利益から法人税や内部留保が差し引かれた株式配当金では、その還元率に大差が生まれるのは明白。事実、不動産投資法人(REIT)と東証一部の分配金利回りをパーセンテージで比較すると、全く違うことが分かります。 出所:J-REIT.jp「J-REIT分配金利回り(10年間)」
東証一部が2%台を上下しているなか、不動産投資法人(REIT)は4~7%前後を推移しています。このように、株式配当金に比べて高い利回りが、不動産投資法人に投資する代表的なメリットの1つです。
数万円から不動産市場に投資できる
不動産投資法人は、金融商品である「REIT(不動産投資信託)」の売買を通じて資金を集めます。
そして、REITの最低投資口数は価格にして数万~数十万円。不動産の直接購入に比べて圧倒的に低コストで資産運用ができるのです。
また、REITを通じて投資することとなる不動産は、オフィスビルや商業施設など個人レベルでは購入できない案件ばかり。「リスクを抑えて不動産投資を始めたい」というニーズに合致した、不動産市場に投資できる数少ない金融商品だといえます。
資産運用会社が投資先を分散してくれる
資産運用をするとき、リスクを分散させるために投資先は複数設定すべきだと考えられています。
たとえば、投資用不動産を1部屋保有していたとき、その1部屋が火事や地震によって使えなくなれば不動産収入はゼロです。しかし、投資用不動産を10部屋保有していれば、そのうちの1部屋が使えなくなっても収入源の9割は維持されますよね?
投資先の分散は、このようにリスク管理を徹底するうえで外せない対策なのですが、実際には投資先を分散させるほど多額の資金を要するため困難です。この部分を解消してくれるのが、REITの持つ「資産運用会社が投資先を分散してくれる」というメリットなのです。
REITにより集められた資金は、いくつもの不動産に投資されることとなっており、たとえ数か所の不動産が使用不可能になったとしても大きな影響はありません。こういった構造によって、投資家はREITに投資をするだけで自動的に分散投資になっているのです。
不動産投資法人に投資をするリスク
REITを介して不動産投資法人に投資をすれば、大きなメリットがあると分かりました。しかし、宣伝のために強調されやすいメリットばかりを見ていては危険です。
どの金融商品にも共通する事実として、メリットの裏にはデメリットがあるものです。この項では、不動産投資法人に投資をするリスクについて解説していきます。
収益低下により売買価格・分配金利回り低下の可能性がある
不動産投資法人に資産を預ければ、複数の不動産へ効果的に分散投資をしてくれるのですが、リスクを完全にゼロにすることはできません。
経済が冷え込んで不動産市場が低迷したり、金利上昇により資金繰りに問題が生じたりすれば、相場価格や分配金利回りが低下する可能性もあります。これにより、当初予想していたほど利益を得られないこともあるため、必ずプラス収支になる投資先だと思うのは危険です。
不動産投資法人は会社であるため倒産リスクがある
不動産投資法人は、特定資産の運用を目的とした法人(会社)であるため、一般的な企業と同じように倒産のリスクを抱えています。
「不動産投資信託は安定している」という考え方が定説ではあったものの、リーマンショック時には倒産事例も発生したため、株式投資と同じように投資先が倒産する可能性も頭に入れて投資すべきでしょう。
なお、リーマンショック当時の環境に比べれば、現在は法改正が進んでおり倒産リスクは抑えられています。投資候補である不動産投資法人の過去実績を確かめて、直近数年間の運用成績が好調ならそこまで怯える必要はありません。
レバレッジ効果を高めた資産運用には不向き
不動産投資法人は不動産を扱うため、大家業として知られる不動産投資と比較されがちです。どちらもメリット・デメリットはあり一長一短なのですが、不動産投資法人へ投資をするときにネックとなるポイントに「融資を利用できない」というものがあります。
不動産投資であれば、物件を購入するときに融資を利用して、自己資金をそれほど投じることなく資産運用を始められます。そのうえで、自己資金はほかの物件購入に充てたり、異なる資産運用に充てたりできるのです。
一方で、不動産投資法人へ投資をする不動産投資信託の場合、金融機関から融資を受けることはできません。信用取引という制度を利用して、自己資金の3倍相当を売買に利用できますが、数百万~数千万円単位で借入ができる融資には到底及ばないのです。
こういった理由により、直接物件を運用するよりもスケールの大きな投資には適していません。あくまで、少額資金で不動産市場に投資ができる金融商品だと割り切って、投資することをおすすめします。
不動産投資法人にはどのように投資すれば良いの?
不動産投資法人へ投資をするには、証券会社から不動産投資信託(REIT)を購入する必要があります。証券会社から金融商品を売買するために、まずは証券口座を解説しましょう。
証券口座の開設は、大きく3ステップです。
- 利用する証券会社を決める
- 必要情報を入力して登録申請
- 郵送された登録ID・PASSでサービス利用
初めて投資をする場合、利用する証券会社を決める段階で迷うケースは多いですが、証券会社は国内最大手であるSBI証券・楽天証券のどちらかをおすすめします。
ネット上にはさまざまな意見が散見されるものの、サービス改善や不具合への対応スピードは随一。特別なこだわりがなければ、これらの2つのうち片方、もしくは両方を開設して利用するのが無難でしょう。
一連の手順は、証券会社の口座開設ページに記載されていますが、手続きに行き詰った場合は「【5分で分かる】REITの始め方を解説!将来性はあるの?」をご参照ください。より詳細な口座開設の手順のほか、不動産投資信託にもう一歩踏み込んだ内容を記載しています。
指標から読み解く不動産投資信託の選び方
どの不動産投資信託に投資をしようか悩む場合、指標を参照して割安・割高を分析し、投資候補を絞るのがオーソドックスな戦術です。
ただし、指標は数多くあるため、これらを全て使いこなすのは初心者にとってハードルが高いです。そこでこの項では、最低限覚えておくべき3つの指標をご説明します。
まずは、3つの指標だけで分析は十分可能なので、ほかの指標よりも優先して覚えてください。
NAV倍率:倍率が1を下回るものは割安
NAV倍率は、分析対象が割安なのか割高なのかを判断するための指標です。使い方は至ってシンプルで、NAV倍率が1を下回る場合は割安、NAV倍率が1を超える場合は割高だと判断します。
ただし、NAV倍率だけでは分析の根拠として物足りないため、後述するFFO倍率と併用して投資判断を下すことをおすすめします。
FFO倍率:2つ以上の投資先を比較して低いものを選ぶ
FFO倍率は、2つ以上の投資先を比較して「相対的な割安・割高」を判断するための指標です。FFO倍率30のAとFFO倍率40のBを比較した場合、AはBよりも割安だと判断できます。
なお、特定の不動産投資信託を比較するときはもちろん、以下のような組み合わせで割安なのか否かを判断できます。
- 「特定の不動産投資信託」と「不動産投資信託のマーケット全体」
- 「特定の不動産投資信託」と「商業施設を扱う不動産投資信託市場の平均」
- 「不動産投資信託のマーケット全体」と「特定の領域における市場の平均」
このように「不動産投資信託」という括りのなかであれば、基本的にどのような組み合わせでも利用できるのがFFO倍率のメリットです。
NOI利回り:倍率が高いほど高利益率である
NOI利回りは、分析対象の利益率を判断するための指標です。NOI利回りが高いほど予測されるリターンは大きく、NOI利回りが低いほど得られるリターンが小さいことを示します。
そのため、原則としてはNOI利回りが高い投資先を選ぶべきなのですが、NOI利回りの高さだけに注目するのは禁物。NOI利回りが高いケースは、「運用物件の収益性が高い」という場合だけでなく、「運用物件の購入価格が安い」という場合もあります。
たとえば、過疎地域の物件を購入すれば、物件の購入価格は抑えられるためNOI利回りは高スコアになりやすいです。しかし、将来性という観点でいえば、過疎地域の物件は安心して運用できる投資先とはいえません。
NOI利回りの平均は4~5%付近なので、この基準を大きく超える場合には「どのような物件に投資しているのか」に着目して、5年後,10年後には不必要とされるような物件ではないか見極めましょう。
まとめ
投資法人と呼ばれるものは、一般的に不動産投資法人を指すことが多いです。
そして、不動産投資法人への投資は、今回ご説明したようなメリット・デメリットが伴います。比較的低リスクな投資先だといわれていますが、当然損をする可能性もあるため指標を参考にして投資先は慎重に選ぶことをおすすめします。
なお、より詳しくリスクや指標を理解したい方は、当メディアの記事「REITのリスクって何?初心者でも損をしない銘柄の選び方」も併せてご参照ください。